虹かけるメーシャ

大魔王たか〜し

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職業 《 勇者 》

45話 背負う覚悟

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 メーシャは状態異常に苦戦しながらも、新技を習得してみごとコカトリスに勝利した。

「ふい~、なんとかなったねー! てかさ、初めて石化の経験したんだけど! 動けないもどかしさとかあるんじゃないの? って思ったんだけどさ、周りは見えてても思考が止まっちゃうから意外と苦にならなさそう。むしろ、暑いとか寒いとかなさそうだし快適かも……みたいな?」

 メーシャは額の汗を腕で拭いながら顔をほころばせる。
 なんとかなったからこその石化ジョークだ。

「ヒヤヒヤしましたよ……! でも、最後はすごかったですね。コカトリスの身体も内側からジョワ~って、しゅわわーんって分解するみたいに消えてしまいましたよ! お嬢様がこっちにくる前にしてたファンタジーのゲームと同じで感動しました。……まあ、素材は手に入らなかったですけど、見るだけの価値はありましたね」

 ヒデヨシがメーシャに駆け寄ると、嬉しそうに楽しそうに語った。

「──あっ! そうだ! ああ~、魔石消えちゃったのか~……あの感じだと良い魔石獲れそうだったのに」

 デウスがもしもの時の保険的な感じで何か策を練っているのだが、そのために魔石がたくさんいるらしい。なのでメーシャたちは魔石を見かける度に買ったり拾ったりして集めているのだ。

 ちなみにだが、一応メーシャは近衛騎士(仮)に在席しているので、就任祝いでお金をいくらか貰ったり(お給料も出る)、旅に必要な道具や宿泊する宿屋の費用が騎士団持ちになったりするのと、王様からドラゴン=ラードロに挑むにあたっての報酬の半分を前払いで貰ったのと、クエストの報酬でいくらか貰っているので割とお金に余裕がある。


『無くなっちまったもんはしょうがねえ。これからまた集めるわけだし、そん中の数回取り損ねてもほとんど変わんねーよ。気にすんな』

 デウスは気にしていないのか、軽い声色でカラカラと笑った。

「ごめん、あんがとね。……そういえばコカトリスってなんで凶暴にっちゃったんだろ? 縄張りを出てまでモンスターを襲ったりしてたんだよね」

「普段を知らないのでなんとも言えないですが、食欲旺盛みたいですし縄張り内のエサになる物が無くなったんでしょうか?」

 周囲のモンスターや冒険者を襲っていて無視できないところまで来ていたので今回コカトリスの討伐依頼が出ていたのだった。

『……歴史的に凶暴なコカトリスが出たって言う話がいくつかあったりするが、元々縄張り意識が強くてあんまりそこから出てまで狩りをするタイプのモンスターじゃないはずだぜ。何か他に理由があったんじゃないか? 俺様もこの世界の全てを把握できるわけじゃないから断言できないが…………気になるならちょっと巣でも調べたらどうだ? 確か、石化した木々で作られてるはずだ』

「そうだね。何かあるならシタデルに報告しないとだしそうしよっか」


 ●     ●     ●


 そして数分後、メーシャたちはゴツゴツした2~3mの岩が立ち並んで迷路のようになっている場所の奥に、直径5m以上ある鳥の巣を発見した。
 強い力で無理やり折られた細めの木の幹も使用されてるものの、メインは木の枝でできており、身体を休める中心部には葉っぱや羽根が使用されていたりと、形としては他の鳥の巣とあまり変わらない様子であった。
 ただ、デウスの言った通りその巣に使われている木、葉っぱ、羽の全てがコカトリスによって石化していた。
 ちなみに羽や草は石化させた後踏みしめたのか、ある程度粉砕されて一部が粉末のようになっている。


