新月の光

恵あかり

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第二部 紅陽(完結)

4 縦糸横糸

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 東雨は乱れた襟を整えて、何事もなかった体を装う。
 今はまず、目の前のことをせねばならない。
 厨房に向かう途中、中庭を所在なさげにうろついていた蓮章を見かけ、東雨はいつもの『顔』をつくった。
「蓮章様」
 まるで、姿を見つけて嬉しそうに声をかけた、という雰囲気を演出し、東雨は手を振った。
 東雨は蓮章を、屋敷の東棟に並ぶ部屋のひとつへと案内した。涼景が泊まりがけで来る場合に使っている客間だ。
「ここ、使ってください」
 普段は締め切っている引き戸を開けると、中庭の景色が広がり、その向こうに見える西棟の屋根の上から、傾きかけた陽の光が柔らかく差し込んできた。
 壁際に一人用の牀、油灯を乗せた文机と毛氈、木製の几架きかと衣箱が置かれている。
 一人で使うには十分な、ゆったりと過ごせる広さがある。
 最低限の寝具を揃え、灯火の皿に油を足しながら、東雨はいかにも機嫌がいい。
「うちでは、まだ、火鉢は贅沢品なので、暖かく着込んでいてください」
「お構いなく」
 最初からあてにはしていない、と蓮章はさらっと応じた。
 持ち込んでいた少しの荷物を手早く整理すると、蓮章は回廊ごしに庭を見た。屋敷は、庭を取り囲む造りをしている。ここからは、全ての部屋を確認できる。
「親王の寝顔も覗けるな」

「どこで何をしていても丸見えです」
 と、東雨はなぜか自慢げだった。
「若様、これくらいの寒さなら、まだ、戸を開け放してお休みになりますので」
 蓮章が呆れたように、
「そういう野生味、涼景と同じだな」
 涼景の名前を聞いて、東雨は一瞬、緊張した。
 だが、表情には出さない。こういう時は、とにかく『無駄に笑顔』になるのがよい。それが自分の心を隠す秘策なのだ。
「俺、夕飯の支度してきますから。のんびりしててください」
「のんびりって、おまえ、俺は警護に……」
 と言いかけて、蓮章は言うのをやめた。
「……そうだな。表には暁もいるし、いざ何かあったら親王も剣を使えるし。どうにかなるか」
 と、蓮章は牀の上にごろっと横になり、深い呼吸をひとつして、眠りに落ちる。よほど疲れていたと見えて、あっという間だ。
 この人、本当に休暇できたのかな。
 東雨は思わず苦笑した。
 てっきり、涼景が自分を見張るために蓮章を送り込んだのかと思ったけれど……いや、待てよ。これは俺を油断させるための作戦かもしれない。
 じっと様子を伺うが、蓮章は本気で寝ているようだ。
 東雨は、閉じられた色薄いまぶたをじっと見た。
「寝ているふり……じゃないよな」
 静かな寝息は、どう見ても本物だった。
 それにしても……
 東雨は少し口をとがらせた。
 若様といい、光理様といい、蓮章様といい……なんでこんなに綺麗なんだよ。
 美的感覚は個人それぞれに違うものだが、ある程度大多数に受け入れられる美しさが存在するのも事実である。
 東雨は昔から、美しいものに弱い。素直に、綺麗なものは綺麗だと思う。
 そのあまりにもまっすぐな感想は、時に相手を困惑させるが、東雨としては、良いものは良いのだ、と疑問を挟まない。
 この屋敷は、今、美人ばかりだ。
「さて、今夜は何を作ろうか」
 と、少し浮かれた気分で厨房に向かう。
 中庭の向こうを見れば、ちょうど犀星の姿が寝室に見えた。玲陽と二人で並んでいるようだ。
 東雨は行き先を変え、足音を忍ばせて回廊を回り、柱の陰から犀星の私室を覗いた。そこからは、部屋続きに寝室の様子が見える。
 息をひそめながら、そっと聞き耳を立てる。
「よく、がんばったな」
 と犀星の声が聞こえる。
「私、おかしくありませんでしたか?」
 玲陽が、心細そうな声で言った。
 先ほどの、涼景たちとのやりとりのことだろう。
 おかしくなかったかと言われれば、おかしかったけれど……
 と、東雨は思った。
「大丈夫だ。心配しなくていい。陽はよくがんばっていた」
 と犀星が繰り返す。
 姿は見えないが、おそらく手でも握っているのだろう。東雨は、彼らが体を離しているところを、ここ最近見た記憶がない。
 大根を干している時も、犀星は部屋の中から常に玲陽が見える位置に座っていたくらいだ。
 もし、こんな状態が続くとしたら、若様、仕事できるんだろうか。
 東雨は一瞬不安になった。
 犀星が仕事をしないからといって、都の政治が止まるわけではないが、大勢ががっかりするのは間違いない。
 少なくとも、東雨は困る。面白くない。
 犀星がやることは色々と難しく、東雨には詳しいことはわからない。だが、それがこの都を変えていることは明白だった。
 花街の治水も、北の農地の改良の件もそうだ。都の中でも、犀星に水網の区画整備を頼む声が高まっている。宮中での発言力も、急速に高まっていた。
 これから、どんなすごいことをやるのだろう。
 と、東雨は楽しみなのだ。犀星のような主君は、侍童として自慢でもある。
 だが、このまま犀星が玲陽のことだけを考えて、閉じこもるようになってしまったら……
 そう思うと、悔しくてならない。
 光理様が若様を駄目にする。
 胸の中に、冷たく乾いた風が、ヒュッと吹いた。
 ささやくような二人の声が聞こえてくる。いたわり、励ます言葉。
 東雨は、腹立たしさを感じた。
 若様ともあろう者が、情けない。
 蒼氷《あお》の親王と呼ばれ、都中の羨望と尊敬を集めた。期待以上の成果を上げ、驚愕をもってみなを魅了してきた主人はどこへ行ったのだ?
