言葉を探そう

刹那玻璃

文字の大きさ
40 / 40
花言葉と失った恋

オレンジリリーと私はアザミ

しおりを挟む
『タンポポとサクラソウ』のリアルな話。
化粧品を買わせる為にドライブに誘う元同僚と、騙された私。
気持ちを利用され、心もズタズタになった自分が、ずっと隠していたことを告げる。
そして……

*******

 久しぶりに隣の市のマヤちゃんが電話をくれた。
 家族関係のことで悩んでいるのと、前の会社の友人だったので、他の人たちに声をかけて、カラオケに行こうと誘ってくれたのだった。

 前の会社といっても、ずいぶん経つ。
 人が苦手と言うか緊張する方だった私でも、皆、ほとんどの人が気さくで優しく、声をかけてくれ、仕事の時は厳しくても休憩時間では甘党の部長はドーナツを人数分の3倍は購入してきて、皆で、

「部長~太りますよ~」
「仕事してカロリー消費したけん大丈夫!」

 と笑った日を思い出す。
 いくつか転職した中で、一番いい環境で働かせてもらった。
 友人も多かった。
 電話をくれたマヤちゃんも結婚したし、今でも何人か連絡しているし、仲の良かった先輩も子供がいる。
 その時、

「あ、そうだ。せつさん」

 友人のマヤちゃんは実は10歳以上年下。
 でも、私よりも会社に在籍していたのは半年は早い。
 私はちゃん付けだが、彼女はさん付け。

「最近、三木さん(仮名)に会いました?」
「あっ……」
「せつさん、前に三木さんとドライブに行ったって聞いていたので……それから年は経ったけど、会ってるかと思って……」

 息を飲んだ。



 三木さんは当時の先輩の一人で、声フェチの私があまりの甘い声に腰が砕けた2人のうちの一人。
 もう一人の納谷さん(仮名)は、ひょうひょうとした印象だが、説明する声が温かく癒される声で、男性恐怖症と言われていた私によくジョークや、ツッコミどころがつかめないボケをかましてくれ、

「納谷さん……えっと、もしかして、こう言いたいとか?」
「あ、そうそう。せつさんはぼくのボケをよく分かるね~ありがとう」

 少しかすれた感じだがふわふわした柔らかい声に笑った。
 私も、周囲からずれたところもあるので、時々二人で話が脱線し、突っ込んでくれたのがマヤちゃんだった。

「もう、納谷さんもせつさんも変にボケてるから、みんな突っ込めませんよ?」
「いやぁ……せつさん、ぼくより詳しいよ~」
「いえいえ、私のネタに絡んでくれてありがとうございます」

 と楽しかった。
 あと二人仲良しの人は、一人がNPOの関係で再会した大西先輩とメールと電話で時々やり取りする古賀さん。
 大西先輩は、悪い人じゃないけれど、口癖が、

「うーん……そうだよね……」

 で、決断しない人。
 人にバトンを渡して、のんきにするので、完璧主義者の私はイライラした。
 でも、私の苦手な機械系に詳しく、タッチタイピングはこちらが上でも、知識の多さで仕事が早かった。

 それよりももっと早いのが古賀さん。
 古賀さんの方が年上だが、不思議な経歴を持つ人で、プロのマジシャンで、当時流行っていたメイド喫茶に入り浸り萌え萌えしていた。
 それに、似てると思ったのは、財布の中のカード。
 ポイントカードの山が捨てられず、その上割引クーポンを使ってケチる。
 同類だと思ったのだがさらに、知識量が半端なく、その上カラオケでは替え歌を歌って場を盛り上げたり、本物のマジックを披露する器用な人である。
 それに、セクシーボイスというよりも聴き心地のいい穏やかな声に、聞き上手でもあって一生友人でいて欲しい人である。

 大西先輩とは電話交換をしているし、今はやめているがNPOの関係から話を聞く。
 古賀さんともメル友。
 しかし……。

 なんとか声を落ち着かせ、マヤちゃんに告げる。

「実はね、ドライブで海岸に行ったの。三木さんの友人が海岸の一角で人前式をするからって」
「へぇ!ドライブですか!それからは?そのドライブからおつきあい?」
「ううん。そのドライブは、家から会場の海岸までどれくらいかかるかだったの。持ち込むものがあるからって下見。その次は、当時今度する仕事の上司にあたる人の家に行ってみようって」
「えぇぇ~!せつさん、恋人として紹介?」

