【鬼シリーズ:第二弾】青鬼のパンツ

河原由虎

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07.でも、私は信じてる

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 俺にとってはまだ、来るかもわからないその未来を思うと、軽くため息が出る。

「赤も鬼長になるのか?」

 知力自慢の二本角にしては体力もある方で、何度返り討ちにしてやっても懲りもせずに向かってくるあの小僧。
 日に日に賢く立ち回るようになっているし。力だって、身体がしっかり成長したなら、さぞかし強敵になるだろう。そうしたら、俺を追い越して更なる高みに進むに違いない。

 そう思って、軽くその質問をしたが、鬼灯の様子が少し変化した。

「それは……」

 先程まで、まるで『確信している』と語っていたその赤い瞳は揺らいでいた。

「今ある史実に、赤の名は無いわ……」
「アイツは長にはならなかったと……?」

 鬼灯の表情から自分の言った事が事実なのだと察する。

「俺よりもずっとヤル気で、アイツこそいずれ長になると……少なくとも俺は思ってるんだが……」

 逆にビックリだ……

「過去だの未来だの、どちらも干渉しないに越したことはないのだけれど……
 私は赤が長になった未来が見てみたい」

 そう言うと、その瞳には強い光が戻ってきていた。何かを確信しているかのような、燃える瞳。

「けど、もし赤が長になったら、こことは違う、枝分かれした別の未来が存在して、そっちの方では赤が長になった未来が続いていく、のかもしれないのよね」

 一本角の割には、色々考えてるじゃないか。

「もしココがソウなったとしても、私は多分……赤が長となって変えた未来を……ソレと認識する事はないと思うわ。残念だけど。
 だって、初めからソウだった、って事になるでしょう?」

 そう言うと、もう湯気が出ていない“こーひー”をグイッと飲み干し、俺を見た。

「でもね……ある時を境に、何かが変わったの。何が、なのかはわからないのだけど……。確実に。それも赤が戻っていった直後に!」

 興奮気味に言うその表情と目は、やはり既視感を感じ。好戦的とも言えるその目の輝きに、俺はようやくわかった。その理由が──。

「でも、歴史書を見たけれど、どれも昔からソウだった、としか思えなくて……」

 そう、鬼灯の目は『同じ』だ。

「でも、私は信じてる……赤の事を……。
彼が長となって、少なくともこの『人に管理支配される』という未来は変わると!」

 輝いている鬼灯のその瞳は、正に俺に挑んでくる赤と同じ────

「そうか……」

 俺は苦笑しながら冷めた“こーひー”を一気に飲み干した。

 鬼灯の、暑い想いを聞いた後。俺は妙ちくりんな着物を渡され、穿いていた。

「コレ……穿いてなきゃいけないのか…………?」

 足にピッタリとくっつくような、黒色の穿き物を渡されて。穿いてはみたものの違和感が半端なく、もう脱ぎたい衝動に駆られていた。

「あんなパンツ一丁でウロウロしてる者は、もう鬼でもいないわよ。穿いといて! あと、シャツはコレをどうぞ」

「おぉ。コレは良い色だな」

 渡された“しゃつ”とやらは、海よりも深い青色だった。

「替えの服も用意しておくから、とりあえず着ておいて」

「しょうがないな……」

「ソレを着たら、上からコレを羽織って」

 そう言って渡してきたのは、一番最初に着せられた白い上着と同じだが、それよりもサイズの大きい物。

「とにかく、貴方を元の時代に送り返すよう手配をするわ。しばらくは新人研修医のフリをしてちょうだい」

「新人けんしゅうい……というか、俺は元の時代に戻れるんだな?」

「えぇ。技術は以前よりも進んでいて、時空の歪みの記録観測も、もっと正確に出来るようになってきているの。
 貴方の通ってきたルートの形跡を追って、元の時代へと道を開く。必ず帰れるわ」

 鬼灯は断言した。

 それからしばらく、俺は診療所に寝泊まりしながら鬼灯を手伝う事となった。
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