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神聖な閉鎖空間から、現実世界へ帰還です。
シェールドでもいろいろな意味で、最強の強さを誇るフィアちゃんが完全敗北です。
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一日寝込み、シエラシールは復活し、
「あー、よっく寝た~! あ~寝過ぎって、逆にしんどいんだよね~!」
と言いつつ首を回し、肩を回しつつ、庭に出る。
ちなみに、方向音痴と言うよりも、自分がどこにいるか把握していなかったシエラシールは、小さい頃の記憶で、外、もしくは中庭に出ればある程度場所は解るのである。
外の庭に出ると、こちらは亡き兄リュシオン・エルドヴァーンの棟であり、首を傾げる。
「あれ? 何で? まぁ、反対側の北は父さまの集めた財宝たんまりだけど、エージャはどこに住んでるの? 奥の棟は殆ど儀式用で、部屋らしいものはないよ?」
「あ、おはよう、兄さま。何?」
フィアがキョトンとした顔をする。
「いや、ここって兄さまの棟でしょ? ほら、ここはチェニア宮で、方向は違うけど玄関は東で、奥の間は西。で、あそこが父さまの棟。グラン兄さま達の棟も向こう……北側。エージャは? もしかして中庭の中の別邸?」
幾つもの棟があり、書庫に武器庫、執務室や書類の積み上がった棟もある、この広大な邸宅は、子供の少ないカズール家には少々広い……のだが。
「エージャは滅多に帰らないから、東南の子供部屋の横の辺りの部屋だよ。で、その手前の棟は全部、清秀兄さまたちの棟。その内側が隼人兄さまの家族の棟。で、兄さまたちの棟がここ。僕もここに部屋があるの」
「じゃぁ、六槻は?」
「別邸の内部を全部改装して、六槻ちゃんのお部屋にしちゃった~!」
「はぁぁ? か、改装……?」
呆気に取られるシエラに、目をキラキラさせて、
「うん! ウェイト兄さまのお姉さんの、ナーニャ姉さまがね? 引き受けてくれたんだよ! 可愛いピンクと、所々に籐家具! ナチュラルにって! 見に行く? 六槻ちゃんはね? フワフワのピンクのパジャマ! ネグリジェだと、お腹が冷えちゃうからって、デザインしてくれたんだ~!」
「フィア……かなり力いれてるけど……に、兄さま、お金ないよ? 払えないよ?」
その前に6LDKのその屋敷は、元々、王族が静養の際に用いた屋敷である。
「大丈夫だよ~! あれ位! それに、アヴィお祖父様も使わなかったでしょ? 今の陛下も使わないし、良いよって、エージャ言ってたし」
「でも、全部って、六槻泣くよ! 一人怖いって!」
「ん? 大丈夫。ナーガと、ナーガの息子置いてきた! 乗獣レベルランクは最高なんだけど、ナーガに似て賢すぎて、頑固で、乗獣を躾ける資格をもつ人間が、ほぼ全員匙投げたの!」
「よくないじゃん!」
真っ青になるシエラに、にっと笑う。
「ほぼ全員って言ったでしょ? 僕と父さまと、ルード伯父上は平気なの。特にお母さんのディルサナードの主であるルード伯父上には、逆らえないんだ。で、グズグズしてた六槻ちゃんに『ほーら、これだっこしてねんねだぞ~。これは六槻のペット』ってだっこさせて寝させてる」
「ペット……あの、ナーガとディルサナードの間のナムグをペット……有り得ない」
遠い目をする。
ナーガ・デール・フィルセラ。
爵位をもつナムグは現在二頭。
一頭が、ナーガである。
もう一頭が、フィアの父、シルベスターの乗獣エール・ディーナである。
エール・ディーナは、シェールドでも珍しい、ナムグの中でも大型で、原種のナムグである。
出生地は、このカズールの西にある迷いの原。
ホワイトドラゴンと共に育ち、体格と翼が大きいのが特徴である。
ある時に、カズールに来たシルベスターに興味を持ち着いてきたまま、ずっとそばにいる。
乗獣の資格は実は持っていない。
乗獣の資格とは、一応空を飛ぶ為にどこに行く等の許可が実は必要なのだ。
しかし、ナーガとエール・ディーナは資格はない。
その代わり、自由に飛んでも良いと言う許可を得ているのである。
そして、ナーガは野生種。
迷いの原を出たナムグがシェールドの中央にある太古の森、金の森を中心に生活している。
迷いの原は、文字通り見た目は普通の草原だが、一歩歩くごとに方向感覚がおかしくなり、数日迷い続けたあげく、元の場所に戻ってしまう。
歩けばそうだが、ドラゴンやナムグには翼があり、迷うことはない。
しかし、その退屈な日々よりも冒険を選んだ祖先が住み着いた金の森では、大きな体は必要なく、翼も長距離を飛ぶ以外必要がなかった為、体が一回り小さく、その代わり足腰が発達し、走るのが早くなっていった。
俊敏さである。
その為、ナーガは瞬発力と判断力にたけているが、長距離を飛ぶのはエール・ディーナ。
しかし、ナーガは年が上であることと、エール・ディーナはのんびりした性格の為、仲が良い。
ナーガはディルサナードとの間に子供をもうけたが、それぞれ親の名に恥じぬ乗獣として騎士団で働いている。
末っ子のまだ名前のない男の子のナムグと、フィアの乗獣のリアンの双子の弟ケイン・ジュエルのみ、主がいない。
ケインは、ナーガの子供の中で数少ない雄のナムグだが気が弱く、自信がない。
双子の姉のリアンが、背中を押しても隠れてしまうのである。
乗獣試験には合格しているのだが、主に合わず、今でも姉とその恋人のアルフリードの傍にいる。
「あれ? 3頭もいたの?」
「あ、皆、おいで」
声をかけるととことこと近づく。
しかし、小柄なアルフリードの後ろに座るナムグに、
「ちっちゃいナムグの後ろに、大きい子がいる……」
「えっと、手前の子が、僕の2頭目の乗獣のアルフリードだよ。金の森の一角で火事があって、助けたんだ。この子、翼が二対あって、保護したんだよ。で、こっちが、リアン。僕の乗獣。女の子。で、後ろの子が……ほら、来てきて、ケイン・ジュエル」
モジモジと、恥ずかしそうなナムグはおずおず出てくる。
その大きさに、
「えぇぇ~! ナーガより大きくない? それに、毛並みも立派! 骨格も! こんな綺麗なナムグっていないよ? 主は?」
「気が弱くて……見つかってないんだよね。それに自信がないみたいで……」
「えぇぇ~! こんなにすごい子って早々いないよ~! 私、ナムグいないよね? もしよかったら、私の乗獣になってくれない? 嫌なら良いけど」
問いかけるシエラに、目を丸くし、
『ぼ、僕は……あの、あの……兄さんや、姉さんたち程……で、ででで……出来が良くない子です……』
「ナーガやディルサナードが言ったの? 兄弟とか?」
『いいえ!』
ぶんぶんと首を振る。
『父も母も兄弟も……言いません。一番小さい弟も『兄ちゃん。ちゃんと見えてないんだよ~!』って、前が見えてないのか……』
シエラは思う……真面目すぎる。
「じゃぁ、出来は悪くないじゃない。兄弟や両親の言うことは間違いないよ。じゃぁ、聞くよ? 私の乗獣になってくれる?」
『……ぼ、僕で良いですか? が、頑張っても……兄さんたちに追い付けなくて……情けなくてウジウジして、リアンは『考えすぎよ』って言ってくれるけど……もっと頑張らないとって……』
「頑張らないとって、乗獣試験に合格してる時点で、普通はすごいんだよ?」
『でも、兄弟は皆持ってます……』
「だから、それが普通じゃないの!」
呆れると言うよりも、不憫になる。
どれだけ、劣等感にさいなまれてきたのだろう……。
「どれだけ試験が厳しいか、クリアした時点で自分を誉めなさい。それに、それ以上頑張ろうって思える自分を誉めなさい。よく頑張った。良い子だよ。君は」
背伸びをして鼻を撫でると、緊張したようにそれでも必死に答える。
『……ぼ、僕、貴方のお家に行きます。そ、それで、一杯貴方と空を飛びたいです……良いですか?』
「もちろん! よろしくね。私はシエラシール。シエラで良いよ?」
