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あなたにとっての幸せのくつ
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トントントンッとかかと部分に留め具を打つ音が店に響く。そんなせいなの体から虹の光が出て綿毛のように丸くなり、ふわふわと作りかけの革ぐつのところにまで飛んでいく。そして光は作りかけの革ぐつに染みこんだ。作りかけの革ぐつはシャボン玉の表面のように虹色に染まる。せいなは虹色の光、魔力をこめながら革ぐつを作り続ける。ミシンや接着剤を使ってくつ本体と、底やかかとをとりつける。そして磨き上げるとミルクチョコレートのようにつややかな茶色になった。宝石のように美しい真っ赤なだ円のガラスにはリボンがついている。そのかざりを革ぐつにつける。ふわりと浮いていたえり首まであるせいなの茶色い髪は元にもどり、虹色の光は深呼吸するようにゆっくりと静かに革ぐつにすべて吸いこまれて消えた。せいなは満面の笑みを浮かべた。
「できたっ。これがわたしの……わたしが作った魔法のくつなんだっ」
せいなは完成した革ぐつを抱きしめた。
魔女は大きく三つに分かれる。
摘んだり育てた薬草で薬を作る薬の魔女。
魔力をこめてものを作り、特別な魔法のアイテムにする、ものを作る魔女。
いろんなところを旅して人々を助ける旅の魔女。
せいなはものを作る魔女として修業を重ね、今日初めて作りながら魔力をこめることに成功した。
ものを作る魔女の修業にはいくつかできるようにならなければいけないことがある。一つ目はものを作れるようになること。これができなければ話にならない。
うまく作ることができるようになったら、今度は魔力のこめ方を覚える。魔力は誰かのために願う力だ。その願いを魔力に変えて作ったものに注ぐ練習をする。これらができるようになって初めてものを作りながら魔力をこめる練習ができるようになる。これまでせいなは何度も失敗していたが、今日初めてものを作りながら魔力をこめることに成功した。
「師匠、師匠。できましたっ」
せいなは側で見守っていた師匠に嬉々として報告した。師匠は首を縦に振った。
「魔力も安定していたわ。くつを見せてちょうだい」
せいなは革ぐつを師匠に渡した。師匠はいろんな角度から革ぐつをチェックしていた。せいなはどきどきしながら師匠が口を開くのを待っていた。
「いいできね」
「やったあ」
せいなはその場で跳びはねた。師匠から革ぐつを受けとる。
「そのくつにはどんな効果があるの?」
師匠に尋ねられたせいなは、はきはきと答えた。
「願ったとおりの人生を歩めるようにしました。幸せになりたいって思っている人が少しでもその通りになればいいと思って」
せいなの明るい表情とは反対に師匠はしぶい顔をしていた。
「あなたの思いはすばらしいと思うわ。たしかにその通りよ。でもその効果じゃもしもだれかに復しゅうしたい、痛い目に合わせたいっていうよくない気持ちが強かったとき、そのくつをはいている人は、苦しい人生を歩んでしまうことになるわ」
「あ……」
思わぬ考えにさっきまでのうれしかった気持ちがしぼんでいくのが、せいなは自分でもわかった。
「だからそのくつはほかの人には渡さないほうがいいわね」
「はい……」
「そんなに落ちこまないの。みんなが幸せになってほしいって気持ちはとても大切よ。わすれないでね。
もっとはっきりした願いだといいでしょうね。探しているものが見つかるとか、身の危険から守るとか。幸せは一種類じゃないわ」
「はい」
その日の修業はこれで終わった。
「よし、これからもがんばるぞ。みんなが幸せになるくつを作るんだから」
せいなは決意を新たに、自分の部屋で次に作るくつのデザインを考えはじめた。
それから五年後、十六歳になったせいなは無事独り立ちをして師匠の元をはなれた。今は緑針の森というところに家や工房でもある店を構えている。緑針の森はせいなも住んでいた師匠の家からほうきで空を飛んでも一週間はかかるところだ。
緑針の森は針葉樹がたくさん生えていてその様子がまるで緑色の針のようだからこの名がついたそうだ。せいなは一年を通してずっと青々としげらせているこの森が好きだった。近くにはうのつ村という猟師の村があり革も手に入りやすいことも決め手の一つだった。
今日は革を仕入れるためにうのつ村にやってきた。
「せいなちゃん、今日はどんな革がいいかね?」
猟師のおじいさんは縁側に動物の革をならべてくれた。熊、イノシシ、鹿などの猟でとったものから馬、牛など家畜のものまである。それはこの村のほとんどの人が半自給自足生活を送っているからできるのだろう、とせいなは思っている。
「牛と馬、それから鹿……イノシシの革もいただこうかな」
「まいど。こいつらもせいなちゃんにくつにしてもらったら、化けて出るなんてこともないだろうよ。いつもありがとうな」
「そんな。こちらこそありがとうございます。おじさんにもお礼を言っておいてください」
おじさんとは、目の前にいるおじいさんの息子さんのことだ。おじいさんが猟に出て息子であるおじさんが動物の毛皮をなめして革にしているのだ。
「おじさんの革はとてもあつかいやすくて質もよくていいくつができるんです」
「はっはっは。あいつが聞いたらよろこぶよ。……あ、そうだっ」
おじいさんはなにかを思い出したようで「ちょっと待っててな」と言って家の中に引っこんだ。そして白い紙に包んだなにかを持ってきてすぐにもどってきた。
「これ、イノシシの肉。よかったら」
「わあ、ありがとうございます。でもいいんですか?」
「ああ。食べきれなくってね。保存食にするにも、ちと多くてね。受けとってくれるとありがたい」
「ありがとうございますっ。今度無料でくつのお手入れしますね」
「ああ、ありがとう」
せいなは革とイノシシの肉を持って家路についた。帰り道を歩いているとすれちがうおじいさんやおばあさんから「せいなちゃん、こんにちは」「仕入れかい?」などと声をかけられた。この村にはおじいさんやおばあさんが多い。そのためか孫くらいの年であるせいなに、みんな親切にしてくれた。
せいなの家は緑針の森の中でも中心に位置するところにある。ぽつんと一軒だけある、木造の平屋がそれだ。せいなは家の中に入った。入ってすぐにお店になっていて革ぐつが男女問わずならんでいる。部屋は革独特のにおいで満ちている。せいなはまず一番涼しいリビングにもらったイノシシの肉を置きに行った。そして店頭にもどってきて、カウンターの内側にある材料が入っている棚に、仕入れた革をしまう。そのときガタタンッと大きな音がした。店頭より奥の部屋からだ。
「なんだろう。なにか落ちたのかな?」
せいなはまずリビングをチェックした。とくに落ちたりかたむいているものもない。次にリビングの奥にある寝室のドアノブをにぎった。寝室に入るとそこには一人の女性がいた。茶色い髪は肩よりも短く、服装はシンプルでけしょうっけもなかった。年齢は四、五さいほど上だろうか。
「だ、だれっ?」
女性はせいなをつき飛ばして寝室を出た。せいなはしりもちをついてしまった。
「ちょ、ちょっと待ちなさいっ」
せいなは立ち上がると女性を追いかけた。しかし木々の多い緑針の森ではあっという間に姿を見失ってしまった。
「まさかさっきの、どろぼう? なにかなくなってるものはないかな?」
せいなは最初に店頭を調べた。商品の革ぐつはどれも無事だった。次に寝室を調べた。するとベッドの横に置いている小さなたなの上にあった、初めて魔力をこめたときの革ぐつがなくなっていることに気がついた。
「うそっ、ない」
せいなはベッドの下やたなの中など部屋のすみからすみまで探した。しかしかげも形も見当たらなかった。
「もしかしてさっきのどろぼうが持っていっちゃった?」
せいなは五年前、師匠に言われたことを思い出した。
「あのくつはその人が望んだ人生を歩むようにできてる。もしもさっきのどろぼうが、だれかに仕返ししたいって思ってたら……だれかの不幸を願っていたらそのとおりになっちゃう。早く取り返さなくっちゃ。……でもどうやって?」
せいなはうでを組んで考えた。
「あの人、きっと村の人じゃない。だって知らない顔だったもん。それにしてもなんでわたしの家に入ってきたんだろう? ……いや、今はわからないことを考えててもしょうがない。とにかくあのくつをとり返す方法を考えなくちゃ」
せいなはその場で立ったまま考えた。
「そうだっ。探しているものが必ず見つかるくつを作ればいいんだ。そうとなったら急がなくちゃ」
せいなは外に出てドアにかけている『開店中』という木製の小さな看板をひっくり返して『閉店。またのおこしをお待ちしています』という面を表にした。そして店の片すみにある作業場に腰を下ろして、自分のくつのサイズにあたる木の型を机の上に置いた。次に材料が入っているたなを開いた。
「長いきょりを歩くかもしれないから、しっかりした革がいい。それから足になじみやすいもの……。よし、鹿の革を使おう」
茶色のその革やひもなどを手にとり作業場に座る。道具を手にとり作業をはじめた。
