MEMOVERUS ~幻異界転生~

中島 弓夜

文字の大きさ
12 / 85
第一章 穂積海斗 22歳

ミゼラムの最期

しおりを挟む
「キキ……キィキィ」

フギオールは痩せ細った体になり、身長は100cmくらいの小男に変わり果てる。
先ほどまで堂々とした態度で海斗と向き合っていたが、今では見る影もなく瞳には不安の色が表れている。
時折、力のない獣のような鳴き声を上げ、怯えるように海斗をずっと見ていた。

「こいつが……さっきの大男なのか?」

海斗はリボルバーを手に取ると、怯えるフギオールに銃口を向けた。

「ヒィィィ―――!」

フギオールは飛び跳ねながら海斗から逃げようとする。
だが海斗は冷静に照準しょうじゅんを定め、フギオールの脳天のうてんに風穴を開けた。
ドサリとその場に倒れた悪しき者の刺客は、二度と息を吹き返すことはなかった。

「……よし、まずは一人」

フギオールを倒した海斗は、太陽の光の中に潜む巨大な眼球に視線を移す。

(あれが……善き者の刺客?)

巨大な眼球は海斗に話し掛ける様子もない。
ただジッとこちらを見つめるだけで、その場から動こうともせず、攻撃する素振りも見せなかった。
海斗はイヤホンマイクを通して仁翔にコンタクトする。

「お師匠。悪しき者の刺客を一人、倒しました」
「なんと、4年前の刺客をか!?」
「ええ……でも私の力ではなく善き者の刺客が現れたので、どうやらあいつが悪しき者の刺客を弱らせたみたいです」
「ついに善き者の陣営じんえいも動いたか……どんな姿をしておる?」
「巨大な人の眼球のような姿です。気になったのは、悪しき者の刺客がしきりに戒律違反かいりついはんはしていないと眼球に向かって言ってました。どういう意味でしょうか?」
「……分からん。恐らくじゃが、善き者の刺客との間に何かしらの齟齬そごがあったようじゃ。しかし4年前の刺客を弱体化させるとは……凄まじい力を秘めておるの」
「これからミゼラムを倒しに行きます。善き者の刺客は動く様子もないし、攻撃して来るような気配も感じられないので」
「そうじゃな、まずは悪しき者たちをその幻異界から消し去ろうか」

海斗はフラついた足取りで再び新宿スカイアレシアを目指した。
そしてビルの入り口からホールへ足を踏み入れると、周囲に響き渡るミゼラムの叫び声が聞こえた。

「助けてぇぇぇ―――助けてくれぇぇぇ!」

見ると無数の原生種に囲まれたミゼラムが、触手の先端から伸びる爪で何度も刺されていた。

「どうなってるんだ……?」
「あああ! 海斗様、助けてください! こいつらを殺してよぉぉぉ!」

原生種は動きを止めず、今度はミゼラムの手足を触手で縛り、ホールの中央に体を高く掲げた。

「うわあああ、まゆに……繭にされちゃう! 何やってんだ穂積海斗! こいつらを殺せと言ってるだろうがぁぁぁ!」
「……それが人にものを頼む態度かよ。自業自得だ、陽介と一緒の痛みを味わうんだな」

原生種はネバネバとした体液を吐き出し、それを糸のようにミゼラムへ巻き付ける。
一瞬でミゼラムはかいこの繭のような形となり、口を閉ざされ叫び声すら聞こえなくなった。
そして原生種が何本もの触手を繭の中へ突き刺し、大量の寄生虫をミゼラムの体内に注入した。

「……終わったな」

海斗はその場に腰を下ろすと。仁翔に今までの出来事を報告する。

「お師匠、悪しき者の刺客を倒しました。メモヴェルスの反応も穏やかです」
「そうか……ご苦労だったな」
「これで俺は過去に戻れそうですか?」
「いや、まだ善き者の刺客が残っておる」

海斗はホールの窓から外の太陽を見た。
巨大な眼球は依然としてこちらを睨んでいる。

「でも善き者って、愛とか思いやりとかポジティブな思想のにない手なんですよね? じゃあ話し合いで色々と解決できるんじゃないですか?」
「それは違うぞ海斗。本当に厄介やっかいなのはこれからじゃ」
「……え?」

――すると突然、ビルの近くで爆撃のような激しい音が鳴った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

【完結】奪われたものを取り戻せ!〜転生王子の奪還〜

伽羅
ファンタジー
 事故で死んだはずの僕は、気がついたら異世界に転生していた。  しかも王子だって!?  けれど5歳になる頃、宰相の謀反にあい、両親は殺され、僕自身も傷を負い、命からがら逃げ出した。  助けてくれた騎士団長達と共に生き延びて奪還の機会をうかがうが…。  以前、投稿していた作品を加筆修正しています。

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!

nineyu
ファンタジー
 男は絶望していた。  使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。  しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!  リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、  そんな不幸な男の転機はそこから20年。  累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

処理中です...