『はい!シエラ……よろしくお願いします』
フィアは呆気に取られ、そして、負けたー!と思った。
これがシエラシール……自分が追いかけてきた人間の強さだと……再び理解したのだった。
「あー、よっく寝た~! あ~寝過ぎって、逆にしんどいんだよね~!」
と言いつつ首を回し、肩を回しつつ、庭に出る。
ちなみに、方向音痴と言うよりも、自分がどこにいるか把握していなかったシエラシールは、小さい頃の記憶で、外、もしくは中庭に出ればある程度場所は解るのである。
外の庭に出ると、こちらは亡き兄リュシオン・エルドヴァーンの棟であり、首を傾げる。
「あれ? 何で? まぁ、反対側の北は父さまの集めた財宝たんまりだけど、エージャはどこに住んでるの? 奥の棟は殆ど儀式用で、部屋らしいものはないよ?」
「あ、おはよう、兄さま。何?」
フィアがキョトンとした顔をする。
「いや、ここって兄さまの棟でしょ? ほら、ここはチェニア宮で、方向は違うけど玄関は東で、奥の間は西。で、あそこが父さまの棟。グラン兄さま達の棟も向こう……北側。エージャは? もしかして中庭の中の別邸?」
幾つもの棟があり、書庫に武器庫、執務室や書類の積み上がった棟もある、この広大な邸宅は、子供の少ないカズール家には少々広い……のだが。
「エージャは滅多に帰らないから、東南の子供部屋の横の辺りの部屋だよ。で、その手前の棟は全部、清秀兄さまたちの棟。その内側が隼人兄さまの家族の棟。で、兄さまたちの棟がここ。僕もここに部屋があるの」
「じゃぁ、六槻は?」
「別邸の内部を全部改装して、六槻ちゃんのお部屋にしちゃった~!」
「はぁぁ? か、改装……?」
呆気に取られるシエラに、目をキラキラさせて、
「うん! ウェイト兄さまのお姉さんの、ナーニャ姉さまがね? 引き受けてくれたんだよ! 可愛いピンクと、所々に籐家具! ナチュラルにって! 見に行く? 六槻ちゃんはね? フワフワのピンクのパジャマ! ネグリジェだと、お腹が冷えちゃうからって、デザインしてくれたんだ~!」
「フィア……かなり力いれてるけど……に、兄さま、お金ないよ? 払えないよ?」
その前に6LDKのその屋敷は、元々、王族が静養の際に用いた屋敷である。
「大丈夫だよ~! あれ位! それに、アヴィお祖父様も使わなかったでしょ? 今の陛下も使わないし、良いよって、エージャ言ってたし」
「でも、全部って、六槻泣くよ! 一人怖いって!」
「ん? 大丈夫。ナーガと、ナーガの息子置いてきた! 乗獣レベルランクは最高なんだけど、ナーガに似て賢すぎて、頑固で、乗獣を躾ける資格をもつ人間が、ほぼ全員匙投げたの!」
「よくないじゃん!」
真っ青になるシエラに、にっと笑う。
「ほぼ全員って言ったでしょ? 僕と父さまと、ルード伯父上は平気なの。特にお母さんのディルサナードの主であるルード伯父上には、逆らえないんだ。で、グズグズしてた六槻ちゃんに『ほーら、これだっこしてねんねだぞ~。これは六槻のペット』ってだっこさせて寝させてる」
「ペット……あの、ナーガとディルサナードの間のナムグをペット……有り得ない」
遠い目をする。
ナーガ・デール・フィルセラ。
爵位をもつナムグは現在二頭。
一頭が、ナーガである。
もう一頭が、フィアの父、シルベスターの乗獣エール・ディーナである。
エール・ディーナは、シェールドでも珍しい、ナムグの中でも大型で、原種のナムグである。
出生地は、このカズールの西にある迷いの原。
ホワイトドラゴンと共に育ち、体格と翼が大きいのが特徴である。
ある時に、カズールに来たシルベスターに興味を持ち着いてきたまま、ずっとそばにいる。
乗獣の資格は実は持っていない。
乗獣の資格とは、一応空を飛ぶ為にどこに行く等の許可が実は必要なのだ。
しかし、ナーガとエール・ディーナは資格はない。
その代わり、自由に飛んでも良いと言う許可を得ているのである。
そして、ナーガは野生種。