 東雨が憧れ、その背中を追いかけてきた犀星は、こんな男ではなかったはずなのに。
 ……玲陽が犀星を変えてしまった。
 先ほど蓮章が犀星を見て、呆然としていた時には、東雨も一緒になって笑えたが、今はとてもそんな気持ちにはなれなかった。
 笑い事じゃない!
 悔しさがこみ上げてくる。
 初めて玲陽に会った時、その美しさや柔らかな雰囲気、穏やかさに憧れ、仲良くなりたいと素直に思った。
 なのに、今は……
 何なんだろう、この気持ちは。
 東雨は自分の中の得体の知れないものと向き合っていた。その正体を知ってしまうのが恐ろしかったが、わからないままにしておくのも気持ちが悪い。
 どうしたらいいのか、誰に話したらいいのか、いや、人に話すことではないのだろうか。
 東雨の考えはあちらこちらを行ったり来たりしながら、結局出口が見つからない。
 ……どうしよう、頭が混乱する!
 ふっと部屋の中に風が吹いた。
 中庭からの風かと思ったが、そうではなかった。
 東雨が目を開けると、視界の中に犀星が立っていた。
 少し眉を寄せるようにして、じっとこちらを見ている。
 東雨は見惚れ、そして、狼狽えた。
「若様……」
 視線を泳がせて、それからぎこちなく笑う。無邪気な仮面がかぶれない。頭の後ろがしびれて、言葉が続かなかった。
「大丈夫か?」
 と犀星がつぶやく。東雨は何も返せなかった。
 犀星は心配そうな目のまま、なおもこちらを見つめている。
 東雨はとうとう、顔をそらした。
「顔色が悪い」
「……俺は大丈夫です」
 東雨は表面だけでも元気を出そうとしたが、なぜか声は沈み、わずかに震えていた。
「大丈夫には見えないが……」
「夕食を作らないと!」
 東雨はまるで、聞きたくない、というように声を上げた。
 その様子に、犀星は心配を色濃くする。犀星の後ろから、そっと玲陽が覗いた。
「あの、私が作ります……」
 当然、犀星が止めるものと、東雨は思っていた。
 どうせ、陽は無理をするな、などと言って庇うに決まっている……
「そうか。ありがとう。頼む」
 え?
