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異世界フィオール
22話 泉の洞窟
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泉の洞窟の中に突入したメーシャたちは邪悪な気配を感じながらも、洞窟内を流れる水の美しさや空中でキラキラ輝く粒子に目を奪われていた。
「きれ~……。この光の粒ってなに?」
ふわふわ漂うキラキラを手のひらで受け止めるメーシャ。
『これは魔力だな。基本的にどこでも魔力はただよってんだが、濃度が高くなればこうして目視できるんだ。メーシャも戦いの時にオーラ出すだろ? あれも目視できるようになった魔力だぞ』
「ほぇ~。あ、でも、今まで勝手に出ちゃうしカッコいいから上乗せして出してたんだけど、そういうことだったらオーラ出さない方がイイの? 出しすぎたらあーしの身体の中のの魔力無くなっちゃう?」
出されたオーラは特に身体の中に戻ることはなく、戦闘後には霧散するように消えていく。出してる時も基本的に意識して出すか、気合を入れている時にあふれ出してきているので、短期戦ならともかく長期戦になれば魔力の枯渇が心配される。
『燃費は確かに悪くなるな。魔力が少ねえ子らが長期戦する場合は、極力オーラを出さず魔法や魔力消費するスキルを使う時に集中させるんだ。ま、でも悪いことばっかじゃねえ』
「そうですね。オーラ……つまり魔力で身体を包めば、敵の魔法などの魔力の流れを弱められるの。だからむしろ格上と戦う場合は、魔法が直撃して一撃で戦闘不能に~なんて事にならないよう基本的にオーラを出しておく方がいいよ」
本人の魔法適性や強さも関係するが、オーラの強度は特に魔法防御力に影響する。メーシャが地球でタコの攻撃で無傷だったのはオーラのおかげなのだ。
ただ、直接攻撃などの防御力はまた別になってくるので過信は禁物。
「マナが精製されて魔力と生命力に分かれるんだっけ? 魔力は分かるけど、生命力は何になるの?」
『生命力はメーシャがわかりやすい表現でいうと……ゲームの"HP"だな。攻撃を喰らって減り、からっぽになっちまうと戦闘不能になる。でも、体内を循環させると防御力を高めたり物理的な攻撃力を上げることもできるから、その辺りの駆け引きはめちゃくちゃ重要だ。身体能力も魔力も生命力も高くない戦士でも、熟練して駆け引きが上手くなれば格上の相手にでも十分勝ち目が出てくるってわけだな』
「あ~……つまり、いくらあーしがつよつよでも、油断してたら格下相手でも返り討ちにされちゃうってワケね」
だから転移ゲートで話した声の主は、念のためにと黄金のオーラを出せるようにしたのだろうか。
「──ちうちう……!」
ラードロの居場所を探るために斥候を務めていたヒデヨシが帰ってきたようだ。
ここは元々の天然の洞窟だったがいつしかモンスターが棲みつき、次に冒険者が見つけて整備し、森にトレントが沸きはじめてからまた廃れて……と、色んな遍歴を経て、この洞窟の中は迷路のように入り組んだつくりになってしまったのだった。
水を飲むだけなら入り口付近で済むので、危篤な冒険者かモンスターくらいしか奥に進まないとか。
『ふむ……複雑ではあるが結構近いみたいだな』
「ちゅいちちちぇうち!」
そして、一行はヒデヨシの案内のもとラードロの巣へと進んでいった。
* * * * *
ラードロの巣になっていた所は広くなっった空間で、穀物のもみ殻が積み上げられた山や、きれいに肉を食われた家畜の骨が目に入った。
ただ、流石にここまでたどり着く者はいないのか、ヒトの遺体や骨らしきものは存在しない。
街付近でもヒトの被害者はいないらしいので、今回のラードロはヒトの食糧を奪うことが目的なのだろうか。
「……いるね。なんか大っきいネズミ? てか、グローブはめてない……?」