まずは革の中でも一番強いおしりの部分をくつのパーツごとに切る。それらをそばにあるミシンでぬいつける。せいなの体から虹色の光、魔力がにじみ出る。ミシンを動かすとガタタンッガタタンッとふつうより強そうな音がした。ぬうごとに魔力が革に吸いこまれる。ぬい終わると、なかじきを留め具で固定した。ずれることなくしっかりと打ちこむ。底とかかとをつける。その後もう一度ミシンでぬってやすりをかけ、くつをみがく。
(どうか、探しものが必ず見つかりますように)
みがいているあいだも作っているくつに魔力をこめ続ける。ひもをとおして完成させた。くつは魔力をすいとり虹色に光っている。その光は息をするようなリズムで消えていった。
「よし、完成っ」
せいなはさっそくできたくつをはいてみた。きゅうくつではないか、歩きにくくはないか、くつずれしそうなところなどを確かめた。部屋の中をぐるりと歩く。
「うんうん、とくに変えたほうがいいところはなさそう。はき心地もばっちり。このくつはそうだな……探しのくつって名前にしよう」
せいなは窓の外を見た。空はオレンジジュースのような色に染まっていた。
「夜に出ていくのはかしこくないわね。明日朝早くから探しに行こう」
せいなは探しのくつを脱いでふつうのくつにはき替えて、夕食の準備をした。おじいさんからもらったイノシシの肉をトマトといっしょにセロリやにんじん、じゃがいもなどを入れてシチューにした。おじいさんはいい肉をくれたのか、イノシシ特有のけものくさいにおいはなかった。食事を終えるとせいなは出かける準備をはじめた。どれくらいでぬすまれたくつが見つかるかわからないので、保存のきく食料とお金をしっかり持って行くことにした。明るい茶色の革で作ったカバンにそれらと持ち運びできるソーイングセット、きず薬を入れた。シチューの残りは持ち運び用の金属製のポットに注いだ。ポットもあら熱がとれるとカバンに入れた。準備を終えるとせいなはベッドに横になり、夢の国へと旅立った。
次の日、朝日が昇るとすぐにせいなは店を出ることにした。ドアには『しばらく休業いたします』と書いた紙をはった。
「探しのくつ探しのくつ、わたしがはじめて魔力をこめたくつを見つけだして」
足元にむかってそう言うと勝手に足が動き出した。探しのくつが動き出したのだ。
「このまま進む方向に行けばきっとわたしのくつがあるはず」
探しのくつは北を目指していた。うのつ村は緑針の森から西にあるので、やはりどろぼうは村の人ではないようだ。
「それにしても町の人なのに、なんでわざわざわたしの家にどろぼうに入ったんだろう? そう考えるときっとたまたまじゃない。わたしの家だってわかってどろぼうに入ったんだ。……もしかしてはじめからあのくつが目的だった? でもあのくつのことは師匠とわたししか知らないし。いったいどこで知ったの?」
せいなは考えた。しかし心当たりはまったくなかった。
「とにかく今は急がなくちゃ。どろぼうがだれかに仕返ししたいとかって考えていなかったらいいんだけど……」
そう思いながらもむなさわぎがしていた。せいなは足を速めた。
ときどき休みながらも四日歩くと一番近い町、ナヌタについた。いつもならほうきですぐのきょりだが、意外に遠いことを実感した。この町は元々山だったところにお店や家などを建てたため、あちこちに木が生えていて坂道も多い。たくさん歩いたためかおなかがすいてしまった。広場らしきところでサンドウィッチを買って食べ終わると探しのくつが導くまま歩いた。ずっと坂道なのでだんだんつかれてきた。
「どっかのお店で休もうかなあ。お店の人にどろぼうのことも聞いてみて……」
そのとき、道のわきにあるベンチにひとりの女性がすわっているのが目に入った。ベンチは水平になるようにレンガで高さをそろえていた。その女性は頭をかかえていた。
「どうしたんだろう?」
せいなは女性に近づいた。探しのくつはせいなを別の方向に導こうとしていたが、せいなはそれに反抗した。それほど強い力ではないので女性の元に近づくのはかんたんだった。
「あの、どうしたんですか? 体調でも悪いんですか?」
そう声をかけると女性は顔を上げた。年は二十代くらいでどろぼうと同じくらいだろう。けしょうはまつげまでしっかりしているのに、服装は正直地味でちぐはぐのように見えた。
「なによ、あんた」
「わたしはものを作る魔女のせいなです。緑針の森からきました」
「あんななにもないとこに住んでんの? もの好きね」
「あの、頭でも痛いんですか? ずっと頭かかえてるから」
「まあ、ある意味頭が痛いっちゃ痛いわよ。ほんとさんざん」
女性は大きくため息をついた。せいなは女性のとなりにすわった。
「あの、なにかあったんなら話してみてくれませんか? 二人ならなにかいい案が浮かぶかもしれませんし」
女性は三秒ほどせいなを見た。そして話しはじめた。五さい以上年下のせいなに話すくらいだから、よっぽど困っているのだろう。
「うちにずっとどろぼうが入ってるのよ」
「え、どろぼう?」
せいなは驚いた。女性は話を続ける。
「といってもぬすむわけじゃない。でもね、こわすのよ」
「こわすってなにをですか?」
「アタシの服やアクセサリー、くつ、身に着けるようなもの全部よ。何着何足買ってもだめ。絶対こわされるの。見張ったりかくしたりしてもだめ。いっしゅんのすきをついたり、見つけだしてこわすのよ。それで代わりにこんな地味な服が置いてあるのよ。ほんと最悪」
「あの、なんで地味な服が置かれているんですか?」
「そんなのこっちが知りたいわよっ。今までばっちりきめてきたのに、急に地味になったせいでこそこそ言われるし。なんだっていうのよっ」
女性はいら立たしそうにつめをかんだ。形の整ったつめがぎざぎざになる。
「警察も見回ってるけど全然役に立たないし。どんだけ服やアクセサリー買ったと思ってんのよ」
女性ははいている真新しいスニーカーを脱いで地面にたたきつけた。
「心当たりとかはないんですか?」
「ないわよそんなのっ。ああもう、考えただけで腹が立つ」
女性は険しい顔をしていた。
「これまでうまくやってきたのよ。なめられないように見た目もちゃんとして、そのおかげで上司にも気に入られてたのに、今じゃ笑いのネタになってる。じょうだんじゃないわ」
そう話す女性はどことなく必死に見えた。
「あの……見た目で気に入ってもらったんですか? ほんとうに笑われてるんですか?」
女性はぎろりとせいなをにらんだ。せいなは思わず体がのけぞった。
「子どものあんたにはわからないかもしれなけどね、見た目は重要なのよ。笑われないためにはしっかりしたかっこうして、自分は強いんだってアピールしなくちゃいけないの。じゃないとだれにも気に入ってもらえないし、気に入ってもらえなかったらいざってとき後ろだてがない」
女性はぎりっと歯ぎしりをした。
「見下されるし陰口もたたかれる。最悪の人生が待ってんのよ」
「……そんな気持ちでおしゃれするってつらくないですか?」
「は?」
女性はもう一度せいなをにらみつけた。せいなは今度はのけぞったりしなかった。
「おしゃれってもっと楽しくてわくわくするものだと思います」
「アタシだってそう思ってた。でも実際はちがった。アタシは……自分を強く見せるために、笑われないためにやってきた。もうずっと」
女性はため息をついた。
「おしゃれにしない人を笑ったこともあったし、見下したりもした。だってそれって笑われてもしかたないじゃない」
「そんなことありません。おしゃれじゃないことに興味がある人や、そんなお金がない人だっているはずです。あなたが興味あるからって、興味ない人ややっていない人を笑っていい理由にはならないと思います」
女性は口を開きかけた。しかしそのとき、別のところを見た。
「どうしたんですか?」
「あそこ、アタシの家なんだけど中にだれかいるっ」
女性は一軒の家を小さな家を指差した。カーテンにぼんやりと人かげが写りゆれた。
「いっしょに行きましょう」
せいながそう言うと女性はうなずいた。せいなは女性の家に進みながらあることに気がついた。
(なんで探しのくつが抵抗してないの? 探しものとは別の方向に行ってるのに。まさか家の中にいるのって……)
女性は静かにげんかんのかぎを開けた。音を立てずにドアを開ける。せいなが先頭に立つ。
「人がいたところは?」
「リビングよ」
せいなと女性は小声で話をした。女性の案内でリビングを抜け寝室の前に着いた。ドアに耳を当てると物音が聞こえた。せいなはドアノブをにぎった。女性と顔を合わせてほぼ同時にうなずく。そしてせいなはドアを勢いよく開けた。そこには茶色い髪の女性がいた。右手にははさみ、左手には洋服を持っていて、足元には切り刻まれた布が散らばっていた。その人はせいなのくつをはいている。かみの長さは短くなっているが、あのときのどろぼうだ。
「あ、あんたねっ。アタシの服やアクセサリーむちゃくちゃにしたの」
どろぼうは「ちっ」と舌打ちをすると、せいなをつき飛ばしてそのまま出て行った。
「ちょっと、待ちなさいよお!」
「いてて。わたし、追いかけます」
せいなは立ち上がって茶髪のどろぼうを追いかけた。どろぼうは右に左にと道を曲がる。坂道を上ったり下ったりしていると、せいなと茶髪のどろぼうのきょりはどんどんはなれていった。
「ま、まてえ……」
ついにせいなはその場で立ち止まってしまった。ぜえぜえと肩で息をする。そのとき前から自転車に乗っている男の人がやってきていた。
「そうだっ」
