21 / 44
第二章 人間の国
第21話 王道(テンプレ)
しおりを挟む
「──アスカ、読めるか?」
ギルド内に設置された掲示板を眺め、俺は尋ねた。無事に冒険者としての登録を終えた以上、俺達は目の前に貼られた依頼書の仕事を受けられる。但し、俺達の様な新人冒険者が受けられるのは、C級の依頼に限られているのだが。
「……問題ない。ここにある依頼は、主にペットの世話や捜索……それに、薬草の採取。後は、店番とか大工の手伝い。報酬の平均は……大体、銅貨八枚くらい」
依頼書を一つ一つ確認しながら、アスカが簡潔に答える。やはり、アスカは読み書きが出来る様だ。俺は、この世界の文字がサッパリだから、正直助かる。
「禄なのが無いな……」
俺は、ぼやいた。銅貨八枚では、宿代で殆ど消えてしまう。それに、もっとこう、冒険者らしい魔物の討伐とかの方が、経験値も稼げてちょうどいい。幾らこの世界はゲームでは無いと言われても、現実の仕組みがゲームに近いのだから、どうしてもそう考えてしまう。
「C級の冒険者でも、ギルドの承認があれば、B級迄の依頼なら受けられるみたい……」
アリスに貰ったギルドの規約に目を通しながら、アスカは答えた。ギルドの承認……つまり、アリスが認めれば良い訳か。
「因みに、B級の依頼ってのはどんなのがあるんだ?」
掲示板のそれらしき場所に目をやり、俺は尋ねた。
「……ここに貼ってあるのは、B級だと小鬼の討伐依頼や、最近、出没している盗賊団の討伐依頼……ね。殆どは、魔物の討伐依頼みたいだけど。報酬の差も、大きい。最高は……岩壁の大熊の銀貨二十枚」
「銀貨二十枚!? 岩壁の大熊、そんなに金になるのか……!」
思わず、声に出てしまった。岩壁の大熊と言えば、この町に来る以前、何体か倒した魔物だ。魔物は、その体の一部が討伐の証明になるらしいが、惜しい事をした。しかし、岩壁の大熊がB級でも上位の魔物だとは……。正直、『迷いの森』にいた魔物の方が強かった様な気もする。
すると、俺達の会話を聞きつけて、見慣れない三人組が声をかけて来た。
「坊主、岩壁の大熊を受けるには、最低でも四人以上の仲間じゃねぇとギルドの許可は降りねえぜ? 何なら、俺達が仲間になってやろうか?」
声をかけて来たのは、大柄な髭の男。傍らには、痩せ型でつり目の男と、丸々太った小柄な男を従えている。三人共、ニヤニヤと下卑た笑いを浮かべていた。
「アスカ、そんな規約があるのか?」
「いえ。それは、あくまでそのパーティの戦力を見る為の目安。平均、四人くらいは必要だと言う、一般的な見解。クロスなら、こんなのがいなくても何の問題も無い」
淡々と、冷たく男達の言葉を否定するアスカ。
「だ、そうです。せっかくですが、お断りさせて貰います」
俺は、あくまで下手に断りを入れた。内心、期待に胸を踊らせながら。
「言ってくれるじゃねえか、お嬢ちゃん。俺達三人が、この坊主一人の戦力にも劣るって言いてえのかい?」
「ヒヒヒ……世の中の厳しさを教えて差し上げなきゃいけませんねぇ」
「グフフフ。か、可愛いなぁ……グフフ……」
あくまで、上から目線で憤る三人組。俺は、笑いを堪えるのが精一杯だった。
期待通り。
なんて、わかりやすい展開!
まさに、王道!
