7 / 10
07.でも、私は信じてる
しおりを挟む
俺にとってはまだ、来るかもわからないその未来を思うと、軽くため息が出る。
「赤も鬼長になるのか?」
知力自慢の二本角にしては体力もある方で、何度返り討ちにしてやっても懲りもせずに向かってくるあの小僧。
日に日に賢く立ち回るようになっているし。力だって、身体がしっかり成長したなら、さぞかし強敵になるだろう。そうしたら、俺を追い越して更なる高みに進むに違いない。
そう思って、軽くその質問をしたが、鬼灯の様子が少し変化した。
「それは……」
先程まで、まるで『確信している』と語っていたその赤い瞳は揺らいでいた。
「今ある史実に、赤の名は無いわ……」
「アイツは長にはならなかったと……?」
鬼灯の表情から自分の言った事が事実なのだと察する。
「俺よりもずっとヤル気で、アイツこそいずれ長になると……少なくとも俺は思ってるんだが……」
逆にビックリだ……
「過去だの未来だの、どちらも干渉しないに越したことはないのだけれど……
私は赤が長になった未来が見てみたい」
そう言うと、その瞳には強い光が戻ってきていた。何かを確信しているかのような、燃える瞳。
「けど、もし赤が長になったら、こことは違う、枝分かれした別の未来が存在して、そっちの方では赤が長になった未来が続いていく、のかもしれないのよね」
一本角の割には、色々考えてるじゃないか。
「もしココがソウなったとしても、私は多分……赤が長となって変えた未来を……ソレと認識する事はないと思うわ。残念だけど。
だって、初めからソウだった、って事になるでしょう?」
そう言うと、もう湯気が出ていない“こーひー”をグイッと飲み干し、俺を見た。
「でもね……ある時を境に、何かが変わったの。何が、なのかはわからないのだけど……。確実に。それも赤が戻っていった直後に!」
興奮気味に言うその表情と目は、やはり既視感を感じ。好戦的とも言えるその目の輝きに、俺はようやくわかった。その理由が──。
「でも、歴史書を見たけれど、どれも昔からソウだった、としか思えなくて……」
そう、鬼灯の目は『同じ』だ。
「でも、私は信じてる……赤の事を……。
彼が長となって、少なくともこの『人に管理支配される』という未来は変わると!」
輝いている鬼灯のその瞳は、正に俺に挑んでくる赤と同じ────
「そうか……」
俺は苦笑しながら冷めた“こーひー”を一気に飲み干した。
鬼灯の、暑い想いを聞いた後。俺は妙ちくりんな着物を渡され、穿いていた。
「コレ……穿いてなきゃいけないのか…………?」
足にピッタリとくっつくような、黒色の穿き物を渡されて。穿いてはみたものの違和感が半端なく、もう脱ぎたい衝動に駆られていた。
「あんなパンツ一丁でウロウロしてる者は、もう鬼でもいないわよ。穿いといて! あと、シャツはコレをどうぞ」
「おぉ。コレは良い色だな」
渡された“しゃつ”とやらは、海よりも深い青色だった。
「替えの服も用意しておくから、とりあえず着ておいて」
「しょうがないな……」
「ソレを着たら、上からコレを羽織って」
そう言って渡してきたのは、一番最初に着せられた白い上着と同じだが、それよりもサイズの大きい物。
「とにかく、貴方を元の時代に送り返すよう手配をするわ。しばらくは新人研修医のフリをしてちょうだい」
「新人けんしゅうい……というか、俺は元の時代に戻れるんだな?」
「えぇ。技術は以前よりも進んでいて、時空の歪みの記録観測も、もっと正確に出来るようになってきているの。
貴方の通ってきたルートの形跡を追って、元の時代へと道を開く。必ず帰れるわ」
鬼灯は断言した。
それからしばらく、俺は診療所に寝泊まりしながら鬼灯を手伝う事となった。
「赤も鬼長になるのか?」
知力自慢の二本角にしては体力もある方で、何度返り討ちにしてやっても懲りもせずに向かってくるあの小僧。
日に日に賢く立ち回るようになっているし。力だって、身体がしっかり成長したなら、さぞかし強敵になるだろう。そうしたら、俺を追い越して更なる高みに進むに違いない。
そう思って、軽くその質問をしたが、鬼灯の様子が少し変化した。
「それは……」
先程まで、まるで『確信している』と語っていたその赤い瞳は揺らいでいた。
「今ある史実に、赤の名は無いわ……」
「アイツは長にはならなかったと……?」
鬼灯の表情から自分の言った事が事実なのだと察する。
「俺よりもずっとヤル気で、アイツこそいずれ長になると……少なくとも俺は思ってるんだが……」
逆にビックリだ……
