MEMOVERUS ~幻異界転生~

中島 弓夜

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第三章 穂積海斗 20歳

不成者

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海斗の登場により、ダニールは目を丸くして驚く。

「おまえは……兄貴のところにいた海斗か?」
「俺の名前を覚えてるとは光栄だね」
「まさか兄貴のアジトを1人でつぶした日本人ってのはおまえか?」
「まあな。次いでと言ってはなんだが、ここも潰しに来たぜ。だけど先客がいたみたいだな、この荒れようだと」
「ふざけるなぁぁぁっ! おまえから先に撃ち殺してやる!」

ダニールとその部下たちは、海斗に向かってライフルの銃弾を一斉に浴びせた。
海斗は横跳びして銃弾を避けると、壁を蹴った勢いでダニールたちとの距離を詰め、前で銃を撃っていた部下の首を日本刀で吹き飛ばした。
あまりに素早い動きなので、隣で援護射撃えんごしゃげきしていた男が慌てて海斗に銃口を向けるも、目の前にXのような軌道が見えた瞬間に両腕を斬り落とされてしまう。

「ひぎゃあああぁぁぁ!」

両腕を失った男は泣き叫んだが、すぐに首を斬られて断末魔だんまつまの声は途切れた。

「な、なんなんだ……おまえらバケモンか?」
悪夢のような光景に、ダニールはガタガタと震え出す。
「化け物じゃないぜ、悪いがこれでも人間だ。今日は運が尽きたと思うんだな。だけど、おまえらってどういう意味だ? 俺は1人しかいな……」
話している途中、海斗は頭上に人の気配を感じたため、咄嗟に地面を蹴って横へと飛ぶ。
見ると、深紅しんくの仮面を被った女性が、落下の力を利用して二本の剣で海斗を刺し殺そうとした。

(なんだ……この女?)

海斗は突然現れた女性をにらみ付ける。

「穂積海斗だな……探す手間が省けた。やはりここへ来て正解だったようだ」
「誰だテメェは?」
「私の名前は汐音しおね。七奈美様より力を与えられ、貴様の暴走を止める者の一人だ」

氷魚に続いて汐音も七奈美に育てられた手練てだれらしい。
海斗の表情は一層険しくなり、日本刀を持つ手に力が入った。

「暴走を止めるってどういう意味だよ。俺を殺すのか?」
「場合によってはそうなる。氷魚にも言われたと思うが、考えを改め直せ」
「嫌だね。いつも思うが、おまえらはなんで俺を貴様呼ばわりするんだ? まず礼儀作法を学べよクソ野郎が」
「作法を学ぶのは貴様だ、この不成者ならずものが! その腐った性根を叩き直してやる」

汐音は前方に飛び出して海斗に襲い掛かった。
二刀流による攻撃は海斗の動きを確実に捉え、少しずつダメージを蓄積ちくせきしてゆく。
海斗は日本刀で防ぐのが精一杯の様子で、時々反撃するも簡単にかわされてしまうため、苛立つ時間が次第に長くなる。

(くそっ、すばしっこい野郎だ!)

――その時、天井に巨大な穴が開いて、中から大型の原生種が現れる。
原生種はオウムガイのような見た目をしており、長い触手を伸ばして汐音の腹部に強烈な一撃を入れた。

「ぐわっ!」

汐音は吹き飛ばされ、全身が壁に激突した。
氷魚とは違いダメージ耐性が弱いためか、なかなか立ち上がろうとしない。

(……攻撃が当たれば怖くない相手だな。その攻撃を当てるまでが厄介だが)

海斗は汐音に近付いて更に攻撃を加えようとしたが、背後からライフルの弾が飛んで来た。
「ひゃははは! 死ねぇぇぇ!」
ダニールが狂ったように銃を乱射している。
原生種の姿を見て気が触れたのか、焦点の定まらぬ目で四方八方に向けて銃を撃つため、部下たちも巻き添えで死ぬ者が何人かいた。
(……あの野郎、おかしくなったみたいだな)
その様子を見た大型の原生種は、触手を伸ばしてダニールの頭をつかみ、まゆにするため粘液を出して全身を包み込んだ。
悪しき者が放つ原生種は業の深い者を好むため、繭にして寄生虫を埋め込み、その体内で育てるのが本能だと海斗は聞いている。
また、むしばんだ寄生虫は宿主に激痛を与え続け、ジワジワと死に至るまで30年を要すると言われていた。

「うわあああっ! 助けてっ!」

海斗は部屋の奥から子供たちの叫び声を聞いた。
いつの間にか汐音の姿も消えており、恐らく叫び声がした場所に向かった可能性がある。
「……チッ、原生種たちが子供を喰らおうとしてるな」
海斗は急いで声がした場所へ向かうと、監禁されていた子供たちに大量の原生種が襲い掛かろうとしており、それを汐音が二本の剣で防いでいた。

「おい失せろっ! 子供まで殺していいとは言ってねぇぞ!」

海斗の一喝で原生種の動きが止まり、スルスルと逃げるように監禁部屋から去った。
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