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18. この違和感は…?
ユニット「KSR」の快進撃は、業界に旋風を巻き起こしていた。
奏多の透明感のある歌声、颯真の圧倒的な歌唱力、そしてリオの爆発的なダンスパフォーマンス。三人の化学反応は、かつての絶望を塗り替えるほどに眩しかった。
そんな中、一番の変化を感じていたのはリオだった。
「……、颯真さん。これ、何かの罠ですか?」
レッスンの休憩中、リオは手渡されたスポーツドリンクを怪訝そうに見つめながら、隣に座る颯真を睨んだ。
以前なら、奏多とリオが少しでも親しげに話していれば、大型犬さながらの威嚇を見せていた颯真が、最近はそれどころか二人きりにさせようとさえするのだ。
「罠だなんて人聞きが悪い。はい、奏多の分のタオルも。リオくん、ついでに渡しておいてくれるかな。俺、ちょっと電話してくるから」
颯真はそう言って、爽やかな笑顔でスタジオを出て行った。
残されたリオは、渡されたタオルを抱えたまま、奏多に駆け寄るタイミングを失って立ち尽くした。
その日の帰り道。
奏多が先にスタッフの車で帰宅した後、リオは駐車場で颯真を待ち伏せた。
「颯真さん、ちょっといいですか」
「あ、リオくん。まだ仕事?」
「仕事じゃないです。……颯真さんに、何があったのか聞きに来たんです。急に僕たちのこと応援するような素振りして、気持ち悪いですよ」
リオの真っ直ぐすぎる言葉に、颯真は一瞬きょとんとした後、夜の静寂に溶けるような穏やかな笑みを浮かべた。
「……そうだね…」
「…急に態度が変わって、、分かりやすすぎます。あんなに独占欲の塊だったのに、今は……まるで、僕に奏多さんを託そうとしてるみたいだ」
「託す、か。……そうかもしれないね」
颯真は街灯を見上げ、ポケットに手を入れた。その表情には、以前あった執念のような暗さは微塵もなかった。
「俺はね、奏多を誰にも渡したくないと思ってた。でもそれは、俺自身の勝手な都合だったんだ。自分が幸せにしないとこの罪悪感から逃げられないんじゃないかって……今はただ、奏多に幸せになってほしい。そして、君にもね」
「え……?」
予想外の言葉に、リオは言葉を失う。
颯真の意味深な言葉に聞きたいこともあったがぐっと口をつぐむ。
「リオくん。あの日、暗闇にいた奏多を見つけ出して、強引に光の中に引っ張り出したのは、俺じゃなく君だった。……君のその真っ直ぐさが、奏多には必要なんだよ」
颯真は一歩、リオに歩み寄った。その瞳は、兄が弟を導くような、深い慈愛に満ちていた。
「俺はこれからも奏多を支えていく。でも、それは恋人としてじゃない。一生、彼の隣で歌い続ける最高の仲間としてだ。家族愛みたいなものかな。……だから、君は君のやり方で、奏多を幸せにしてあげて」
「颯真さん……」
「あ、でも」
不意に、颯真の声のトーンが数度下がった。
温和だった瞳が、かつての鋭さを一瞬だけ取り戻し、リオを真っ向から射抜く。
「……もし、奏多を泣かせることがあったら、俺が全力でお前を潰すから。それだけは、覚悟しておいてね?」
「……っ」
リオの背中に、冷たい汗が伝わる。
やっぱりこの人は、奏多のことになると規格外だ。
「言われなくても。奏多さんは僕が絶対、世界で一番幸せにします。颯真さんの入る隙がないくらいに」
リオが負けじと声を張ると、颯真は「はは、頼もしいね」と、今度こそ年相応の、清々しい笑い声を上げた。
奏多の透明感のある歌声、颯真の圧倒的な歌唱力、そしてリオの爆発的なダンスパフォーマンス。三人の化学反応は、かつての絶望を塗り替えるほどに眩しかった。
そんな中、一番の変化を感じていたのはリオだった。
「……、颯真さん。これ、何かの罠ですか?」
レッスンの休憩中、リオは手渡されたスポーツドリンクを怪訝そうに見つめながら、隣に座る颯真を睨んだ。
以前なら、奏多とリオが少しでも親しげに話していれば、大型犬さながらの威嚇を見せていた颯真が、最近はそれどころか二人きりにさせようとさえするのだ。
「罠だなんて人聞きが悪い。はい、奏多の分のタオルも。リオくん、ついでに渡しておいてくれるかな。俺、ちょっと電話してくるから」
颯真はそう言って、爽やかな笑顔でスタジオを出て行った。
残されたリオは、渡されたタオルを抱えたまま、奏多に駆け寄るタイミングを失って立ち尽くした。
その日の帰り道。
奏多が先にスタッフの車で帰宅した後、リオは駐車場で颯真を待ち伏せた。
「颯真さん、ちょっといいですか」
「あ、リオくん。まだ仕事?」
「仕事じゃないです。……颯真さんに、何があったのか聞きに来たんです。急に僕たちのこと応援するような素振りして、気持ち悪いですよ」
リオの真っ直ぐすぎる言葉に、颯真は一瞬きょとんとした後、夜の静寂に溶けるような穏やかな笑みを浮かべた。
「……そうだね…」
「…急に態度が変わって、、分かりやすすぎます。あんなに独占欲の塊だったのに、今は……まるで、僕に奏多さんを託そうとしてるみたいだ」
「託す、か。……そうかもしれないね」
颯真は街灯を見上げ、ポケットに手を入れた。その表情には、以前あった執念のような暗さは微塵もなかった。
「俺はね、奏多を誰にも渡したくないと思ってた。でもそれは、俺自身の勝手な都合だったんだ。自分が幸せにしないとこの罪悪感から逃げられないんじゃないかって……今はただ、奏多に幸せになってほしい。そして、君にもね」
「え……?」
予想外の言葉に、リオは言葉を失う。
颯真の意味深な言葉に聞きたいこともあったがぐっと口をつぐむ。
「リオくん。あの日、暗闇にいた奏多を見つけ出して、強引に光の中に引っ張り出したのは、俺じゃなく君だった。……君のその真っ直ぐさが、奏多には必要なんだよ」
颯真は一歩、リオに歩み寄った。その瞳は、兄が弟を導くような、深い慈愛に満ちていた。
「俺はこれからも奏多を支えていく。でも、それは恋人としてじゃない。一生、彼の隣で歌い続ける最高の仲間としてだ。家族愛みたいなものかな。……だから、君は君のやり方で、奏多を幸せにしてあげて」
「颯真さん……」
「あ、でも」
不意に、颯真の声のトーンが数度下がった。
温和だった瞳が、かつての鋭さを一瞬だけ取り戻し、リオを真っ向から射抜く。
「……もし、奏多を泣かせることがあったら、俺が全力でお前を潰すから。それだけは、覚悟しておいてね?」
「……っ」
リオの背中に、冷たい汗が伝わる。
やっぱりこの人は、奏多のことになると規格外だ。
「言われなくても。奏多さんは僕が絶対、世界で一番幸せにします。颯真さんの入る隙がないくらいに」
リオが負けじと声を張ると、颯真は「はは、頼もしいね」と、今度こそ年相応の、清々しい笑い声を上げた。
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