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第三章 穂積海斗 20歳
征服者
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海斗は部屋の中を見渡したが、ラマノフの姿がなかった。
(逃げやがったのか……?)
地面に向かって悔しそうに唾を吐くと、海斗は少し休むため、日本刀を置いて椅子に腰掛けた。
「原生種たちが疼きよるから何が起こったのかと調べに来たら、ヌシと会うとは奇遇だな。穂積海斗よ」
突然、背後から声を掛けられたので、海斗は素早く日本刀を手に取って正眼に構える。
声の正体を確かめると身長が2mほどある大男で、今の時代には不釣り合いな漆黒の装束を全身に纏っていた。
また奇妙なのは、顔全体を覆う長細い仮面を被っているため、こちらから表情を窺い知ることができない。
「テメェは誰だ?」
「我の名はドゥルル。悪しき者の刺客である」
「ああ……面倒な話だな。また性懲りもなく俺を殺しに来たのか?」
「いや、ヌシに一つ相談があるのだ」
ドゥルルと名乗るその男は、人間の唇のようなものが生えている異様に大きいフナムシを取り出し、それを海斗の前で噛み千切った。
フナムシから「キャアアア!」と女性の叫び声が上がる。
「ヌシも食してみるか?」
「いらねぇよ! 早く要件を言え」
「では端的に言おう。我と手を組まぬか?」
海斗は呆れたような口調で「はあ?」と言葉を返す。
「まあ聞け。この時代は幻異界の核より20年離れている。よって善き者や悪しき者の影響が極めて薄い。それは裏を返せば、我々だけで思うがままの世界を創造することができるという意味だ。ヌシは征服者になりたいとは思わないか?」
「……ほう」
海斗は満更でもない顔をする。
「興味のある話だが、おまえらが協力的になるとは思えないな」
「この時代だが、我は善き者よりも力が強いと見ている。世の中がネガティブな感情で腐敗し、暴力が蔓延っているのがその証拠だ。ヌシのような悪行を好む者は、我らと手を組むに相応しい人材だと思っている」
「ヒャハハハ! 俺を同類だって言いたいのかよ?」
「我が目指すのは人の子が殺し合い、憎しみ合う世界の創造だ。それが可能なら手段を選ばない。ヌシは世を支配し、我は暗黒の時代を作り上げる。お互いに利益は一致していると思うが?」
海斗はニヤニヤと笑顔を浮かべながらドゥルルの話を聞いていた。
「あんた口説き上手だな。いいぜ乗ってやるよ」
「そうか……褒美として、ヌシが望むなら八重野奈波をこの時代に転生してやろうか?」
海斗は少しだけ驚いたが、ブルブルと激しく首を横に振った。
「断る。あの時代の海斗と俺は違うからな。それに、このタトゥーだらけの姿を見たら彼女もビビッて逃げちまうわ」
「それだけの報酬を与えねば、ヌシも我を裏切る可能性があるだろう?」
「おいおい、おまえと一緒にすんな。俺は簡単に裏切ったりしねぇよ」
ドゥルルは顎を摩りながら「ふむ」と頷く。
「……なれば交渉成立だな。今後の話だが、ラマノフが死亡したことにより、その兄弟たちがこの拠点を襲うはずだ。おそらく100人ほど引き連れて、ヌシを殺そうとするだろう」
「アホらしい……俺1人を殺すために100人も連れて来るのかよ」
「先ほどヌシが暴れた時に、何人かの配下が逃げたからな。情報は相手にも伝わっている」
「俺の強さを見たらそうなるか。それからさ、ラマノフは何処へ行ったんだ?」
ドゥルルは「ああ」と思い出したかのような返事をすると、部屋にあったダクトを指差した。
「あのダクトから原生種の巣へ送った。今頃は全身に寄生虫か卵を植え付けられているはずだ」
「なんだよ、余計なことすんな! あいつは俺が甚振った後に殺すつもりだったのに」
海斗は不服そうに壁を蹴ったが、しばらく腕を組んで考え込んだ後に、ドゥルルへこう質問した。
「……おまえと手を組んだってことは、原生種を好きにしていいんだよな?」
(逃げやがったのか……?)