 過去のかさぶたを軽く話すのは結構痛い。
 でも、

「ううん。当時三木さん始めるのは、化粧品の紹介販売で、どれだけその商品がいいか、試してみようって洗顔と保湿を試させられて、買わされた」
「えっ?」

 電話の向こうで絶句する。

「そして美顔器も。総額20万位やったかなぁ……。つまり四回くらい、高級住宅地に車で連れていかれ、その家は大きくて新築同然。若い奥さんに可愛い男の子がいてね?無邪気に遊んでいるの。そこで素敵なリビングに通されてお茶を出されて……でも延々と化粧品の説明。基礎化粧品を試させられ、カードで買わされるの。そして最後に、『次からこの家に自分で来て注文するんだよ?奥さんに頼んでおくからね?』って言われた……」

 涙が溢れる。
 前に書いた『タンポポとサクラソウ』は私の実話だった。
 苦しくていまだに血があふれる。

「あぁ、あの人は、皆には優しい同僚だったのに、私のことは同僚とも思ってくれなかったんだって……それに、もう、私は恋も結婚もしない……心が壊れて死んでしまえばいいって……思った……」

 電話の向こうのマヤちゃんは悪くない。

 でも、ようやく、あの男が……三木さんが憎い、大嫌いだと言えた……。
 仕事ができる人で、知恵が回って、その上カラオケも上手くて声が大好き……でも、自分の利益のためなら、心を許した元同僚を自分の金づるに使うのだと思った。
 卑怯だと思った……。
 きっとあの人は、私がここで憎いと……大嫌いだと言っていても、何も思わないだろう。
 でも、いつかは、自分のしたことのツケが返る時が来る。
 その時に、私が、

「ザマァ見ろ!」

 と笑っているのではなくて、

「もう忘れよう……楽しいことを考えるんだ」

 と思えると心も癒せるのではないか……。
 でもただ、自分の心を利用された自分が一番憎いと思うのは……永遠に、死ぬまで墓に入れるかは不明だが、持って行くだろう。
 自分が甘いのだと……愚かなのだと……だからもう誰も信用したくない、憎みたいと思い続けて苦しみ続けるのが、一番愚かな私への、三木さんへの復讐なのだ。



「三木さん……私の人生にとどめを刺したのは、貴方ですよ。私の破滅した最後の引き金を引いたのは、あの化粧品です。私は化粧は嫌い……心の醜さは隠せないから……」




………………………


オレンジリリーの花言葉……hatred(憎悪)

アザミ……「independence(独立)」「nobility of character(人格の高潔さ)」「austerity(厳格)」「misanthropy(人間嫌い)」「報復」「触らないで」

黄色のカーネーション……「You have disappointed me(あなたには失望しました)」「rejection(拒絶、拒否)」「disdain(軽蔑)」

です。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

【完結】呼吸の狭間で、君に触れた

月森優月
恋愛
 藤原美羽は進学校に通う高校一年生。今まで「優等生」としてそつなく何でもこなしてきたが、高校に入ってから色々なことが上手くいかなくなり、パニック障害と適応障害を発症してしまう。「普通」を必死に装いながらも、段々彼女のおかしさに気付くクラスメイトが増えていく。  ある日電車の中で発作を起こし、動けなくなってしまった美羽を助けたのは、通信制高校に通う少年、柏木悠真だった。彼は自由な校風の中自分のペースで生きていることを知る。  そして彼にも、普通に生きられないハンデを密かに抱えていた。  悠真の言葉や存在が、少しずつ美羽を変えていく。 「壊れたままでも、生きていけるのかもしれない」 そう思えるようになったとき、美羽は初めて自分の本当の気持ちを伝えたいと思うようになった。 これは、「普通」になれなかった二人が、壊れたままでも共に歩んでいく物語。

皇宮女官小蘭(シャオラン)は溺愛され過ぎて頭を抱えているようです!?

akechi
恋愛
建国して三百年の歴史がある陽蘭(ヤンラン)国。 今年16歳になる小蘭(シャオラン)はとある目的の為、皇宮の女官になる事を決めた。 家族に置き手紙を残して、いざ魑魅魍魎の世界へ足を踏み入れた。 だが、この小蘭という少女には信じられない秘密が隠されていた!?

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

25cmのシンデレラ

野守
恋愛
デパートに靴を買いに来た梨代は、自分の足に合う25センチのサイズが無くて落ち込んでいた。そこで偶然起こった暴漢騒ぎ。とっさに靴を投げて助けた男性は、まさに梨代が買おうとしていたブランドのメーカー「篠塚製靴」に勤める篠塚だった。しかも篠塚グループと呼ばれる現代財閥の御曹司だとか。 後日お礼として非売品の靴を届けに来た篠塚は、梨代にとある仕事の依頼を持ちかけて……。 御曹司が庶民を体験⁉ 王子様の「逆」シンデレラスト―リーが始まった! と思いきや、事態はあらぬ方向に。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

処理中です...