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第三章 穂積海斗 20歳
犠牲者
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不意を突かれた海斗は、鞘で氷魚の攻撃を止めようとしたが、反応が遅れたためにハンマーによる打撃が脇腹に入った。
横へと吹き飛ばされた海斗は、そのまま全身を壁に打ち付けてしまい、その衝撃で意識が飛びそうになる。
(くそっ、モロに入っちまった……)
幸いなことに、鞘に収められた日本刀が折れなかったので、海斗は朦朧とした意識の中、手探りで刀の柄を掴んで引き抜いた。
その様子を見て、氷魚は前方に飛び出して海斗に一撃を加えようとする。
凄まじい速度で振り下ろされたハンマーを海斗は素早く避け、そのハンマーが地面にメリ込んだために、氷魚は一瞬だけ身動きできない状態へと陥った。
「たあっ!」
海斗はその隙を見逃さず、氷魚目掛けて横へと日本刀を薙ぎ払ったが、その攻撃を汐音が二本の剣で防いだ。
「汚ねぇぞ! 邪魔すんな!」
「汚いもクソもあるかっ! 貴様を止めるためなら卑怯な手段も厭わない!」
汐音は両手から流れるように剣を繰り出して海斗を翻弄する。
攻撃を防ぐのがやっとの海斗は、ジリジリと壁際に追い詰められ、そして少しずつ体に深い傷が刻まれてゆく。
「いい加減にしやがれ!」
海斗の日本刀と汐音の剣が交わった瞬間、汐音の体に稲妻のような電流が流れた。
汐音は叫び声を上げると、そのまま地面に倒れて気を失ってしまう。
「七奈美様より聞いていたが、その日本刀、強力な電撃を放つらしいな」
氷魚が地面からハンマーを引き抜き、再び海斗と正面で向き合う。
「……ああそうだ、おまえも餌食になりたいか?」
「遠慮しておこう、俺は雷が苦手でな」
そして氷魚はハンマーを肩に抱え、体を低くして次の攻撃の構えに入る。
「雷が苦手なら俺の敵じゃないな。逃げるなら今の内だぜ」
「ほざけっ!」
氷魚は地面を蹴って大きく前方へ飛び出すと、ハンマーをフルスイングして海斗の顔面に一撃を入れようとした。
だが、海斗は素早くしゃがんで攻撃を避けると、下から上に向かって日本刀を斬り上げ、氷魚の左腕に深い傷を負わせる。
「甘いっ! 貴様の終わりだ!」
氷魚は右手でハンマーを握り締め、そのハンマーを頭上へ掲げた後に勢い良く振り落とした。
海斗は左腕に傷を負わせることに集中していたため、上からの攻撃には無防備だった。
――ドン!
その時、乾いた銃声の音が周囲に鳴り響いた。
海斗のリボルバーによる銃弾が、氷魚の腹部を貫いたのだ。
「きっ、貴様……銃を持っていたのか?」
「おまえたちに見せなくて良かったぜ。切り札ってのは最後まで残しとくもんだ」
氷魚は呻き声を上げながら膝から崩れ落ち、そのまま座り込んで動けなくなった。
「む、無念だ……七奈美様に合わせる顔がない」
「二人共、その七奈美様とやらに傷を治してもらえ。あいつなら過去を書き換えて治療できるからな」
「……そんな力は残されていない。もう手遅れなのだ」
「なに?」
「七奈美様の姿を見れば分かる。貴様がどれほど冷酷な道を選んだか、身に染みて学ぶといい」
……そう言うと、氷魚は目を閉じて気を失った。
(どういう意味だ……七奈美に何が起こっている?)
