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過去回想に映りこむモブ編
第29話 ヘカテのお仕事1
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エドワードとダリウス達が厄介事に巻き込まれている頃、レインやヘカテは給仕係としてのお仕事にまい進していた。
side:ヘカテ
儂の名前はヘカテ。
今は人間の子どもの姿になっているが龍族の女じゃ。
儂ら龍族は強き者を望む。
それが同性の場合なら喰らい我が身の一部とする。
異性の場合は、つがいとなり子供をつくることで同化する。
こうして脈々と力を蓄えてきた。それはもやは龍の本能と言えるだろう。
ある時、儂は魔人に捕らえられていたが、屈してはいなかった。
魔人が力で負かして捕らえたわけではなく、卑怯な手段で儂に枷を嵌めた結果捕らえられたからじゃ。儂は敗けじゃと思っておらんかった。
だから、虎視眈々と枷ごと食いちぎる機会を狙っておった。
だが、いつの頃からか頭に靄がかかったようで思考がおぼつかなくなっていた。
今でこそわかるが、その時の儂は洗脳されていたようじゃ。
状況が一変したのはイーレ村の人間と戦っている時よ。
ぼんやりとした意識の中で、ウロチョロする人間がうっとうしくて潰してやろうとしていた時に、身体中を衝撃が走り抜けたのた。
全身がしびれて身体の自由が利かなくなった。
それと同時に、思考がクリアになっていった。
後に聞くと、儂を撃ったのは雷属性の魔法らしい。
大雨で天候の荒れているときに、轟の音とともに一条の稲光が走るアレの事を雷と呼ぶらしい。
結局、儂はなすすべもなく屈服させられ、偶然とはいえ挙句に魔人の洗脳から助け出された。
これで惚れるなと言う方が無理というもの。
だから、儂はエドワードと一緒に居られるように人型になり猛アタックを仕掛けている。
そこまでは良かったんじゃ。
だが、なぜ儂はこんなことをしておるのじゃろうか?
ふと我に返った儂は自問自答する。が、答えは出ない。
「ヘカテ、次の客が来るわよ。」
給仕服のレインから声を掛けられた思考を停止し、儂は仕事に戻る。
「ようこそいらっしゃいました。ご案内いたします。」
給仕服《戦闘服》に身を包み営業用スマイルで来賓客《獲物》をもてなす。
今、1組のつがいをエスコートしておるのだが…。
それにしても男よ、露骨に儂の胸を見過ぎじゃないか?
確かに儂の豊満な胸は魅力的じゃろうが、隣にいる奥方は良いのか?すごい形相で睨んどるぞ?
あ、爪で引っ掻かれておる。
ふふ、また一人の男を、儂の虜にしてしもうたかのう。
ああ、儂はなんと罪深い女よ。
じゃがすまんな。お主の気持ちには答えられんのじゃ。
そんなことを心の中で思いながら、ヘカテは案内を無事終える。
「何か御用がありましたら、お呼びください。」
儂は案内した客のもとを離れ別の来賓客《獲物》を案内していく。
これが今の儂の仕事じゃ。
本当はレインのように料理やドリンクを運ぶ仕事もあったんじゃが、レインの奴が来賓対応は無理だなんて言うもんじゃから儂が持て成すことになったんじゃ。
※なお、本当はヘカテが料理やドリンクを勝手に飲み食いしてしまうため、レインが配慮したため担当が変更になった。
まぁ、レインは齢13の子ども。まだまだわがままを言いたい年頃よ。
なので儂が融通を聞かせてやったのじゃ。これも年長者の務めじゃ、仕方ない。
「ちょうどいいところに来た。メイドのお嬢ちゃん。仕事だこっちに来な。」
小太りな中年男が下卑た視線を隠そうともせず儂に向けてくる。
手に持っているのはワインボトル。
儂にお酌してもらいたいと言う要望かの?