「やっぱ大きいね~。でも、コカトリスの体の大きさを考えたら、人間で言うとシングルベッドくらい?」

「お嬢様はキングサイズベッドだから実質勝ちみたいなもんですね!」

 メーシャの実家のベッドはキングサイズなのだ。

「……優越感! 異世界行くからって習得したあーしの石鹸作りの知識は全く役に立たなかったけど、まさかベッドのサイズで無双できるとはね! 世の中わかんないもだね」

 メーシャは得意げだ。

「でも、ぬぐるみをいっぱい置いてるので寝られるスペースはシングル未満ですけどね」

「……ぐうの音も出ない」

 メーシャは小さい頃から増えていった動物やモンスターのぬいぐるみを置きすぎて、もうベッドの主がメーシャなのかぬいぐるみ達なのか分からない所まで来ていた。
 そもそも今のベッドも2年ほど前に新調したもので、元々使っていたのははシングルサイズだった。
 その時はぬいぐるみが占拠し過ぎて朝起きたらメーシャがベッドから落ちているという事件が多発。見かねた両親がキングサイズのベッドを買ってくれたのだった。

『……引き分けだな。手作りベッドというロマンがあるが小さめなコカトリス。でかいサイズのベッドだが寝られるスペースのほとんどをぬいぐるみに占拠されているメーシャ。……うん、引き分けだな。メーシャは精進しないとな』

「どゆこっちゃ!」

 そんなやりとりをしつつ、メーシャたちは手がかりがないかと巣やその周りを慎重に調べていった。

 ●     ●     ●


「ん? これって……」

 巣の中の粉末状になった石化した葉っぱの中を漁っていたメーシャが何かを見つけたようだ。

『どうしたんだ?』

「この丸いのってさ……」

 メーシャが灰色のザラザラした、一見石のようにも見える手のひらサイズの丸い物体を手にとった。

『卵っぽいな。多分コカトリスで間違い無いだろうな』

「──こっちも手がかりになりそうなものありましたー!」

 少し離れた岩陰でヒデヨシが大きな声で知らせる。

「……なにみつけたのー?」

「これです」

 メーシャが来たのをかくにんして、ヒデヨシは発見したものの方に指をさした。大きな鳥の骨である。

「もしかして、この骨の方もさっきの卵の親なのかな? ……あ、骨折してるね。戦いがあったのかな?」

 メインが鳥で、尻尾の骨は長細く蛇のようなので、サイズ的に見てみてもコカトリスで間違いないだろう。

『肋骨部分まで折れているところを見ると、これが致命傷になった可能性はあるな。ふむ……形からして多分、メーシャ達が倒したオーガの持っていた石斧と同じものだろう。結果は痛み分け……ってところだろうな』

 洞窟で遭遇したオーガにはコカトリスに付けられたであろう傷はなかったし、他の個体もいる様子はなかった。とすると、群れの別の個体がコカトリスに挑んだが勝てず。その代わりに相手のコカトリスにも致命の一撃で一矢報いたのだろう。

「……ええっと、データによるとコカトリスは産卵期になると片方が巣を守り、片方が狩りをして家族分の食料もとるそうです。それと、卵を産む方は普段の倍以上の食料が必要だとか」

 ヒデヨシは小型スマホ型魔機パルトネルでコカトリスの情報を調べたようだ。

『片方がやられた結果、残された方が巣を守るのも狩も1個体で担うことになり、卵があるにもかかわらず巣から離れる必要が出てきて普段以上に凶暴化。結果として縄張りからも出て危険そうな存在を事前に片っ端から攻撃してたってわけか』

