薄紅色の図書室(短編集)

mamorie

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「星」×「愛した人」

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私が幼い頃母がこう教えてくれた。
「万華鏡はね、お空の星を無意識のうちに攫ってきて詰めたものなんだよ。だから覗く度に見える景色が変わるでしょ?」
ふふっ、と母は笑っていた気がする。

私が幼い頃父がこう教えてくれた。
「お空のお星様はね、亡くなった人がお前を見守るためにあるんだ。だから、おじいちゃんもあの広い空からお前に微笑みかけているんだよ」
ははっ、と父は涙混じりに笑っていた気がする。

確かに万華鏡をころころと倒してみるとその度に見える景色や色は違って、
これはその時私が攫ってきたお星様の人数や関係性でどれだけ綺麗に見えるかが変わるんだなと幼いながらに考えたものだ。



ある日の深夜3時頃。
眠れない私は大切にしている万華鏡を片手にため息をついた。
引越しがもう今週にせまっているというのに、引き出しから出てきた万華鏡が手放せない。
もうしばらくしまっていたのに。

万華鏡を覗くと、赤色、青色、緑色、全部の色がきらきらきらきらしていてなんだか語彙力がなくなる。
1つの言葉だけで表せられたらこんな想いをすることなんてないのかな…夜の私はどこかセンチメンタルだ。


「ねぇ見てこれ!めちゃくちゃ綺麗だよ!ほら、動かさないで」


あの日あの人が興奮気味に見せてくれた万華鏡の景色。
あの人が動かさないよう必死になりながら私に万華鏡を差し出してきて、私が覗いた時いつもよりきらきらした世界が見えた。
思わず笑ってしまって手が動いちゃったから、怒られたんだっけ。

「んー…違うなあ。あの日の輝きじゃない」

綺麗。綺麗なのだが、あの人と見た景色には程遠い。

うーんうーん、と唸りながら万華鏡を片手に窓まで歩く。

少しだけカーテンを開けると、一瞬あの景色が見えた気がする。
ぱちぱちと瞬きをすると、そこには満点の星空とその中でも特別輝きを放つ星があった。

「あれは…一番星…?」

何となく、思いつきで万華鏡を一番星に向けて覗いてみる。
するとそこには、あの日あの人と見た万華鏡の眩い輝きがあった。

「……あぁ、私。無意識にあの人を攫っちゃったんだ」
これからはいつでもこの輝きが見られるのかな。

『あなたは私の一番星でした』

なんて。
「あの人に教えてあげたかったな…」

ふぅ、と溜息をつき私はカーテンを閉めた。
カーテンの向こうでは今でも一番星が輝いている。
私が攫ってしまった、私だけの。
あの人はこれから先ずっと見守っていてくれるかな。
「……見守っていてね、愛した人」
と呟いた私はなんだかとても照れくさくなって、コツンと万華鏡を人差し指で弾いた。
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