 東雨は顔を上げた。玲陽がにっこりと笑って東雨を見ていた。
「東雨どのは、休んでいてください」
「お……俺もやります!」
 気がつくと、東雨は叫んでいた。自分でも、どうしてそんなことを口走ったのか、わからなかった。
「では、ふたりに任せる」
 犀星が、ふわりと微笑んだ。
 思わず、東雨は犀星の笑顔に目を見張った。それは、自分だけではなく、玲陽に向けられたものでもあったが、それでも、東雨は嬉しかった。
 直前まで、気持ちを支配していたもやもやしたものが、心の底に沈んでいった。

 夕食の片付けを終えて、東雨は厨房の隅に座っていた。回廊の端にあるため、厨房からは中庭が見えない。それが、東雨には居心地がよかった。見えてしまうと、どうしても庭の向こう側の部屋が気になってならない。今はあまり近づきたくなかった。
 犀星と玲陽の親しい関係は、とっくにわかっていたはずなのに、なぜか、やたらと孤独を感じてしまう。
 厨房は人目にもつきにくく、入り口も狭い。誰かが来ればすぐにわかる。
 明日の朝食のために仕込みをしておこうと思ったが、どうしても腰が重かった。急ぐことはない。犀星たちが部屋に戻った後は、東雨の自由になる時間である。急ぐことはなかった。
 煙抜きから、柔らかい月の光が滑り込んできた。東雨は右手を見た。そこには、うっすらと紫色に変わった圧迫の痕が残されていた。
 手首を握った涼景の力と、最後の横顔が蘇ってきて、東雨は胸が苦しかった。忘れたいのに、どうしても消えてくれない記憶だった。
 先ほど夕食の支度をしながら、玲陽はめざとく、東雨のアザを見つけ、どうしたのか、と問いかけてきた。優しい彼の顔がちらちらと目に浮かぶ。東雨は、ぶつけたかもしれない、と笑ったが、きっと見抜かれているだろう。玲陽は長い間、似たような傷を数えきれないほど受けてきた。一目で嘘とわかったはずだ。
 だが、玲陽は問い詰めることはしなかった。気遣わしげに目を細めて、無理をしないで、と一言だけで、そっとしておいてくれた。
 どうして俺に構うんだよ。
 東雨は持て余したように、どこか遠くに目を向けた。
 自分のこともまともにできないのに、俺になんか構っている場合かよ……
 一緒に火をおこし、粟飯を炊き、菜葉を刻んで鶏肉を煮た。その間は、何も考えずに済んだ。不思議なくらいに、楽しかった。だというのに、一人になると急に頭が冴えてしまう。
 ……俺、一体何やってんだ?
 周りに翻弄されるのは嫌いだ。
 自分は自分でいたい。
 玲陽のことを考えると、犀星のことがつながってくる。
 犀星のことを思えば、皇帝の声が自分を縛る。
 結局、自分は自分ですらいられない現実に突き当たってしまう。
 今まで、疑問を持っても忘れる余裕があった。それが今は、逃げ場を見失っていた。
 しん、と静まった屋敷の中は、まるで誰もいないかのようだ。
 東雨は懐を探った。硬いものが指先に触れる。そっと取り出し、東雨は顔の前で眺めた。
 握りこぶし二つ半ほどの、小ぶりだが重厚感のある懐刀である。ずっと忍ばせていたため、東雨の体温を吸って、柔らかく暖かかった。しっとりと手に馴染む。美しい藍の鞘に、銀色の雲の文様がうっすらと入り、月明かりの下に幻想的な美しさで浮かび上がっている。
 鞘の先に近いあたりに、優雅に毛並みがなびく獅子の絵がある。獅子の目は穏やかだが、どこか、寂しそうだった。
 柄の端に埋め込まれた青い石が、まるで氷のように冷たく輝いていた。
 東雨は両手でそっと刀を抜いた。鞘を引くと、小口がカチャリと鳴り、美しい刃紋がすらすらと姿を表す。月の光がその刃に跳ねて舞う。鍔に近いあたりに一文字、『涼』の銘があった。
 東雨は不思議でならない。なぜ自分は、今もなお、この刀を手放せずにいるのだろう。
 手首は、まだかすかに痛い。自分の体を掴み上げた力。あの時の手首と肩の痛み、圧倒的な存在感で自分を支配した眼差し。自分に起きた全てが夢のようだ。
 恐ろしかったはずなのに、東雨は繰り返し、あの瞬間を思い出していた。自分を見つめた涼景の深い瞳、それは間違いなく自分だけに向けられたものだった。
 あんなことがあって、もう関わりたくないはずなのに……
 あの時、涼景は何かを言おうとしていた。
『おまえは……』
 犀星のことでも、玲陽や宝順のことでもなく、俺のことを知りたかった?