うーむ、本来なら無礼な視線を向けてくる輩はワンパンものなんじゃが、何を要求してくるのか興味があるの。
そんなことを考えていると、執事が間に入ってきた。
「申し訳ありません、お客様。この者は給仕係でありメイドではありません。
他の方のサポート業務などもありますので、ご指名の方はちょっと…。」
確か名前はモドキ=セーバス。
18歳の爽やかイケメンで、困りごとがあるとさりげなくフォローしてくれる所謂できる男というやつじゃな。
メイドや給仕仲間からの人気も高いが、残念ながら儂は興味が無い。
今回もヘレナが返答を思案している時に、颯爽と現れてフォローをしてきた。
だが、相手の男は酔って気が大きくなっているようだ。
「あぁ、執事ごときが俺の言うことに文句をいうなよ。
俺はレンショー子爵の嫡男だぞ。おい女、こっちでお酌しろ。」
「ちょっと、ま―――」
「良い。儂に任せよ。」
セーバスが男に反論しようとするのを遮る。
こういう輩には何を言っても通じぬからな。
まだまだセーバスも人生経験が足りんようだし、ここは儂が一肌脱ぐとするか。
「分かりました、私で良ければお付き合いしましょう。」
「話が分かるじゃねーか。こっちの部屋だ。ついてきな。」
男は先ほどとはうって変わって上機嫌になっている。
「ヘカテさん」
「良い良い。任せておけ」
ふふ、そう心配そうにするでない、セーバスよ。
迷惑な客はちゃんと黙らせてくるでな。
***
「よう、セーバス。先ほどはすまんかったな。
せっかくフォローしてくれたのに。」
20分後に部屋を出るとセーバスが待機していた。
どうやら、心配で待っていてくれたようだ。
「だ、大丈夫でした?」
「なーに、問題ない。ああ、手荒なことはしておらんよ。
連中、酔いつぶれて眠っておるだけよ。」
あの後、部屋に入るとあの男以外に、3人ほど男が待っていた。
どれも同じように下卑た視線を隠そうともしてなかった。
「酒の飲み比べで私に勝てたら好きにしていいわよ。」
そう言ったら連中、目の色を変えて挑んできおった。
もれなく全員返り討ちにしてやったわ。
「あれ?ヘカテさんて確か13歳でしたよね?
まだ、お酒は飲めない年齢のはずじゃ…。」
女の年齢を聞くなんてデリカシーのない奴じゃな。
…と思ったが、そう言えば人間の姿の時はエドに合わせて13歳に設定したんじゃった。
ああ、そういえばこの国では酒は15歳以上と決まっていた気がする。
15歳まで酒が飲めんとは人間の世界は面倒じゃな。
「いや、私は15よ。誰かと勘違いしてるんじゃない?」
しれっと嘘を吐く。
いや、本当の年齢なら嘘ではないんじゃけどな。一応、13歳だから。
「あれー、そうだったかな。まぁいいか。無事で何よりです。
それじゃ、僕は仕事に戻ります。」
そう言って、セーバスは爽やかに去っていった。
さて、儂も仕事に戻るとするかね。
そんなことを思ってるとき、妙な気配を感じそちらに意識を向けた。
そこには護衛の男が1人と貴族と従者と思われる少女2人がいた。
「あなたがレイドット=リコリア嬢ですね。
私はミュート様直属の護衛ゴリアと申します。ミュート様のことでお話をお聞きしてもよろしいですか?」
口調は丁寧だが護衛はどこか威圧するような雰囲気を醸し出している。
「なんでしょう?」
少女はひるむことなく毅然とした態度で応答する。
「ここではちょっと憚られますので別室でお願いします。」
「どういった内容かお聞きしてからでないとお答えできません。」
メイドの少女が主人の前に庇うように立つ。
「悪いが私は今、伯の代理としてリコリア嬢と話をしているのです。立場を弁えて頂きたい。」
護衛の強い口調にメイドは一瞬怯むがすぐに立て直した。
「事を荒立てたくないでしょう?
場合によっては子爵様をお呼びだてしなきゃならなくなる。」
「ならば呼べばよいでしょう?」
「わかってませんね。そうなると立場が危うくなるのはあなた方の方ですよ?