せいなは自転車の進行方向をさえぎるように両手を広げて立ちふさがった。
「とまってーっ」
「うわっ」
自転車を運転していた男の人は急ブレーキをかけた。キーッと高い音がした。なんとかせいなに当たることなく止まった。
「あっぶないなあっ」
男の人がどなりかけたているそのとき、せいなは自転車の前のかごをつかみながら男の人にたのみこんだ。
「すみません、この自転車貸してくださいっ」
「は?」
「わたしの家に入ったどろぼうがいたんですっ。ぬすまれたものをとり返したいんです」
すると男の人は「なんだって」と言ったあと自転車を降りた。
「いいぜ、貸してやる。ポロポロってカフェにいるから返しに来てくれ」
「ありがとうございます」
せいなは素早く頭を下げて自転車に乗った。大きかったので座らず立ちこぎをすることにした。
どろぼうはとても小さくなっていたが、かろうじて姿が見えていた。せいなは自転車のペダルをこいだ。
「待ちなさーいっ」
ふり返ったどろぼうは驚いた顔をしたが、すぐに前をむいて走り続けた。せいなは力いっぱいこいだ。どろぼうとのきょりが縮まる。縮まり縮まり、そして追い越した。せいなは自転車のブレーキをかけて、どろぼうの前に立ちふさがった。どろぼうは立ち止まった。
「どこでそのくつのことを聞いたのか知らないけれど、返してちょうだい。そのくつはわたしのものなんだから」
どろぼうは来た方向に逃げ出そうとした。せいなは自転車を手放し、どろぼうに飛びかかった。どろぼうは抵抗したが、せいなは負けなかった。
「とにかくくつは返してもらうんだからっ」
せいなはばたばたしている足からくつをつかんだ。しかしどろぼうも脱ぎたくないらしく脱げないようにしていた。それでも指を入れてすき間を作ってなんとか右足のくつを脱がせた。同じようにして左足のくつもとりもどした。するとどろぼうは足を下ろした。するとぐすっぐすっとすすり泣きが聞こえた。
「ようやく……ようやく仕返しできると思ったのに」
せいなはくつを持ったままどろぼうから離れた。ひざをついてどろぼうに尋ねた。
「あの、なんでわたしのくつをぬすんだんですか?」
どろぼうはうつぶせで泣くだけで答えなかった。せいなはそんなどろぼうに言った。
「このくつには、持ち主が願った人生を歩める魔法がかかっています。幸せになりたい、そう願えば明るい人生を歩むことができます。けれどだれかに復しゅうしたいと思えばその通りになってしまうんです。だから……仕返しを願っているあなたには使わせるわけにはいきません」
せいながそう言うとどろぼうは拳を地面にたたきつけながら大きな声でうったえた。
「じゃああたしはどうすればいいのよっ。ずっとずっと苦しい思いをしてきて、それをどうにかしたくて。その方法が仕返しだってわかって……。そのくつがあったからできたのなら、なかったらもう仕返しができないじゃない」
(この人、つらいことがあったのかな。だったら……きっとわたしの力が役に立つはず。みんな幸せになってほしい。それがわたしのねがいだから)
せいなはどろぼうに声をかけた。
「あの……もしよかったらお話しませんか?」
「……え?」
どろぼうはゆっくり顔を上げた。ひたいには砂がついていた。せいなはその砂をそっとはらった。
「わたしはどんな人にも幸せになってほしいんです。あなたにも幸せになってほしい。だから、話してくれませんか?」
せいなはどろぼうに手を差しのべた。どろぼうは上半身を起き上がらせてせいなの手をとった。
せいなは宿でどろぼうの話を聞くことにした。とちゅう男の人が言っていたポロポロというカフェに行って自転車を返した。ポロポロの場所はどろぼうが知っていた。この街に住んでいるらしい。
「あたしの名前はのい。その、くつをぬすんでごめんなさい」
宿のせいなが泊まる部屋に着くとどろぼう、のいはそう言った。
「なんでわたしのくつをぬすんだんですか?」
せいなは改めて尋ねた。するとのいさんは静かに語ってくれた。
「あたし、小学生から高校生のときまでずっと女子三人のグループにいじめられていたの。十二年間ずっと。
内容はほかの人からすれば大したことがないのかもしれない。本人たちはただからかっていただけなのかもしれない。それでも……それでもあたしは傷ついた。苦しかった。根暗だとか、服が似合わないとか、ブスだなんて言われたくなかった」
のいさんはなみだをこぼした。せいなはハンカチを渡した。のいさんは「ありがとう」と言いながらハンカチを受けとり、なみだを拭いた。
「本当は好きな服やかわいいかっこうをしたかった。でもなにか言われるんじゃないかってこわくって。行動すれば笑われるかもしれないって思うとなにもできなかった。やりたかったこともたくさんあった。……毎日がこわくてしかたなかった。親には言えなかった。家ではせめてふだんのあたしでいたかったから。気がつかれないように必死にかくした」
なみだを拭いたあとののいさんの目からなみだがにじんだ。
「このあいだたまたま同級生に会って、あの三人が好きなように生活しているって聞いて、もう、たまらなくなったの。あたしは未だにこわくて地味な服しか着られないし、おしゃれもできないのに。だから……復しゅうしようと思ったの。
緑針の森にものを作る魔女はいるって聞いて、なにか復しゅうに使える道具がないかって……」
「それでくつを……。でもなんでこのくつだったんですか? くつだけなら店頭のほうがたくさんあったのに」
せいなの問いにのいさんは気まずそうに答えた。
「どんな効果があるのかわからなくて。でもあなたの部屋に入ったとき、そのくつが目に入って。すごくかわいいって、はいてみたいって思ったの」
せいなはのいさんのその気持ちはとてもうれしかった。あのくつはせいながはいてみたいと思ったくつをデザインしたものだったからだ。
「そこでわたしが帰ってきちゃった、ってことですね?」
「ええ。とっさにくつを持ってきてしまって。ほんとうにごめんなさい」
のいさんはせいなに頭を下げた。そんなのいさんにせいなは言った。
「返ってきたならそれでいいんです。
さっきもちらりと言ったんですけれど、このくつは持ち主の願いどおりの人生を歩めるようにしてくれます。だから復しゅうを願えば復しゅうを行なうことはできます。でも心が黒くぬりつぶされていくのを止める力はありません。だからわたしはこのくつを売っていないんです。初めて魔力をこめながら作ったくつだったからどうしても捨てられなかったんです」
せいなはくつをとり出して見つめた。ガラスのかざりにせいなの顔がさかさまに写る。
「だからのいさんが服やものをこわしたりできたのは、このくつのせいなんです。それがこのくつの魔法だから。……それにしてもなんで服とかを破いたり壊すことが復しゅうになるんですか?」
のいはハンカチをにぎりしめて教えてくれた。
「あの子はね、ほんとうはとってもおくびょうなの。強いだれかの側にいなくちゃなにも言えない、服やアクセサリーっていうよろいで自分をうんと強く見せないと、なにもできないの。だれかになにか言われるのがとてもこわいの。それがなんとなくわかったのは中学生のとき。だから……仕事や休みの日に着ていく服を全部破いて、あの子がきらいな地味な服を置いていったの。服がなかったらそれを着ていくしかなくなるでしょう?」
せいなは目の前にいるのいさんだけでなく、ベンチに座っていた女性のこともかわいそうになってきた。
(おしゃれってもっと楽しいもののはずなのに。だれかを見下したりする道具じゃないのに。それにのいさんもずっとおしゃれしてみたいって思ってるのに、ずっと三人の人の言葉にしばられちゃってる。そんなの……苦しいよ)
せいなはのいさんの手をそっとにぎった。
「のいさん。わたしに任せてくれませんか?」
「え?」
「今すぐは難しいかもしれない。それでも必ずその苦しみから解放されるくつを、わたしに作らせてください」
せいなは真っ直ぐのいさんを見つめた。のいさんはせいなの言葉に目を丸くしたあと、なみだをにじませた。
「おねがいできるかしら? 苦しい思いをするのは……もういやなの」
のいさんはうつむいてそう言った。そのときなみだが一つぶ落ちた。
せいなとのいさんは次の日待ち合わせをして、いっしょに馬車に乗った。緑針の森にあるせいなの家でもある店にもどった。お店に入ったのいさんはめずらしそうに店内を見回していた。
「ここのくつ全部に魔法がかかっているの?」
「はい。よかったらじっくり見てください」
「い、いいの? それじゃあ……」
のいさんは「かわいいー……」や「この色すてき」などと言いながらくつを見て回った。そしてある一足のくつを指差してせいなに尋ねた。
「このくつにはどんな魔法がかかっているの?」
そのくつはぶどうのようなむらさき色でつま先が少しとがったくつだった。四角くカットされたガラスのかざりと、水しぶきのように大小さまざまなパールをぬいつけている。かかとのヒールは中指ほどの高さだ。
「それは実りのくつっていいます。そのくつには実り豊かな人生になる魔法がかかっています。楽しいこと、うれしいことがぶどうの実のようにたくさん恵まれるように。あ、ちなみになにか野菜やくだものを育てているなら、豊作になったりもしますよ」
せいなはにこりと笑った。のいさんは吸いこまれたかのように実りのくつを見つめていた。