「あっちはトゲトゲしい……ハリネズミかな?」
『メーシャが言った方は"バトルヌートリア"で、グローブのように変形した爪でパンチして水弾を打ち出す。
カーミラが言った方は"デスハリネズミ"だな。魔法は使わないが、貫通力の高い背中のハリをマシンガンみたいに発射する。どっちも中級齧歯類モンスターで、トレントより確実に強いはずだ』
バトルヌートリアはずんぐりむっくりな体型でつぶらな瞳、デウスの言う通り爪がグローブ型のヌートリアのような姿。デスハリネズミは少し目つきが鋭い赤いハリが背中全体をおおうハリネズミの姿。
だが、どちらも二足歩行で高さが1m50cmくらいはあり、モチーフとなる動物とは比べ物にならないサイズだ。
2体のモンスターは、骨つき肉を食べるのに夢中でまだこちらに気付いていない。
そしてモンスターというのは理由がある。バトルヌートリアもデスハリネズミも額に黒い角のようなアンテナこそ付いているものの、身体はそのままで黒く染まっていない。
ラードロ自体はヒデヨシが確認した時はいたはずなので、メーシャがこちらに来るまでに他の場所に移動したのだろう。
「ラードロの強さが分からない以上、メーシャちゃんはまだ動かしたくないですね……」
もし頭が回るタイプならメーシャの実力や攻撃パターンを把握しておいて、己の手札を見せてない状態で対策も立てて挑んでくる可能性がある。
メーシャが勇者かを試すのも重要だが、それ以上に街を守ることの方が大事。なので、堅実に倒すならメーシャはラードロが出てきてからの方がいい。
「ちちゅうずちちゅい」
ヒデヨシが指をさしてカーミラに伝える。
『ヒデヨシはデスハリネズミの方を行くみてえだ。カーミラはバトルヌートリアを任せられるか?』
「背中を気にしないで良いなら問題ありません」
『アンテナを破壊すりゃ、解放されると同時に破壊の衝撃で一時的に戦闘不能にできるはずだ』
「ふたりとも頑張って! なんかあったりラードロが来たら任せて!」
「「はい(ちう)!!」」
その掛け声とともに、カーミラとヒデヨシは同時に広間に突入した。
「きれ~……。この光の粒ってなに?」
ふわふわ漂うキラキラを手のひらで受け止めるメーシャ。
『これは魔力だな。基本的にどこでも魔力はただよってんだが、濃度が高くなればこうして目視できるんだ。メーシャも戦いの時にオーラ出すだろ? あれも目視できるようになった魔力だぞ』
「ほぇ~。あ、でも、今まで勝手に出ちゃうしカッコいいから上乗せして出してたんだけど、そういうことだったらオーラ出さない方がイイの? 出しすぎたらあーしの身体の中のの魔力無くなっちゃう?」
出されたオーラは特に身体の中に戻ることはなく、戦闘後には霧散するように消えていく。出してる時も基本的に意識して出すか、気合を入れている時にあふれ出してきているので、短期戦ならともかく長期戦になれば魔力の枯渇が心配される。
『燃費は確かに悪くなるな。魔力が少ねえ子らが長期戦する場合は、極力オーラを出さず魔法や魔力消費するスキルを使う時に集中させるんだ。ま、でも悪いことばっかじゃねえ』
「そうですね。オーラ……つまり魔力で身体を包めば、敵の魔法などの魔力の流れを弱められるの。だからむしろ格上と戦う場合は、魔法が直撃して一撃で戦闘不能に~なんて事にならないよう基本的にオーラを出しておく方がいいよ」
本人の魔法適性や強さも関係するが、オーラの強度は特に魔法防御力に影響する。メーシャが地球でタコの攻撃で無傷だったのはオーラのおかげなのだ。
ただ、直接攻撃などの防御力はまた別になってくるので過信は禁物。
「マナが精製されて魔力と生命力に分かれるんだっけ? 魔力は分かるけど、生命力は何になるの?」
『生命力はメーシャがわかりやすい表現でいうと……ゲームの"HP"だな。攻撃を喰らって減り、からっぽになっちまうと戦闘不能になる。でも、体内を循環させると防御力を高めたり物理的な攻撃力を上げることもできるから、その辺りの駆け引きはめちゃくちゃ重要だ。身体能力も魔力も生命力も高くない戦士でも、熟練して駆け引きが上手くなれば格上の相手にでも十分勝ち目が出てくるってわけだな』