ここは大人しくついてきてもらった方が利口というもの。」
護衛の言葉に少女は少し思案すると決心をした。
「わかりました。同行します。案内して下さい。」
「ご協力感謝いたします。」
こうして少女達は護衛の男の案内で広場から離れていく。
人間の男はバカなのかのぅ。
下卑た欲望が隠しきれておらんわい。
やれやれ、これも仕事じゃ。
そういってヘカテは彼らの後についていくのだった。
side:ヘカテ
儂の名前はヘカテ。
今は人間の子どもの姿になっているが龍族の女じゃ。
儂ら龍族は強き者を望む。
それが同性の場合なら喰らい我が身の一部とする。
異性の場合は、つがいとなり子供をつくることで同化する。
こうして脈々と力を蓄えてきた。それはもやは龍の本能と言えるだろう。
ある時、儂は魔人に捕らえられていたが、屈してはいなかった。
魔人が力で負かして捕らえたわけではなく、卑怯な手段で儂に枷を嵌めた結果捕らえられたからじゃ。儂は敗けじゃと思っておらんかった。
だから、虎視眈々と枷ごと食いちぎる機会を狙っておった。
だが、いつの頃からか頭に靄がかかったようで思考がおぼつかなくなっていた。
今でこそわかるが、その時の儂は洗脳されていたようじゃ。
状況が一変したのはイーレ村の人間と戦っている時よ。
ぼんやりとした意識の中で、ウロチョロする人間がうっとうしくて潰してやろうとしていた時に、身体中を衝撃が走り抜けたのた。
全身がしびれて身体の自由が利かなくなった。
それと同時に、思考がクリアになっていった。
後に聞くと、儂を撃ったのは雷属性の魔法らしい。
大雨で天候の荒れているときに、轟の音とともに一条の稲光が走るアレの事を雷と呼ぶらしい。
結局、儂はなすすべもなく屈服させられ、偶然とはいえ挙句に魔人の洗脳から助け出された。
これで惚れるなと言う方が無理というもの。
だから、儂はエドワードと一緒に居られるように人型になり猛アタックを仕掛けている。
そこまでは良かったんじゃ。
だが、なぜ儂はこんなことをしておるのじゃろうか?
ふと我に返った儂は自問自答する。が、答えは出ない。
「ヘカテ、次の客が来るわよ。」
給仕服のレインから声を掛けられた思考を停止し、儂は仕事に戻る。
「ようこそいらっしゃいました。ご案内いたします。」
給仕服《戦闘服》に身を包み営業用スマイルで来賓客《獲物》をもてなす。
今、1組のつがいをエスコートしておるのだが…。
それにしても男よ、露骨に儂の胸を見過ぎじゃないか?
確かに儂の豊満な胸は魅力的じゃろうが、隣にいる奥方は良いのか?すごい形相で睨んどるぞ?
あ、爪で引っ掻かれておる。
ふふ、また一人の男を、儂の虜にしてしもうたかのう。
ああ、儂はなんと罪深い女よ。
じゃがすまんな。お主の気持ちには答えられんのじゃ。
そんなことを心の中で思いながら、ヘカテは案内を無事終える。
「何か御用がありましたら、お呼びください。」
儂は案内した客のもとを離れ別の来賓客《獲物》を案内していく。
これが今の儂の仕事じゃ。
本当はレインのように料理やドリンクを運ぶ仕事もあったんじゃが、レインの奴が来賓対応は無理だなんて言うもんじゃから儂が持て成すことになったんじゃ。
※なお、本当はヘカテが料理やドリンクを勝手に飲み食いしてしまうため、レインが配慮したため担当が変更になった。
まぁ、レインは齢13の子ども。まだまだわがままを言いたい年頃よ。
なので儂が融通を聞かせてやったのじゃ。これも年長者の務めじゃ、仕方ない。
「ちょうどいいところに来た。メイドのお嬢ちゃん。仕事だこっちに来な。」
小太りな中年男が下卑た視線を隠そうともせず儂に向けてくる。
手に持っているのはワインボトル。
儂にお酌してもらいたいと言う要望かの?
