52 / 69
職業 《 勇者 》
52話 新たな町へ
しおりを挟む
600年前に甚大な被害を出したというキマイラに対し、メーシャは怪我もなく宣言通り圧勝することができた。
無意識的ではあったが、メーシャは戦いの中でウロボロスのチカラをもうひとつ更なる高みへと進められたのだった。
それは相手のマナという根源たるエネルギーに作用するもので、ラードロの身体を構成するナノウイルスに対しても特効である。今までもラードロに対し大きなダメージを与えたり、核の宝石を破壊して解放していたので、どうしても本体にもダメージが残っていた。
しかし、このチカラを使いこなすことが出来れば侵食が進んでいても本体を完全救出できるはずだ。
* * * * *
そしてキマイラ戦から2日後。
メーシャは"港町トゥルケーゼ"に向かうため、サンディーの背中に乗って平原を進んでいた。
「ふぃ~、風が気持ちいいね……!」
サンディーは頭を出してうねりながら時速80kmくらいで進み、小腹が減ったら気まぐれに弱いモンスターを丸呑みにするため急な方向転換するので、全くといって快適な旅ではないはずなのだが、メーシャはモンスターに乗っての旅というシチュエーションにテンションが爆アガり。ドーパミンのせいか、全てのマイナス要素もエンジョイできる寛容さを持っていた。
「キュイー!」
──ドッゴーンっ!!
サンディーが目の前に現れた大きな岩に正面突撃で粉砕。身体に付着したカケラを身体ふりふりして落とす。
サンディーはとても楽しそうだった。メーシャも楽しそうだった。
「さ、サンディー!? 落ちますって!」
ヒデヨシは全身を使って背中にしがみつき、サンディーから振り落とされるのをなんとか防ぐ。しかし、もうひとりの同行者はそうもいかなかった。
「あぁあぁああああ──!!?」
灼熱さんは手に持っていた小さなオニギリと共に吹っ飛んでいってしまう。
「灼熱さーん!!! ……ああ、だからサンディーの背中でご飯はやめた方がいいって言ったんです」
ヒデヨシは小さくなっていく灼熱さんから目を逸らして言った。
「もう、しゃーないなー……」
メーシャはオーラを手の形に変えて伸ばし、サッと灼熱さんをキャッチしてサンディーの上に戻す。
「お、おう!? 助かったぜぃ、メーシャのお嬢……! 危うくオニギリと一緒に泥に生き埋めにされるところだった」
灼熱さんは急いでオニギリを食べ切ってサンディーの背中にしがみついた。
灼熱さんは"ハムオブザスター"という炎の扱いが得意なモンスターで、燃えるような赤い毛のロボロフスキーハムスターみたいな姿をしている。
以前ラードロ化させられていた所をメーシャ達に助けられ、ハムオブザスターの誇りを取り返すため一緒にドラゴン=ラードロを倒す事を決めたのだった。
仲間のバトルヌートリアとデスハリネズミがアレッサンドリーテの住民と馴染み生活が落ち着いたところで、灼熱さんは冒険者登録を済ませて研修を行い、今回戦闘の経験や気たる決戦の時に息が合わないなんて事がないように一緒について来ることになった。
「キュ、キィキュキュイ!」
「ほんとだ。潮風の香りがしてきたね!」
「町も見えてきましたよ!」
爽やかな潮の香り、キラキラと光を反射する水、そこに浮かぶ無数の船、そびえ立つ灯台と港、白を基調とした建物の数々、アレッサンドリーテ最大規模の冒険者の要塞、海産物と輸入品の売買を行う商人や町をにぎわせるたくさんの人たち。
ここが"港町トゥルケーゼ"だ。
● ● ●
メーシャたちは町を探索する前にシタデルにおもむいていた。