「あ~……つまり、いくらあーしがつよつよでも、油断してたら格下相手でも返り討ちにされちゃうってワケね」
だから転移ゲートで話した声の主は、念のためにと黄金のオーラを出せるようにしたのだろうか。
「──ちうちう……!」
ラードロの居場所を探るために斥候を務めていたヒデヨシが帰ってきたようだ。
ここは元々の天然の洞窟だったがいつしかモンスターが棲みつき、次に冒険者が見つけて整備し、森にトレントが沸きはじめてからまた廃れて……と、色んな遍歴を経て、この洞窟の中は迷路のように入り組んだつくりになってしまったのだった。
水を飲むだけなら入り口付近で済むので、危篤な冒険者かモンスターくらいしか奥に進まないとか。
『ふむ……複雑ではあるが結構近いみたいだな』
「ちゅいちちちぇうち!」
そして、一行はヒデヨシの案内のもとラードロの巣へと進んでいった。
* * * * *
ラードロの巣になっていた所は広くなっった空間で、穀物のもみ殻が積み上げられた山や、きれいに肉を食われた家畜の骨が目に入った。
ただ、流石にここまでたどり着く者はいないのか、ヒトの遺体や骨らしきものは存在しない。
街付近でもヒトの被害者はいないらしいので、今回のラードロはヒトの食糧を奪うことが目的なのだろうか。
「……いるね。なんか大っきいネズミ? てか、グローブはめてない……?」
「あっちはトゲトゲしい……ハリネズミかな?」
『メーシャが言った方は"バトルヌートリア"で、グローブのように変形した爪でパンチして水弾を打ち出す。
カーミラが言った方は"デスハリネズミ"だな。魔法は使わないが、貫通力の高い背中のハリをマシンガンみたいに発射する。どっちも中級齧歯類モンスターで、トレントより確実に強いはずだ』
バトルヌートリアはずんぐりむっくりな体型でつぶらな瞳、デウスの言う通り爪がグローブ型のヌートリアのような姿。デスハリネズミは少し目つきが鋭い赤いハリが背中全体をおおうハリネズミの姿。
だが、どちらも二足歩行で高さが1m50cmくらいはあり、モチーフとなる動物とは比べ物にならないサイズだ。
2体のモンスターは、骨つき肉を食べるのに夢中でまだこちらに気付いていない。
そしてモンスターというのは理由がある。バトルヌートリアもデスハリネズミも額に黒い角のようなアンテナこそ付いているものの、身体はそのままで黒く染まっていない。
ラードロ自体はヒデヨシが確認した時はいたはずなので、メーシャがこちらに来るまでに他の場所に移動したのだろう。
「ラードロの強さが分からない以上、メーシャちゃんはまだ動かしたくないですね……」
もし頭が回るタイプならメーシャの実力や攻撃パターンを把握しておいて、己の手札を見せてない状態で対策も立てて挑んでくる可能性がある。
メーシャが勇者かを試すのも重要だが、それ以上に街を守ることの方が大事。なので、堅実に倒すならメーシャはラードロが出てきてからの方がいい。
「ちちゅうずちちゅい」
ヒデヨシが指をさしてカーミラに伝える。
『ヒデヨシはデスハリネズミの方を行くみてえだ。カーミラはバトルヌートリアを任せられるか?』
「背中を気にしないで良いなら問題ありません」
『アンテナを破壊すりゃ、解放されると同時に破壊の衝撃で一時的に戦闘不能にできるはずだ』
「ふたりとも頑張って! なんかあったりラードロが来たら任せて!」
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その掛け声とともに、カーミラとヒデヨシは同時に広間に突入した。
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