「何が、言いたかったんだよ……?」
 せめてそれだけでも知りたかった。
 鞘から半分抜いた刀身を見つめながら、東雨の声はどこか泣きそうに震えていた。
 と、そのとき、屋敷の奥から柔らかな気配が近づいてきた。
 東雨は顔を上げた。蓮章だ。
 蓮章の薄紫の衣に焚き染められた香りが、寒い空気によく溶けて、スッと鼻の奥に入ってくる。
「こんなところで、まだ仕事か?」
 蓮章は静かに尋ねた。
「今、片付けを終えたところなんです」
 東雨は当たり前のように答えた。
「明日の朝の仕込みをしようと思ったんですが、少し疲れたので怠けていました」
 と照れたように笑う。それは半分は本当だ。
 蓮章は勝手に厨房の中を探ると、酒瓶と盃を手に東雨の隣に座った。
「この酒、前に涼が持ってきたやつだろ」
 と、酒瓶をかかげた。東雨は頷いた。
「はい、全部飲んじゃっていいですよ。うちでは誰も飲みませんから」
「おまえも?」
「俺はまだ…… でも、多分、苦手だと思います。匂いがあまり好きじゃないので」
 と東雨は素直に答える。
「親王も弱いしな」
「はい。若様、いつもよりさらに無口になって、すぐ寝ちゃいますから」
 犀星の話をするとき、東雨は自然と笑顔になる。仮面はいらなかった。
「そうだな、涼景もなんだかんだで付き合い悪いし」
 言いながら、蓮章は自分で手酌して飲み始める。
「いや、蓮章様が強すぎるのだと思います」
 と、東雨は呆れ顔だ。
 酒に関して蓮章は底なしで、どんなに飲んでも酔うということがない。酒も薬も効かない体質だ、と冗談混じりに聞いたことがあった。酔って暴れるよりはマシだと思うが、酔えないのに飲んで楽しいのだろうか、と、東雨は気になっている。



 蓮章は、ちらりと東雨の膝の上を見た。そして、なんでもないというような口調で言った。
「その刀、涼景のだろう」
 涼景と親しい蓮章が知っていても、おかしくはない。
 東雨は少し言いにくそうに、
「……別に盗んだ、とかじゃないですから」
 と弁解をした。蓮章は小さく笑って、
「そんなことは思ってないさ」
 と、盃を空ける。
「ただ、どんないきさつでお前の手に渡ったのか、と思ってな」
 絶対に答えろ、という気迫が、そこには滲んでいた。それはまるで、思いを寄せる相手が、別の相手に贈り物をしたのを目撃した、という言い方だ。
 涼景と蓮章は幼馴染みだ。東雨が見たところによると、ただの友情という感じでもない。少なくとも、蓮章は涼景に強い執着を持っているように思える。
 嫉妬すんなよ、大人気ない。
 東雨は、心ひそかにため息をついた。
「情けない話なんです」
 東雨は、そう切り出して、思い出話を始めた。
「歌仙にいたとき、俺、女の子に剣術で負かされてしまって」
 蓮章は二杯目の酒を注ぎながら黙って聞いている。
「光理様の妹で……」
「もしかして、凛か?」
 蓮章が口をはさんだ。
「はい、蓮章様、ご存知なんですか?」
「直接会ったことはないが、涼景からよく話を聞いている。とんでもなく強いやつがいるってな」
「はい。あれはもう人じゃありません」
 負けても仕方がない、という自己弁護が込められていた。
 わかったわかった、と蓮章は軽く受け流し、
「それで?」
 と話の続きを促した。東雨はゆっくりと続けた。
「それで、俺があまりにも情けないから……」
 一度声を落としてから、
「仕方なく、涼景様が護身用にと、これをくれたんです」
 蓮章はすでに三杯目に口をつけている。
「短刀を護身用に? 普通の刀も、まともに扱えないのに?」
 蓮章の発言は正論だが、わずかに残されていた東雨の剣士としての矜持は無視された。
 相変わらず、言葉に棘があるな、と思いながら、
「その通りです……だからこの刀には、毒が塗ってあった。俺の腕でも、相手に傷を負わせるだけで殺せるように」
 蓮章はもう一度、ちらっと刀身を確かめる。
「毒、ね。だが、今見る限りそんな痕跡はなさそうだな」
 東雨は感情を読まれまいと、そのままの顔を作り続ける。心に動揺が生まれたときには、あえて何かせずに、直前のまま固まるのが東雨のやり方だった。それからどんな顔をしようかと考えて、しっかり決めてから顔を作る。いまは『臆病な東雨』を演じることに決まった。
「すごく強い毒だったんで、俺、持ってるのが怖くて洗っちゃいました」
 俺ってダメなやつなんです、と、誤魔化しの笑みを満面にたたえる。蓮章は少し黙ってから、声を低めた。
「そうか、血と一緒に洗い流したか?」
 ぞくっと東雨は全身の産毛が逆だった。それでも笑顔は崩さない。
「血って、なんですか? 俺に人が殺せるわけないじゃないですか」
 自分は無力だから何もできない、というような卑屈な顔だ。
 蓮章は、東雨の言葉を信じたように笑顔になった。
「そりゃ、そうか!」
 そう言ってから、不意に蓮章は東雨から視線をそらした。
