【完結】まずは結婚からで。〜出会って0日、夫夫はじめました〜

小門内田

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第三章

day.69

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あの後、冬悟はガチで1ヶ月後に式場を予約しやがった。
まぁ、この騒動を早めに終わらせたいのは、俺も同じだから、いいんだけど。
こういう時、冬悟はマジでお金持ちの御曹司なんだって、改めて思う。
だって、普通の人じゃ、このスケジュールで結婚式なんて、挙げられねぇだろ。

でも、その代わり、俺達はこの準備で大忙しになった。

ある時は、招待状の作成を。

「なぁなぁ、浩二と川崎先輩と大林さんも呼んでいい?」

「あぁ、別に構わん。」

「小百合さんも呼んでいい?」

「…招待状は出してやるが、来るかどうかは本人次第だぞ。」

「それと、美代子さんは?」

「…………………考えておく。」

今回、俺に味方してくれたのが、美代子さんだってことを、あの後冬悟に話した。
だから、俺の前では露骨に拒むことはせず、渋い表情を浮かべただけで終わった。
この2人の溝は、きっと埋まらないかもしれないけど、少しだけでも、その溝が浅くなる日が来たらいいなとは思う。

「あ、あとさ、俺の母さんと妹は呼ばなくていいから。こんな派手なのに招待されたら、あの人達は卒倒しちまうだけだから。」

「わかった。」

俺が招待したい人は、それだけ。

「俺の方はこれくらいなんだけど、冬悟は何人くらい呼ぶ予定なんだ?」

「そうだな……ざっと500人くらいになるんじゃないか?」

「ごひゃ……?」

しれっと聞かされた数字に、一瞬頭がフリーズした。
凄い規模になるだろうと覚悟はしていたが、まさかこれ程までとは。
想像できない人の数に、ゴクッと息を呑んだ。

「が、がんばろうな、冬悟!」

「…あぁ、がんばってくれ。」

参加者のほとんどが冬悟側だから、俺の分も含めて、招待状は冬悟が用意してくれることになった。


また、ある時は、衣装選びを。

衣装はもちろんレンタルだと思っていた俺は、何故か今、仕立屋で採寸されている。

あれ?
この衣装、買うもんなんだ??

疑問に思いながらも、言われた通り、腕を伸ばしていると、シュッと静かにメジャーが巻き取られる音が聞こえた。

「採寸お疲れさまでした。それで、デザインはいかがいたしましょうか?」

店員さんがニコニコと微笑みながら、タッチパネルとぶ厚いカタログを渡してくれたが、モーニングやらタキシードやらなんて、正直よくわからない。

何が違うんだ??

だから、どれがいいかなんて聞かれても、困る。

タッチパネルを手に固まっていると、採寸を見守っていた冬悟が、すっと隣に来てくれた。

「…俺に任せてくれるか?」

その救いの言葉に縋るように、コクコクッと力強く頷くと、残りのデザイン決め等は、全て冬悟がやってくれた。


そして、またある時は、式場の見学と料理の試食。

「広っろ………。」

バカ程広い緑の絨毯と美しい花が広がっている庭に、美しく、だけど荘厳な雰囲気の漂う真っ白なチャペル。
そこは、ガーデンパーティー方式で行われる今回の披露宴に、ぴったりの場所だった。

そこでは、冬悟が進行の流れやテーブルの配置等を確認している間、俺は料理の試食をさせてもらっていた。

どれも美味ぇ~!!

この日は、ただひたすら食べまくるだけの、幸福な時間が流れていった。

そう、よくよく考えたら、結局全部、冬悟任せになってるじゃねーか!!

だが、冬悟は、俺を完全に落ち込ませないためにか、重要な仕事を任せてくれた。

それは、俺達の結婚指輪のデザイン決めだった。

“お前が嵌めたいと思うデザインや刻印が入った指輪を、俺は嵌めたい。だから、お前がそれを考えてくれ”

そう冬悟に言われたら、やるしかないと気合を入れる。

「冬悟、左手出して。」

「…どうした?」

夜、ソファで何かの書類を確認している冬悟に駆け寄り、左手を要求した。
小首を傾げながらも、冬悟はすぐに左手を差し出してくれる。
その大好きな手を取り、ある指をまじまじと眺めた。

真っ直ぐですらっとしていて、長くて綺麗な薬指だ。

「やっぱり、シンプルな細身のヤツが似合いそうだな。」

満足そうにそう呟いた後、その手にすりっと頬擦りすると、俺の行為を優しく見守っていた冬悟が、その頬を撫でていく。

「…もういいのか?」

「うん!大丈夫!」

そう笑顔で返事をし、今度は冬悟の隣にぽすっと座る。
ソファの上に放り出していたスマホを手に取り、メモを作成していく。

「っと……できた!!」

そのメモ書きを、冬悟にLINNEで送った。

「これが、俺の考えた結婚指輪だぜ!どう?」

そのメモを見た冬悟は、嬉しそうに目を細めていく。
そして、トンッと俺の肩にもたれかかってきた。
その場所から、じんわりと暖かくなっていく。

「…シンプルで、いいんじゃないか。」

「だろだろ?」

冬悟にも気に入ってもらえたみたいで、よかった。

満足そうな冬悟にへへっと笑いかけ、俺もこつっと頭を寄せる。

「…それに、この日付を選んだのか。」

「そ!俺達2人だけが知ってる、大事な日付だからな!」

「…そうだな。」

それは、俺達2人の、全てが始まった日―。

「お前が考えてくれた、この指輪を嵌めるのが、楽しみだ。」

冬悟は俺にすりっと擦り寄った後、額にキスを落とし、立ち上がった。

「…では、これでオーダーしておく。完成を楽しみにしておけ。」

「うん!」

指輪もオーダーメイドで、だけど、ちゃんとハイブランドだ。

この結婚式で、お金持ちの底力を、目の当たりにさせられている気がする。

その力、もうちょっと借りれねぇかな。

「なぁ、冬悟。」

「どうした?」

言いにくそうに口籠っていても、振り返った冬悟は急かさずに、俺の言葉を待ってくれている。
すぅっと息を吸って、無茶なお願いをしてみた。

「あのさ、その指輪の出来上がりだけど、結婚式よりちょっとだけ早くならねぇかな?」

「…何でだ?」

訝しげに見つめられ、呼吸が少しだけ浅くなる。
意を決して、グッと拳を握り締めた。

「その指輪を使って、お披露目パーティーの前に、俺と冬悟の2人だけで………結婚式がしたい。」

この俺の提案に、冬悟は驚いたように目を見開いたが、すぐにその奥が甘くなり、ふわっと微笑んでくれた。

「…わかった。かけ合ってみよう。」

こうして、俺達2人だけの結婚式が開催されることとなった―。
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