「これも邪神軍の動きの余波なんだよね……。普段なら可哀想だけど自然の摂理ってことで、報告だけしてスルーが良いんだろうけど……」

 メーシャが手に持っていたコカトリスの卵を見つめる。

「ねえデウス、この卵って生きてんのかな?」

『このまま放置すりゃ何かしらのモンスターがエサにすんだろうけど、しっかり温めれば孵化するはずだ』

 この言葉を聞いたメーシャはどこか決心した表情で顔を上げた。

「じゃ、この卵はあーしが育てることにするよ!」

「ええ!? だ、大丈夫ですか? 石化光線とかブレスを事故でも街にいる時に出してしまったら大惨事ですよ」

 メーシャの言葉にヒデヨシは驚き飛び上がってしまう。

「ご飯とか教育とか……どうしようもなくなった時の責任もちゃんとする。モンスターだって社会性があって住民登録できれば"ヒト"として街に住めるし、それに……邪神を倒そうとするあーしの前にこの小さな命が現れて、未来を決める選択を迫られてるわけよ? 見捨てらんないよ!」

 メーシャの意思は固かった。

「あーしはね、何かを切り捨てる覚悟はしたくないの。そんな大切なものを切り捨てたらそりゃ軽くなるし、身動きも取りやすくなるけどさ。
 でも、難しくても重たくても向かい風だったとしても、背負いたいもの全部背負って『大団円』で真のエンディングを迎えたいんだよ。背負うからって重いだけじゃない。想いは重ければ重いほど強く大地を踏みしめられんの。ま、あんま重たい人生歩んでないから、説得力ないかもだけどさ。
 この子はあーしの覚悟の証ってことで……良いかな?」

 途中おどけてみせた部分はあったが、メーシャの言葉の節々には力がこもっていた。

『良いんじゃねえか? 自分が納得できる選択をしな』

 そんなメーシャの言葉を聞いたデウスの声はとても穏やかで優しかった。

「つまり僕の弟か妹みたいなものですね? ふふっ……何をして遊びましょうか? あ、そうだ。遊ぶだけじゃなくて悪いことをしたらダメってちゃんと教えてあげないとですね! 一気に楽しみになってきました!」

 ヒデヨシも乗り気だ。

「……良かった」

 メーシャは反対されるかもしれないと少し不安だったようだが、ふたりの様子を見てほっと息を漏らして安堵した。

『……なんだ? 俺様が反対すると思ったのか? ったく、俺様はいつでもメーシャの味方だっつうの』

「僕もですよ! 正直びっくりはしましたけど、反対なんてするわけないです」

 デウスとヒデヨシにメーシャの考えはバレていたようだ。

「も、もう~! そんな恥ずかしいことバンバン言うなし!」

 メーシャはふたりのストレートな言葉に照れてしまった。

『へへっ。……じゃあ一件落着したところで、そろそろ街に帰ろうぜ。卵をあっためたり保護するケースも買わなきゃいけねーからな!』

「ピヨちゃん用のぬいぐるみも見ときたいです」

「……だね! 雑貨屋さんってどこにあったかな? ちょっと調べ──」

 メーシャがスマホをポケットから取り出したその時、大音量のアラートとともに救援要請が入った。

「なんですか?!」

「騎士団から! 街の外の見回りをしていた兵士さんがモンスターの群れと交戦中……近くにいる騎士は一刻も早く現場にって! 兵士さんじゃ手に負えないし怪我してる人もいるみたい」

 このままでは全滅の可能性もあるらしい。

『こっから近いのか? そんでモンスターの種類は?』

「最大限急げば5分くらい! モンスターの種類は"サイクロプス"、ひとつ目の巨人型モンスターだよ」

 星4前衛冒険者でも受けきれない重たい攻撃をするサイクロプス。基本的には補助魔法を駆使してパーティで1体を倒すモンスターだが、今回はそれがのだ。
 一般兵士は強いひともいるだろうが、群れで現れたとなればひとたまりもない。

『じゃあ急いで行ってやらねえとな! だって、ヒーローってのはなんだからな』

「僕も準備完了です!」

 ヒデヨシは背中の黒い模様部分から、ホログラムチックのェット機のような翼を出していた。

「っし! じゃあキマイラ前最後の大仕事、ちょっくら片付けて来ますか……!」
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