先輩

味方。

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昔話

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忘れられない人が誰しもいる、その人と決して結ばれなくても忘れられない人が。

部活動絶対参加の中学で、陰キャの部活と言えばで確立されてる卓球部に、楽そうだなぁってだけの理由で入部した。運良くなのか、悪いのか、同級生に意味がわからないくらい強い奴が2人居て、みるみるうちに俺の中学は弱小校から強豪校になり、ありがたいことに団体戦のメンバーにも選んでもらい、順当に大会を勝ち進み全国大会目前で敗退し3年間を締めくくった。

卓球が好きになってた、だから高校でも迷わず卓球部に入った、そこであなたと出会った。

あなたには高2にして既に他校に交際4年目の彼氏がいた、あなたに彼氏がいることに気付いたころはもうあなたのことが好きだった、3年が引退してあなたは部長になった、後から知った話だが裏でファンクラブがあるなんて噂があるほどかわいい顔で、愛想もよく、もちろん卓球も上手だった、先輩にかなりかわいがられたおかげで僕が卓球部男女含め一年生代表に選ばれた、その時から部活のことで同学年には相談しにくいことをLINEで相談されるようになり、いつしか部活かかわりなく先輩の相談や、部長としての悩みやいろいろなことを打ち明けてくれるようになった。そのころからはほかの一年があなたを先輩呼びする中、先輩はみんな後輩を君付けちゃん付けする中お互い呼び方が呼び捨てになったり、平気で昼休みに僕を探しにわざわざ一年生の棟に来たり、部活内に限らず2年のあの子とめっちゃ仲良い一年いるらしいと学校で噂になった。入学してあなたと知り合ってわずか2か月足らずの出来事だ。

今でも覚えてる、6月頭、練習試合、あなたは調子が悪く負けず嫌いゆえに一人で泣いてた、泣き止んでミーティングが終わり僕をカラオケに誘ってきた。学校外で二人きりは初めてだった、彼氏と喧嘩してることを教えてくれた、あなたはほかの人より恋愛においていわゆる重たいなんて言われる性格をしていた。そんなところにも何だか魅力に見えた。そしてあなたは僕の歌を聞いて泣いてくれた。褒めてくれた。そこからはなんだかトントン拍子だった、いつの間にかすぐ隣に座っていて歌なんか歌うことなく田舎の高校生らしくカラオケルームでただの仲の良い先輩後輩ではない、一線を一緒に越えた。

それからあなたは定期的にカラオケに誘ってきた、彼氏に内緒で。

あなたは僕の気持ちにおそらく気付いていた、いつも「ごめんね、人目のつかないカラオケにしか来れなくて」と謝っていた。時間は流れ年が変わり1月頃だろうかLINEが来ない日が続いた、彼氏にばれたらしい。
原因はこっそり大会に応援に来ていた彼氏が異常なほど仲良くしてる僕らを見かけて問い詰めたらしい、そのころには僕も立派に重たい歪んだ思考を持ち合わせていた、つらかった。会えないこと、僕のせいで幸せを奪ってしまった、罪悪感と喪失感といろんな感情が入り乱れた。そして君に褒められた歌をもっと歌いたい、人として成長したい、何よりあなたから離れるために1年の修了式、3月、親友にだけ事を告げあなたにもクラスメイトにも誰にも何も言わず僕は通信制の高校に転学した。

別々の高校でお互い進級した、毎日のように親友からLINEが来た。「先輩怒ってるよ、顔出しに来ない?」
時は流れ秋のとある男女混合ダブルスの大会、来年一緒に組んで出場しようと約束した大会。あなたは俺の親友と組んで出場していた。授業もなくバイト退勤間近の17時ごろ、俺に親友からLINEが来た、「準決勝った、次勝てば優勝、おまえの分も頑張るって言ってる、今すぐ来い」。店長に頭下げてローソンのユニフォーム投げて自転車にまたがった。

会場に到着した、決勝は終わっていたあなたと親友のペアはフルセットの闘いを経て負けていた、準優勝。
表彰式が終わりあなたは僕の服を引っ張り、応援に来るのが遅いと怒り、会いたかったと泣いていた。いや汗かもしれないけどあの顔はカラオケでよく見た懐かしい泣き顔だった。

それから親友と3人で飯に行った、部活のこと、俺のバンドのこと、バイトの事、そして結局あなたが僕が原因で彼氏と別れていたこと。積もる話はあまりにも多かった、でもそれからあなたとは連絡はたまにするものの約1年会わなくなる、受験で忙しくなり新学期になると大学進学に向け僕は忙しくなりあなたは専門学生として一人暮らしを始め僕にあこがれ軽音部に、それぞれ進みだした。

そして僕の大学進学が決まった。引っ越し1週間前、あなたの一人暮らしする街まで会いに行く。朝から晩まで手を繋ぎありきたりなデートをして、夕食後年確をすり抜けお酒を買ってカラオケに入る。
高校生ではないってだけであなたは大人に見えた。別人に見えたけど、何も変わってない心が愛おしかった。相変わらず歌は上手だし、酔っぱらったあなたは特にかわいかった。ゼロ距離ですぐ隣で歌うあなたの横顔があまりにも綺麗でもう見れなくなると思うと心が痛かったのを覚えてる。寂しさと悲しさで度々バレないように涙を流しながら歌を聴いていた。始発の電車がくる1時間ほど前、カラオケを出る支度をしてる僕を急に抱きしめ「高校卒業、大学進学おめでとう。お互い波乱万丈で良い思い出だね、出会ってくれて好きになってくれてありがとう、私もずっと大好きで特別だったよ」と泣きながらぐちゃぐちゃな顔で伝えてくれた。お互いバレないように泣いてたのに結局最後は隠しきれず崩れ落ちたあの瞬間は今でも覚えてる。

地元を出て大学を卒業して2023年になった。あの日からあなたには2回ほど会った、でも決して2人きりではなく卓球部の飲み会としてだ、毎年、夏と冬に飲み会をしてる。わがままな理由で1年しか通ってない高校の部活の集まりなのに、あなたのおかげで毎回誘ってもらってる。忙しくてたったの2回しか参加できてない、しかもその2回目はもう3年も前のこと、だけど今季の冬も、来ない?と言ってくれた。今のあなたがどんな風なのか想像できない、声も思い出せない、親友曰く、変わってない。とのことだ。可愛くて、うるさくて、酒癖悪くて、ベタベタくっついてきて、歌が上手いのだろうか。

ありがとうはこっちのセリフなのに泣きながらありがとうを伝えてくれたあなたを今でも忘れない、きっと死ぬまで忘れない。間違いなく僕という人格を作った重要な1人だ。ありがとう。また卓球部OBOG飲み会誘ってくれ、今度こそ顔出すからその時は二次会でカラオケに行こう、もちろんみんなで、2人きりなんてありえない俺とあなたで元バンドマン仲良しコンビ暴れてやろう




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