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27. 初デート
付き合って初めての休日。
颯真が「今日は俺、事務所の若手と合宿だから」と家を空けてくれたおかげで、二人の初デートが実現した。
行き先は、奏多がずっと「ここのタルト、美味しそうだな」とぼんやり眺めていた、少し離れた街にある隠れ家風のテラスカフェだ。
「……リオくん、あの、くっつきすぎじゃないかな……?」
道中、奏多は戸惑ったように呟いた。
二人は深く帽子を被り、マスクで顔を隠している。
しかし、リオはそんなの関係なしと言わんばかりに、奏多の腕を自分の腕に絡め、指先をしっかりと恋人繋ぎにしていた。
「いいんです。こうしてないと、奏多さんどこかへふわふわ消えていっちゃいそうですから」
「そんなことないよ……」
奏多は困ったように笑う。
奏多の性格は、決して「ツン」としているわけではない。
ただ、これまで音楽とダンス一筋で、誰かと「恋人」として歩く経験がなかっただけだ。どう振る舞えばいいのか分からず、リオにリードされるがまま、少しぼんやりとした様子で街の景色を眺めている。
カフェに到着し、人目を避けたテラスの隅の席に座る。
ようやくマスクを外すと、奏多の頬は外気の冷たさではなく、気恥ずかしさでほんのりと桃色に染まっていた。
「……なんか、不思議だね。リオくんと、こうしてお外でお茶してるなんて」
「今までは夜ご飯だけでしたもんね。こうしてお昼から出掛けられるなんて夢みたいです」
リオはテーブル越しに奏多の手を取り、愛おしそうに指の形をなぞる。奏多はその真っ直ぐな視線に、どう反応していいか分からず、「あ、タルト、来たよ」と、運ばれてきたスイーツに視線を逃がした。
「……美味しい。リオくんも、食べる?」
奏多がフォークで小さく一口分を切り分け、無防備にリオの口元へ運ぶ。
あまりにも自然で、穏やかな「あーん」。
「っ……!」
リオは一瞬、心臓が止まるかと思った。
以前の自分からの強引なキスとは違う、奏多の内側から溢れ出すような天然の優しさ。
「……奏多さん。そういうの、外では破壊力が強すぎるので、ほどほどにしてください。僕、今ここで抱きしめたくなっちゃいました」
「え……。あ、ごめん、変だった?」
「変じゃないです。……大好きです」
リオが赤くなって俯く奏多の手を握りしめる。
「……僕も。……えっと、僕も、幸せだよ。リオくん」
奏多は、不器用ながらも自分からリオの手に指を絡め返した。
少しずつ、けれど着実に。二人のペースで「恋人」になっていく。
テラスを吹き抜ける風は冷たかったが、繋がれた手のひらからは、これからの長い時間を予感させるような、温かな熱が伝わっていた。
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