「血液は洗っても簡単には落ちない。小口のあたりに色が残ってる」
 ハッとして、東雨は思わずパチンと刀を鞘に収めた。その後、しまった、と、青ざめる。
 蓮章は冷たい表情を浮かべた。
 東雨は自分の未熟さを呪った。
 こんな簡単な誘導に引っかかるなんて……
 どんなに表情が出ないようにしたつもりでも、体は正直だった。
「誰を、斬った?」
 東雨は頭をじっと下げたまま、足元を見た。それから、ゆっくりと答えた。
「蓮章様の知らない人ですよ」
 東雨が初めて殺めたのは、玲陽を傷つけ、犀星を苦しめた男だった。
「蓮章様」
 東雨は笑うのをやめていた。
「俺、罪に問われるんでしょうか?」
 後悔はしていない。けれど、罪の意識はあった。苦しくないわけではないが、受け入れていた。
 蓮章は、もう何杯目かもわからない盃をあおった。
「たとえお前が人を斬っていても、罪には問われない」
 蓮章の声に、東雨を非難する色はない。
「どうして?」
 東雨は目線を落としたまま、つぶやいた。蓮章はどこか寂しげな表情を浮かべた。
「お前がその刀を持っているからだ」
「え?」
「そいつはただの懐刀じゃない。燕涼景そのものだ。それがおまえの手の中にあるということは、おまえが行うすべてのことに、涼景が責任を持つという覚悟だ。おまえが罪を負うことはない」
 東雨は視線をさまよわせた。蓮章を見ることも、刀を見ることもできなかった。
 何を見ていいのか、何を考えていいのかもわからなかった。そんな東雨の様子を、蓮章はじっと横目で見た。
「そういうことだよ」
「そういうこと……?」
 東雨の刀を握る手が震えていた。
 自分のことを皇帝の間者だと見抜き、犀星への裏切りを懸念し、決して油断せずに警戒を解かない涼景が、どうして俺の罪を背負うような真似をする?
 これではまるで、自分は涼景に守られているのも同じではないか。
 どうして……
 東雨は目眩がして、しばらく声が出なかった。
 ……わからない。涼景が、わからない。
 「蓮章様」
 東雨は追い詰められ、蓮章を呼んだ。
「教えてください。涼景ってどんな人なんですか?」
 と、どこか大人びた声で言った。蓮章は一度目を開き、そして細めた。
 『涼景』と呼び捨てにした一言が、東雨の全てを表していることを、蓮章は悟っていた。
 低く、鋭く、蓮章は答えた。
「あいつは、お前が手を出していい相手ではない」
 その言葉が東雨の全身を駆け抜けた。決定的な何かを突きつけられ、そして突き放された感覚。自分の居場所を見失うような、いたたまれない恐怖。
「そして」
 と、蓮章は弱々しく付け加えた。
「俺にも手が届かない人だ」
 何故かその声が泣いているように、東雨には思えた。
 この人は、やはりあの人を想っている。でも、あの人は……
 頭の中が熱くなる。自分の体が意識と離れて遠のいていくように感じる。何かに流されそうになる。流されてしまいたいと思い、それはいけない、と踏みとどまる。
「……そういうこと、だよ」
 蓮章は言うと、酒瓶と杯を持ったまま、東雨のそばをそっと離れた。
 水瓶の端に、月の光が静かに差している。
 東雨はいつしか、刀を胸に抱きしめていた。そうしていると、心が強くなるようだ。もうしばらく、こうして抱いていようと思った。
 すでにそれが答えである気さえしたが、それ以上は考えたくなかった。
 静かに、闇が揺れてきて、夜が深まっていく。
 俺は、どうしたらいい?
 問いかけ、刀を強く握る。その瞳はまるで、犀星の手を握る玲陽のようであった。

 何か色もわからない泥のようなものがぐるぐると頭の中で回り、その何重にも重なった渦の中心に飲み込まれていくような錯覚があった。
 耳のまわりで大きな音が鳴り続き、どうしてもそれを振り払うことができない。神経を掴まれて容赦なく締め上げられ、どこにも逃げ場がない中で、もがいてもがいて息が止まりそうになり、気が遠くなって何かを覚悟した途端、全身がびくんと跳ね、玲陽は目を覚ました。
 体は、本当に動いたらしかった。筋肉がこわばってかすかに痙攣しいる。手足の先が痺れ、吐き気がする。自分はどうにかなってしまったのではないか、このまま死んでしまうのでは、という恐れが、熱い血と共に身体中を巡っていた。
 しばらくは、自分がどこにいるのかわからず、ただ闇の中に目を向けていた。薄く、ぼんやりと光る月の輝きだけが、そっと彼を包んでいた。
 やがて目が慣れ、部屋の壁がうっすらと見えてくる。玲陽は目線を直線的に動かして、あたりを確かめた。
 わずかに見覚えがある。
 そうだ。ここは都・紅蘭だ。そして犀星が暮らす家だ。自分は、自分のために用意された寝室の、牀の上にいる。
 どくん、と心臓が鳴る。今、何かが動いた。ぞっとして玲陽は体を縮めた。
 ……部屋の角、あの暗がりで何かがじっと……今、何か……
 ……何か、などいない。何かとはなんだ?
