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やられてばかりじゃいられない
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ど、どどど、どうしよう。
オルが怒ったところは何度か見ているけれど、まさか暴言を吐いたとはいえ、女の人に対してドラゴン倒すのと同じ殺気を向けて怒るなんて想定外すぎるよ!
「どうしよう、クラウス君」
「うーん、とりあえず空間魔法で移動して、王都から一度離れるか…」
縦ロールの女性は、愛しいオルの豹変について行けてないみたいだ。崩れかけた縦ロールを振り乱し、オルに取りすがるが、あっさりと引き剥がされる。
「くっつくな。臭いのがうつるだろうが。エンリに嫌がられる」
「オルフェウス様!何故ですか!わたくしよりもあの女を選ぶのですか!」
諦めない縦ロール。あの人ある意味すごいかもしれない。ドラゴンをも倒そうとするオルの殺気をまともに受けて、意識を保っていられるなんて…
「つーか、お前誰だ」
「「「は?」」」
私たちだけではない。遠巻きに見ていたギャラリーさえも、唖然としている。
クラウス君が恐る恐る口を開いた。
「おい、オル、その人は学園に通ってた時の同級生だろ。しかも同じクラス」
「知らん」
「じゃあ、同じクラスだと誰を覚えてる?」
「お前の所の三人。それ以外は知らねぇよ」
オルの学生時代……いやいや今はそれどころじゃない。オルの制服姿は後でクラウス君に見せてもらうとして、今はこの消えない殺気をどうにかしないと……
くそう、縦ロールめ、気絶でもしてれば穏便に済むかもしれないのに……しかもオルに抱きついてさ。私のオルなのに。
オルもオルだよ。あれだけの高レベルなのに何で避けないわけ?やっぱりスラッとしたモデル体型の女がいいの?
ふと縦ロールと目が合う。イライラする。
……決めた。
やってやる。
「オル、ちょっといい?」
クラウス君と言い合ってたオルは、只ならぬ私の雰囲気に気づいて駆け寄ってきた。
「どうした?エンリ」
「オルはさ、さっき何であんなに香水がつくぐらいの接近を許したわけ?」
「え?」
「おかしいよね。オルほどの猛者が、あんな女に抱きつかれるのを許すなんて。何?ああいうのが趣味なの?」
「違う!何でそうなるんだ!」
「ああいう大人っぽいのが良いわけ?私みたいに胸だけでかいけど小っちゃい女なんて…」
「そんなわけねぇだろ!」
オルの殺気が収まっていく。あともう少しか。
恥ずかしいけど頑張るよ。見ててね、お父さん、お母さん、ゆうり……
「なら、私のこと好き?」
「ああ、好きだ」
「愛してる?」
「愛してる。エンリ」
甘く蕩けるように微笑むオル。殺気はほとんどなくなってきて、纏う空気はフェロモンと色気に変化していき、私の腰は今にもくだけそうだ。
ぐ、あともう少し、負けるもんか。
「なら、こっちに来て、私の前で跪いて」
素直に私の前に跪くオルの頭を、思いきりギュッと胸に抱く。「もがっ」と呻いて慌てるオルの耳をそっと噛むと、息を吹きかけて囁く。
「オル、お仕置きね。私を抱っこして部屋に戻るの。命令」
オルはガバッと立ち上がると、私をお姫様抱っこして回れ右をする。
後ろに見えるクラウス君に目で合図すると、戦地へ赴く兵隊を見送る家族のような目で私を見て、スッと敬礼をした。
うん。私頑張るよ。クラウス君、後のことは頼んだ。
…………この後ノープランなんだけど、どうすれば良いのかな。
なぜか目を潤ませて私を見ているオルの胸筋にスリスリしつつ、私は脳を高速で回転させて『オルをお仕置きするプラン』を練り上げるのでした。
ちなみに。
外で私たちを見ていたギャラリーからは「最強の騎士さえも勝てない小さな女帝」と称えられ、「死の踊り手」に次ぐ「魅惑の小さき女帝」という、意味不明な二つ名をつけられてると知るのは、少し先のことになる。
…………そういうのは、もう良いから。
オルが怒ったところは何度か見ているけれど、まさか暴言を吐いたとはいえ、女の人に対してドラゴン倒すのと同じ殺気を向けて怒るなんて想定外すぎるよ!
