悪の組織に人体改造された俺、目覚めると組織が壊滅していたので、ヒーローを目指してみようと思います。

銀猫

文字の大きさ
10 / 28

2話

しおりを挟む
 ピンポーン。

「んんー……」

 聞き慣れないチャイムに、沈んでいた意識が覚醒する。
 重い瞼をゆっくり開けると、カーテンの隙間から強い光が差し込んでいた。朝よりも明るい光、恐らく時間は昼頃と言った所。

「ここは……、あぁ、そっか」

 見知らぬ天井、見覚えのない部屋。一瞬自分がどこにいるか分からなかったが、眠気が覚めてくると昨日のことを思い出す。
 昨日からこの部屋が、俺の住む場所になったんだ。

 ピンポーン。
 
 二度目のチャイム。
 少し疲れの残った体を起こし、欠伸を噛み殺しながら来客を出迎える。
 扉を開けると、ソラが立っていた。

「ごめん、起こしちゃった?」
「いや大丈夫、丁度起きる頃だったから助かった」

 時間としては少々寝すぎで、起きなければならない時間帯。
 起こされたというよりは、起こしてくれたの方が感覚として近い。

「それで、どうかしたのか?」
「えっとね、この後予定ある?」
「いや、別にないけど」

 今日の予定と言えばバイトを探すことぐらいで、これも別に予定と呼べるものではない。つまり、暇だ。

「オワリ君が良ければ、この後ちょっと付き合ってほしいんだ。君に会わせたい人がいて」

 突然のお誘いをするソラをよく見ると、昨日のカジュアルな服装とは違い、少々気合の入ったおしゃれな服装に身を包んでいた。
 
「別に良いけど」
「やった!じゃあ部屋で待ってるから、準備が出来たら呼んでね」

 部屋が隣と言うこともあり、無駄に外で待たせる事が無いのは良いことだ。
 だからと言って、無駄に待たせる必要はないわけで、素早く準備を進める。生憎と、俺は服装の選択肢が多くない為、準備にはあまり時間がかからない。
 必要最低限の身なりを整えて、隣で待っている彼女をインターフォンで呼び出す。

「ごめん、待たせた」
「全然、じゃあ行こっか!」

 俺とソラはマンションを出ると、近くのバス停からバスに乗車する。
 土曜日の昼頃だが、バスに乗る人は思っているよりも少なく、俺達はなんなく席を確保できた。

「この辺りのスーパーが結構安くて~」

 バスに乗っている間、ソラが窓から見える景色を指さしてこの辺りの事を教えてくれる。
 知らない街の情報を聞くのは意外と楽しいもので、時間はあっという間に過ぎてしまった。

 大体40分ぐらいだろうか?バスに揺られていた俺達は、ソラの目的地に到着してバスを降りる。

「ここは……」

 降りた先に見えたのは、ここら辺で一番大きい病院。

「少し前に大きめの怪我しちゃってて、今入院してるの」

 ソラがここに来た理由は診察などではなく、お見舞いだった。
 部屋の番号を確認しながらゆっくり移動し、お目当ての部屋を見つけた。

 コンコン。と軽くノックをすると、扉の向こうから「どうぞ」と女性の声が返ってきた。

「お見舞いに来たよココロちゃん」
「先輩!!来てくれたんですか!!」

 扉を開ける。部屋の中は個室で、窓際に備え付けられたベッドに少女が横になっていた。
 明るいブランドのショートカットに、どこかボーイッシュに感じる顔立ちをした少女。彼女の事は知らない筈だが、何故か見たことがある気がする。

「先輩、もしかしてそちらの方が」
「あ、紹介するね。こちら常世オワリ君。昨日話した、あの時の警備員さん」
「どうも」

 ソラの紹介に合わせて軽く会釈する。

「こっちが桜乃ココロちゃん。私の一つ下の後輩」
「桜乃ココロです。常世さん、あの時はどうもありがとうございました。どうしてもお礼を言いたくて」
「えっとぉ、申し訳ないけど心当たりが……」
「あの時のホテルで、怪人と戦ってた魔法少女が彼女なの」
「……あぁ!!」

 ソラに言われて気がついた。
 あの燃えるホテルで怪人と戦った魔法少女。
 フリフリの可愛らしい服装にピンク色の髪をしていたから気が付かなかったが、確かに顔はあの時の魔法少女だ。

「すまん、気がつかなかった」
「ココロちゃん、変身前と後でガラッと印象変わっちゃうからね」
「あはは……、ボクと魔法少女ハートは、別人と思ってもらえれば……」

 ココロの言う通り、変身前と後ではまるで別人だ。今はボーイッシュでどちらかと言えばかっこいいと言った印象だが、変身後の彼女にはとても可愛らしい印象を持っていた。
 ヒーローはほとんどがコードネームを使っているから、変身後はまさしく別人なのかもしれない。