 天井の隅で、あのついたての陰で、柱の向こうで……
 あの欄間の隙間、そこから差し込むのは青白い月の光……
 玲陽はゆっくりと息を吐く。ここには、誰も、いない。
 誰もいないことは、玲陽にとって幸せなのか、それとも孤独なのか。
 褥に包まれていた体は暖かかったが、顔は冷たい。
 都の夜の空気は、こんなにも凍えるのだろうか。
 まだ冬も始めだというのに、今からこれでは厳しい時期は、どれほど辛いだろう。
 玲陽は自分の胸に手を当てた。心臓の響きが指先に伝わる。いつだったか、この音を止めたくないと、生きていたいと願った。
 あの時の気持ちは、決して嘘ではなかった。
 しかし、今は、どうして生き残れると思ったのか、何か根本的なものが不確かだった。漠然とした恐怖。
 自分が、何に怯えているのかもわからない。
 一人になると蘇る思い出したくもない日々。思い出したくないのに、忘れることもできない日々。
 ただの記憶だったはずの映像が、いつのまにか肥大して、得体の知れない巨大なものに変わり、自分を閉じ込めている。
 逃げ道がわからない。内側から切り裂かれるようであり、外側から押しつぶされるようでもある。
 どんなわずかな兆候も、見逃してはならない。それはすべて自分に向けられた敵意なのだ。
 怖い。
 玲陽は体を縮め、目は閉じたり開いたりをせわしなく繰り返した。
 目を閉じれば、わからないものに飲み込まれてしまいそうで。
 だが、目を開ければ、恐ろしいものを見てしまいそうで。
 どうしていいかわからない。
 どうしていいか、誰に助けを求めれば良いのだろう。
 ……誰に? ああ、それなら……それだけならわかる!
 玲陽は、うまく動かせない身体をどうにか引きずって、牀を降りた。
 素足に触れる床が冷たい。ひやりと冷気が足先から這い上がってきたが、むしろそれは確かに自分が生きているという感覚でさえある。
 そうだ。生きていたい。なぜそう思えるのか。それはただ一つ、あのぬくもりがあるからだ。
 玲陽は、そっと部屋を出た。すぐ目の前に犀星の休む寝室がある。ついたての影を通り、そっと近づく。下ろした薄い帳の奥で、犀星は静かに眠っている。
 玲陽は今までも何度か、こうして夜中に犀星の姿を確かめに来た。いつもじっとその寝顔を見つめ、心が落ち着くのを待ってから、自分の部屋に戻る。それが玲陽の、真夜中の静かな習慣になっていた。
 しかし、今夜はとても、一人の部屋に戻れそうもない。
 玲陽は一歩、牀に近づいた。そして、帳をそっと手で払い、中に入る。
 直接見下ろす犀星の寝顔はとても静かで、透き通っている。額に浮かんだ自分と同じ炎の刻印が、夜の青白い空気の中でしっとりと濡れたように肌を彩っていた。
 玲陽はそっと、牀の縁に腰掛けた。美しい寝顔を見下ろす。
 歌仙で、犀星がよくこうやって自分を見守ってくれていたと思い出した。あの時、犀星の目に自分はどう映っていたのだろう。
 玲陽は息を殺し、手を伸ばした。触れたいけれど、起こしてしまうのは可哀想だ。
 自分のために、犀星が毎日どれだけ心を尽くしてくれていることか。せめて眠る時くらいは、安らかでいてほしい。
 玲陽は、伸ばした手を途中で握りしめ、触れたい思いをこらえた。
 まるでそんな玲陽の気持ちを感じ取ったかのように、犀星は静かに、前ぶれなく目を開けた。
「……陽?」
 あ、と、小さな声が玲陽の唇からこぼれる。
 月の光を映し、犀星の青い瞳が、小さな泉のようにきらめいて揺れる。その瞳には、うっすらと涙が浮かんでいるのだろうか、本当に星《ほし》の光が宿ったように輝いていた。
 ゆっくりと開かれた目は、暗がりでも迷いなく玲陽を見つける。少し驚いたようだったが、すぐに犀星は笑みをたたえた。
 その顔は、玲陽の心を落ち着けてくれる。玲陽の意識を脅かしていたわけのわからない恐怖が去り、代わりに世界が静まって暖かさを増してゆく。
 夜の空気で冷えた頬さえ、もう辛くはない。
 玲陽はじっと犀星の顔を見つめた。薄く、ぼんやりとした光の中で、それでも決して見失いたくないその姿。
 犀星は何も言わず、ただ体をわずかにずらした。