地面に向かって悔しそうに唾を吐くと、海斗は少し休むため、日本刀を置いて椅子に腰掛けた。
「原生種たちが疼きよるから何が起こったのかと調べに来たら、ヌシと会うとは奇遇だな。穂積海斗よ」
突然、背後から声を掛けられたので、海斗は素早く日本刀を手に取って正眼に構える。
声の正体を確かめると身長が2mほどある大男で、今の時代には不釣り合いな漆黒の装束を全身に纏っていた。
また奇妙なのは、顔全体を覆う長細い仮面を被っているため、こちらから表情を窺い知ることができない。
「テメェは誰だ?」
「我の名はドゥルル。悪しき者の刺客である」
「ああ……面倒な話だな。また性懲りもなく俺を殺しに来たのか?」
「いや、ヌシに一つ相談があるのだ」
ドゥルルと名乗るその男は、人間の唇のようなものが生えている異様に大きいフナムシを取り出し、それを海斗の前で噛み千切った。
フナムシから「キャアアア!」と女性の叫び声が上がる。
「ヌシも食してみるか?」
「いらねぇよ! 早く要件を言え」
「では端的に言おう。我と手を組まぬか?」
海斗は呆れたような口調で「はあ?」と言葉を返す。
「まあ聞け。この時代は幻異界の核より20年離れている。よって善き者や悪しき者の影響が極めて薄い。それは裏を返せば、我々だけで思うがままの世界を創造することができるという意味だ。ヌシは征服者になりたいとは思わないか?」
「……ほう」
海斗は満更でもない顔をする。
「興味のある話だが、おまえらが協力的になるとは思えないな」
「この時代だが、我は善き者よりも力が強いと見ている。世の中がネガティブな感情で腐敗し、暴力が蔓延っているのがその証拠だ。ヌシのような悪行を好む者は、我らと手を組むに相応しい人材だと思っている」
「ヒャハハハ! 俺を同類だって言いたいのかよ?」
「我が目指すのは人の子が殺し合い、憎しみ合う世界の創造だ。それが可能なら手段を選ばない。ヌシは世を支配し、我は暗黒の時代を作り上げる。お互いに利益は一致していると思うが?」
海斗はニヤニヤと笑顔を浮かべながらドゥルルの話を聞いていた。
「あんた口説き上手だな。いいぜ乗ってやるよ」
「そうか……褒美として、ヌシが望むなら八重野奈波をこの時代に転生してやろうか?」
海斗は少しだけ驚いたが、ブルブルと激しく首を横に振った。
「断る。あの時代の海斗と俺は違うからな。それに、このタトゥーだらけの姿を見たら彼女もビビッて逃げちまうわ」
「それだけの報酬を与えねば、ヌシも我を裏切る可能性があるだろう?」
「おいおい、おまえと一緒にすんな。俺は簡単に裏切ったりしねぇよ」
ドゥルルは顎を摩りながら「ふむ」と頷く。
「……なれば交渉成立だな。今後の話だが、ラマノフが死亡したことにより、その兄弟たちがこの拠点を襲うはずだ。おそらく100人ほど引き連れて、ヌシを殺そうとするだろう」
「アホらしい……俺1人を殺すために100人も連れて来るのかよ」
「先ほどヌシが暴れた時に、何人かの配下が逃げたからな。情報は相手にも伝わっている」
「俺の強さを見たらそうなるか。それからさ、ラマノフは何処へ行ったんだ?」
ドゥルルは「ああ」と思い出したかのような返事をすると、部屋にあったダクトを指差した。
「あのダクトから原生種の巣へ送った。今頃は全身に寄生虫か卵を植え付けられているはずだ」
「なんだよ、余計なことすんな! あいつは俺が甚振った後に殺すつもりだったのに」
海斗は不服そうに壁を蹴ったが、しばらく腕を組んで考え込んだ後に、ドゥルルへこう質問した。
「……おまえと手を組んだってことは、原生種を好きにしていいんだよな?」
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