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イヤメテの町
26「天賦の剣才、からのハードボイルドな感じ」の巻
しおりを挟む「…フッ!」
武器屋の裏庭にて。
気合の声とともに、女戦士カフェルが大きく重たいバスタードソード(重量4.5キログラム)を『片手で』振るう。元より女戦士は『両手剣』の意味など理解してはいない。
女戦士が力まかせに振るう度に、大振りなバスタードソードが『ビュ…ン!』と金属板が空気の層に当たる重たい音を立てる。
「……ふむ」
女戦士はいつもと違う素振りの感触に吐息を一つついた。いつもより重たく感じるのは重量だけではなく、剣そのものの形状の違いと女戦士自身の『慣れ』の問題もあるのだろう。
柄の握り具合を確かめるように、バスタードソードを持った手の指を細かく動かすカフェル。
この辺りの動きは流石に女戦士っぽい。
バスタードソードを片手で振りながらカフェルは、いくつかの剣の『形』を試していく。
新しい剣を何度も振っていくうちに風切り音が『ビュ…ン!』から『ヒュ…ン…ヒュ…ン…』っという少し軽い音に変わり、最終的には『ヒュッ…』っという鋭く風を切り裂く様な音に変わった。
思わず頬に不敵な笑みを浮かべる女戦士。どうやら彼女は新しい剣に少しずつ慣れてきたようだ。
「……若いくせに『いい音』させるじゃねえか。嬢ちゃん」
目を閉じて腕を組みカフェルの素振りの音を聞いていた武器屋のおじさんが感嘆の吐息を漏らす。
「……今時ゃベテランにもこういう音を出せる奴はなかなかいねえ。しかも重たいバスタードソードを片手で。『末恐ろしい』とはこのこった嬢ちゃん」
店の裏手にある武器屋の敷地内で、新しい武器の試しをさせてくれている武器屋のおじさんは、女戦士としてのカフェルを気に入ったようだ。
こういうのは、パーティーの小隊長としてオレは素直に誇らしい。
武器屋のおじさんは、武器の専門家としての観点から若い女戦士にアドバイスをした。
「ポンメル(柄頭)をもっと太く改造したり柄の中心を少し膨らませたりすりゃ、もっと振りやすくなるかもな。……待ってな、新品に合う柄を探して来てやるよ」
そう言いながら店の裏口の方に向かう武器屋のおじさん。
「ご親切痛み入ります!」
スッ…と戦士らしいきれいな動作でお辞儀をするカフェル。裏口から店の中に入る時、背を向けたままカフェルに手を上げて黙って返事を返す武器屋のおじさん。
……ヤダ。二人ともカッコいい。
続く…
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