「改めて、常世さん。あの時はありがとうございました」

 ココロはベッドで上半身を起こし、俺に向かって頭を下げる。

「いやいや!俺何もしてないですから!」
「あの後、ボクの事をホテルから運んでくれたと聞きました。先輩も無事に連れ出してくれて、感謝しかありません」
「それを言うなら、あの時俺達を守ってくれたじゃないか。お互い様だよ」

 俺達を守るために勝てる筈のない戦いに挑んだ彼女。一人なら逃げられたかもしれないのに、あの場に残る決断をした彼女こそ、感謝されて然るべきだ。

「ストップストップ。、このままじゃ一生終わらないよ」

 お互いが譲らない感謝フェーズに入ろうとしていた所を、ソラが待ったをかけてくれた。

「別にどっちか片方だけが受け取らないといけないわけじゃないでしょ?お互いに送って受け取ってでいいんじゃない」
「そうですね、ボク少し意固地になってました」
「そうだな。それが良いか」

 感謝してされて。少し変わった終わり方だが、お互いに気分の良い終わり方でもある。

「よし!じゃあ楽しい話しよっか!」
「楽しい話ですか?」
「ココロちゃんもうすぐ退院でしょ?お祝いにタコパしようよタコパ。前にやりたいって言ってたでしょ」

 タコパと聞いて、ココロの笑みが三割り増しに輝いて見えた。

「もちろんオワリ君も一緒にね」
「え、俺も?」
「もちろん。これはココロちゃんの退院祝いでもあるけど、私から二人へのお礼も兼ねてるんだから」

 ソラはココロとオワリ両方に助けてもらった。
 今回の提案はココロの退院祝い兼助けてもらった二人に対する感謝な気持ち。と、言われてしまうと断りづらい。

「いや、二人でやった方が良いんじゃないか?」

 気持ちは嬉しいが、新人の、しかも異性がいきなり退院祝いに混ざるのは気まずいのではないだろうか。
 旧友二人の方が遠慮もなく楽しめると思い、辞退の形をとる。

「三人でやりましょうよ。ボクもそっちの方が嬉しいです」
「こういうのは、人数が多い方が楽しいんだよ」
「……二人が良いなら、俺も参加させてくれ」
「もちろん!」
「是非来てください。先輩の言う通り、人が多い方がきっと楽しいですから」

 当人達が良いと言うなら、俺も断る理由はない。
 こうして、俺達はココロが退院する三日後に退院祝いとしてタコパをする約束を交わしたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜

涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。 ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。 しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。 奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。 そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。

ある日、僕は全知全能になった。

暁月ライト
ファンタジー
ある日、平凡な男子高校生である宇尾根 治は全知全能になった。 何の前触れもなく突然にその力を手に入れた主人公が、表向きには平凡な高校生として過ごしつつ、裏では色んな世界を自由気ままに旅したりして遊ぶ話。

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました

KABU.
ファンタジー
「記録係なんてお荷物はいらない」 勇者パーティを支えてきた青年・ライトは、ダンジョンの最深部に置き去りにされる。 彼のスキル《記録》は、一度通った道を覚えるだけの地味スキル。 戦闘では役立たず、勇者たちからは“足手まとい”扱いだった。 だが死の淵で、スキルは進化する。 《超記録》――受けた魔法や技を記録し、自分も使える力。 そして努力の果てに得たスキル《成長》《進化》が、 《記録》を究極の力《アカシックレコード》へと昇華させる。 仲間を守り、街を救い、ドラゴンと共に飛翔する。 努力の記録が奇跡を生み、やがて―― 勇者も、魔王も凌駕する“最強”へ。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

異世界配信中。幼馴染みに捨てられた俺に、神々(視聴者)がコメントしてくるんだが。

葉月
ファンタジー
コルネ村で、幼なじみであり恋人でもあったユリアナと、ささやかな幸福を分かち合って生きていたロイド。 だがある日、ユリアナは女神の愛子として目覚め、国王の命により王都へと連れ去られる。 突然、日常を奪われ、運命に引き裂かれたロイドは、抗う術も持たぬまま、否応なく大きな流れへと呑み込まれていく。 これは、奪われたものを取り戻すため、そして理不尽な運命に抗おうとする、一人の少年の物語である。

スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~

榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。 彼はその日から探索者――シーカーを目指した。 そして遂に訪れた覚醒の日。 「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」 スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。 「幸運の強化って……」 幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。 そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。 そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。 だが彼は知らない。 ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。 しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。 これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。

処理中です...