海斗はホルスターに銃を収めると、懐からメモヴェルスのカードを取り出した。
「メモヴェルスよ、七奈美の居場所を光で示せ」
海斗がそう命令すると、メモヴェルスから放たれた一筋の光が街外れの廃墟を指し示した。
すぐに建物から出て海斗は車に乗り込み、光で指し示した場所に向かおうとしたが、突然、頭上の天井ルーフから「ドン!」と鈍い音が聞こえた。
海斗は窓から顔を出して天井ルーフを確認すると、そこにはドゥルルが胡坐をかいて座っているのが見えた。
「おまえ、何処に座ってんだ! 助手席に乗れよ!」
「断る。そこは狭いのでな」
「まさか付いて来る気じゃないだろうな」
「そのまさかだ。メモヴェルスが指し示した先が気になるのでな」
「……何が起こってるのか知ってるのか?」
「知らぬがおおよその見当は付く。行けば分かるのはヌシと同じだ」
「チッ、俺は運転手かよ」
海斗は不満そうな表情を浮かべながらエンジンをスタートさせた。
――そして車を走らせること1時間、メモヴェルスが示した廃墟に二人は到着した。
最初に海斗が車から降りて周囲を見渡すが、誰かが襲い掛かって来るような気配もなく、辺りは静寂に包まれている。
「誰もいないな。本当に七奈美がここにいるのか?」
すると背後でドゥルルが何かを感じ取り、「なるほどな」と言葉を漏らす。
「なんだ? ここに何があるんだよ?」
「この廃墟の奥に七奈美はいるぞ。ヌシの目で確かめるが良い」
「おまえは一緒に来ないのか?」
「行く必要はない。見れば分かるからだ」
そう言うと、ドゥルルは海斗の背中を押した。
海斗はワケが分からないまま廃墟の建物へと入り、一つ一つの部屋を調べながら慎重に奥へと進んだ。
すると、遠くの薄暗い部屋に小さな明かりが点灯していたため、海斗はその光を目印にゆっくりと歩き始める。
(この地域もすっかり寂れちまったな。俺が若い頃はもっと活気があったような気もするが)
重い雰囲気の漂う廃墟なので、海斗は肝試しでもしているような気分になった。
そして明かりの灯った部屋に辿り着くと、海斗はホルスターから銃を取り出して、周囲を警戒しながらドアノブに手を掛けた。
――キィィィ。
軋んだドアをゆっくりと開けると、思わず海斗は「げっ!」と驚きの奇声を上げた。
そこには無数の生物膜や器官に覆われて壁に張り付いている七奈美の姿があった。
横へと吹き飛ばされた海斗は、そのまま全身を壁に打ち付けてしまい、その衝撃で意識が飛びそうになる。
(くそっ、モロに入っちまった……)
幸いなことに、鞘に収められた日本刀が折れなかったので、海斗は朦朧とした意識の中、手探りで刀の柄を掴んで引き抜いた。
その様子を見て、氷魚は前方に飛び出して海斗に一撃を加えようとする。
凄まじい速度で振り下ろされたハンマーを海斗は素早く避け、そのハンマーが地面にメリ込んだために、氷魚は一瞬だけ身動きできない状態へと陥った。
「たあっ!」
海斗はその隙を見逃さず、氷魚目掛けて横へと日本刀を薙ぎ払ったが、その攻撃を汐音が二本の剣で防いだ。
「汚ねぇぞ! 邪魔すんな!」
「汚いもクソもあるかっ! 貴様を止めるためなら卑怯な手段も厭わない!」
汐音は両手から流れるように剣を繰り出して海斗を翻弄する。
攻撃を防ぐのがやっとの海斗は、ジリジリと壁際に追い詰められ、そして少しずつ体に深い傷が刻まれてゆく。
「いい加減にしやがれ!」
海斗の日本刀と汐音の剣が交わった瞬間、汐音の体に稲妻のような電流が流れた。
汐音は叫び声を上げると、そのまま地面に倒れて気を失ってしまう。
「七奈美様より聞いていたが、その日本刀、強力な電撃を放つらしいな」
氷魚が地面からハンマーを引き抜き、再び海斗と正面で向き合う。
「……ああそうだ、おまえも餌食になりたいか?」
「遠慮しておこう、俺は雷が苦手でな」
そして氷魚はハンマーを肩に抱え、体を低くして次の攻撃の構えに入る。
「雷が苦手なら俺の敵じゃないな。逃げるなら今の内だぜ」
「ほざけっ!」
氷魚は地面を蹴って大きく前方へ飛び出すと、ハンマーをフルスイングして海斗の顔面に一撃を入れようとした。
だが、海斗は素早くしゃがんで攻撃を避けると、下から上に向かって日本刀を斬り上げ、氷魚の左腕に深い傷を負わせる。
「甘いっ! 貴様の終わりだ!」
氷魚は右手でハンマーを握り締め、そのハンマーを頭上へ掲げた後に勢い良く振り落とした。
海斗は左腕に傷を負わせることに集中していたため、上からの攻撃には無防備だった。
――ドン!
