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後日譚~ミサの場合~
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「お疲れ様!今日もミサちゃん可愛かったよー!」
「お疲れ様ですっ!ありがとうございます、可愛く撮って下さったんですね!早く表紙になってるの見たいなぁ」
「僕も楽しみだよー。今月表紙何誌目だっけ?ほんとに忙しいでしょ、ちゃんと寝てる?」
「寝てますよぉ。心配して下さってありがとうございます!大丈夫ですよっ、元気が取り柄なんで!黒木さんも体壊さないように気を付けて下さいね。最近寒くなってきたから…」
「ありがとう。ミサちゃんは優しいね」
「いえいえ、一緒にお仕事して下さる方にはいつでも元気でいて欲しいですもん。ちゃんと帰ったらお風呂入ってゆっくり疲れを取ってくださいね。じゃお疲れ様でーす!」
バタバタと走り去っていくミサを目で追いかけるカメラマンの黒木。それは愛する恋人を見る様だ。
黒木だけではない、ミサと一緒に仕事をした人間は皆ミサを好きになってしまう。あくまで仕事仲間として、だが男性スタッフの中には恋愛感情を抱いている者も少なくないだろう。
若いのに気遣いが出来ていつもにこにこしていて、長時間の撮影も文句ひとつ言わない。女性スタッフもミサちゃんは妹みたいに可愛い、本当にいい子!と皆口を揃えて言う。
「皆さん、今日は本当にありがとうございました!またよろしくお願いします!」
私服に着替えたミサは撮影場所に戻って、皆に挨拶をしに行った。
今日はいわゆる赤文字系のきれいめOL向けの雑誌の撮影だった。ミサの私服もそれに近い。普段はパンツスタイルが多いけれど今日は明るいラベンダー色のニット、膝上のミニ丈のゴブラン織りの花柄のスカートにロングブーツ。アイスグレーのロングコートにふわふわのフォックスファーのマフラーを巻いた女の子らしい服装だ。
濃いめのブラウンのロングヘアをポニーテールにして、下ろした前髪が二十歳のミサに少し残る幼さを際立たせ、可愛らしさを演出している。
「ミサちゃんその服可愛い!もしかしてデート?」
衣装の女性スタッフがミサの私服を見てニヤニヤしている。
「やだぁ、そんなんじゃないですよぉっ!もー、すぐそういう風に言うんだから。お疲れ様です!」
再びバタバタと撮影所を去っていくミサに女性スタッフがこけないでね!と叫んだ。
「ミサちゃん、絶対デートですね」
「だね。どんな彼氏なんだろうねー、恋愛話一切しないからねあの子。何なら彼氏ずっといないなんて言うし。いないわけないでしょ」
「本当に言わないですよね。ただ服装は超わかりやすいっていう」
「あんなに可愛くていい子が彼女とか羨ましすぎますよー!」
「ほんっとにいい子だよね…いい子過ぎて変な男に捕まってないか心配」
「そんな男だったらバチ当たりますよ。っていうか俺が殴りに行きます」
「あんたミサちゃんの何なのよ」
雑誌のスタッフは色んなモデルと仕事をしてきているし、中にはあれは嫌これは嫌なんてワガママばかり、遅刻常習犯など正直仕事しづらいなー…と思う子はいる。黙々と仕事をこなすが我慢の限界に来るとスタッフ同士で愚痴ることも決して少なくはない。
けどミサに関しては違う。よく話題に上るのに、褒め言葉しか出てこない。
これからもミサは可愛さと愛想の良さで、どんどん仕事が増えていくだろう、増えて欲しい!とスタッフの誰もが思っている。
***
「ここで大丈夫です。ありがとうございました!」
運転手の目を見てお礼を言ってミサはタクシーを降りた。
あの子どっかで見たことあるな…テレビ?かな?いい子そうだな。ここのホテルに何しに来たんだろう。
タクシーの運転手が自動のドアを閉め、ホテルのロータリーを出て市内に車を走らせて行った。
ピンポン。部屋のチャイムを鳴らすと少ししてドアが開いた。
「剛さんっっ」
今日一番の笑顔を見せたミサは部屋に入り剛に抱きついた。
「ミサちゃん、会いたかった」