「どうしよう、クラウス君」
「うーん、とりあえず空間魔法で移動して、王都から一度離れるか…」
縦ロールの女性は、愛しいオルの豹変について行けてないみたいだ。崩れかけた縦ロールを振り乱し、オルに取りすがるが、あっさりと引き剥がされる。
「くっつくな。臭いのがうつるだろうが。エンリに嫌がられる」
「オルフェウス様!何故ですか!わたくしよりもあの女を選ぶのですか!」
諦めない縦ロール。あの人ある意味すごいかもしれない。ドラゴンをも倒そうとするオルの殺気をまともに受けて、意識を保っていられるなんて…
「つーか、お前誰だ」
「「「は?」」」
私たちだけではない。遠巻きに見ていたギャラリーさえも、唖然としている。
クラウス君が恐る恐る口を開いた。
「おい、オル、その人は学園に通ってた時の同級生だろ。しかも同じクラス」
「知らん」
「じゃあ、同じクラスだと誰を覚えてる?」
「お前の所の三人。それ以外は知らねぇよ」
オルの学生時代……いやいや今はそれどころじゃない。オルの制服姿は後でクラウス君に見せてもらうとして、今はこの消えない殺気をどうにかしないと……
くそう、縦ロールめ、気絶でもしてれば穏便に済むかもしれないのに……しかもオルに抱きついてさ。私のオルなのに。
オルもオルだよ。あれだけの高レベルなのに何で避けないわけ?やっぱりスラッとしたモデル体型の女がいいの?
ふと縦ロールと目が合う。イライラする。
……決めた。
やってやる。
「オル、ちょっといい?」
クラウス君と言い合ってたオルは、只ならぬ私の雰囲気に気づいて駆け寄ってきた。
「どうした?エンリ」
「オルはさ、さっき何であんなに香水がつくぐらいの接近を許したわけ?」
「え?」
「おかしいよね。オルほどの猛者が、あんな女に抱きつかれるのを許すなんて。何?ああいうのが趣味なの?」
「違う!何でそうなるんだ!」
「ああいう大人っぽいのが良いわけ?私みたいに胸だけでかいけど小っちゃい女なんて…」
「そんなわけねぇだろ!」
オルの殺気が収まっていく。あともう少しか。
恥ずかしいけど頑張るよ。見ててね、お父さん、お母さん、ゆうり……
「なら、私のこと好き?」
「ああ、好きだ」
「愛してる?」
「愛してる。エンリ」
甘く蕩けるように微笑むオル。殺気はほとんどなくなってきて、纏う空気はフェロモンと色気に変化していき、私の腰は今にもくだけそうだ。
ぐ、あともう少し、負けるもんか。
「なら、こっちに来て、私の前で跪いて」
素直に私の前に跪くオルの頭を、思いきりギュッと胸に抱く。「もがっ」と呻いて慌てるオルの耳をそっと噛むと、息を吹きかけて囁く。
「オル、お仕置きね。私を抱っこして部屋に戻るの。命令」
オルはガバッと立ち上がると、私をお姫様抱っこして回れ右をする。
後ろに見えるクラウス君に目で合図すると、戦地へ赴く兵隊を見送る家族のような目で私を見て、スッと敬礼をした。
うん。私頑張るよ。クラウス君、後のことは頼んだ。
…………この後ノープランなんだけど、どうすれば良いのかな。
なぜか目を潤ませて私を見ているオルの胸筋にスリスリしつつ、私は脳を高速で回転させて『オルをお仕置きするプラン』を練り上げるのでした。
ちなみに。
外で私たちを見ていたギャラリーからは「最強の騎士さえも勝てない小さな女帝」と称えられ、「死の踊り手」に次ぐ「魅惑の小さき女帝」という、意味不明な二つ名をつけられてると知るのは、少し先のことになる。
…………そういうのは、もう良いから。
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