のいさんが店内のすべてのくつを見終わってから作業が始まった。せいなは紙とペンを持ってのいさんに質問をし始めた。
「好きな色はなんですか? こういうくつをはきたいっていうのはありますか? こんなくつがあればいいのに、とか」
「茶色……ううん、ちがう。これは今まであたしが自分を守るために、傷つかないようにしてきた色ね。あたし、ほんとうは赤が好きなの。真っ赤できれいなくつをはきたいな」
「いいですねっ。似合うと思います」
せいなは正直に思ったことを言った。するとのいさんは驚いたような顔をして、なみだをにじませた。
「ずっと……ずっと地味って言われてきたの。『地味子は派手な色なんて身に着けるな』って言われたの。明るい色の服を着たりくつをはくと、必ずそう言われたの。それが……苦しかった」
せいなはのいさんにハンカチを差し出した。のいさんは「ありがとう」と言ってハンカチを受けとりなみだをふいた。
「ずっと苦しかったですよね。……もうだいじょうぶです。すてきなくつを作りますから。のいさんが幸せになれるくつを作りますから。
さっ、もっといろいろ話してください。かざりはどうしますか? いろいろあるんですよ」
せいなはたなから、くつにつけるかざりの見本をのいさんに見せた。迷ったあげくのいさんはまん丸の黄色のガラスのかざりと、とうめいなガラスのかけらのかざりを選んだ。
「次はくつの形を決めましょう。はいてみたいくつの形とかありますか?」
「つま先の丸いくつが好きなの。かわいくておひめさまみたいで」
「丸いくつかわいいですよねー。丸みはこれくらいのほうがいいですか?」
せいなは見本として見せているデザイン画を広げた。せいながのいさんに見せたのは、はばの広くて全体的に四角い印象をあたえるものだった。つま先の丸みが一番強く、大きくカーブをえがいている。
「ええ、これくらいがいいわ」
せいなは頭の中でデザインをえがいた。
「そうですね、その形のくつならかざりにベルトをつけて、その根元と周辺にガラスをつけるというのはどうでしょう? こういう感じで」
せいなはデザイン画の上にガラスのかざりを置いてみた。足の内側に黄色のガラスを、ベルトに沿うようにとうめいのガラスを並べると、のいさんは「すてきっ」と声を上げた。目をキラキラとさせていて、さっきまでとはまるで別人のようだった。
(でもきっとこっちの、のいさんが本当ののいさんなんだろうな)
せいなはそんな風に思った。
くつのデザインは着々と決まっていった。ベルトは太すぎず細すぎず、かかとは低め。パーティーに行くというよりは日々気持ちよくはきたいタイプのくつ。かかとの部分には花をイメージした模様を入れる。
「ざっとデザイン画を描いてみますね。ちょっとお待ちいただけますか?」
「ええ。もちろん」
せいなはその場でデザインを紙に起こした。その手の速さを見たのいさんの「おおー」という声が聞こえた。せいなは見た目だけを描いたかんたんなデザイン画を完成させると、のいさんに見せた。
「すごくかわいい! こんなくつはいてみたい」
「ふふふ、はけますよ。じゃあデザインはこういう感じでいいですか?」
「ええ、おねがい」
その後足のサイズや形を測ってから、せいなはのいさんに一カ月後にまた来てほしいと言ってこの日は帰ってもらった。のいさんは来たときよりも顔を上げているような気がした。
その日からせいなは作業に入った。まずはきちんとしたデザイン画を描き起こした。きちんと色をぬって細かい模様まで描きこんだ。
実際に作業に入ったのは次の日からだった。まずはのいさんの足の形の木型を作る。のいさんの足は少しはばが広い。そのために横はばはせまくしすぎないようにした。またふだんからはくくつということで、歩くしょうげきがひびかないように中じきをふかふかなものにすることにした。おひつじ座に住んでいるひつじの毛でできている。
せいなは革から必要なパーツを切りとった。つま先、三つに分けた足の甲の部分、かかとの側面、くつの底。余ったところでベルトを切り出した。革の種類は牛にした。厚みがありしっかりとしたくつを作ることができる。
「どうかのいさんの人生が、もう苦しみにとらわれることなく幸せに歩めますように」
せいなの願いは虹色の光に変わり、ふわふわと浮かび切りとった革の中にしみこんだ。シャボン玉のように美しい魔力は次々と革に吸いこまれる。
せいなの手はとまることなく動いていた。革同士をぬい合わせる。糸はとてもがんじょうな、おとひめグモの糸を選んだ。太くひっぱってもかんたんには切れない。
革をぬい合わせると、次は底二枚とかかとに使う板を切りとる。のいさんのくつをつくりはじめて一週間経っていた。せいなは指先に銀色の三角形のつつをはめた。これは魔法のカッターだ。魔力を流しこむことで小さく鋭い刃となって、切ることができる。
せいなは魔法のカッターで足のりんかくを描いた板を切った。きれいにやすりもかける。表面も側面もなめらかになった。指の下やかかとなど底に当たるところは少しへこましている。
「こんなにすべすべしたのがかくれちゃうんだもんなあ。でも木だけのくつって痛いもんね」
底になる板をくっつけるとぬった革と合わせて、固定する。コンッコンッコンッと留め具を金づちでたたく音が店にひびいた。
一枚の革は一か月近く経つと一足の真っ赤なくつとなっていた。デザイン画がそのままとび出してきたかのような出来に、せいなは満足していた。
「はあ、できたあ」
磨かれたくつはまっ赤なりんごのようだった。丸いつま先は少女のようだが、飾りやかかとのおかげでのいさんに似合いそうな、上品な仕上がりになった。
のいさんと出会ってちょうど一か月経ったその日、のいさんがくつをとりにやってきた。のいさんの雰囲気はずいぶん明るくなっていた。
「こんにちは」
「こんにちは、のいさん。
くつが完成しました。さっそくはいて感触を確かめてもらえませんか?」
せいなはのいさんにくつとくつべらを渡した。のいさんはベルベット生地の低いいすに腰かけて真っ赤なくつをはいた。せいなは奥から姿見を運んできてのいさんの前に置いた。のいさんの白のシャツと黒いスカートに、赤いくつはよく映えた。
「わあ。すてきです、のいさんっ」
せいなは思わず小さく拍手をした。ピアノの先生のようにゆうがだ。
「あ、ありがとう。なんだか派手すぎない?」
「そんなことないですよ。とってもお似合いです」
のいさんははにかんだ。そしてふとお店に目線の先を写した。せいなは首をかしげた。
「どうされました?」
のいさんはまっ赤なくつをはいたまま、別のくつを手にとってもどってきた。それは以前にのいさんが店にきたときに尋ねてきた、実りのくつだった。ぶどうの色のくつを丁寧に持ってのいさんはこう言った。
「このくつも下さいな」
実りのくつはのいさんの好みとはちがっているように思えた。先はとがっているほうだし、色もそれほど明るくない。
「このくつを見たとき、とってもすてきだと思ったの。とっても上品で特別な日にはきたい。そんな風に思ったの。ふしぎね、自分の好みの形じゃないのにはきたいって思ったの」
「もちろんですっ」
せいなはうれしくてたまらなかった。のいさんが新たな一歩をふみ出して、自分から変わろうとしているからだ。
(さっそく魔法の効果が出たのかな? それとものいさんの心が少しでも前を見てくれたのかな? どっちにしてもうれしいや)
せいなは自然と笑みを浮かべていた。
のいさんに確認するとくつをはいていて痛いところはないそうなので、とくに調整することなく渡すことができた。のいさんは赤いくつを「はいて帰るわ」とうれしそうに言った。
「痛いところが出てきたり、くつが痛んできたときはまたお持ちください」
「ええ。本当にありがとう。なんだか今までより心の底から笑えるの」
「ふふ。よかったです。どうか、のいさんの人生が幸せであふれますように」
「ありがとう」
のいさんはまっ赤なくつをはいて、古いくつと実りのくつが入った袋をその手に持って帰って行った。
「わたしのくつ、どうかのいさんの心を明るくして。彼女の人生を幸せで満ちあふれるようなものにして」
せいなは祈った。のいさんの背中が見えなくなって中に入ろうとしたとき、いつも革を仕入れるおじいさんがやってきた。
「せいなちゃーん、悪いんだがくつを修理してくれんか。底が、ほら」
そう言っておじいさんが見せてきたくつの右側の底がぺらんとはがれかけていた。
「まあ大変。すぐに直しますね。前に言ったとおり、イノシシのお肉いただいたんで、無料でしますね」
せいなはおじいさんを店の中に招いた。
その日の夜、せいなは庭でまきを組んだ。種火を組んだまきの中に投げこむと、あっという間に火が灯った。ぱちっぱちっとまきがはじける音をさせている中、せいなは初めて魔力をこめた、あのくつを持っていた。飾りは外されている。
「もうこんなことがあっちゃだめだ。わたしは、だれかが不幸になるくつを作りたいんじゃない。今までなかなか処分できなかったけれど、今回のことで決心がついた。……ありがとう、わたしのくつ。これからももっといろんな人が幸せになるくつを作るからね」
せいなはさみしさといっしょにくつを炎の中にくべた。チョコレート色のくつに火が燃え移り形が変わっていく。
「くつは処分するけど、かざりくらいはいいよね」