剛もミサを抱きしめた。顔を上げて大きな瞳で剛を見つめ、もう一度満面の笑みを見せて離れようとしないミサの頭を剛が優しく撫でた。
「あたしも会いたかったですっ…寂しかったんですよぉ…」
「うんうん。とりあえず部屋入ろっか」
「はーい」
剛にそう言われ、ミサは剛から離れて部屋の中に入りコートを脱いでクローゼットの中にあるハンガーにかけてからソファに座り込んだ。
「あれ、ミサちゃん素足?」
「素足ですっ」
「さすが若いだけあるなー。けど今日寒いんだから風邪引くよ」
「タクシーで来たから大丈夫ですよー」
「ちゃんと帰ったら手洗いとうがいするんだよ。ただでさえ忙しいんだから体調には気を使わないと」
「はーい。剛さんお母さんみたい…」
「お父さんじゃないんだ」
「うん。お母さん」
ミサには父親がいない。物心つかないうちに事故で亡くなったのだ。それ故にミサは父親がどういうものなのかわからなくて、自分を子供の様に接してくる相手をお母さんみたいだと感じてしまう。
父親がいない分、ミサは母親に愛情をたっぷり注がれてきた。ときに厳しく、ときに優しく。
学校での成績はあまり良くなかったけど、母親に教えてもらったことを素直に実行した。箸の使い方から始まり年上の人に対する言葉遣い、礼儀についてなど生きていくのに大切なことを沢山教えてもらっていた。
何かしてもらった時は、相手の目を見てお礼を言うこと。いつもにこにこ笑っていること。それを忘れずにね。そうしていたらミサの周りには自然と人が集まってくるから。
そう言われながら育ったミサは自然とありがとうが言えるし、辛いことがあってもいつも笑っていた。母親の教えをしっかりと守ってきたから今のミサがある。
「今日の服全部初めて着てきたんです。似合ってますか?」
「うん。めっちゃ可愛い」
「わーい」
剛が、嬉しそうに笑うミサを抱きしめてキスをした。長いキス。唇が離れて、恥ずかしそうに俯くミサの耳元で剛が囁いた。
「…まぁ俺にすぐ脱がされちゃうんだけどね」
「もぉっ…剛さんのえっち…」
ミサが俯いたまま、剛の胸元に押し付けた顔を左右に振った。
「お疲れ様ですっ!ありがとうございます、可愛く撮って下さったんですね!早く表紙になってるの見たいなぁ」
「僕も楽しみだよー。今月表紙何誌目だっけ?ほんとに忙しいでしょ、ちゃんと寝てる?」
「寝てますよぉ。心配して下さってありがとうございます!大丈夫ですよっ、元気が取り柄なんで!黒木さんも体壊さないように気を付けて下さいね。最近寒くなってきたから…」
「ありがとう。ミサちゃんは優しいね」
「いえいえ、一緒にお仕事して下さる方にはいつでも元気でいて欲しいですもん。ちゃんと帰ったらお風呂入ってゆっくり疲れを取ってくださいね。じゃお疲れ様でーす!」
バタバタと走り去っていくミサを目で追いかけるカメラマンの黒木。それは愛する恋人を見る様だ。
黒木だけではない、ミサと一緒に仕事をした人間は皆ミサを好きになってしまう。あくまで仕事仲間として、だが男性スタッフの中には恋愛感情を抱いている者も少なくないだろう。
若いのに気遣いが出来ていつもにこにこしていて、長時間の撮影も文句ひとつ言わない。女性スタッフもミサちゃんは妹みたいに可愛い、本当にいい子!と皆口を揃えて言う。
「皆さん、今日は本当にありがとうございました!またよろしくお願いします!」
私服に着替えたミサは撮影場所に戻って、皆に挨拶をしに行った。
今日はいわゆる赤文字系のきれいめOL向けの雑誌の撮影だった。ミサの私服もそれに近い。普段はパンツスタイルが多いけれど今日は明るいラベンダー色のニット、膝上のミニ丈のゴブラン織りの花柄のスカートにロングブーツ。アイスグレーのロングコートにふわふわのフォックスファーのマフラーを巻いた女の子らしい服装だ。
濃いめのブラウンのロングヘアをポニーテールにして、下ろした前髪が二十歳のミサに少し残る幼さを際立たせ、可愛らしさを演出している。
「ミサちゃんその服可愛い!もしかしてデート?」
衣装の女性スタッフがミサの私服を見てニヤニヤしている。