「──こ、困った人達ですね……ププ……」
ギルド内に設置された掲示板を眺め、俺は尋ねた。無事に冒険者としての登録を終えた以上、俺達は目の前に貼られた依頼書の仕事を受けられる。但し、俺達の様な新人冒険者が受けられるのは、C級の依頼に限られているのだが。
「……問題ない。ここにある依頼は、主にペットの世話や捜索……それに、薬草の採取。後は、店番とか大工の手伝い。報酬の平均は……大体、銅貨八枚くらい」
依頼書を一つ一つ確認しながら、アスカが簡潔に答える。やはり、アスカは読み書きが出来る様だ。俺は、この世界の文字がサッパリだから、正直助かる。
「禄なのが無いな……」
俺は、ぼやいた。銅貨八枚では、宿代で殆ど消えてしまう。それに、もっとこう、冒険者らしい魔物の討伐とかの方が、経験値も稼げてちょうどいい。幾らこの世界はゲームでは無いと言われても、現実の仕組みがゲームに近いのだから、どうしてもそう考えてしまう。
「C級の冒険者でも、ギルドの承認があれば、B級迄の依頼なら受けられるみたい……」
アリスに貰ったギルドの規約に目を通しながら、アスカは答えた。ギルドの承認……つまり、アリスが認めれば良い訳か。
「因みに、B級の依頼ってのはどんなのがあるんだ?」
掲示板のそれらしき場所に目をやり、俺は尋ねた。
「……ここに貼ってあるのは、B級だと小鬼の討伐依頼や、最近、出没している盗賊団の討伐依頼……ね。殆どは、魔物の討伐依頼みたいだけど。報酬の差も、大きい。最高は……岩壁の大熊の銀貨二十枚」
「銀貨二十枚!? 岩壁の大熊、そんなに金になるのか……!」
思わず、声に出てしまった。岩壁の大熊と言えば、この町に来る以前、何体か倒した魔物だ。魔物は、その体の一部が討伐の証明になるらしいが、惜しい事をした。しかし、岩壁の大熊がB級でも上位の魔物だとは……。正直、『迷いの森』にいた魔物の方が強かった様な気もする。
すると、俺達の会話を聞きつけて、見慣れない三人組が声をかけて来た。
「坊主、岩壁の大熊を受けるには、最低でも四人以上の仲間じゃねぇとギルドの許可は降りねえぜ? 何なら、俺達が仲間になってやろうか?」
声をかけて来たのは、大柄な髭の男。傍らには、痩せ型でつり目の男と、丸々太った小柄な男を従えている。三人共、ニヤニヤと下卑た笑いを浮かべていた。
「アスカ、そんな規約があるのか?」
「いえ。それは、あくまでそのパーティの戦力を見る為の目安。平均、四人くらいは必要だと言う、一般的な見解。クロスなら、こんなのがいなくても何の問題も無い」
淡々と、冷たく男達の言葉を否定するアスカ。
「だ、そうです。せっかくですが、お断りさせて貰います」
俺は、あくまで下手に断りを入れた。内心、期待に胸を踊らせながら。
「言ってくれるじゃねえか、お嬢ちゃん。俺達三人が、この坊主一人の戦力にも劣るって言いてえのかい?」
「ヒヒヒ……世の中の厳しさを教えて差し上げなきゃいけませんねぇ」
「グフフフ。か、可愛いなぁ……グフフ……」
あくまで、上から目線で憤る三人組。俺は、笑いを堪えるのが精一杯だった。
期待通り。
なんて、わかりやすい展開!
まさに、王道!
「──こ、困った人達ですね……ププ……」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜
具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、
前世の記憶を取り戻す。
前世は日本の女子学生。
家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、
息苦しい毎日を過ごしていた。
ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。
転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。
女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。
だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、
横暴さを誇るのが「普通」だった。
けれどベアトリーチェは違う。
前世で身につけた「空気を読む力」と、
本を愛する静かな心を持っていた。
そんな彼女には二人の婚約者がいる。
――父違いの、血を分けた兄たち。
彼らは溺愛どころではなく、
「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。
ベアトリーチェは戸惑いながらも、
この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。
※表紙はAI画像です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる