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イヤメテの町

42「精通始まったばかりの坊や達を相手に『優しく』相手してあげる、私…」の巻

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『ラフィングドーベル』
『ブルシット』
『ハイランダー』
『ダイモンズブレス』
………


 ──有名メーカー製の数々の改造カスタム杖を、それぞれの腰に吊り下げた重厚な革のホルスター内に携え、自身の持つ『大きくて立派な』魔弾連装杖をひけらかす男達。


 『大口径魔石デカくて連射能力はやくて最新式つよいこと!』
 『これだけ揃えば負けはない!!』

 ……それが彼等の主張である。


 間違ってはいない。
 しかし、彼等の主張にはもう一文ワンセンテンスが足りない。

 ──『ただし、相手あいてにもよる』



 自分を取り囲む男達の挑発を全くモノともせず、カウンター席にふんぞり返り、男たちに対してさらなる挑発で返すサクラ。

「……ハッ!! 『精通始まったばかりのボウや』よろしくハシャギやがって!!そんなにお前らの“粗末なモノ”を、あたしに見て欲しいのか? 
『ボクこんなこと出来るようになったよ!
ママ!!』ってか!?  あ!?」

 『ギタリ…』という音がしてきそうな、物凄まじい笑顔を浮かべるサクラ。
 顔の横に『!?』の書き文字まで浮かんでいる。酒の成分が、サクラの脳のよくないところにまで回っているらしい。

 絡んできた男達も、サクラの凶暴な笑顔にたじろいでいる。
 ただ、男達の首領だけがサクラの目線を静かに、そして真っ向から受け止めていた。

「……俺らの魔弾連装杖つえのことはまだしも、『ママ』まで侮辱したのは許せねえな」

 ゴツい見た目によらずマンモーニな首領。
 歴戦の強者らしい迫力でサクラを睨みつけながら、首領はさり気なく自らの腰のホルスターに納められた魔弾連装杖【ガルダン1911】、通称『マローダー(略奪者)』の銃把グリップに手を添えようとした。

 その瞬間。
 この酒場の親父グスタフ・モローの、静かだが鋭い声が空気を切り裂いた。

「……わしの店の中で騒ぎを起こすんじゃねえ!」

 サクラと男達とのイザコザに口を挟んだ酒場の親父の手には、大型の魔弾連装杖が握られている。魔弾連装杖の照準は、すでに男達の首領の眉間にピッタリと合わされていた。

 【イザークM37】。
 通称『スラムヒーロー』。
 4連装ショットシェル型魔石弾頭搭載。
 軍事にも用いられる散弾を発射できる『杖』……。

 カウンター越しにM37を構えながら、酒場の親父はむしろ“優しげに”つぶやく。

「……気をつけるこった。わし、『コレ』撃つの初めてなんでな。上手く加減できんかも知れん」

 酒場の親父の言葉を聞いた関係のない他の客達が、一斉に酒場の壁際まで離れる。
 『ショットシェルタイプ』は、散弾の形で魔弾が発射される為、下手をすると射線上にいる他の者達まで巻き添えを食らいかねない。


 ……チッ、と軽く舌打ちをしながら酒場の親父を睨む男達の首領。それでも首領は、……分かったよ、と酒場の親父に返事を返した。

 いくら荒くれ者達でも、酒場の親父こと元名うての冒険者『紳士的なジェントルモロー』を敵に回す気は、毛頭ない。

 首領は手下の男達を引き連れて、酒場の観音開きの木製ドアへと向かう。
 酒場の外へ出る前に、首領は女魔術師サクラを振り返りながら言った。

「……表出なよ、ねえちゃん。ケリ付けようぜ。魔弾の射手オレらの『流儀スタイル』でな……」





 続く…






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