「やだぁ、そんなんじゃないですよぉっ!もー、すぐそういう風に言うんだから。お疲れ様です!」
再びバタバタと撮影所を去っていくミサに女性スタッフがこけないでね!と叫んだ。
「ミサちゃん、絶対デートですね」
「だね。どんな彼氏なんだろうねー、恋愛話一切しないからねあの子。何なら彼氏ずっといないなんて言うし。いないわけないでしょ」
「本当に言わないですよね。ただ服装は超わかりやすいっていう」
「あんなに可愛くていい子が彼女とか羨ましすぎますよー!」
「ほんっとにいい子だよね…いい子過ぎて変な男に捕まってないか心配」
「そんな男だったらバチ当たりますよ。っていうか俺が殴りに行きます」
「あんたミサちゃんの何なのよ」
雑誌のスタッフは色んなモデルと仕事をしてきているし、中にはあれは嫌これは嫌なんてワガママばかり、遅刻常習犯など正直仕事しづらいなー…と思う子はいる。黙々と仕事をこなすが我慢の限界に来るとスタッフ同士で愚痴ることも決して少なくはない。
けどミサに関しては違う。よく話題に上るのに、褒め言葉しか出てこない。
これからもミサは可愛さと愛想の良さで、どんどん仕事が増えていくだろう、増えて欲しい!とスタッフの誰もが思っている。
***
「ここで大丈夫です。ありがとうございました!」
運転手の目を見てお礼を言ってミサはタクシーを降りた。
あの子どっかで見たことあるな…テレビ?かな?いい子そうだな。ここのホテルに何しに来たんだろう。
タクシーの運転手が自動のドアを閉め、ホテルのロータリーを出て市内に車を走らせて行った。
ピンポン。部屋のチャイムを鳴らすと少ししてドアが開いた。
「剛さんっっ」
今日一番の笑顔を見せたミサは部屋に入り剛に抱きついた。
「ミサちゃん、会いたかった」
剛もミサを抱きしめた。顔を上げて大きな瞳で剛を見つめ、もう一度満面の笑みを見せて離れようとしないミサの頭を剛が優しく撫でた。
「あたしも会いたかったですっ…寂しかったんですよぉ…」
「うんうん。とりあえず部屋入ろっか」
「はーい」
剛にそう言われ、ミサは剛から離れて部屋の中に入りコートを脱いでクローゼットの中にあるハンガーにかけてからソファに座り込んだ。
「あれ、ミサちゃん素足?」
「素足ですっ」
「さすが若いだけあるなー。けど今日寒いんだから風邪引くよ」
「タクシーで来たから大丈夫ですよー」
「ちゃんと帰ったら手洗いとうがいするんだよ。ただでさえ忙しいんだから体調には気を使わないと」
「はーい。剛さんお母さんみたい…」
「お父さんじゃないんだ」
「うん。お母さん」
ミサには父親がいない。物心つかないうちに事故で亡くなったのだ。それ故にミサは父親がどういうものなのかわからなくて、自分を子供の様に接してくる相手をお母さんみたいだと感じてしまう。
父親がいない分、ミサは母親に愛情をたっぷり注がれてきた。ときに厳しく、ときに優しく。
学校での成績はあまり良くなかったけど、母親に教えてもらったことを素直に実行した。箸の使い方から始まり年上の人に対する言葉遣い、礼儀についてなど生きていくのに大切なことを沢山教えてもらっていた。
何かしてもらった時は、相手の目を見てお礼を言うこと。いつもにこにこ笑っていること。それを忘れずにね。そうしていたらミサの周りには自然と人が集まってくるから。
そう言われながら育ったミサは自然とありがとうが言えるし、辛いことがあってもいつも笑っていた。母親の教えをしっかりと守ってきたから今のミサがある。
「今日の服全部初めて着てきたんです。似合ってますか?」
「うん。めっちゃ可愛い」
「わーい」
剛が、嬉しそうに笑うミサを抱きしめてキスをした。長いキス。唇が離れて、恥ずかしそうに俯くミサの耳元で剛が囁いた。
「…まぁ俺にすぐ脱がされちゃうんだけどね」
「もぉっ…剛さんのえっち…」
ミサが俯いたまま、剛の胸元に押し付けた顔を左右に振った。
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