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第一章
day.15(浩二視点)
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食券売り場へ向かっていった純也の背中を見送ったあと、諏訪さんをまじまじと観察する。
へぇ~、確かに、面食いな純也の好きそうな顔だわ。
じろじろ見過ぎたのか、諏訪さんは、俺を軽く睨みつけた後、ゆっくりと口を開いた。
「…で?俺に一体、何の用だ?」
なんだ、この人、意外と俺のこと見てたんだな。
御曹司のお坊ちゃまなんて、他人に興味ないと思ってたわ。
へらっと笑って、目の前の男にわざと軽口を叩いてみる。
「さっすが、諏訪さん。俺が話したいことあるってわかってて、あんなに帰りたがったんスか?悪い大人ッスね~。」
どうやらこの人は、俺にも、余所行きの顔をする必要はないと判断したようだ。
無感情の中に、僅かに混じっていた不機嫌さを前面に押し出して、目を細めた。
「…とっとと用件を述べろ。聞いてやるのは、今だけだ。」
その低い声に、ピリッと肌を刺すような、威圧感を感じた。
なるほど。
これが純也の言ってた、圧ね。
俺は平気だけど、アイツはビビりだからなぁ。
取りあえず、話を聞いてもらえることには、成功したみたいだな。
はいはいと大袈裟に肩をすくめ、この人の気が変わらない内に、とっとと用件を話し始める。
「もちろん、アイツのことなんスけどね。言いたいことは山のようにあるんスけど、アイツ、諏訪さんと結婚してから、ちゃんと食べるようになったんスよ。」
反応を探るように、じっと諏訪さんの様子を伺うも、何も変化は感じられない。
この人、わかりづれぇ~。
純也がいた時は、もう少しだけ、わかりやすかったんだけどな。
やりにくいなと思いつつ、話を続ける。
「それまでは、サンプルで貰ったエネルギーゼリーとか、1日満足バーみたいなのばっか食ってて。それが貰えない日は、当たり前のように昼飯は抜き。それに、月の半分は、1日1食で充分とか言って、朝と昼は食わなかった。」
「………。」
何か思い当たることでも、あったのだろうか。
この話をした瞬間、一瞬だけ、ピクッとその眉を動かした。
それを、俺は見逃さない。
「ご存知だとは思いますが、アイツ銭ゲバでしょ?でも、バイト代のほとんどを実家に仕送りしてるから、そうならざるを得なかったんだと思います。実際、時々ホームレスにもなってましたし。」
「…何故その話を俺にする?」
何でって、アイツのこと、もっと知って、大事にしてもらいたいから、なんですけど?
一応、親友なんで。
……多分、普通の人なら、何かしらを察して、“何故?”とか聞いてこねぇだろ。
この人もこの人で、何か問題を抱えているみたいだなぁ。
アイツとは、性格も育ちも何もかも違うんだろうけど、本質は似たもの同士なのかもな。
でも、それを説明するのは面倒臭くて、取りあえず、笑ってはぐらかしとく。
「いや、別に?ただの世間話ですよ。ただ、その点に関しては、俺、貴方に感謝してるんです。アイツ最近、健康だし、楽しそうなんで。」
その目が、は?みたいな疑問を訴えてきたけど、そこはスルーさせてもらう。
この得体の知れない人に、俺が親友として言ってやれることは、次で最後。
あとは、お前次第だぜ、純也。
ふぅっと短く息を吐いて、目の前に座っている無感情の瞳を、真っ直ぐ捉えた。
「何の目的でアイツと結婚したのかは知りませんが、アイツのこと、泣かせたら承知しませんから。」
すると、その瞳が、ほんの少しだけ揺れ、諏訪さんは、言いにくそうに、だけど誠実に、その答えをくれた。
「それは……約束できんな。」
約束するって言われたら、どうしようかと思った。
意外とちゃんと答えてくれたことに、笑いそうになったのと同時に、安心した。
まだ完全に信用したわけじゃないけど、案外、この人に任せてみても、大丈夫かもしれないな―。
そう思えたから、今のアイツに関する懸念事項を、相談してみようと思った。
「本当は約束してもらいたいんスけどね。それはそうと、アイツ自身は気付いてないみたいなんスけど、最近、アイツ誰かにつけられてるみたいなんスよね。一緒に帰る時、妙な視線を感じるんで。」
少しばかり黙ったかと思ったら、突然、諏訪さんの視線が鋭くなった。
「それはいつ頃からだ?帰る時だけか?確実に純也を狙っているのか?」
ちょ、ちょっ!
えぇ~っ!?
