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過去回想のモブ編

第04話 鑑定と能力

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次の日、僕は村長の家にやってきた。
お目当ては簡易鑑定球だ。

簡易鑑定球は領主から預かった大事な魔道具で、年に1回「鑑定の儀」の際に、教会に貸出をしている。
そんな貴重な魔道具を人目につかないよう村長は秘密の場所に保管している。
それこそ身内でさえも知らない場所に。

今までは注意深く隠していた。
しかし、ダリウスが魔力酔いによって昏睡状態に陥った時に村長は大慌てで簡易鑑定球を持ちだしてきたらしい。

簡易鑑定球は検査対象の健康状態を教えてくれるからね。
都会の貴族なんかは定期的に健康状態を簡易鑑定球でチェックしているのだとか。

結局、異常は無く安静にしておけば問題無いことが分かり、気が抜けていたのだろう。村長が簡易鑑定球を戻すところをダリウスが目撃していた。

その結果、ここには簡易鑑定球があるという訳だ。
簡易鑑定球は前世の記憶にある占い師が使う水晶玉とほぼ一緒。

使い方は簡単で両手をかざして数秒待つだけだ。
待っているとやがて空中に画面が投影されて情報が表示される。

「じゃあ、俺からな。」
ダリウスは簡易鑑定球を両手で触れると、しばらくしてゲームで見覚えのあるステータス画面が現れた。

<ステータス>

名前:イーレ村のダリウス
年齢:7歳
性別:男
状態:正常
HP:95/100
MP:10/10
スキル:[MP消費抑制][******]


続いて僕もダリウスと同じように簡易鑑定球に触れる。


<ステータス>

名前:イーレ村のエドワード
年齢:7歳
性別:男
状態:正常
HP:97/100
MP:50/50
スキル:[鑑定][******]


あ、鑑定スキルだ。
転生もののテンプレ能力だが僕にもあったか。
思わず笑みがこぼれた。

これはうれしい誤算だ。
子ども達みんなに簡易鑑定球を使うことなくステータス確認することが出来るようになった。

「おい、エドワード。お前<鑑定>なんてあるじゃねーか。
 ステータスわかるなら簡易鑑定球なんか不要だったじゃねーか。」

ダリウスがぷりぷり怒ってくるがそれは心外だ。
僕だって自分のスキルを知ってたわけじゃない。

「いやいや。僕にそんなスキルがあるなんて知らなかったよ。
 でも、これで他の皆に簡易鑑定球を使わなくても済みそうだね。
 あ、でもどの程度<鑑定>スキルが使えるか分かってないや。
 悪いけど、ダリウス。君を鑑定してみてもいい?」

ダリウスは一瞬キョトンとしたが、「ああ、なるほど」とすぐに理解したらしく、二つ返事で了承してくれた。

「よし、じゃあ行きます。
 スキル<鑑定>発動。」
別に宣言する必要は無いけど、ダリウスに知らせるために声に出す。
すると、ダリウスの頭上に簡易鑑定球で見たステータス画面が表示された。

「表示されたか?」とダリウスが聞いてきたので、頭上にあると答えるが、ダリウスにはステータス画面が見えないらしい。
ステータス画面は<鑑定>スキルを発動した本人にしか見えないのかもしれない。

なので、僕が見たステータス情報を書き出していく。
イーレ村には紙なんていう便利なものは無いので書くのは木の板だ。

ステータス

名前:イーレ村のダリウス
年齢:7歳
性別:男
種族:人間
状態:正常
HP:95/100
MP:10/10
スキル:
[MP消費抑制]・・・MPを使う際の消費量を抑える。MPを使用する際に自動発動
[最後の蛮勇]・・・1度だけ使える能力。10分間無敵となる。
         代償として、MPをHPに変換される。時間毎にHPが消費。

どうやら簡易鑑定球よりも詳細な情報が表示されるようだ。
ところどころ簡易鑑定球には表示されていなかったものも見えている。特に、スキルの2つ目の項目なんかは簡易鑑定球だと伏せられていた内容だ。

簡易鑑定球では分からないステータスも知ることが出来るとは、<鑑定>スキルはなかなか有用なスキルのようだ。

改めてダリウスのステータスを確認すると気になるものがある。
「最後の蛮勇…。」
思わず口にしていた。ハッとなって口を閉じるが遅かった。
しっかり聞かれていた。

「ん?なんだ、その最後の~って。
 ひょっとして、何書いてあるか読めなかった2つ目のスキルか?」

「ああ、そうなんだけど、ちょっとばかりヤバそうなスキルだよね。
 これって1回だけ無敵になれるけど代償がめっちゃヤバいスキルだよね。」

「ん、どういうこと…、ってこれスキルの効果が切れたら死ぬやつじゃねーか。
 なんでこんなスキルなんだよ。もっと便利な奴くれよ。」

スキルの説明文を読んだダリウスが思わずツッコんでいた。
ダリウスの言う通りこれは自爆特攻スキルだろうな。
スキル名に最後の~なんてついてるし、1回しか使えないと敢えて書いてある。
これは、死ぬから2回目は無いよと暗に言っているのだろう。

「いや、でも考えようかもな。
 このスキルがあれば、絶体絶命の事態に陥っても逆転できるかもしれんな。
 まぁ、俺は死ぬだろうがな。」
そう言ってハハハと笑うダリウス。
なんかダリウスが物騒なことを言っているが、そのブラックジョークは笑えないよ。

「それで、お前は?」
ダリウスに聞かれて忘れていた。自分のステータスを確認しないと。

ステータス

名前:イーレ村のエドワード(非公開:世渡 流)
年齢:7歳
性別:男
種族:人間
状態:正常
HP:97/100
MP:50/50

スキル:
[鑑定]・・・任意のステータスを確認することが出来る。
      閲覧情報はスキル熟達度に依存。
      上限は10回/1日(残9回)※ただし自分自身はカウントしない
[複製]・・・他者のスキルを劣化した状態で複製・使用することが出来る。
      複製上限は1回/1日(残1回)

おお、<複製>か。ひょっとして転生特典とかかな。かなりいいスキルだな。
上限設定があるのがネックだが、その点を差し引いても強力なスキルだ。

<鑑定>と<複製>を上手く組み合わせたら、かなり強くなれそうな気がする。

「おい、どうだった?」
ダリウスが興味津々で聞いてくるので、自分のステータスを書き記した木の板を見せる。

「ああ、俺は<複製>を持ってた。
 これは他の人のスキルを劣化版で使えるスキルらしい。
 制限がきつく、劣化版なので有用性が分からないので現時点では判断保留だな。」

「うおお、めっちゃ便利なスキルじゃねーか。
 ずりーわ。俺にもそのスキルくれ。」

その後、ブーブーと文句を言ってくるダリウスが面倒臭かった。
だけどスキルは天性のものらしいから済まないが諦めてほしい。

便利なスキルがあったことは嬉しい誤算だったが、これで三年後の襲撃に備えることが出来そうだ。

待ってろよ、死亡フラグ。
三年でイーレ村の戦力を底上げして、死亡フラグなんてへし折ってやるからな。
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