 ここにおいで、と言われた気がして、玲陽はゆっくりと、犀星の隣に体を滑り込ませた。
 触れ合った足の暖かさ。わずかな間、部屋の中を歩いていただけなのに、玲陽の足は既に冷えていた。
 だが、それも犀星のぬくもりがすぐに包み込む。まるで明け方に張った薄氷を、朝日が解かしていくようだ。音もなく、吸い込まれるような熱に玲陽は心地よく目を閉じる。
 犀星の腕が優しく伸びてきて、玲陽の肩に触れ、そっと引き寄せる。
 顔を犀星の胸元に寄せて、玲陽はゆっくりと呼吸した。優しい香りに胸の中までが満たされた。
 昔と変わらない。甘く、心を優しく撫でるような匂い。
 この世で一番自分が安心できる場所が、ここにあった。
 ……帰ってきたんだ。
 ため息をついて玲陽は身を寄せ、そして子供のようにその胸にすがる。
 彼が望むままに、犀星は抱き返してくれた。その様子は、玲陽の心を読み取っているかのように自然だった。
 たまらなくなって、玲陽は体を縮め、犀星にすり寄った。
 全身が着物越しにぴったりと重なって、どこからも犀星の体温が感じられる。
 肌の下の血の流れまで、直接伝わってくるのが心地良い。
 さらに、その奥の心臓の拍動も、さらにさらに深くの犀星の魂の在り様までもが、惜しげもなく玲陽に差し出されている気がした。
 今、私はこの人の命に触れている。
 玲陽はそう思った。
「陽……」
 声が玲陽の耳の奥の敏感なところで、何度か反響した。
 その響きは甘く、自分の心に直接染みてくる。
 こんなにも心の底に届く音が、他にあるだろうか。
 先ほどまで夢の中で鳴り響いていた恐ろしい音も、もう聞こえない。
 今、自分を呼ぶこの声に比べたら、この世界には他に聞くべきものなど何もない。
 体温も、声も、匂いも、そして目を開いたときに、すぐそばで見つめることができる瞳も。
 すべてが犀星なのだ。
 ため息のような、嘆きのような声を玲陽は上げた。
 そしてたまらないと言うように、伸び上がり、犀星の耳に頬ずりする。
 冷たい自分の肌。
 暖かな犀星の肌。
「……あなたの熱をください」
 玲陽はささやいた。
「あなたの命にもっと、触れさせてください」
 切なる願いが言葉となって、月の光が奏でる旋律のような声色に乗せ、つむがれる。それは玲陽から犀星へ、しっかりと伝わっていく。
 長い金色の髪を指ですいて、犀星は丁寧に撫でた。
 そしてそっと額に口づける。
 柔らかなその感触に、玲陽はわずかに震えて、目を閉じた。
 そのまぶたにも、犀星の口づけが降りる。
 ゆっくりと玲陽を知るように、唇で触れる。まぶたから鼻筋、頬、顎、喉へと、たどっていく。
 玲陽の肌の奥の命も、心も、すべてを、犀星は受け取ることができる。
 それはすでに、犀星の前に捧げられているのだから。
 玲陽の吐息に応えるように、犀星は熱く息を漏らした。
 肌がしっかりと熱を感じ、玲陽の体の奥で熱い炎がひときわ強く燃える。
 犀星は顔をすり寄せ、玲陽の耳にも甘く口づけを落とす。
 一つ一つ、丁寧に、丁寧に、思いを込めて。
「……陽」
 深く息を整え、犀星は身を寄せて、玲陽の腰に手をかけた。
 玲陽は両手を胸の前に抱いて、そのまま体を預けるようにして目を閉じている。
「はい」
 優しい声で玲陽は返事をした。
 犀星は玲陽の髪をそっと嗅ぎながら、ささやくように言う。
「……今日から一緒に寝ないか。お前さえよければ」
 玲陽は閉じていた目を開けた。
 そばにある犀星の目。
 どこか照れたような、迷っているような、不安そうで、そして期待を帯びた目。
 玲陽はひとつ息を飲んだ。それから、最初に心に浮かんだことを言葉にした。
「これから、ずっとですか?」
 玲陽がそう尋ねると、犀星は少し顎を引くようにして、静かに答えた。
「……俺は、そうしたい」
「……嬉しいです」
 玲陽は気持ちの形をそのまま唇にのせて、素直にそう言った。
 犀星の顔にも同じように、安心した微笑みが浮かぶ。
 まるで鏡のように、二人は互いを映し合っていた。
 犀星はそっと玲陽の頬に指を当て、そこから垂れていた髪をすくい上げ、後ろへと手懐けた。
