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第一章 転生
第01話 転生
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「──俺は自分の物差しで物事を測る」
俺、黒須涼介の座右の銘だ。
しかし、そんな俺に偉い人達は、口を揃えてこう注意する。
『自分の物差しで物事を測るな』
そんな一般論、俺の知った事ではない。誰が何と言おうと俺は、自分の『物差し』で判断する。そして、その価値は自分で決める。傲慢だと言われても関係ない。俺はずっと、今までそうやって生きてきた。
だが、俺が今置かれている、この状況ならどうだ?
どう見ても、『森』。
それも、鬱蒼と樹々が生い茂る、密林《ジャングル》。明らかに日本ではない。
どうなってる?
幾ら俺でも、少し焦る。目覚めたら密林にいた。
どういう事だ?
俺の『物差し』では、測れない。他人の『物差し』なら測れるとでも言うのだろうか?
考える。
俺は、大きく深呼吸した。
空気が美味い。
夢じゃない?
寝惚けていた頭が、少しずつ働き始める。思い出せ。俺は何をしていた?
そして……。
「──あのジジイ!!」
思わず叫ぶ。
そうだ!
思い出した!
俺は、さっきまで夢を見ていた。いや、あれは夢では無かったと言う事か。突然、現れたあのジジイ……いや、『神』! 自分でそう名乗っていた。まさか、本物だったのか? だとしたら……
「ふざけんな!!」
足下の枯れ木を蹴飛ばし、怒りをぶつける。完全に思い出した。さっきの夢……いや、『神』との邂逅。
どうやら俺は、本当に『転生』したらしい。しかも、あの神の話が本当なら、かなりフザケた条件で。
──転生。
あの神の気まぐれで、どういう訳か俺は生き返った。しかも、この異世界で。人生の終わりは呆気ない物だった。所謂、交通事故。特に未練も無かったし、死んだ事にはショックも無い。もう一度人生をやり直すのも、俺としては大歓迎だ。
だが、普通こう言う話なら、反則級な能力とかを持たせるのが物語の基本じゃないのか? 神の話が本当なら、異世界は剣と魔法が存在する、まるでゲームの様な世界らしいし。
「無理ゲーにも程があるだろ……」
愚痴りたくもなる。今の俺は、察するに高校生くらいの体だろうか。だとすれば、二十才くらい若返った事になる。まあ、それはいい。俺も今更、赤ん坊からやり直すのは御免だ。
そして、おそらく外見は黒髪に黒瞳。少し目付きが悪かったが、整った顔の少年な筈だ。何故、この条件で転生したのかはわからない。まあ、神にも都合という物があるのだろう。
しかし、こんな密林のド真ん中に放り込んでおいて、手ブラはないだろ。この世界の衣類なのか、黒いロングコートは俺好みだが。唯一の装備品、茶色いリュックも中身は空だ。そもそも俺は、空間収納が欲しかった。
そんな事を考えていると、何やら不穏な呻き声が聞こえた。まさかと思い、振り返る。勘弁してくれ……俺は今、手ブラなんだぞ?
振り向いた先で視界に入る、大型の獣。灰色の毛並みに鋭い牙。見た事も無い狼だ。
《グルルルル……》
涎を垂らし、ゆっくりと近付いて来る。よく見ると尻尾が三本ある。明らかに、この世界特有の魔物だ。
俺は、改めて神を呪った。こんな時、よくある展開なら、魔法か何かで一発の筈。だが、今の俺にそんな魔法は無い。あるのは、前世での行いを基に発現するとか言う、固有能力が只一つ。この世界で唯一、俺だけが持つ能力らしいのだが……
「こんなもん、役に立つ訳ねえだろうがああああああああああああああああ!!」
──【不意討ち】
どんな手を使ってでも、勝負には勝つ。たとえ『卑怯』と言われようが、俺の『物差し』では問題ない。そんな生き方をして来た俺に発現した、唯一の固有能力。
これが、今の俺に与えられた、たった一つの能力だった──。
俺、黒須涼介の座右の銘だ。
しかし、そんな俺に偉い人達は、口を揃えてこう注意する。
『自分の物差しで物事を測るな』
そんな一般論、俺の知った事ではない。誰が何と言おうと俺は、自分の『物差し』で判断する。そして、その価値は自分で決める。傲慢だと言われても関係ない。俺はずっと、今までそうやって生きてきた。
だが、俺が今置かれている、この状況ならどうだ?
どう見ても、『森』。
それも、鬱蒼と樹々が生い茂る、密林《ジャングル》。明らかに日本ではない。
どうなってる?
幾ら俺でも、少し焦る。目覚めたら密林にいた。
どういう事だ?
俺の『物差し』では、測れない。他人の『物差し』なら測れるとでも言うのだろうか?
考える。
俺は、大きく深呼吸した。
空気が美味い。
夢じゃない?
寝惚けていた頭が、少しずつ働き始める。思い出せ。俺は何をしていた?
そして……。
「──あのジジイ!!」
思わず叫ぶ。
そうだ!
思い出した!
俺は、さっきまで夢を見ていた。いや、あれは夢では無かったと言う事か。突然、現れたあのジジイ……いや、『神』! 自分でそう名乗っていた。まさか、本物だったのか? だとしたら……
「ふざけんな!!」
足下の枯れ木を蹴飛ばし、怒りをぶつける。完全に思い出した。さっきの夢……いや、『神』との邂逅。
どうやら俺は、本当に『転生』したらしい。しかも、あの神の話が本当なら、かなりフザケた条件で。
──転生。
あの神の気まぐれで、どういう訳か俺は生き返った。しかも、この異世界で。人生の終わりは呆気ない物だった。所謂、交通事故。特に未練も無かったし、死んだ事にはショックも無い。もう一度人生をやり直すのも、俺としては大歓迎だ。
だが、普通こう言う話なら、反則級な能力とかを持たせるのが物語の基本じゃないのか? 神の話が本当なら、異世界は剣と魔法が存在する、まるでゲームの様な世界らしいし。
「無理ゲーにも程があるだろ……」
愚痴りたくもなる。今の俺は、察するに高校生くらいの体だろうか。だとすれば、二十才くらい若返った事になる。まあ、それはいい。俺も今更、赤ん坊からやり直すのは御免だ。
そして、おそらく外見は黒髪に黒瞳。少し目付きが悪かったが、整った顔の少年な筈だ。何故、この条件で転生したのかはわからない。まあ、神にも都合という物があるのだろう。
しかし、こんな密林のド真ん中に放り込んでおいて、手ブラはないだろ。この世界の衣類なのか、黒いロングコートは俺好みだが。唯一の装備品、茶色いリュックも中身は空だ。そもそも俺は、空間収納が欲しかった。
そんな事を考えていると、何やら不穏な呻き声が聞こえた。まさかと思い、振り返る。勘弁してくれ……俺は今、手ブラなんだぞ?
振り向いた先で視界に入る、大型の獣。灰色の毛並みに鋭い牙。見た事も無い狼だ。
《グルルルル……》
涎を垂らし、ゆっくりと近付いて来る。よく見ると尻尾が三本ある。明らかに、この世界特有の魔物だ。
俺は、改めて神を呪った。こんな時、よくある展開なら、魔法か何かで一発の筈。だが、今の俺にそんな魔法は無い。あるのは、前世での行いを基に発現するとか言う、固有能力が只一つ。この世界で唯一、俺だけが持つ能力らしいのだが……
「こんなもん、役に立つ訳ねえだろうがああああああああああああああああ!!」
──【不意討ち】
どんな手を使ってでも、勝負には勝つ。たとえ『卑怯』と言われようが、俺の『物差し』では問題ない。そんな生き方をして来た俺に発現した、唯一の固有能力。
これが、今の俺に与えられた、たった一つの能力だった──。
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