シタデルは全体が白い石造りで、木と鋼でできた両開きの門をくぐれば広い中庭があり、周囲を堀と壁で囲まれていて、2ヶ所外に続く道には鋼の格子状の上げ下げできるタイプの門が設置されている。
「──じゃあサンディーはここでお留守番お願いね」
「キュ……」
お留守番と聞いてサンディーは落ち込んでしまう。
だがサンディーはまだ地面をえぐらずに道を進む事ができないので、今回シタデルの中庭で預かってもらうことになったのだ。
「ちゃんとタコ見つけて来るから、そんな落ち込まないのっ」
メーシャがサンディーの頭をよしよしとなでてあげる。
「キュ?」
「ほんと。だから、それまでここで地面をえぐらないようにする練習しときな? そしたら一緒に町をまわれるようになるからさ」
この町の道路は身体の大きなモンスターも通れるように大きめに作られているので、サンディーも道さえ壊さなければ窮屈な思いもせずに町の探索を楽しめるようになるのだ。
「……キィ」
「ここ2、3日でずっと上達してきていますし、きっともうすぐですよ」
ヒデヨシもサンディーをはげます。
「サンディー嬢ちゃん、少しでも好物のタコ……? とやらが見つかるよう、あっしも微力ながら頑張らせてもらうぜぃ。だからちぃ~っとばかし、待っててくんな」
灼熱さんも今日が初対面ながらサンディーを気遣う言葉をかける。義理人情にあつい性格なのだろう。
『メーシャ、俺様はサンディーと一緒に待ってるわ』
「そうなの?」
『地面をえぐらないようにする練習に付き合ってやろうと思ってな。ひとりも可哀想だし、その魔法に役にたつ知識を思い出したからちょうど良いと思ってな』
「デウス長生きだし、そういう知識もあるのか。ありがとね」
デウスは最新のこの世界の知識や、ヒトが使うような普通の魔法については少々うとい部分もあるが、イニシエの時代から生きている龍神なので色んな知識が蓄えられているのだ。
「おう。……そうだ、この町にはキマイラの時に言ったたこ焼きっぽい食べ物があるはずだから、タコ探しのついでに探してみると良いぜ』
「分かった、楽しみにしとくし!」
デウスの言い方を考えると、たこ焼きの様ではあるがタコは入っていないか、タコは使われているがまん丸じゃないか、もしくは調味料が違うのか。どうころんでもメーシャにとってこの料理との出会いはプラスになるはずだ。
「じゃあ、行ってきます」
『良い土産話を期待してるからな!』
「キュイッキー!」
無意識的ではあったが、メーシャは戦いの中でウロボロスのチカラをもうひとつ更なる高みへと進められたのだった。
それは相手のマナという根源たるエネルギーに作用するもので、ラードロの身体を構成するナノウイルスに対しても特効である。今までもラードロに対し大きなダメージを与えたり、核の宝石を破壊して解放していたので、どうしても本体にもダメージが残っていた。
しかし、このチカラを使いこなすことが出来れば侵食が進んでいても本体を完全救出できるはずだ。
* * * * *
そしてキマイラ戦から2日後。
メーシャは"港町トゥルケーゼ"に向かうため、サンディーの背中に乗って平原を進んでいた。
「ふぃ~、風が気持ちいいね……!」
サンディーは頭を出してうねりながら時速80kmくらいで進み、小腹が減ったら気まぐれに弱いモンスターを丸呑みにするため急な方向転換するので、全くといって快適な旅ではないはずなのだが、メーシャはモンスターに乗っての旅というシチュエーションにテンションが爆アガり。ドーパミンのせいか、全てのマイナス要素もエンジョイできる寛容さを持っていた。
「キュイー!」
──ドッゴーンっ!!