急な質問攻撃に、さすがに驚いてしまった。
この人、こんなに喋れんのかよ。
一呼吸置いてから、記憶を呼び覚ましてみる。
「いつ頃だったっけかな…?はっきりとは覚えてないんスけど、ここ1~2週間ぐらいからスかね。大体帰る時ッスよ。アイツと帰る時しか感じないんで、恐らく間違いないッスわ。アイツに、何か視線感じねぇ?って言っても、馬鹿なんで気のせいだろの一点張りで。」
「そうか…。」
そう伝えると、諏訪さんは何かを考え込むようにして、手で口元を押さえ、視線を落とした。
その時、純也がカレーを手に持って席に戻ってきた。
「お待たせ~!いやぁ、さすが人気のカレーだよな!めっちゃ混んでたわ。はい、冬悟これな!」
「あぁ。」
「んで、浩二はこれな!」
「サンキュー。じゃあ、冷めない内にいただきますか。」
それからは、純也の大学での生活のあれこれを、たっぷりと諏訪さんに吹き込みまくり、頭を抱えた諏訪さんと、キレまくる純也に挟まれて、賑やかな時間を過ごした。
へぇ~、確かに、面食いな純也の好きそうな顔だわ。
じろじろ見過ぎたのか、諏訪さんは、俺を軽く睨みつけた後、ゆっくりと口を開いた。
「…で?俺に一体、何の用だ?」
なんだ、この人、意外と俺のこと見てたんだな。
御曹司のお坊ちゃまなんて、他人に興味ないと思ってたわ。
へらっと笑って、目の前の男にわざと軽口を叩いてみる。
「さっすが、諏訪さん。俺が話したいことあるってわかってて、あんなに帰りたがったんスか?悪い大人ッスね~。」
どうやらこの人は、俺にも、余所行きの顔をする必要はないと判断したようだ。
無感情の中に、僅かに混じっていた不機嫌さを前面に押し出して、目を細めた。
「…とっとと用件を述べろ。聞いてやるのは、今だけだ。」
その低い声に、ピリッと肌を刺すような、威圧感を感じた。
なるほど。
これが純也の言ってた、圧ね。
俺は平気だけど、アイツはビビりだからなぁ。
取りあえず、話を聞いてもらえることには、成功したみたいだな。
はいはいと大袈裟に肩をすくめ、この人の気が変わらない内に、とっとと用件を話し始める。
「もちろん、アイツのことなんスけどね。言いたいことは山のようにあるんスけど、アイツ、諏訪さんと結婚してから、ちゃんと食べるようになったんスよ。」
反応を探るように、じっと諏訪さんの様子を伺うも、何も変化は感じられない。
この人、わかりづれぇ~。
純也がいた時は、もう少しだけ、わかりやすかったんだけどな。
やりにくいなと思いつつ、話を続ける。
「それまでは、サンプルで貰ったエネルギーゼリーとか、1日満足バーみたいなのばっか食ってて。それが貰えない日は、当たり前のように昼飯は抜き。それに、月の半分は、1日1食で充分とか言って、朝と昼は食わなかった。」
「………。」
何か思い当たることでも、あったのだろうか。
この話をした瞬間、一瞬だけ、ピクッとその眉を動かした。
それを、俺は見逃さない。
「ご存知だとは思いますが、アイツ銭ゲバでしょ?でも、バイト代のほとんどを実家に仕送りしてるから、そうならざるを得なかったんだと思います。実際、時々ホームレスにもなってましたし。」
「…何故その話を俺にする?」
何でって、アイツのこと、もっと知って、大事にしてもらいたいから、なんですけど?
一応、親友なんで。
……多分、普通の人なら、何かしらを察して、“何故?”とか聞いてこねぇだろ。
この人もこの人で、何か問題を抱えているみたいだなぁ。
アイツとは、性格も育ちも何もかも違うんだろうけど、本質は似たもの同士なのかもな。
でも、それを説明するのは面倒臭くて、取りあえず、笑ってはぐらかしとく。
「いや、別に?ただの世間話ですよ。ただ、その点に関しては、俺、貴方に感謝してるんです。アイツ最近、健康だし、楽しそうなんで。」
その目が、は?みたいな疑問を訴えてきたけど、そこはスルーさせてもらう。
この得体の知れない人に、俺が親友として言ってやれることは、次で最後。
あとは、お前次第だぜ、純也。
ふぅっと短く息を吐いて、目の前に座っている無感情の瞳を、真っ直ぐ捉えた。
「何の目的でアイツと結婚したのかは知りませんが、アイツのこと、泣かせたら承知しませんから。」
すると、その瞳が、ほんの少しだけ揺れ、諏訪さんは、言いにくそうに、だけど誠実に、その答えをくれた。
「それは……約束できんな。」
約束するって言われたら、どうしようかと思った。
意外とちゃんと答えてくれたことに、笑いそうになったのと同時に、安心した。
まだ完全に信用したわけじゃないけど、案外、この人に任せてみても、大丈夫かもしれないな―。
そう思えたから、今のアイツに関する懸念事項を、相談してみようと思った。
「本当は約束してもらいたいんスけどね。それはそうと、アイツ自身は気付いてないみたいなんスけど、最近、アイツ誰かにつけられてるみたいなんスよね。一緒に帰る時、妙な視線を感じるんで。」
少しばかり黙ったかと思ったら、突然、諏訪さんの視線が鋭くなった。
「それはいつ頃からだ?帰る時だけか?確実に純也を狙っているのか?」
ちょ、ちょっ!
えぇ~っ!?
急な質問攻撃に、さすがに驚いてしまった。
この人、こんなに喋れんのかよ。
一呼吸置いてから、記憶を呼び覚ましてみる。
「いつ頃だったっけかな…?はっきりとは覚えてないんスけど、ここ1~2週間ぐらいからスかね。大体帰る時ッスよ。アイツと帰る時しか感じないんで、恐らく間違いないッスわ。アイツに、何か視線感じねぇ?って言っても、馬鹿なんで気のせいだろの一点張りで。」
「そうか…。」
そう伝えると、諏訪さんは何かを考え込むようにして、手で口元を押さえ、視線を落とした。
その時、純也がカレーを手に持って席に戻ってきた。
「お待たせ~!いやぁ、さすが人気のカレーだよな!めっちゃ混んでたわ。はい、冬悟これな!」
「あぁ。」
「んで、浩二はこれな!」
「サンキュー。じゃあ、冷めない内にいただきますか。」
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