その時、乾いた銃声の音が周囲に鳴り響いた。
海斗のリボルバーによる銃弾が、氷魚の腹部を貫いたのだ。
「きっ、貴様……銃を持っていたのか?」
「おまえたちに見せなくて良かったぜ。切り札ってのは最後まで残しとくもんだ」
氷魚は呻き声を上げながら膝から崩れ落ち、そのまま座り込んで動けなくなった。
「む、無念だ……七奈美様に合わせる顔がない」
「二人共、その七奈美様とやらに傷を治してもらえ。あいつなら過去を書き換えて治療できるからな」
「……そんな力は残されていない。もう手遅れなのだ」
「なに?」
「七奈美様の姿を見れば分かる。貴様がどれほど冷酷な道を選んだか、身に染みて学ぶといい」
……そう言うと、氷魚は目を閉じて気を失った。
(どういう意味だ……七奈美に何が起こっている?)
海斗はホルスターに銃を収めると、懐からメモヴェルスのカードを取り出した。
「メモヴェルスよ、七奈美の居場所を光で示せ」
海斗がそう命令すると、メモヴェルスから放たれた一筋の光が街外れの廃墟を指し示した。
すぐに建物から出て海斗は車に乗り込み、光で指し示した場所に向かおうとしたが、突然、頭上の天井ルーフから「ドン!」と鈍い音が聞こえた。
海斗は窓から顔を出して天井ルーフを確認すると、そこにはドゥルルが胡坐をかいて座っているのが見えた。
「おまえ、何処に座ってんだ! 助手席に乗れよ!」
「断る。そこは狭いのでな」
「まさか付いて来る気じゃないだろうな」
「そのまさかだ。メモヴェルスが指し示した先が気になるのでな」
「……何が起こってるのか知ってるのか?」
「知らぬがおおよその見当は付く。行けば分かるのはヌシと同じだ」
「チッ、俺は運転手かよ」
海斗は不満そうな表情を浮かべながらエンジンをスタートさせた。
――そして車を走らせること1時間、メモヴェルスが示した廃墟に二人は到着した。
最初に海斗が車から降りて周囲を見渡すが、誰かが襲い掛かって来るような気配もなく、辺りは静寂に包まれている。
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すると背後でドゥルルが何かを感じ取り、「なるほどな」と言葉を漏らす。
「なんだ? ここに何があるんだよ?」
「この廃墟の奥に七奈美はいるぞ。ヌシの目で確かめるが良い」
「おまえは一緒に来ないのか?」
「行く必要はない。見れば分かるからだ」
そう言うと、ドゥルルは海斗の背中を押した。
海斗はワケが分からないまま廃墟の建物へと入り、一つ一つの部屋を調べながら慎重に奥へと進んだ。
すると、遠くの薄暗い部屋に小さな明かりが点灯していたため、海斗はその光を目印にゆっくりと歩き始める。
(この地域もすっかり寂れちまったな。俺が若い頃はもっと活気があったような気もするが)
重い雰囲気の漂う廃墟なので、海斗は肝試しでもしているような気分になった。
そして明かりの灯った部屋に辿り着くと、海斗はホルスターから銃を取り出して、周囲を警戒しながらドアノブに手を掛けた。
――キィィィ。
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