せいなはポケットの中から燃えているくつのかざりをとり出した。真っ赤なガラスに火のオレンジ色がやわらかく反射する。かざりをにぎりしめたまま、せいなはくつが灰になるまで見つめていた。
それからもせいなはたくさんのくつを作り、直し、いろんな人の笑顔を見た。
のいさんから、以前からやりたかったアクセサリーデザインの学校に通いはじめたこと、毎日が楽しくなってきたことを知らせる手紙が来たのはくつを渡した日から一年と半年経ってからだった。
「できたっ。これがわたしの……わたしが作った魔法のくつなんだっ」
せいなは完成した革ぐつを抱きしめた。
魔女は大きく三つに分かれる。
摘んだり育てた薬草で薬を作る薬の魔女。
魔力をこめてものを作り、特別な魔法のアイテムにする、ものを作る魔女。
いろんなところを旅して人々を助ける旅の魔女。
せいなはものを作る魔女として修業を重ね、今日初めて作りながら魔力をこめることに成功した。
ものを作る魔女の修業にはいくつかできるようにならなければいけないことがある。一つ目はものを作れるようになること。これができなければ話にならない。
うまく作ることができるようになったら、今度は魔力のこめ方を覚える。魔力は誰かのために願う力だ。その願いを魔力に変えて作ったものに注ぐ練習をする。これらができるようになって初めてものを作りながら魔力をこめる練習ができるようになる。これまでせいなは何度も失敗していたが、今日初めてものを作りながら魔力をこめることに成功した。
「師匠、師匠。できましたっ」
せいなは側で見守っていた師匠に嬉々として報告した。師匠は首を縦に振った。
「魔力も安定していたわ。くつを見せてちょうだい」
せいなは革ぐつを師匠に渡した。師匠はいろんな角度から革ぐつをチェックしていた。せいなはどきどきしながら師匠が口を開くのを待っていた。
「いいできね」
「やったあ」
せいなはその場で跳びはねた。師匠から革ぐつを受けとる。
「そのくつにはどんな効果があるの?」
師匠に尋ねられたせいなは、はきはきと答えた。
「願ったとおりの人生を歩めるようにしました。幸せになりたいって思っている人が少しでもその通りになればいいと思って」
せいなの明るい表情とは反対に師匠はしぶい顔をしていた。
「あなたの思いはすばらしいと思うわ。たしかにその通りよ。でもその効果じゃもしもだれかに復しゅうしたい、痛い目に合わせたいっていうよくない気持ちが強かったとき、そのくつをはいている人は、苦しい人生を歩んでしまうことになるわ」
「あ……」
思わぬ考えにさっきまでのうれしかった気持ちがしぼんでいくのが、せいなは自分でもわかった。
「だからそのくつはほかの人には渡さないほうがいいわね」
「はい……」
「そんなに落ちこまないの。みんなが幸せになってほしいって気持ちはとても大切よ。わすれないでね。
もっとはっきりした願いだといいでしょうね。探しているものが見つかるとか、身の危険から守るとか。幸せは一種類じゃないわ」
「はい」
その日の修業はこれで終わった。
「よし、これからもがんばるぞ。みんなが幸せになるくつを作るんだから」
せいなは決意を新たに、自分の部屋で次に作るくつのデザインを考えはじめた。
それから五年後、十六歳になったせいなは無事独り立ちをして師匠の元をはなれた。今は緑針の森というところに家や工房でもある店を構えている。緑針の森はせいなも住んでいた師匠の家からほうきで空を飛んでも一週間はかかるところだ。
緑針の森は針葉樹がたくさん生えていてその様子がまるで緑色の針のようだからこの名がついたそうだ。せいなは一年を通してずっと青々としげらせているこの森が好きだった。近くにはうのつ村という猟師の村があり革も手に入りやすいことも決め手の一つだった。
今日は革を仕入れるためにうのつ村にやってきた。
「せいなちゃん、今日はどんな革がいいかね?」
猟師のおじいさんは縁側に動物の革をならべてくれた。熊、イノシシ、鹿などの猟でとったものから馬、牛など家畜のものまである。それはこの村のほとんどの人が半自給自足生活を送っているからできるのだろう、とせいなは思っている。
「牛と馬、それから鹿……イノシシの革もいただこうかな」
「まいど。こいつらもせいなちゃんにくつにしてもらったら、化けて出るなんてこともないだろうよ。いつもありがとうな」
「そんな。こちらこそありがとうございます。おじさんにもお礼を言っておいてください」
おじさんとは、目の前にいるおじいさんの息子さんのことだ。おじいさんが猟に出て息子であるおじさんが動物の毛皮をなめして革にしているのだ。
「おじさんの革はとてもあつかいやすくて質もよくていいくつができるんです」
「はっはっは。あいつが聞いたらよろこぶよ。……あ、そうだっ」
おじいさんはなにかを思い出したようで「ちょっと待っててな」と言って家の中に引っこんだ。そして白い紙に包んだなにかを持ってきてすぐにもどってきた。
「これ、イノシシの肉。よかったら」
「わあ、ありがとうございます。でもいいんですか?」
「ああ。食べきれなくってね。保存食にするにも、ちと多くてね。受けとってくれるとありがたい」
「ありがとうございますっ。今度無料でくつのお手入れしますね」
「ああ、ありがとう」
せいなは革とイノシシの肉を持って家路についた。帰り道を歩いているとすれちがうおじいさんやおばあさんから「せいなちゃん、こんにちは」「仕入れかい?」などと声をかけられた。この村にはおじいさんやおばあさんが多い。そのためか孫くらいの年であるせいなに、みんな親切にしてくれた。
せいなの家は緑針の森の中でも中心に位置するところにある。ぽつんと一軒だけある、木造の平屋がそれだ。せいなは家の中に入った。入ってすぐにお店になっていて革ぐつが男女問わずならんでいる。部屋は革独特のにおいで満ちている。せいなはまず一番涼しいリビングにもらったイノシシの肉を置きに行った。そして店頭にもどってきて、カウンターの内側にある材料が入っている棚に、仕入れた革をしまう。そのときガタタンッと大きな音がした。店頭より奥の部屋からだ。
「なんだろう。なにか落ちたのかな?」
せいなはまずリビングをチェックした。とくに落ちたりかたむいているものもない。次にリビングの奥にある寝室のドアノブをにぎった。寝室に入るとそこには一人の女性がいた。茶色い髪は肩よりも短く、服装はシンプルでけしょうっけもなかった。年齢は四、五さいほど上だろうか。
「だ、だれっ?」
女性はせいなをつき飛ばして寝室を出た。せいなはしりもちをついてしまった。
「ちょ、ちょっと待ちなさいっ」
せいなは立ち上がると女性を追いかけた。しかし木々の多い緑針の森ではあっという間に姿を見失ってしまった。
「まさかさっきの、どろぼう? なにかなくなってるものはないかな?」
せいなは最初に店頭を調べた。商品の革ぐつはどれも無事だった。次に寝室を調べた。するとベッドの横に置いている小さなたなの上にあった、初めて魔力をこめたときの革ぐつがなくなっていることに気がついた。
「うそっ、ない」
せいなはベッドの下やたなの中など部屋のすみからすみまで探した。しかしかげも形も見当たらなかった。
「もしかしてさっきのどろぼうが持っていっちゃった?」
せいなは五年前、師匠に言われたことを思い出した。
「あのくつはその人が望んだ人生を歩むようにできてる。もしもさっきのどろぼうが、だれかに仕返ししたいって思ってたら……だれかの不幸を願っていたらそのとおりになっちゃう。早く取り返さなくっちゃ。……でもどうやって?」
せいなはうでを組んで考えた。
「あの人、きっと村の人じゃない。だって知らない顔だったもん。それにしてもなんでわたしの家に入ってきたんだろう? ……いや、今はわからないことを考えててもしょうがない。とにかくあのくつをとり返す方法を考えなくちゃ」
せいなはその場で立ったまま考えた。
「そうだっ。探しているものが必ず見つかるくつを作ればいいんだ。そうとなったら急がなくちゃ」
せいなは外に出てドアにかけている『開店中』という木製の小さな看板をひっくり返して『閉店。またのおこしをお待ちしています』という面を表にした。そして店の片すみにある作業場に腰を下ろして、自分のくつのサイズにあたる木の型を机の上に置いた。次に材料が入っているたなを開いた。
「長いきょりを歩くかもしれないから、しっかりした革がいい。それから足になじみやすいもの……。よし、鹿の革を使おう」
茶色のその革やひもなどを手にとり作業場に座る。道具を手にとり作業をはじめた。
まずは革の中でも一番強いおしりの部分をくつのパーツごとに切る。それらをそばにあるミシンでぬいつける。せいなの体から虹色の光、魔力がにじみ出る。ミシンを動かすとガタタンッガタタンッとふつうより強そうな音がした。ぬうごとに魔力が革に吸いこまれる。ぬい終わると、なかじきを留め具で固定した。ずれることなくしっかりと打ちこむ。底とかかとをつける。その後もう一度ミシンでぬってやすりをかけ、くつをみがく。
(どうか、探しものが必ず見つかりますように)
みがいているあいだも作っているくつに魔力をこめ続ける。ひもをとおして完成させた。くつは魔力をすいとり虹色に光っている。その光は息をするようなリズムで消えていった。
「よし、完成っ」