うーむ、本来なら無礼な視線を向けてくる輩はワンパンものなんじゃが、何を要求してくるのか興味があるの。
そんなことを考えていると、執事が間に入ってきた。
「申し訳ありません、お客様。この者は給仕係でありメイドではありません。
他の方のサポート業務などもありますので、ご指名の方はちょっと…。」
確か名前はモドキ=セーバス。
18歳の爽やかイケメンで、困りごとがあるとさりげなくフォローしてくれる所謂できる男というやつじゃな。
メイドや給仕仲間からの人気も高いが、残念ながら儂は興味が無い。
今回もヘレナが返答を思案している時に、颯爽と現れてフォローをしてきた。
だが、相手の男は酔って気が大きくなっているようだ。
「あぁ、執事ごときが俺の言うことに文句をいうなよ。
俺はレンショー子爵の嫡男だぞ。おい女、こっちでお酌しろ。」
「ちょっと、ま―――」
「良い。儂に任せよ。」
セーバスが男に反論しようとするのを遮る。
こういう輩には何を言っても通じぬからな。
まだまだセーバスも人生経験が足りんようだし、ここは儂が一肌脱ぐとするか。
「分かりました、私で良ければお付き合いしましょう。」
「話が分かるじゃねーか。こっちの部屋だ。ついてきな。」
男は先ほどとはうって変わって上機嫌になっている。
「ヘカテさん」
「良い良い。任せておけ」
ふふ、そう心配そうにするでない、セーバスよ。
迷惑な客はちゃんと黙らせてくるでな。
***
「よう、セーバス。先ほどはすまんかったな。
せっかくフォローしてくれたのに。」
20分後に部屋を出るとセーバスが待機していた。
どうやら、心配で待っていてくれたようだ。
「だ、大丈夫でした?」
「なーに、問題ない。ああ、手荒なことはしておらんよ。
連中、酔いつぶれて眠っておるだけよ。」
あの後、部屋に入るとあの男以外に、3人ほど男が待っていた。
どれも同じように下卑た視線を隠そうともしてなかった。
「酒の飲み比べで私に勝てたら好きにしていいわよ。」
そう言ったら連中、目の色を変えて挑んできおった。
もれなく全員返り討ちにしてやったわ。
「あれ?ヘカテさんて確か13歳でしたよね?
まだ、お酒は飲めない年齢のはずじゃ…。」
女の年齢を聞くなんてデリカシーのない奴じゃな。
…と思ったが、そう言えば人間の姿の時はエドに合わせて13歳に設定したんじゃった。
ああ、そういえばこの国では酒は15歳以上と決まっていた気がする。
15歳まで酒が飲めんとは人間の世界は面倒じゃな。
「いや、私は15よ。誰かと勘違いしてるんじゃない?」
しれっと嘘を吐く。
いや、本当の年齢なら嘘ではないんじゃけどな。一応、13歳だから。
「あれー、そうだったかな。まぁいいか。無事で何よりです。
それじゃ、僕は仕事に戻ります。」
そう言って、セーバスは爽やかに去っていった。
さて、儂も仕事に戻るとするかね。
そんなことを思ってるとき、妙な気配を感じそちらに意識を向けた。
そこには護衛の男が1人と貴族と従者と思われる少女2人がいた。
「あなたがレイドット=リコリア嬢ですね。
私はミュート様直属の護衛ゴリアと申します。ミュート様のことでお話をお聞きしてもよろしいですか?」
口調は丁寧だが護衛はどこか威圧するような雰囲気を醸し出している。
「なんでしょう?」
少女はひるむことなく毅然とした態度で応答する。
「ここではちょっと憚られますので別室でお願いします。」
「どういった内容かお聞きしてからでないとお答えできません。」
メイドの少女が主人の前に庇うように立つ。
「悪いが私は今、伯の代理としてリコリア嬢と話をしているのです。立場を弁えて頂きたい。」
護衛の強い口調にメイドは一瞬怯むがすぐに立て直した。
「事を荒立てたくないでしょう?
場合によっては子爵様をお呼びだてしなきゃならなくなる。」
「ならば呼べばよいでしょう?」
「わかってませんね。そうなると立場が危うくなるのはあなた方の方ですよ?
ここは大人しくついてきてもらった方が利口というもの。」
護衛の言葉に少女は少し思案すると決心をした。
「わかりました。同行します。案内して下さい。」
「ご協力感謝いたします。」
こうして少女達は護衛の男の案内で広場から離れていく。
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