君のことを本当に……?

刹那玻璃

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《それから》……ending

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「あぁぁ~! 何で俺は、この学校に進学したんだろう……」

 頭をかく祐次ゆうじに、観月みづきの祖父、宇治ひろはるは、

「あてもびっくりや。祐次が現役合格して、しかも、研修中とはなぁ……」
「じいちゃん……じゃない、先生! 何かありましたか?」
「ん? もうすぐ祭りやなぁ、思てな?」
「そうなんです。それに、観月は法学部を卒業して、嵯峨さがさんの事務所で働いているのに、俺は6年生! 就職先も決めないかんのに! それ以前に、向いてないのかな……」

がっかりする祐次は、京都の大原総合病院で研修中である。
 柔道も続けているが、従姉のひめのように真摯に向き合う姿に追い付けないと思っていた。

 ちなみに本人はそう思っているが、24才になる祐次は、医師の勉強をしつつ柔道をしており、強化選手に選ばれている。
 その為、必死に勉強と柔道に打ち込んでおり、恋人の観月とはメールかLINEでやり取り程度である。
 実家に戻る日も削り、医学書を引き、柔道場に向かうと汗を流す。

「あぁ、そうや。祐次。就職先……」
「じいちゃんのコネで入学したって言われてるんですよ。じいちゃんのコネで就職したら、じいちゃんがねちねち言われるでしょ!」
「祐次が言われるんやないんか?」
「俺は柔道さしてもろて、医学部に通うて、毎日充実してますよ。それに、じいちゃんの家に住まわせてもろて、洗濯に掃除に食事も家政婦さんが用意してくれて……まぁ、観月と会えんのは辛いけど……」

 祐次は呟く。
 恋人なのにこの間会ったのは、観月が仕事で関西方面に出て、京都の実家……祐次の下宿先……に来た時位である。

「祭りは絶対に帰る! 兄ちゃんたちに、チケット頼んどかないかん! それに、小遣い貰うとる身で、情けないけど……絶対に!」
「祐次よ? 就職先どないするんで?」
「そ、それだった!」
「なぁ? 祐次。この病院に勤めんか?」
「ですから、じいちゃんのコネで……」

 宇治は祐次を真剣に見つめる。

「一応、あての息子の嵯峨と、嫁の柚月ゆづきはこの病院の理事に就任しとる。柚月は看護師として勤めていてある程度理解しているが、嵯峨は幾らあての息子でも、忙しいのにこれ以上の責任は負わせられん。観月も何年かしたら理事に迎えるつもりや。でも、観月の下の子はまだこんまい。医者やいうても、聴診器で遊ぶもんや。あては年やし……」
「いやいや、じいちゃんはまだまだ十分元気やわ。100まで生きるんやない?」
初月ういげつが成人するまでは死なんわ!」
「そんなら、何で?」

 祐次に、真顔で問いかける。

「嵯峨と話したわ。嵯峨は観月が可愛い。そやさかいに、観月を嫁に出したくはない……」
「……そうでしょうね……」

 遠い目になる。
 17で付き合い始めて9年。
 相も変わらず嵯峨は、観月を溺愛している。
 一応仕事上は上司と部下だが、それでも溺愛度が年々悪化し、同僚のにしきも呆れ返っている。

「でも、観月が言うんなら嫁に出す。が、近くに住むんが条件や。で、本題や。あてはそろそろこっちにでるんもつろうなった。で、きいっちゃんや向こうのもんと、のんびり暮らしたいんや。でな? 向こうの助手兼こっちで雑用をする新人医師を探しとる。田舎や、行きとうないいうんがほとんどや。祐次よ? どうや? 田舎の医者にならへんか?」

 祐次は目を見開く。
 そして、即答する。

「じいちゃん……大原院長! お、私はまだ未熟ですが、是非、よろしくお願い致します! 地域の医者……それが私の夢です!」
「そうか……」

 嬉しそうに微笑む。

風早かざはやも流石は父親に似て、自分も医者にて言うてたけど、まだ18やしなぁ。それに、穐斗あきとは向いてない。あれは母親に似て綺麗なもんを見せてやるべきや」

 医者になりたいといっていた子供たちは大きくなり、風早は進学校に進んだ。
 しかし、穐斗は美術科のある高校に進学した。
 家族……特に父である祐也ゆうやが、穐斗の医学部進学に反対した。
 穐斗は、とろくさいのもあるが、幼馴染みの中でも体が弱いのである。

「……まぁ、穐斗は向いてないですね。でも、ビックリなのは、妹の葵衣あおいが海外留学ですか? その上俺より先に結婚って……」
「お前の無駄にある、ロマンチストなところをどっかに捨ててこい。暑苦しい柔道家の癖に、脳内花畑が!」
「俺に言わんといて下さいよ! 家の母にコンコンと言われ続けたんです!」
「……まぁ、めぐみはんは、かいらしいもんがすきやなぁ」
「そうなんです! いまだにハーレ○イン小説を愛読して、俺に『観月ちゃんにはこんな風にプロポーズしなさいね~?』ですよ! 送りつけてくるんです」

 部屋に積み上げられている本は、医学書類だけでなく、本当は好きな漫画本も置きたかったのだが、母から段ボールで送られてくる荷物のなかに必ず入っている小説が増えすぎて積んである。
 自分に読めと言うのだろうか?
 いや、一冊読んだが、こんな男はいない!
 ついでに、世界でもセクシーな俳優と言われるウェインですら、普段は、

「あー和菓子~! 日本に来たら、やっぱり夏は西瓜と麦茶良いねぇ……冬になったらこたつにミカン。はんてんと、ストーブに鍋~!」

とか言いながら、縁側で団扇であおぎながら、むぎわら帽子を被って西瓜を頬張っているのだ。
 小説内の男のようなキザなセリフは吐かない。

「まぁ、観月との距離が縮まったら、孫やさかいに、運営に関わってもらうよって、覚悟するんやな」
「はい!」

 祐次は、大きく頷いたのだった。



 それからのお話は、聞かずともお分かりだろう。

 お祭りでプロポーズした祐次は、翌年卒業と同時に医者となり、忙しく動き回る。
 観月も仕事をしつつ、忙しい夫と共に家族との日々を過ごす。
 そして、

「あそこの地域は若いもんが増えたなぁ?」
「医者もおるし、あんしんやて」
「エェなぁ……」

と言われる地域になっていったのだった。



 過疎化の村や町が増え、空き家も多くなりました。
 高齢の人たちが集まる集落では、火事や古くなった家屋の倒壊なども増えてきていると言います。
 故郷が失われるのを、見ているしかないのでしょうか?
 インターネットで情報を見るよりも、現実を知って下さい。
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