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∞ 森部誠一の述懐 其の一 ∞

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……オレは会社に使い捨てられたことがある。


それは、おそらくオレに限った話じゃない。
この日本にごまんとある、ありふれた話の一つに過ぎないのだろう。

普通のサラリーマンだったオレは、それまでは自分の所属する会社を信用していた。

会社に所属した方が色々とめんどくさくないし、個人で働くよりもずっと自分の生活の安定を得られると思うから、地元では割とランクの高いこの会社で定年まで問題なく働きたい。

そう、考えていたと思う。

だが結局は辞めることに決めた。
その会社でなにがあったかは、詳しく言いたくはない。

………

普通のサラリーマンを辞めて無職になったオレは、しばらくの間は、自分が借りているアパートから歩いていける距離にあるネットカフェと、その中間にある牛丼屋を毎日往復する日々を送った。

その時読んでいたマンガは、『異世界モノ』だ。
他のジャンルも読んだが、圧倒的に『異世界モノ』が多かった。

ご都合主義というのか、
『自分の行動如何いかんによって、自分自身の運命を切りひらいていく』。
そんな感じが、その時のオレの心象に刺さったのだと思う。

他のマンガもそういうところはあるが、『異世界モノ』ジャンルのマンガは、より顕著に主人公が、
『普通どうにもできないようなことでも、ゴリ押しでどうにでもする』。

『異世界モノ』マンガのそういうところが、会社を辞めて寄る辺ないオレの心を慰めてくれた。



…To Be Continued.
⇒Next Episode.
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