せいなはさっそくできたくつをはいてみた。きゅうくつではないか、歩きにくくはないか、くつずれしそうなところなどを確かめた。部屋の中をぐるりと歩く。
「うんうん、とくに変えたほうがいいところはなさそう。はき心地もばっちり。このくつはそうだな……探しのくつって名前にしよう」
せいなは窓の外を見た。空はオレンジジュースのような色に染まっていた。
「夜に出ていくのはかしこくないわね。明日朝早くから探しに行こう」
せいなは探しのくつを脱いでふつうのくつにはき替えて、夕食の準備をした。おじいさんからもらったイノシシの肉をトマトといっしょにセロリやにんじん、じゃがいもなどを入れてシチューにした。おじいさんはいい肉をくれたのか、イノシシ特有のけものくさいにおいはなかった。食事を終えるとせいなは出かける準備をはじめた。どれくらいでぬすまれたくつが見つかるかわからないので、保存のきく食料とお金をしっかり持って行くことにした。明るい茶色の革で作ったカバンにそれらと持ち運びできるソーイングセット、きず薬を入れた。シチューの残りは持ち運び用の金属製のポットに注いだ。ポットもあら熱がとれるとカバンに入れた。準備を終えるとせいなはベッドに横になり、夢の国へと旅立った。
次の日、朝日が昇るとすぐにせいなは店を出ることにした。ドアには『しばらく休業いたします』と書いた紙をはった。
「探しのくつ探しのくつ、わたしがはじめて魔力をこめたくつを見つけだして」
足元にむかってそう言うと勝手に足が動き出した。探しのくつが動き出したのだ。
「このまま進む方向に行けばきっとわたしのくつがあるはず」
探しのくつは北を目指していた。うのつ村は緑針の森から西にあるので、やはりどろぼうは村の人ではないようだ。
「それにしても町の人なのに、なんでわざわざわたしの家にどろぼうに入ったんだろう? そう考えるときっとたまたまじゃない。わたしの家だってわかってどろぼうに入ったんだ。……もしかしてはじめからあのくつが目的だった? でもあのくつのことは師匠とわたししか知らないし。いったいどこで知ったの?」
せいなは考えた。しかし心当たりはまったくなかった。
「とにかく今は急がなくちゃ。どろぼうがだれかに仕返ししたいとかって考えていなかったらいいんだけど……」
そう思いながらもむなさわぎがしていた。せいなは足を速めた。
ときどき休みながらも四日歩くと一番近い町、ナヌタについた。いつもならほうきですぐのきょりだが、意外に遠いことを実感した。この町は元々山だったところにお店や家などを建てたため、あちこちに木が生えていて坂道も多い。たくさん歩いたためかおなかがすいてしまった。広場らしきところでサンドウィッチを買って食べ終わると探しのくつが導くまま歩いた。ずっと坂道なのでだんだんつかれてきた。
「どっかのお店で休もうかなあ。お店の人にどろぼうのことも聞いてみて……」
そのとき、道のわきにあるベンチにひとりの女性がすわっているのが目に入った。ベンチは水平になるようにレンガで高さをそろえていた。その女性は頭をかかえていた。
「どうしたんだろう?」
せいなは女性に近づいた。探しのくつはせいなを別の方向に導こうとしていたが、せいなはそれに反抗した。それほど強い力ではないので女性の元に近づくのはかんたんだった。
「あの、どうしたんですか? 体調でも悪いんですか?」
そう声をかけると女性は顔を上げた。年は二十代くらいでどろぼうと同じくらいだろう。けしょうはまつげまでしっかりしているのに、服装は正直地味でちぐはぐのように見えた。
「なによ、あんた」
「わたしはものを作る魔女のせいなです。緑針の森からきました」
「あんななにもないとこに住んでんの? もの好きね」
「あの、頭でも痛いんですか? ずっと頭かかえてるから」
「まあ、ある意味頭が痛いっちゃ痛いわよ。ほんとさんざん」
女性は大きくため息をついた。せいなは女性のとなりにすわった。
「あの、なにかあったんなら話してみてくれませんか? 二人ならなにかいい案が浮かぶかもしれませんし」
女性は三秒ほどせいなを見た。そして話しはじめた。五さい以上年下のせいなに話すくらいだから、よっぽど困っているのだろう。
「うちにずっとどろぼうが入ってるのよ」
「え、どろぼう?」
せいなは驚いた。女性は話を続ける。
「といってもぬすむわけじゃない。でもね、こわすのよ」
「こわすってなにをですか?」
「アタシの服やアクセサリー、くつ、身に着けるようなもの全部よ。何着何足買ってもだめ。絶対こわされるの。見張ったりかくしたりしてもだめ。いっしゅんのすきをついたり、見つけだしてこわすのよ。それで代わりにこんな地味な服が置いてあるのよ。ほんと最悪」
「あの、なんで地味な服が置かれているんですか?」
「そんなのこっちが知りたいわよっ。今までばっちりきめてきたのに、急に地味になったせいでこそこそ言われるし。なんだっていうのよっ」
女性はいら立たしそうにつめをかんだ。形の整ったつめがぎざぎざになる。
「警察も見回ってるけど全然役に立たないし。どんだけ服やアクセサリー買ったと思ってんのよ」
女性ははいている真新しいスニーカーを脱いで地面にたたきつけた。
「心当たりとかはないんですか?」
「ないわよそんなのっ。ああもう、考えただけで腹が立つ」
女性は険しい顔をしていた。
「これまでうまくやってきたのよ。なめられないように見た目もちゃんとして、そのおかげで上司にも気に入られてたのに、今じゃ笑いのネタになってる。じょうだんじゃないわ」
そう話す女性はどことなく必死に見えた。
「あの……見た目で気に入ってもらったんですか? ほんとうに笑われてるんですか?」
女性はぎろりとせいなをにらんだ。せいなは思わず体がのけぞった。
「子どものあんたにはわからないかもしれなけどね、見た目は重要なのよ。笑われないためにはしっかりしたかっこうして、自分は強いんだってアピールしなくちゃいけないの。じゃないとだれにも気に入ってもらえないし、気に入ってもらえなかったらいざってとき後ろだてがない」
女性はぎりっと歯ぎしりをした。
「見下されるし陰口もたたかれる。最悪の人生が待ってんのよ」
「……そんな気持ちでおしゃれするってつらくないですか?」
「は?」
女性はもう一度せいなをにらみつけた。せいなは今度はのけぞったりしなかった。
「おしゃれってもっと楽しくてわくわくするものだと思います」
「アタシだってそう思ってた。でも実際はちがった。アタシは……自分を強く見せるために、笑われないためにやってきた。もうずっと」
女性はため息をついた。
「おしゃれにしない人を笑ったこともあったし、見下したりもした。だってそれって笑われてもしかたないじゃない」
「そんなことありません。おしゃれじゃないことに興味がある人や、そんなお金がない人だっているはずです。あなたが興味あるからって、興味ない人ややっていない人を笑っていい理由にはならないと思います」
女性は口を開きかけた。しかしそのとき、別のところを見た。
「どうしたんですか?」
「あそこ、アタシの家なんだけど中にだれかいるっ」
女性は一軒の家を小さな家を指差した。カーテンにぼんやりと人かげが写りゆれた。
「いっしょに行きましょう」
せいながそう言うと女性はうなずいた。せいなは女性の家に進みながらあることに気がついた。
(なんで探しのくつが抵抗してないの? 探しものとは別の方向に行ってるのに。まさか家の中にいるのって……)
女性は静かにげんかんのかぎを開けた。音を立てずにドアを開ける。せいなが先頭に立つ。
「人がいたところは?」
「リビングよ」
せいなと女性は小声で話をした。女性の案内でリビングを抜け寝室の前に着いた。ドアに耳を当てると物音が聞こえた。せいなはドアノブをにぎった。女性と顔を合わせてほぼ同時にうなずく。そしてせいなはドアを勢いよく開けた。そこには茶色い髪の女性がいた。右手にははさみ、左手には洋服を持っていて、足元には切り刻まれた布が散らばっていた。その人はせいなのくつをはいている。かみの長さは短くなっているが、あのときのどろぼうだ。
「あ、あんたねっ。アタシの服やアクセサリーむちゃくちゃにしたの」
どろぼうは「ちっ」と舌打ちをすると、せいなをつき飛ばしてそのまま出て行った。
「ちょっと、待ちなさいよお!」
「いてて。わたし、追いかけます」
せいなは立ち上がって茶髪のどろぼうを追いかけた。どろぼうは右に左にと道を曲がる。坂道を上ったり下ったりしていると、せいなと茶髪のどろぼうのきょりはどんどんはなれていった。
「ま、まてえ……」
ついにせいなはその場で立ち止まってしまった。ぜえぜえと肩で息をする。そのとき前から自転車に乗っている男の人がやってきていた。
「そうだっ」
せいなは自転車の進行方向をさえぎるように両手を広げて立ちふさがった。
「とまってーっ」
「うわっ」
自転車を運転していた男の人は急ブレーキをかけた。キーッと高い音がした。なんとかせいなに当たることなく止まった。
「あっぶないなあっ」
男の人がどなりかけたているそのとき、せいなは自転車の前のかごをつかみながら男の人にたのみこんだ。
「すみません、この自転車貸してくださいっ」
「は?」
「わたしの家に入ったどろぼうがいたんですっ。ぬすまれたものをとり返したいんです」
すると男の人は「なんだって」と言ったあと自転車を降りた。
「いいぜ、貸してやる。ポロポロってカフェにいるから返しに来てくれ」
「ありがとうございます」
せいなは素早く頭を下げて自転車に乗った。大きかったので座らず立ちこぎをすることにした。
どろぼうはとても小さくなっていたが、かろうじて姿が見えていた。せいなは自転車のペダルをこいだ。
「待ちなさーいっ」
ふり返ったどろぼうは驚いた顔をしたが、すぐに前をむいて走り続けた。せいなは力いっぱいこいだ。どろぼうとのきょりが縮まる。縮まり縮まり、そして追い越した。せいなは自転車のブレーキをかけて、どろぼうの前に立ちふさがった。どろぼうは立ち止まった。
「どこでそのくつのことを聞いたのか知らないけれど、返してちょうだい。そのくつはわたしのものなんだから」
どろぼうは来た方向に逃げ出そうとした。せいなは自転車を手放し、どろぼうに飛びかかった。どろぼうは抵抗したが、せいなは負けなかった。
「とにかくくつは返してもらうんだからっ」
せいなはばたばたしている足からくつをつかんだ。しかしどろぼうも脱ぎたくないらしく脱げないようにしていた。それでも指を入れてすき間を作ってなんとか右足のくつを脱がせた。同じようにして左足のくつもとりもどした。するとどろぼうは足を下ろした。するとぐすっぐすっとすすり泣きが聞こえた。
「ようやく……ようやく仕返しできると思ったのに」
せいなはくつを持ったままどろぼうから離れた。ひざをついてどろぼうに尋ねた。
「あの、なんでわたしのくつをぬすんだんですか?」
どろぼうはうつぶせで泣くだけで答えなかった。せいなはそんなどろぼうに言った。
「このくつには、持ち主が願った人生を歩める魔法がかかっています。幸せになりたい、そう願えば明るい人生を歩むことができます。けれどだれかに復しゅうしたいと思えばその通りになってしまうんです。だから……仕返しを願っているあなたには使わせるわけにはいきません」
せいながそう言うとどろぼうは拳を地面にたたきつけながら大きな声でうったえた。
「じゃああたしはどうすればいいのよっ。ずっとずっと苦しい思いをしてきて、それをどうにかしたくて。その方法が仕返しだってわかって……。そのくつがあったからできたのなら、なかったらもう仕返しができないじゃない」
(この人、つらいことがあったのかな。だったら……きっとわたしの力が役に立つはず。みんな幸せになってほしい。それがわたしのねがいだから)
せいなはどろぼうに声をかけた。
「あの……もしよかったらお話しませんか?」
「……え?」
どろぼうはゆっくり顔を上げた。ひたいには砂がついていた。せいなはその砂をそっとはらった。
「わたしはどんな人にも幸せになってほしいんです。あなたにも幸せになってほしい。だから、話してくれませんか?」
せいなはどろぼうに手を差しのべた。どろぼうは上半身を起き上がらせてせいなの手をとった。
せいなは宿でどろぼうの話を聞くことにした。とちゅう男の人が言っていたポロポロというカフェに行って自転車を返した。ポロポロの場所はどろぼうが知っていた。この街に住んでいるらしい。
「あたしの名前はのい。その、くつをぬすんでごめんなさい」
宿のせいなが泊まる部屋に着くとどろぼう、のいはそう言った。
「なんでわたしのくつをぬすんだんですか?」
せいなは改めて尋ねた。するとのいさんは静かに語ってくれた。
「あたし、小学生から高校生のときまでずっと女子三人のグループにいじめられていたの。十二年間ずっと。
内容はほかの人からすれば大したことがないのかもしれない。本人たちはただからかっていただけなのかもしれない。それでも……それでもあたしは傷ついた。苦しかった。根暗だとか、服が似合わないとか、ブスだなんて言われたくなかった」
のいさんはなみだをこぼした。せいなはハンカチを渡した。のいさんは「ありがとう」と言いながらハンカチを受けとり、なみだを拭いた。
「本当は好きな服やかわいいかっこうをしたかった。でもなにか言われるんじゃないかってこわくって。行動すれば笑われるかもしれないって思うとなにもできなかった。やりたかったこともたくさんあった。……毎日がこわくてしかたなかった。親には言えなかった。家ではせめてふだんのあたしでいたかったから。気がつかれないように必死にかくした」
なみだを拭いたあとののいさんの目からなみだがにじんだ。
「このあいだたまたま同級生に会って、あの三人が好きなように生活しているって聞いて、もう、たまらなくなったの。あたしは未だにこわくて地味な服しか着られないし、おしゃれもできないのに。だから……復しゅうしようと思ったの。
緑針の森にものを作る魔女はいるって聞いて、なにか復しゅうに使える道具がないかって……」
「それでくつを……。でもなんでこのくつだったんですか? くつだけなら店頭のほうがたくさんあったのに」
せいなの問いにのいさんは気まずそうに答えた。
「どんな効果があるのかわからなくて。でもあなたの部屋に入ったとき、そのくつが目に入って。すごくかわいいって、はいてみたいって思ったの」
せいなはのいさんのその気持ちはとてもうれしかった。あのくつはせいながはいてみたいと思ったくつをデザインしたものだったからだ。
「そこでわたしが帰ってきちゃった、ってことですね?」
「ええ。とっさにくつを持ってきてしまって。ほんとうにごめんなさい」
のいさんはせいなに頭を下げた。そんなのいさんにせいなは言った。
「返ってきたならそれでいいんです。
さっきもちらりと言ったんですけれど、このくつは持ち主の願いどおりの人生を歩めるようにしてくれます。だから復しゅうを願えば復しゅうを行なうことはできます。でも心が黒くぬりつぶされていくのを止める力はありません。だからわたしはこのくつを売っていないんです。初めて魔力をこめながら作ったくつだったからどうしても捨てられなかったんです」
せいなはくつをとり出して見つめた。ガラスのかざりにせいなの顔がさかさまに写る。
「だからのいさんが服やものをこわしたりできたのは、このくつのせいなんです。それがこのくつの魔法だから。……それにしてもなんで服とかを破いたり壊すことが復しゅうになるんですか?」
のいはハンカチをにぎりしめて教えてくれた。
「あの子はね、ほんとうはとってもおくびょうなの。強いだれかの側にいなくちゃなにも言えない、服やアクセサリーっていうよろいで自分をうんと強く見せないと、なにもできないの。だれかになにか言われるのがとてもこわいの。それがなんとなくわかったのは中学生のとき。だから……仕事や休みの日に着ていく服を全部破いて、あの子がきらいな地味な服を置いていったの。服がなかったらそれを着ていくしかなくなるでしょう?」
せいなは目の前にいるのいさんだけでなく、ベンチに座っていた女性のこともかわいそうになってきた。
(おしゃれってもっと楽しいもののはずなのに。だれかを見下したりする道具じゃないのに。それにのいさんもずっとおしゃれしてみたいって思ってるのに、ずっと三人の人の言葉にしばられちゃってる。そんなの……苦しいよ)
せいなはのいさんの手をそっとにぎった。
「のいさん。わたしに任せてくれませんか?」
「え?」
「今すぐは難しいかもしれない。それでも必ずその苦しみから解放されるくつを、わたしに作らせてください」
せいなは真っ直ぐのいさんを見つめた。のいさんはせいなの言葉に目を丸くしたあと、なみだをにじませた。
「おねがいできるかしら? 苦しい思いをするのは……もういやなの」
のいさんはうつむいてそう言った。そのときなみだが一つぶ落ちた。
せいなとのいさんは次の日待ち合わせをして、いっしょに馬車に乗った。緑針の森にあるせいなの家でもある店にもどった。お店に入ったのいさんはめずらしそうに店内を見回していた。
「ここのくつ全部に魔法がかかっているの?」
「はい。よかったらじっくり見てください」
「い、いいの? それじゃあ……」
のいさんは「かわいいー……」や「この色すてき」などと言いながらくつを見て回った。そしてある一足のくつを指差してせいなに尋ねた。
「このくつにはどんな魔法がかかっているの?」
そのくつはぶどうのようなむらさき色でつま先が少しとがったくつだった。四角くカットされたガラスのかざりと、水しぶきのように大小さまざまなパールをぬいつけている。かかとのヒールは中指ほどの高さだ。
「それは実りのくつっていいます。そのくつには実り豊かな人生になる魔法がかかっています。楽しいこと、うれしいことがぶどうの実のようにたくさん恵まれるように。あ、ちなみになにか野菜やくだものを育てているなら、豊作になったりもしますよ」
せいなはにこりと笑った。のいさんは吸いこまれたかのように実りのくつを見つめていた。
のいさんが店内のすべてのくつを見終わってから作業が始まった。せいなは紙とペンを持ってのいさんに質問をし始めた。
「好きな色はなんですか? こういうくつをはきたいっていうのはありますか? こんなくつがあればいいのに、とか」
「茶色……ううん、ちがう。これは今まであたしが自分を守るために、傷つかないようにしてきた色ね。あたし、ほんとうは赤が好きなの。真っ赤できれいなくつをはきたいな」
「いいですねっ。似合うと思います」
せいなは正直に思ったことを言った。するとのいさんは驚いたような顔をして、なみだをにじませた。