迷いの原を出たナムグがシェールドの中央にある太古の森、金の森を中心に生活している。
迷いの原は、文字通り見た目は普通の草原だが、一歩歩くごとに方向感覚がおかしくなり、数日迷い続けたあげく、元の場所に戻ってしまう。
歩けばそうだが、ドラゴンやナムグには翼があり、迷うことはない。
しかし、その退屈な日々よりも冒険を選んだ祖先が住み着いた金の森では、大きな体は必要なく、翼も長距離を飛ぶ以外必要がなかった為、体が一回り小さく、その代わり足腰が発達し、走るのが早くなっていった。
俊敏さである。
その為、ナーガは瞬発力と判断力にたけているが、長距離を飛ぶのはエール・ディーナ。
しかし、ナーガは年が上であることと、エール・ディーナはのんびりした性格の為、仲が良い。
ナーガはディルサナードとの間に子供をもうけたが、それぞれ親の名に恥じぬ乗獣として騎士団で働いている。
末っ子のまだ名前のない男の子のナムグと、フィアの乗獣のリアンの双子の弟ケイン・ジュエルのみ、主がいない。
ケインは、ナーガの子供の中で数少ない雄のナムグだが気が弱く、自信がない。
双子の姉のリアンが、背中を押しても隠れてしまうのである。
乗獣試験には合格しているのだが、主に合わず、今でも姉とその恋人のアルフリードの傍にいる。
「あれ? 3頭もいたの?」
「あ、皆、おいで」
声をかけるととことこと近づく。
しかし、小柄なアルフリードの後ろに座るナムグに、
「ちっちゃいナムグの後ろに、大きい子がいる……」
「えっと、手前の子が、僕の2頭目の乗獣のアルフリードだよ。金の森の一角で火事があって、助けたんだ。この子、翼が二対あって、保護したんだよ。で、こっちが、リアン。僕の乗獣。女の子。で、後ろの子が……ほら、来てきて、ケイン・ジュエル」
モジモジと、恥ずかしそうなナムグはおずおず出てくる。
その大きさに、
「えぇぇ~! ナーガより大きくない? それに、毛並みも立派! 骨格も! こんな綺麗なナムグっていないよ? 主は?」
「気が弱くて……見つかってないんだよね。それに自信がないみたいで……」
「えぇぇ~! こんなにすごい子って早々いないよ~! 私、ナムグいないよね? もしよかったら、私の乗獣になってくれない? 嫌なら良いけど」
問いかけるシエラに、目を丸くし、
『ぼ、僕は……あの、あの……兄さんや、姉さんたち程……で、ででで……出来が良くない子です……』
「ナーガやディルサナードが言ったの? 兄弟とか?」
『いいえ!』
ぶんぶんと首を振る。
『父も母も兄弟も……言いません。一番小さい弟も『兄ちゃん。ちゃんと見えてないんだよ~!』って、前が見えてないのか……』
シエラは思う……真面目すぎる。
「じゃぁ、出来は悪くないじゃない。兄弟や両親の言うことは間違いないよ。じゃぁ、聞くよ? 私の乗獣になってくれる?」
『……ぼ、僕で良いですか? が、頑張っても……兄さんたちに追い付けなくて……情けなくてウジウジして、リアンは『考えすぎよ』って言ってくれるけど……もっと頑張らないとって……』
「頑張らないとって、乗獣試験に合格してる時点で、普通はすごいんだよ?」
『でも、兄弟は皆持ってます……』
「だから、それが普通じゃないの!」
呆れると言うよりも、不憫になる。
どれだけ、劣等感にさいなまれてきたのだろう……。
「どれだけ試験が厳しいか、クリアした時点で自分を誉めなさい。それに、それ以上頑張ろうって思える自分を誉めなさい。よく頑張った。良い子だよ。君は」
背伸びをして鼻を撫でると、緊張したようにそれでも必死に答える。
『……ぼ、僕、貴方のお家に行きます。そ、それで、一杯貴方と空を飛びたいです……良いですか?』
「もちろん! よろしくね。私はシエラシール。シエラで良いよ?」
『はい!シエラ……よろしくお願いします』
フィアは呆気に取られ、そして、負けたー!と思った。
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