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時間がない
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その日家に帰るとお父様に呼び出され頰をバシンとぶっ叩かれた。
「いたっ!」
とよろけるが支えてくれる執事はニヤリと嫌な笑いをしていた。
「この…フェルゴール家の面汚しがっ!よくも!よくも!殿下との婚約破棄に至っただけじゃなくフロングレスト修道院に追放の命まで!あそこに娘が入れられるなんて犯罪者の親と同等の扱いを我が家は受け、後ろ指を指されながら生きていく羽目になった!
全てお前のせいだ!今やっていた商談も信用もなくなり断られた!!今後うちとの取引相手も減っていきいずれ没落するだろうな…」
「そ…それは……」
「アイリーン!お前などもう我が子とは思わん!!学校にも行かず卒業まで部屋で…いや、うちの納谷で暮らすがいい!!」
と言われた!!そんな!お父様酷すぎやしないかい!?お母様は
「貴方…流石に可哀想よやめて…」
と言ってくれた!おお!唯一の味方!?
「うるさいっ!お前は黙って私に従っていろ!」
とお母様にも手をあげそうになりあたしは咄嗟に前に出てお母様を守った。
バシンと重い平手打ちが襲いクラクラと頭が揺れ倒れた。鼻血が垂れた。
「きゃあ!アイリーン!」
「くっ…酷い親だね。自分の妻にも手を挙げて!DVじゃないか…」
「やかましい!訳のわからん事を!お前の顔など見たくもない!レビルド!さっさとこの娘を納谷に放り込んで鍵をかけておけ!!」
「畏まりました!旦那様!」
とレビルドが私を引っ張り乱暴に歩かせ納屋へと連れていき放り込んだ。
「旦那様のご命令だ。俺は悪くありません。ふっ…いい気味だな。散々俺に八つ当たりするからこう言う目に合うんだよ!」
とバタンと扉を閉めてガチャンと鍵をかけられた…。
それからあたしは食事やトイレの時しか開けて貰えずまるで囚人みたいな暮らしをさせられた。
お母様が時々目を盗みお菓子やら手当てする薬を運んでくれた。
「お母様…あたし…ここから出たい…時間がないんだ…」
と言うが
「でもダメよ…ここから出たら今度こそお父様は激昂して何をするか…」
「くそ…」
とあたしは項垂れた。仕方なくお母様に薬草の本や材料を頼んだ。
あたしは狭い納谷にヴェルナー様を助ける為の薬をこうして作り始めた。
推しを助ける為にあたしはゲームでどんな材料が必要か知っているんだ。それを何とかお母様に頼み密かに手配させた。
そして何とか完成させた。
後は…
「悔しいがレビルドに頼むしかない…」
と食事を運んできたレビルドに
「この薬をヴェルナーさんに運んでほしい…ヴェルナーさんの病気が治るはずなんだ。レビルド一生のお願いだよ。今までの八つ当たりのこと謝るし何でもするから!頼むよ!!あたしはもうすぐフロングレスト修道院へと送られる小汚い娘なんだ…」
と泣きながらお願いして地面に頭を擦り付けると頭をレビルドが踏んづけた。
「は!惨めな女!!ここまで落ちるとはな!」
「…なんと呼んで貰っても構わないよ…あんたしかこの薬をヴェルナーさんに届けてくれる奴はいないんだ!お願いだよ!!お願いだから!」
と頼み込む。すると
「じゃあお前の部屋にあるドレスやアクセサリーを全部俺が貰って金に換えても文句はないよな?」
「そ、そんなもん要らないよ!だから!」
と足に縋ると流石に怯んだレビルドが
「ちっ!なんだよ?お前の薬なんて…効くもんか!」
と言う。
「……渡しとくれ」
と言うとレビルドは止まり
「…何故そこまで必死に?お嬢様…あんたは前と何か様子が違う。…喋り方も変だ。前は八つ当たりで高圧的に俺の口に馬の糞を入れたんだぞ?」
と言う。ひいい!
「そんなことしてた…!?あっ…」
記憶がザザザっと思い出した。
あたしは八つ当たり気味にレビルドを縛り上げて馬の糞を口に入れ笑い憂さ晴らしをしていた悪い女の子だった。レビルドが耐えて吐き出して汚いと笑う様な女さ。
「ご、ごめん。あたしにも馬の糞食べさせてくれていいから…薬をヴェルナーさんに…頼むよ…」
と言う。
「はー…気持ち悪い。逆にしおらしいのが気持ち悪い。まぁこんなことになってプライドを捨て去ったのでしょうね。…わかりましたよ。薬は届けてあげましょう。ヴェルナーくんが飲むかわからないですけどね」
「そうかい!!?ありがとう!!レビルド!!あたしはいい執事を持ったよ!」
と言うとケッと言いそれから横に座る。
「で!?あんた誰だ?お嬢様じゃないだろ?」
とギロリと睨んだ。
流石執事だね。気付かれたか。
「頭がおかしいと思われるだろうけどさ…」
とあたしはこれまでの事を喋った。
*
聴き終わると黙り込むレビルド。
「…信じられないよね。あんたには酷いことしてすまなかったね。記憶が戻ったのは断罪された後だったから」
「確かに喋り方が変になったのも気絶した直後だし…」
と思い当たりレビルドは考えていた。
そして
「このまま貴方は薬を渡してフロングレスト修道院に行っていいのですか?アイリーン様の罪を背負ったまま。
き、聞けば前世でも孫たちに毒殺されてこっちに…そのままシャーリィさんになっていればいい目にあったかもしれないのにどうして酷い女なんかに転生したのか…」
「…あたしのいた世界じゃ悪役令嬢がヒロインでヒロインが悪役になる展開が若い者の間で流行っててね。このケースもそうだと思ってあたしは悪役令嬢を選んだ。
それに早くに亡くなった宏敏さんがヴェルナーさんに生まれ変わってるんだから会いにいきたかった。もう一度生きてる姿をさ。あたしの推しの姿だけどあの日医務室で会えたこと忘れないよ。あたしは嬉しかったよ」
と言うとレビルドは
「はぁ……何だそれは…。なら自分で渡したほうがいい。…俺がここの鍵を開けておくから勝手に逃げ出してください。旦那様には鍵を奪われ気絶させられたと言って誤魔化します」
と言うレビルド。
「レビルド!!ありがとうよ!!あんた流石イケメンだよ!!いい男って意味ね」
と言うとゲーと言う顔をして
「ほんと気持ち悪い…同じ顔なのに中身がお婆さんなんて!」
と言いあたし達は笑ったんだ。そしてレビルドは
「元気で…」
「恩にきるよレビルド」
と薬を持ちあたしは夜に馬を拝借して飛び乗った。前世で乗馬を嗜んでいて良かったよ。セレブ万歳だ。
馬を走らせあたしはヴェルナー様の元へ急いだ。
「いたっ!」
とよろけるが支えてくれる執事はニヤリと嫌な笑いをしていた。
「この…フェルゴール家の面汚しがっ!よくも!よくも!殿下との婚約破棄に至っただけじゃなくフロングレスト修道院に追放の命まで!あそこに娘が入れられるなんて犯罪者の親と同等の扱いを我が家は受け、後ろ指を指されながら生きていく羽目になった!
全てお前のせいだ!今やっていた商談も信用もなくなり断られた!!今後うちとの取引相手も減っていきいずれ没落するだろうな…」
「そ…それは……」
「アイリーン!お前などもう我が子とは思わん!!学校にも行かず卒業まで部屋で…いや、うちの納谷で暮らすがいい!!」
と言われた!!そんな!お父様酷すぎやしないかい!?お母様は
「貴方…流石に可哀想よやめて…」
と言ってくれた!おお!唯一の味方!?
「うるさいっ!お前は黙って私に従っていろ!」
とお母様にも手をあげそうになりあたしは咄嗟に前に出てお母様を守った。
バシンと重い平手打ちが襲いクラクラと頭が揺れ倒れた。鼻血が垂れた。
「きゃあ!アイリーン!」
「くっ…酷い親だね。自分の妻にも手を挙げて!DVじゃないか…」
「やかましい!訳のわからん事を!お前の顔など見たくもない!レビルド!さっさとこの娘を納谷に放り込んで鍵をかけておけ!!」
「畏まりました!旦那様!」
とレビルドが私を引っ張り乱暴に歩かせ納屋へと連れていき放り込んだ。
「旦那様のご命令だ。俺は悪くありません。ふっ…いい気味だな。散々俺に八つ当たりするからこう言う目に合うんだよ!」
とバタンと扉を閉めてガチャンと鍵をかけられた…。
それからあたしは食事やトイレの時しか開けて貰えずまるで囚人みたいな暮らしをさせられた。
お母様が時々目を盗みお菓子やら手当てする薬を運んでくれた。
「お母様…あたし…ここから出たい…時間がないんだ…」
と言うが
「でもダメよ…ここから出たら今度こそお父様は激昂して何をするか…」
「くそ…」
とあたしは項垂れた。仕方なくお母様に薬草の本や材料を頼んだ。
あたしは狭い納谷にヴェルナー様を助ける為の薬をこうして作り始めた。
推しを助ける為にあたしはゲームでどんな材料が必要か知っているんだ。それを何とかお母様に頼み密かに手配させた。
そして何とか完成させた。
後は…
「悔しいがレビルドに頼むしかない…」
と食事を運んできたレビルドに
「この薬をヴェルナーさんに運んでほしい…ヴェルナーさんの病気が治るはずなんだ。レビルド一生のお願いだよ。今までの八つ当たりのこと謝るし何でもするから!頼むよ!!あたしはもうすぐフロングレスト修道院へと送られる小汚い娘なんだ…」
と泣きながらお願いして地面に頭を擦り付けると頭をレビルドが踏んづけた。
「は!惨めな女!!ここまで落ちるとはな!」
「…なんと呼んで貰っても構わないよ…あんたしかこの薬をヴェルナーさんに届けてくれる奴はいないんだ!お願いだよ!!お願いだから!」
と頼み込む。すると
「じゃあお前の部屋にあるドレスやアクセサリーを全部俺が貰って金に換えても文句はないよな?」
「そ、そんなもん要らないよ!だから!」
と足に縋ると流石に怯んだレビルドが
「ちっ!なんだよ?お前の薬なんて…効くもんか!」
と言う。
「……渡しとくれ」
と言うとレビルドは止まり
「…何故そこまで必死に?お嬢様…あんたは前と何か様子が違う。…喋り方も変だ。前は八つ当たりで高圧的に俺の口に馬の糞を入れたんだぞ?」
と言う。ひいい!
「そんなことしてた…!?あっ…」
記憶がザザザっと思い出した。
あたしは八つ当たり気味にレビルドを縛り上げて馬の糞を口に入れ笑い憂さ晴らしをしていた悪い女の子だった。レビルドが耐えて吐き出して汚いと笑う様な女さ。
「ご、ごめん。あたしにも馬の糞食べさせてくれていいから…薬をヴェルナーさんに…頼むよ…」
と言う。
「はー…気持ち悪い。逆にしおらしいのが気持ち悪い。まぁこんなことになってプライドを捨て去ったのでしょうね。…わかりましたよ。薬は届けてあげましょう。ヴェルナーくんが飲むかわからないですけどね」
「そうかい!!?ありがとう!!レビルド!!あたしはいい執事を持ったよ!」
と言うとケッと言いそれから横に座る。
「で!?あんた誰だ?お嬢様じゃないだろ?」
とギロリと睨んだ。
流石執事だね。気付かれたか。
「頭がおかしいと思われるだろうけどさ…」
とあたしはこれまでの事を喋った。
*
聴き終わると黙り込むレビルド。
「…信じられないよね。あんたには酷いことしてすまなかったね。記憶が戻ったのは断罪された後だったから」
「確かに喋り方が変になったのも気絶した直後だし…」
と思い当たりレビルドは考えていた。
そして
「このまま貴方は薬を渡してフロングレスト修道院に行っていいのですか?アイリーン様の罪を背負ったまま。
き、聞けば前世でも孫たちに毒殺されてこっちに…そのままシャーリィさんになっていればいい目にあったかもしれないのにどうして酷い女なんかに転生したのか…」
「…あたしのいた世界じゃ悪役令嬢がヒロインでヒロインが悪役になる展開が若い者の間で流行っててね。このケースもそうだと思ってあたしは悪役令嬢を選んだ。
それに早くに亡くなった宏敏さんがヴェルナーさんに生まれ変わってるんだから会いにいきたかった。もう一度生きてる姿をさ。あたしの推しの姿だけどあの日医務室で会えたこと忘れないよ。あたしは嬉しかったよ」
と言うとレビルドは
「はぁ……何だそれは…。なら自分で渡したほうがいい。…俺がここの鍵を開けておくから勝手に逃げ出してください。旦那様には鍵を奪われ気絶させられたと言って誤魔化します」
と言うレビルド。
「レビルド!!ありがとうよ!!あんた流石イケメンだよ!!いい男って意味ね」
と言うとゲーと言う顔をして
「ほんと気持ち悪い…同じ顔なのに中身がお婆さんなんて!」
と言いあたし達は笑ったんだ。そしてレビルドは
「元気で…」
「恩にきるよレビルド」
と薬を持ちあたしは夜に馬を拝借して飛び乗った。前世で乗馬を嗜んでいて良かったよ。セレブ万歳だ。
馬を走らせあたしはヴェルナー様の元へ急いだ。
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