MEMOVERUS ~幻異界転生~

中島 弓夜

文字の大きさ
79 / 85
第六章 コールダスク 18歳

Negotiation

しおりを挟む
――次の日の深夜。
コールダスク、七奈美、門脇の一行は覆面ふくめんをして、コルト・テック本社ビルの隣にある高層ビルの屋上へと向かった。
門脇に言われた通り、屋上からワイヤーを張って本社ビルへ突入するため、警備の薄い深夜の時間帯に行動する必要があった。

「隣のビルも35階建てとけっこうな高さだから、屋上に着くまでかなりの時間を要するぞ」
「やっぱり階段を使うんスか?」
「まあそうなる。エレベーターを使えば監視カメラに映るからな」
「うげ……エグいわ」
コールダスクは、苦虫を噛み潰したような顔になる。
「少しくらいの体力消耗なら、私が治してあげるから安心して」
「さすが七奈美さん。頼りにしてますよ」
「さあ着いたぜ! 車を降りたらトランクから道具を出してくれ」
門脇に指示され、コールダスクと七奈美の二人は、車のトランクから道具の入ったボストンバッグを取り出す。
そして足早に高層ビルの裏口から中へ入り、三人は非常階段を駆け上がった。
「門脇さん、なんで裏口の鍵を持ってるんですか?」
「細けぇこと言うんじゃねぇよ! こんな築年数の古いセキュリティゆるゆるのビル、金積めばいくらでも鍵が手に入るぞ」
「物騒な世の中だな~」
「門脇さんはその道のプロだからね。東京の一部地域を牛耳ってた時期もあるし」
七奈美の話を聞いて、門脇の過去がますます怪し気に思われたため、それ以上は詮索せんさくしないようにした。
……そしてビルの屋上まで辿り着くと、門脇はボストンバッグを開いて、中から先端にアンカーの付いたワイヤーガンを取り出す。
「こいつを本社ビルに射出するぞ。おまえたちは滑車を用意しておきな」
二人がボストンバッグから滑車を取り出そうとしたその時、屋上のドアが開いて一人の男が顔をのぞかせた。
一行は慌てて身を隠そうとしたが、時すでに遅しで、ドアを開けた男はこちらに向かって声を掛ける。

「ああいたいた。作業中のところを悪いが、少し話をさせてくれないか?」

聞き覚えのある声だったため、コールダスクはその男の顔を確認してみた。
「おまえは……高田!」
「はあ!? 善き者の刺客じゃねぇか!」
門脇は懐に隠していた銃を取り出し、その銃口を高田へ向ける。
「待て待て、私に戦う意思はない。それに、銃で私を撃っても一切効かないぞ。命が惜しければ止めることだ」
コールダスクは、門脇に銃を下ろすよう手で押さえる。
「……話を聞こう」
「冷静な判断に感謝する」
そう言うと、高田は煙草をくわえて先端に火を着けた。
「……まったく、君は今まで何処をほっつき歩いてたのかね? お陰で街頭スピーカーから聞こえる、あの女の戯言たわごとを昼夜聞くことになったんだぞ。近隣住民の苦情に対処した、警察の心労をおもんぱかって欲しいものだ」
「そんな愚痴を言いに、わざわざここまで来たんじゃないだろう?」
「まあそうだな、失礼失礼。ストレスが溜まって、どうしても言っておきたかったんだ。……さて本題だが、本社ビルへ突入した後のプランを聞いておきたい」
「なんでおまえに話さなきゃならない?」
「場合によっては手助けしてやろうと言ってるんだ。あの女が操る原生種を、こちらで抑制することもできるんだぞ。悪い提案ではないと思うが」
「話が上手過ぎる。信用できないな」
「そう思うのも無理はないだろうが、マラーニャにお灸をえてくれるなら、私は喜んで手を貸すよ。街中に響き渡る、あの甲高い声に我慢ならないのでね」
「……勝手にしてくれ」
「そうか……では手助けしよう。君たちの武運を陰ながら祈らせてもらうよ」
そう言うと、高田は煙草の火を足で揉み消して、屋上から姿を消した。

「なんだぁ? あの野郎」
「分からない……つかみどころのない男なんだ」
「あいつの言う通り、原生種たちが襲って来なくなったら、最上階へ行くのはかなり楽になりそうだな。まあ、利用できるもんは利用すりゃいい」
「そうだね……」
何か胸にシコリが残るようなやり取りだったが、一行は頭を切り替えて、ワイヤーガンを本社ビルに向かって射出した。
そのワイヤーを伝って、本社ビル29階への侵入に成功する。

(どうやら、本社ビルの侵入に成功したようだな……)
一連の光景を隣の高層ビルから見ていたのは、先ほど別れた高田だった。
(バカな連中だ、千載一遇せんざいいちぐうのチャンスを逃すとは。あの時に私を殺しておけば、色々と手間がはぶけただろうに。これだから、人の子という存在は理解できない)
高田は煙草の煙を吐き出すと、クククと含み笑いをした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

【完結】奪われたものを取り戻せ!〜転生王子の奪還〜

伽羅
ファンタジー
 事故で死んだはずの僕は、気がついたら異世界に転生していた。  しかも王子だって!?  けれど5歳になる頃、宰相の謀反にあい、両親は殺され、僕自身も傷を負い、命からがら逃げ出した。  助けてくれた騎士団長達と共に生き延びて奪還の機会をうかがうが…。  以前、投稿していた作品を加筆修正しています。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...