「ずっと……ずっと地味って言われてきたの。『地味子は派手な色なんて身に着けるな』って言われたの。明るい色の服を着たりくつをはくと、必ずそう言われたの。それが……苦しかった」
せいなはのいさんにハンカチを差し出した。のいさんは「ありがとう」と言ってハンカチを受けとりなみだをふいた。
「ずっと苦しかったですよね。……もうだいじょうぶです。すてきなくつを作りますから。のいさんが幸せになれるくつを作りますから。
さっ、もっといろいろ話してください。かざりはどうしますか? いろいろあるんですよ」
せいなはたなから、くつにつけるかざりの見本をのいさんに見せた。迷ったあげくのいさんはまん丸の黄色のガラスのかざりと、とうめいなガラスのかけらのかざりを選んだ。
「次はくつの形を決めましょう。はいてみたいくつの形とかありますか?」
「つま先の丸いくつが好きなの。かわいくておひめさまみたいで」
「丸いくつかわいいですよねー。丸みはこれくらいのほうがいいですか?」
せいなは見本として見せているデザイン画を広げた。せいながのいさんに見せたのは、はばの広くて全体的に四角い印象をあたえるものだった。つま先の丸みが一番強く、大きくカーブをえがいている。
「ええ、これくらいがいいわ」
せいなは頭の中でデザインをえがいた。
「そうですね、その形のくつならかざりにベルトをつけて、その根元と周辺にガラスをつけるというのはどうでしょう? こういう感じで」
せいなはデザイン画の上にガラスのかざりを置いてみた。足の内側に黄色のガラスを、ベルトに沿うようにとうめいのガラスを並べると、のいさんは「すてきっ」と声を上げた。目をキラキラとさせていて、さっきまでとはまるで別人のようだった。
(でもきっとこっちの、のいさんが本当ののいさんなんだろうな)
せいなはそんな風に思った。
くつのデザインは着々と決まっていった。ベルトは太すぎず細すぎず、かかとは低め。パーティーに行くというよりは日々気持ちよくはきたいタイプのくつ。かかとの部分には花をイメージした模様を入れる。
「ざっとデザイン画を描いてみますね。ちょっとお待ちいただけますか?」
「ええ。もちろん」
せいなはその場でデザインを紙に起こした。その手の速さを見たのいさんの「おおー」という声が聞こえた。せいなは見た目だけを描いたかんたんなデザイン画を完成させると、のいさんに見せた。
「すごくかわいい! こんなくつはいてみたい」
「ふふふ、はけますよ。じゃあデザインはこういう感じでいいですか?」
「ええ、おねがい」
その後足のサイズや形を測ってから、せいなはのいさんに一カ月後にまた来てほしいと言ってこの日は帰ってもらった。のいさんは来たときよりも顔を上げているような気がした。
その日からせいなは作業に入った。まずはきちんとしたデザイン画を描き起こした。きちんと色をぬって細かい模様まで描きこんだ。
実際に作業に入ったのは次の日からだった。まずはのいさんの足の形の木型を作る。のいさんの足は少しはばが広い。そのために横はばはせまくしすぎないようにした。またふだんからはくくつということで、歩くしょうげきがひびかないように中じきをふかふかなものにすることにした。おひつじ座に住んでいるひつじの毛でできている。
せいなは革から必要なパーツを切りとった。つま先、三つに分けた足の甲の部分、かかとの側面、くつの底。余ったところでベルトを切り出した。革の種類は牛にした。厚みがありしっかりとしたくつを作ることができる。
「どうかのいさんの人生が、もう苦しみにとらわれることなく幸せに歩めますように」
せいなの願いは虹色の光に変わり、ふわふわと浮かび切りとった革の中にしみこんだ。シャボン玉のように美しい魔力は次々と革に吸いこまれる。
せいなの手はとまることなく動いていた。革同士をぬい合わせる。糸はとてもがんじょうな、おとひめグモの糸を選んだ。太くひっぱってもかんたんには切れない。
革をぬい合わせると、次は底二枚とかかとに使う板を切りとる。のいさんのくつをつくりはじめて一週間経っていた。せいなは指先に銀色の三角形のつつをはめた。これは魔法のカッターだ。魔力を流しこむことで小さく鋭い刃となって、切ることができる。
せいなは魔法のカッターで足のりんかくを描いた板を切った。きれいにやすりもかける。表面も側面もなめらかになった。指の下やかかとなど底に当たるところは少しへこましている。
「こんなにすべすべしたのがかくれちゃうんだもんなあ。でも木だけのくつって痛いもんね」
底になる板をくっつけるとぬった革と合わせて、固定する。コンッコンッコンッと留め具を金づちでたたく音が店にひびいた。
一枚の革は一か月近く経つと一足の真っ赤なくつとなっていた。デザイン画がそのままとび出してきたかのような出来に、せいなは満足していた。
「はあ、できたあ」
磨かれたくつはまっ赤なりんごのようだった。丸いつま先は少女のようだが、飾りやかかとのおかげでのいさんに似合いそうな、上品な仕上がりになった。
のいさんと出会ってちょうど一か月経ったその日、のいさんがくつをとりにやってきた。のいさんの雰囲気はずいぶん明るくなっていた。
「こんにちは」
「こんにちは、のいさん。
くつが完成しました。さっそくはいて感触を確かめてもらえませんか?」
せいなはのいさんにくつとくつべらを渡した。のいさんはベルベット生地の低いいすに腰かけて真っ赤なくつをはいた。せいなは奥から姿見を運んできてのいさんの前に置いた。のいさんの白のシャツと黒いスカートに、赤いくつはよく映えた。
「わあ。すてきです、のいさんっ」
せいなは思わず小さく拍手をした。ピアノの先生のようにゆうがだ。
「あ、ありがとう。なんだか派手すぎない?」
「そんなことないですよ。とってもお似合いです」
のいさんははにかんだ。そしてふとお店に目線の先を写した。せいなは首をかしげた。
「どうされました?」
のいさんはまっ赤なくつをはいたまま、別のくつを手にとってもどってきた。それは以前にのいさんが店にきたときに尋ねてきた、実りのくつだった。ぶどうの色のくつを丁寧に持ってのいさんはこう言った。
「このくつも下さいな」
実りのくつはのいさんの好みとはちがっているように思えた。先はとがっているほうだし、色もそれほど明るくない。
「このくつを見たとき、とってもすてきだと思ったの。とっても上品で特別な日にはきたい。そんな風に思ったの。ふしぎね、自分の好みの形じゃないのにはきたいって思ったの」
「もちろんですっ」
せいなはうれしくてたまらなかった。のいさんが新たな一歩をふみ出して、自分から変わろうとしているからだ。
(さっそく魔法の効果が出たのかな? それとものいさんの心が少しでも前を見てくれたのかな? どっちにしてもうれしいや)
せいなは自然と笑みを浮かべていた。
のいさんに確認するとくつをはいていて痛いところはないそうなので、とくに調整することなく渡すことができた。のいさんは赤いくつを「はいて帰るわ」とうれしそうに言った。
「痛いところが出てきたり、くつが痛んできたときはまたお持ちください」
「ええ。本当にありがとう。なんだか今までより心の底から笑えるの」
「ふふ。よかったです。どうか、のいさんの人生が幸せであふれますように」
「ありがとう」
のいさんはまっ赤なくつをはいて、古いくつと実りのくつが入った袋をその手に持って帰って行った。
「わたしのくつ、どうかのいさんの心を明るくして。彼女の人生を幸せで満ちあふれるようなものにして」
せいなは祈った。のいさんの背中が見えなくなって中に入ろうとしたとき、いつも革を仕入れるおじいさんがやってきた。
「せいなちゃーん、悪いんだがくつを修理してくれんか。底が、ほら」
そう言っておじいさんが見せてきたくつの右側の底がぺらんとはがれかけていた。
「まあ大変。すぐに直しますね。前に言ったとおり、イノシシのお肉いただいたんで、無料でしますね」
せいなはおじいさんを店の中に招いた。
その日の夜、せいなは庭でまきを組んだ。種火を組んだまきの中に投げこむと、あっという間に火が灯った。ぱちっぱちっとまきがはじける音をさせている中、せいなは初めて魔力をこめた、あのくつを持っていた。飾りは外されている。
「もうこんなことがあっちゃだめだ。わたしは、だれかが不幸になるくつを作りたいんじゃない。今までなかなか処分できなかったけれど、今回のことで決心がついた。……ありがとう、わたしのくつ。これからももっといろんな人が幸せになるくつを作るからね」
せいなはさみしさといっしょにくつを炎の中にくべた。チョコレート色のくつに火が燃え移り形が変わっていく。
「くつは処分するけど、かざりくらいはいいよね」
せいなはポケットの中から燃えているくつのかざりをとり出した。真っ赤なガラスに火のオレンジ色がやわらかく反射する。かざりをにぎりしめたまま、せいなはくつが灰になるまで見つめていた。
それからもせいなはたくさんのくつを作り、直し、いろんな人の笑顔を見た。
のいさんから、以前からやりたかったアクセサリーデザインの学校に通いはじめたこと、毎日が楽しくなってきたことを知らせる手紙が来たのはくつを渡した日から一年と半年経ってからだった。
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