MEMOVERUS ~幻異界転生~

中島 弓夜

文字の大きさ
77 / 85
第六章 コールダスク 18歳

Unveil the Secret

しおりを挟む
高層ビルの非常階段を利用し、コールダスクはなんとか1階まで下りる。
50階を上がるのもキツイが、下りもかなりキツイため、外へ出る頃には息も絶え絶えな様子だった。

「ああ来た来た、待ってたんだよ」
ビルの裏口から出ると、路上で駐車していたパトカーにコールダスクは呼び止められる。
煙草を吸いながら運転席から出て来たのは、以前に取り調べを受けた警察の高田だった。
(くそっ! 見つかったか)
コールダスクは観念して両手を挙げる。
「違う違う、逮捕なんてしないから安心したまえ」
「は? どうしてだよ、俺が怪しいから呼び止めたんじゃないのか?」
「ビルの中で何が起こったのかは知っている。君が殺人に関与していないこともな」
「……じゃあ逃がしてくれるのか?」
「その前に、少し君と話がしたい。返答次第では逃がしてやってもいいぞ。君はマラーニャから連絡があったはずだが、彼女と何を話したのかね?」
「あの女は、コルト・テックの本社ビルを占拠せんきょしたと言ってたぜ」
「ああ~、面倒なことをする。あれほど人間の世界に干渉かんしょうするなとアドバイスしたのに、まったく聞く耳を持っていないようだな。これだから計画性のない刺客は嫌いなんだ」
その言葉を聞いて、コールダスクの眉がピクリと動く。
「……なるほど、あんたもかよ!」

――高田は吸っていた煙草の灰を落とすと、「そうだ、私が善き者の刺客だよ」と答えた。

「どうして正体を明かした?」
「もう隠しても意味がないだろう。君はすでにメモヴェルスに触れているし、悪しき者の刺客であるマラーニャも、こうして派手に動き出したからな。で? 君は本社ビルへ突撃するつもりか?」
「やるさ。あっちが先に挑発したからな」
「ほう、威勢いせいの良いことだ。ただ骨が折れる戦いになるぞ。ビルの内部システムがすべて彼女に支配されているはずだからな。君は何故、彼女がこれだけハッキング能力に優れているか知らないのか? 彼女から携帯にコンタクトがあった時はさぞ驚いただろう。君の携帯は、海外の通信会社を何重にも通さないとつながらない仕様になっているからな」
コールダスクは驚いた様子で高田の顔を見る。
「……何故それを知ってるんだ?」
「では、種明かしをしてやろう。その前に……彼女にも会話に入って貰おうか」

高田はキョロキョロと辺りを探すと、ビルの壁に設置された監視カメラを見つける。
「あの監視カメラが良さそうだな、恐らく彼女もハックしているだろう。さあ、一緒に仲良く映ろうじゃないか」
「はあ? 何言ってんのあんた」
だが、高田は強引にコールダスクの腕を引っ張り、監視カメラの前まで連れて行く。
そして二人で肩を組み、監視カメラに向かって喋り出した。
「聞こえているか悪しき者の刺客よ。彼に我らの秘密を打ち明けようと思うが、貴女きじょは納得していただけるかな?」

――すると、10メートルほど離れたビルに設置された巨大モニターが反応し、マラーニャと思われる顔が映し出される。
「高田ぁ! テメェ、アタイの秘密をベラベラと喋るんじゃねぇよ。納得するワケないだろ、このボケが!」

モニターからマラーニャの怒声が飛んで来るも、高田は冷静に監視カメラを通して彼女に語り掛ける。
「相変わらず下品な言葉でしか語れないようだ。私は前に忠告したはずだ、あまり人間の世界に干渉するなとな。貴女が戒律違反かいりついはんを犯している以上、私は監視役として厳しく指導しなければならないのでね」
「うっせうっせ! アタイは面白けりゃそれでいいんだよ、邪魔しないでくれる?」
「彼に聞けば、貴女はコルト・テックの本社ビルを乗っ取ったそうじゃないか。その企業は警察にとっても親密な関係にあり、被害が大きくなっては困るからな。それにいい加減、原生種を使ってネット環境へ侵食しんしょくするのは止めたまえ」
「なにっ!?」
コールダスクは高田の言葉に驚愕きょうがくし、組んでいた肩を振り解く。
「……やはり知らなかったようだな。原生種の一部は、人間だけでなく【物質】にも寄生できる。現代のネット環境は罵声ばせい誹謗中傷ひぼうちゅうしょう、二極対立など、けがれた感情の掃き溜めとなっている。これらの感情を吸収するのが原生種の役目だ。寄生するには最適の場所だろう?」
「いや~ん、高ちゃん言っちゃうんだもん。恥ずかしてくてモニター消しちゃうから!」
マラーニャの甲高い声が聞こえた後、巨大モニターに映し出された彼女の顔が消えた。

「……やれやれ、監視役も楽ではないな。それでは失礼するよ。あまりウロウロすると他の警察に捕まるから、早急にこの場を去りたまえ」
そう言うと、高田は乗っていたパトカーの運転席に戻った。
コールダスクは窓越しに高田へ語り掛ける。
「ずいぶんと協力的だな、何が目的だ?」
「さっきも言ったが、マラーニャは人間の世界に過干渉している。それを是正するのが、刺客の片割れである私の役目だ。君がお灸をえてくれると助かるのだが……後は好きにしてくれたまえ」
「おまえだって俺の標的なんだぜ」
「……それもそうだな、では楽しみにしているよ」
高田はパトカーを走らせようとしたが、突然、急ブレーキを踏んで停車させる。
「ああそうだ。君は大家という政治家を調べているようだが、彼は私が育てたから放っておいてくれ。もし手を出したら、その時は容赦しないぞ」
窓から手を出して軽く振ると、高田はパトカーを走らせてその場を後にした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!

nineyu
ファンタジー
 男は絶望していた。  使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。  しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!  リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、  そんな不幸な男の転機はそこから20年。  累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!

【完結】奪われたものを取り戻せ!〜転生王子の奪還〜

伽羅
ファンタジー
 事故で死んだはずの僕は、気がついたら異世界に転生していた。  しかも王子だって!?  けれど5歳になる頃、宰相の謀反にあい、両親は殺され、僕自身も傷を負い、命からがら逃げ出した。  助けてくれた騎士団長達と共に生き延びて奪還の機会をうかがうが…。  以前、投稿していた作品を加筆修正しています。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

処理中です...