「過去だの未来だの、どちらも干渉しないに越したことはないのだけれど……
私は赤が長になった未来が見てみたい」
そう言うと、その瞳には強い光が戻ってきていた。何かを確信しているかのような、燃える瞳。
「けど、もし赤が長になったら、こことは違う、枝分かれした別の未来が存在して、そっちの方では赤が長になった未来が続いていく、のかもしれないのよね」
一本角の割には、色々考えてるじゃないか。
「もしココがソウなったとしても、私は多分……赤が長となって変えた未来を……ソレと認識する事はないと思うわ。残念だけど。
だって、初めからソウだった、って事になるでしょう?」
そう言うと、もう湯気が出ていない“こーひー”をグイッと飲み干し、俺を見た。
「でもね……ある時を境に、何かが変わったの。何が、なのかはわからないのだけど……。確実に。それも赤が戻っていった直後に!」
興奮気味に言うその表情と目は、やはり既視感を感じ。好戦的とも言えるその目の輝きに、俺はようやくわかった。その理由が──。
「でも、歴史書を見たけれど、どれも昔からソウだった、としか思えなくて……」
そう、鬼灯の目は『同じ』だ。
「でも、私は信じてる……赤の事を……。
彼が長となって、少なくともこの『人に管理支配される』という未来は変わると!」
輝いている鬼灯のその瞳は、正に俺に挑んでくる赤と同じ────
「そうか……」
俺は苦笑しながら冷めた“こーひー”を一気に飲み干した。
鬼灯の、暑い想いを聞いた後。俺は妙ちくりんな着物を渡され、穿いていた。
「コレ……穿いてなきゃいけないのか…………?」
足にピッタリとくっつくような、黒色の穿き物を渡されて。穿いてはみたものの違和感が半端なく、もう脱ぎたい衝動に駆られていた。
「あんなパンツ一丁でウロウロしてる者は、もう鬼でもいないわよ。穿いといて! あと、シャツはコレをどうぞ」
「おぉ。コレは良い色だな」
渡された“しゃつ”とやらは、海よりも深い青色だった。
「替えの服も用意しておくから、とりあえず着ておいて」
「しょうがないな……」
「ソレを着たら、上からコレを羽織って」
そう言って渡してきたのは、一番最初に着せられた白い上着と同じだが、それよりもサイズの大きい物。
「とにかく、貴方を元の時代に送り返すよう手配をするわ。しばらくは新人研修医のフリをしてちょうだい」
「新人けんしゅうい……というか、俺は元の時代に戻れるんだな?」
「えぇ。技術は以前よりも進んでいて、時空の歪みの記録観測も、もっと正確に出来るようになってきているの。
貴方の通ってきたルートの形跡を追って、元の時代へと道を開く。必ず帰れるわ」
鬼灯は断言した。
それからしばらく、俺は診療所に寝泊まりしながら鬼灯を手伝う事となった。
0
あなたにおすすめの小説
『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』
放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。
「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」
身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。
冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。
「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」
得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。
これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました
ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。
ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。
王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。
そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。
「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる