MEMOVERUS ~幻異界転生~

中島 弓夜

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第三章 穂積海斗 20歳

卑怯者

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七奈美と別れ、海斗はイビシュチ地区のとある小学校へと向かった。
そこは海斗が幼い頃に通った学校であり、メモヴェルスが指し示した目的地でもあった。

(あの学校がクライザーレと戦った場所だとはな……思い出したくはないが、あそこにオロチの『兼佐陀・紫電』とリボルバー『KH621』が落ちている)

そして小学校の校庭に足を踏み入れた海斗は、メモヴェルスのカードをかかげて「愛用の武器を光で示せ」と唱える。
すると校庭の中央に向かって一筋の光が差し、その光に呼応するかのように日本刀とリボルバーが現れた。
海斗は二つの武器を手に取ると、破損していないか慎重に確かめる。

(驚いたな……まるで新品みたいだ。さすがオロチが自賛じさんする武器だぜ。日本刀なんか刃こぼれ一つないぞ)

これで自分は最強になったと海斗は思った。
少なくとも、この現実世界において人間相手に負けることはない。
銃を持った一個分隊を相手にすれば話は別だが、例え囲まれたとしても逃げ延びる自信ならあった。

(懐かしいな……)

海斗は校庭を見渡すと、幼い頃の自分を思い出した。
この地域は治安も悪く、通う生徒も低所得層の者が多かったと記憶している。
当然ながら「犯罪者予備軍」の学校とも言われ、国際紛争にイビシュチ地区が巻き込まれたのを境に、忘れ去られたように廃校として認定された。

海斗は幼い頃、あるゆがんだ思い込みが根付いていた。
それは「正義の味方」が「卑怯者」だという考えである。

物語の主人公は最初から強い者が多い。
弱いヒーローなんて誰も見たがらないからだ。
だが、ゲームの世界で能力を高めるチートを使えば卑怯者の扱いである。
何故、正義の味方はその枠に入らないのか、海斗の頭には疑問符しか浮かばなかった。

(だから俺みたいな悪党ほど、最強の力ってヤツは相応ふさわしい)

生まれながらの悪党は「卑怯者」だと陰からののしられようと、痛くもかゆくもない。
その卑怯者が正しさを主張するなんざ、頭がイカレているとさえ海斗は思っている。

(……それを今から証明してやる)

海斗の目つきは一層と鋭くなり、小学校から立ち去った後、自分が所属していた犯罪組織『ホラーチャール』のアジトへ向かった。
ホラーチャールのアジトは、都市部の中心から少し外れたヤコフ地区に存在し、日本の警察もおいそれと手出しできない場所として有名である。

――ボスの名前はアレクセイ・ラマノフ。

ラマノフは兄弟も多く、それらが結託けったくして組織を大きくしたため、同胞どうほうとの団結力は日本人よりも強いことで知られている。

そして海斗は盗んだ車を走らせてアジトの駐車場に着くと、見張り役の玉野蒼汰たまのそうたいぶかしい表情を浮かべて近付いて来た。

「誰だテメェは、こんなところに車を停めるんじゃねぇ!」

蒼汰は車体が泥で汚れて中が見えないらしく、海斗は運転席の窓を開けて顔を出した。

「お、おまえは海斗か? どうして……?」
「は? どうしてとはなんだよこの野郎」

海斗は運転席から降りて蒼汰をにらみ付けた。

「そこはよく戻ったな、だろうが! 俺が裏切られたことを知ってたような言い草だな」
「い、いやそうじゃねぇ。俺は後から知ったんだよ!」
「言い訳すんなよクソボケが。俺と同じ日本人なのに、よく平気な顔していられんな」
「誰だってラマノフが怖いだろ。逆らったりしたら殺されちまう」
「そのラマノフはいるのか?」

蒼汰は震えながらアジトを指差して「今は食事をしている」と海斗に告げる。

「おまえ……まさか暴れるつもりじゃないだろうな? 巻き添えはゴメンだぜ」
「心配すんな」

海斗は日本刀で蒼汰の首を吹き飛ばした。

「俺は優しいんだ。先に死んでりゃ巻き添えを心配することもないだろ」

海斗は日本刀に付着した血を振り払うと、鞘に収めてアジトの中心部へ向かう階段を上った。
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