 そしてまた、額からかき上げて優しく撫でていく。
 しっかりと開いた指で玲陽の肌をつかむように、力を込めて触れる。それは玲陽に、深い安堵をもたらした。
 犀星が与えてくれる全てに、玲陽は素直に身を任せた。
「あなたと一緒にいたい」
 あまりにも自然に、言葉が玲陽の口からこぼれた。それは玲陽自身をも驚かせた。
「……そうしよう」
 犀星は吐息まじりに、優しくそう言った。
 玲陽はまた目を開き、じっと犀星の顔を見つめる。
 そのまなざしは、犀星のどんなわずかな変化も見逃すまいとするかのように真剣で、そして切実だった。
 悲しいほどにまっすぐで、耐えきれないほど熱い。
 玲陽はただ、大切な人を見つめ続けた。
 犀星は、玲陽の唇に触れ、そっと微笑んだ。
 玲陽は当てがわれた指に静かに口づける。それから、少しだけいたずらっぽく微笑むと、わずかに唇を開き、舌先で触れた。
 その濡れた熱に、犀星の目がわずかに震える。
「……いや、ですか?」
 玲陽が静かに尋ねる。
「嫌なら、逃げてる」
 それが犀星の答えだった。
 玲陽が柔らかく笑う。もう一度、舌で指をそっと撫でる。心地よさそうに、ひとつ、犀星は声を漏らした。

 ちょうど同じ頃、天輝殿。
 宮殿の中程に、石の間と呼ばれる部屋がある。
 そこは、この世にあって、この世ではない。分厚い石壁で閉ざされ、世の規範が失われた場所だ。
 立ち入ることを許されるのは、皇帝と、彼に招かれた者のみである。
 喉を刺す冷たい夜気と、それを熱して混ざる香の匂い。
 涼景は、最近、似た匂いをどこかで嗅いだように思う。
 石壁に何度も反響して聞こえるのは、人の声とは思われない獣じみた鳴き声。彼は自分のそれを、遠くにぼんやりと聞いていた。
 石の床は、いつまでも冷たく素肌を刺した。乱暴に引きずられ、全身に薄い傷がつく。緊張と弛緩を繰り返しながら、身体が幾度となく波を打つ。呻きとも唸りともつかない声が、高く低く、鋭く鈍く、断続的に部屋の空気を震わせた。その震えは、居合わせた者たちにも伝わってゆく。
 壁に並んだいくつかの行灯の光、弱いその光の中、床の上でのけぞる体と汗ばんだ声は、宝順の支配欲をどこまでも駆り立てる。部屋の隅に潜む、何人かの男たちの息遣い。薄暗い中では判然としないが、どの顔にも鬼気迫るような色気があった。
 受け入れながら、涼景は終始、濁った目を虚空に向けていた。
 二つの手首は重ねて縛り上げられ、逃れる術はない。自由の効かない体で、ただ彼の主人にすべてを差し出す。いやおうなく。
 柔らかい場所を、己の意思とは関係なく支配されていくこの行為は、彼にとって、もう日常の一部となっていた。されるがままに身を委ねるその姿には、暁将軍としての面影はなかった。
 歪んだ視界の隅で、小さな蝶が舞う。
 全身に粘りつく香りは、彼から素早い判断力と天性の直感を奪う。だが、それでも、ギリギリに理性を手放せない。狂ってしまえればもっと楽なのに、と、涼景はいつも、冷めた心とたぎる体との狭間で、苦悶と屈辱を強いられる。
 一呼吸ごとに壊れていく何かを、ただじっと見つめ続ける。
 脳裏には、いくつもの顔が浮かんでは消える。
 どの顔も、まるで今の自分とは別の世界にいるようだ。汚れなく澄んで、命を謳歌するかのように輝いている。
 頭の上で押さえつけられた手首を、涼景はわずかによじった。その戒めは、どれほど高められても、自ら解き放つことを許さない。ただ、宝順の意のままに、翻弄されるのみである。
 楽になりたい。
 そう望むなら、導くしかない。
 喉から吹き出す声が、とめどなく響く。意味すら持たないその声が、宝順をさらに自分の奥深くへと誘う。
 魂が焼かれるような屈辱と渇望で、涼景は悲鳴をあげ続けた。
 声で、視線で、表情で、吐く息で、皇帝を誘い、昂らせて。
 さもなくば、生殺しだ。
 ……楽にしてくれ!
 涼景の目元が歪む。その頬に、涙とも汗ともつかぬ雫が流れた。
 何かを求め、力を込めて伸ばされた指が掴んだのは、虚ろな闇だけだった。
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