元アイドルは現役アイドルに愛される

文字の大きさ
18 / 73

18. この違和感は…?

ユニット「KSR」の快進撃は、業界に旋風を巻き起こしていた。
奏多の透明感のある歌声、颯真の圧倒的な歌唱力、そしてリオの爆発的なダンスパフォーマンス。三人の化学反応は、かつての絶望を塗り替えるほどに眩しかった。
そんな中、一番の変化を感じていたのはリオだった。

「……、颯真さん。これ、何かの罠ですか?」

レッスンの休憩中、リオは手渡されたスポーツドリンクを怪訝そうに見つめながら、隣に座る颯真を睨んだ。
以前なら、奏多とリオが少しでも親しげに話していれば、大型犬さながらの威嚇を見せていた颯真が、最近はそれどころか二人きりにさせようとさえするのだ。

「罠だなんて人聞きが悪い。はい、奏多の分のタオルも。リオくん、ついでに渡しておいてくれるかな。俺、ちょっと電話してくるから」

颯真はそう言って、爽やかな笑顔でスタジオを出て行った。
残されたリオは、渡されたタオルを抱えたまま、奏多に駆け寄るタイミングを失って立ち尽くした。



その日の帰り道。

奏多が先にスタッフの車で帰宅した後、リオは駐車場で颯真を待ち伏せた。

「颯真さん、ちょっといいですか」
「あ、リオくん。まだ仕事?」
「仕事じゃないです。……颯真さんに、何があったのか聞きに来たんです。急に僕たちのこと応援するような素振りして、気持ち悪いですよ」


リオの真っ直ぐすぎる言葉に、颯真は一瞬きょとんとした後、夜の静寂に溶けるような穏やかな笑みを浮かべた。


「……そうだね…」

「…急に態度が変わって、、分かりやすすぎます。あんなに独占欲の塊だったのに、今は……まるで、僕に奏多さんを託そうとしてるみたいだ」

「託す、か。……そうかもしれないね」

颯真は街灯を見上げ、ポケットに手を入れた。その表情には、以前あった執念のような暗さは微塵もなかった。


「俺はね、奏多を誰にも渡したくないと思ってた。でもそれは、俺自身の勝手な都合だったんだ。自分が幸せにしないとこの罪悪感から逃げられないんじゃないかって……今はただ、奏多に幸せになってほしい。そして、君にもね」
「え……?」

予想外の言葉に、リオは言葉を失う。
颯真の意味深な言葉に聞きたいこともあったがぐっと口をつぐむ。

「リオくん。あの日、暗闇にいた奏多を見つけ出して、強引に光の中に引っ張り出したのは、俺じゃなく君だった。……君のその真っ直ぐさが、奏多には必要なんだよ」

颯真は一歩、リオに歩み寄った。その瞳は、兄が弟を導くような、深い慈愛に満ちていた。

「俺はこれからも奏多を支えていく。でも、それは恋人としてじゃない。一生、彼の隣で歌い続ける最高の仲間としてだ。家族愛みたいなものかな。……だから、君は君のやり方で、奏多を幸せにしてあげて」
「颯真さん……」

「あ、でも」

不意に、颯真の声のトーンが数度下がった。
温和だった瞳が、かつての鋭さを一瞬だけ取り戻し、リオを真っ向から射抜く。


「……もし、奏多を泣かせることがあったら、俺が全力でお前を潰すから。それだけは、覚悟しておいてね?」
「……っ」

リオの背中に、冷たい汗が伝わる。
やっぱりこの人は、奏多のことになると規格外だ。

「言われなくても。奏多さんは僕が絶対、世界で一番幸せにします。颯真さんの入る隙がないくらいに」

リオが負けじと声を張ると、颯真は「はは、頼もしいね」と、今度こそ年相応の、清々しい笑い声を上げた。

あなたにおすすめの小説

響花学園

うなさん
BL
私の性癖しか満たさない。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

ただのハイスペックなモブだと思ってた

はぴねこ
BL
 神乃遥翔(じんの はると)は自分のことをモブだと思っていた。  少年漫画ではいつだって、平凡に見えて何か一つに秀でている人物が主人公だったから。  その点、遥翔は眉目秀麗文武両道、家も財閥の超お金持ち。  一通りのことがなんでも簡単にできる自分は夢中になれるものもなくて、きっと漫画のモブみたいに輝く主人公を引き立てるモブのように生きるのだと、そう遥翔は思っていた。  けれど、そんな遥翔に勉強を教わりに来ている葛城星 (かつらぎ ほし)は言った。 「BL漫画の中では、神乃くんみたいな人がいつだって主人公なんだよ?」  そう言って、星が貸してくれた一冊のBL漫画が遥翔の人生を一変させた。  自分にも輝ける人生を歩むことができるのかもしれないと希望を持った遥翔は、そのことを教えてくれた星に恋をする。  だけど、恋をした途端、星には思い人がいることに気づいてしまって……  眉目秀麗文武両道で完璧だけど漫画脳な遥翔が、お人好しで気弱な星の心に少しずつ少しずつ近づこうと頑張るお話です。

不器用に惹かれる

タッター
BL
月影暖季は人見知りだ。そのせいで高校に入って二年続けて友達作りに失敗した。 といってもまだ二年生になって一ヶ月しか経っていないが、悲観が止まらない。 それは一年まともに誰とも喋らなかったせいで人見知りが悪化したから。また、一年の時に起こったある出来事がダメ押しとなって見事にこじらせたから。 怖い。それでも友達が欲しい……。 どうするどうすると焦っていれば、なぜか苦手な男が声をかけてくるようになった。 文武両道にいつも微笑みを浮かべていて、物腰も声色も優しい見た目も爽やかイケメンな王子様みたいな男、夜宮。クラスは別だ。 一年生の頃、同じクラスだった時にはほとんど喋らず、あの日以降は一言も喋ったことがなかったのにどうして急に二年になってお昼を誘ってくるようになったのか。 それだけじゃない。月影君月影君と月影攻撃が止まない。 にこにことした笑顔になんとか愛想笑いを返し続けるも、どこか夜宮の様子がおかしいことに気づいていく。 そうして夜宮を知れば知るほどーー

一度も話したことないイケメンのクラスメイトと二人組になったらめちゃくちゃ執着されてた

BL
「はい、じゃあ二人組作って」──あまり人付き合いが得意ではない夏稀(なつき)にとってそれは地獄の言葉。 けれど高校ではちがう。なぜなら新しくできた友達と『二人組』協定を結んだから。 もう二人組なんて怖くないと思っていた矢先、その友達が風邪で欠席。 ほかに組む相手が見つからず、先生と組むことも覚悟する夏稀だったが、そこで声をかけてきたのは美形の転校生──緒川聖夜(おがわ・きよや)だった。 「俺と二人組にならない?」 その一言をきっかけに聖夜は夏稀との距離を急速に縮めてきて──。 執着美形攻め×平凡受けのちょっと不穏な学園BL。 約九万字、全三十話+αの物語です。

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

契約書はよく読めとあれほど!

RNR
BL
異世界で目が覚めた、就職浪人中の美容系男子、優馬。 最初に出会った美しい貴族青年は、言葉が通じないが親切に手を差し伸べてくれた。 彼の屋敷に招かれた際、文字は読めないもののなにかの書類にサインをすると、その彼と結婚したことになっていて……。 この世界で何をする? また無職生活? 本当にそれでいい? 葛藤する日々と、それを惜しみない愛情で支える夫。 理想の自分と、理想の幸せを探す物語。 23話+続編2話+番外編2話