サンディーが目の前に現れた大きな岩に正面突撃で粉砕。身体に付着したカケラを身体ふりふりして落とす。
サンディーはとても楽しそうだった。メーシャも楽しそうだった。
「さ、サンディー!? 落ちますって!」
ヒデヨシは全身を使って背中にしがみつき、サンディーから振り落とされるのをなんとか防ぐ。しかし、もうひとりの同行者はそうもいかなかった。
「あぁあぁああああ──!!?」
灼熱さんは手に持っていた小さなオニギリと共に吹っ飛んでいってしまう。
「灼熱さーん!!! ……ああ、だからサンディーの背中でご飯はやめた方がいいって言ったんです」
ヒデヨシは小さくなっていく灼熱さんから目を逸らして言った。
「もう、しゃーないなー……」
メーシャはオーラを手の形に変えて伸ばし、サッと灼熱さんをキャッチしてサンディーの上に戻す。
「お、おう!? 助かったぜぃ、メーシャのお嬢……! 危うくオニギリと一緒に泥に生き埋めにされるところだった」
灼熱さんは急いでオニギリを食べ切ってサンディーの背中にしがみついた。
灼熱さんは"ハムオブザスター"という炎の扱いが得意なモンスターで、燃えるような赤い毛のロボロフスキーハムスターみたいな姿をしている。
以前ラードロ化させられていた所をメーシャ達に助けられ、ハムオブザスターの誇りを取り返すため一緒にドラゴン=ラードロを倒す事を決めたのだった。
仲間のバトルヌートリアとデスハリネズミがアレッサンドリーテの住民と馴染み生活が落ち着いたところで、灼熱さんは冒険者登録を済ませて研修を行い、今回戦闘の経験や気たる決戦の時に息が合わないなんて事がないように一緒について来ることになった。
「キュ、キィキュキュイ!」
「ほんとだ。潮風の香りがしてきたね!」
「町も見えてきましたよ!」
爽やかな潮の香り、キラキラと光を反射する水、そこに浮かぶ無数の船、そびえ立つ灯台と港、白を基調とした建物の数々、アレッサンドリーテ最大規模の冒険者の要塞、海産物と輸入品の売買を行う商人や町をにぎわせるたくさんの人たち。
ここが"港町トゥルケーゼ"だ。
● ● ●
メーシャたちは町を探索する前にシタデルにおもむいていた。
シタデルは全体が白い石造りで、木と鋼でできた両開きの門をくぐれば広い中庭があり、周囲を堀と壁で囲まれていて、2ヶ所外に続く道には鋼の格子状の上げ下げできるタイプの門が設置されている。
「──じゃあサンディーはここでお留守番お願いね」
「キュ……」
お留守番と聞いてサンディーは落ち込んでしまう。
だがサンディーはまだ地面をえぐらずに道を進む事ができないので、今回シタデルの中庭で預かってもらうことになったのだ。
「ちゃんとタコ見つけて来るから、そんな落ち込まないのっ」
メーシャがサンディーの頭をよしよしとなでてあげる。
「キュ?」
「ほんと。だから、それまでここで地面をえぐらないようにする練習しときな? そしたら一緒に町をまわれるようになるからさ」
この町の道路は身体の大きなモンスターも通れるように大きめに作られているので、サンディーも道さえ壊さなければ窮屈な思いもせずに町の探索を楽しめるようになるのだ。
「……キィ」
「ここ2、3日でずっと上達してきていますし、きっともうすぐですよ」
ヒデヨシもサンディーをはげます。
「サンディー嬢ちゃん、少しでも好物のタコ……? とやらが見つかるよう、あっしも微力ながら頑張らせてもらうぜぃ。だからちぃ~っとばかし、待っててくんな」
灼熱さんも今日が初対面ながらサンディーを気遣う言葉をかける。義理人情にあつい性格なのだろう。
『メーシャ、俺様はサンディーと一緒に待ってるわ』
「そうなの?」
『地面をえぐらないようにする練習に付き合ってやろうと思ってな。ひとりも可哀想だし、その魔法に役にたつ知識を思い出したからちょうど良いと思ってな』
「デウス長生きだし、そういう知識もあるのか。ありがとね」
デウスは最新のこの世界の知識や、ヒトが使うような普通の魔法については少々うとい部分もあるが、イニシエの時代から生きている龍神なので色んな知識が蓄えられているのだ。
「おう。……そうだ、この町にはキマイラの時に言ったたこ焼きっぽい食べ物があるはずだから、タコ探しのついでに探してみると良いぜ』
「分かった、楽しみにしとくし!」
デウスの言い方を考えると、たこ焼きの様ではあるがタコは入っていないか、タコは使われているがまん丸じゃないか、もしくは調味料が違うのか。どうころんでもメーシャにとってこの料理との出会いはプラスになるはずだ。
「じゃあ、行ってきます」
『良い土産話を期待してるからな!』
「キュイッキー!」
20
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる