卑怯と言われても最強です。〜ヒロインは全てヤンデレだけど不意打ちスキルで異世界無双

真木悔人

文字の大きさ
30 / 44
第二章 人間の国

第30話 ヴィヴィアン

しおりを挟む
「──ユ、固有能力ユニークスキル……」


 アスカが呟いた。

 そう言えば、アンクは言っていた。この世界の魔法は、使える者がいても殆どが初級魔法か中級魔法。上級魔法やそれに匹敵する様な物は、ほぼ固有能力ユニークスキルである場合が多いと。確かに今、目の前で使用された炎の魔法は、明らかに初級の威力では無かった。ならば、固有能力ユニークスキルだと考える方が、確かに自然なのかも知れない。

「とりあえず、無事で良かったけど……。まさか、こんな所で混血なかまに出会うとはな……」

 或いは、王族。固有能力ユニークスキルを持っていると言う事は、王家の血を引いている可能性がある。言われてみれば、襲われていた美女は、確かにどこか気品の様な物を感じさせる。

「ハァ……ハァ……」

 肩を揺らすその美女は、まだ少し動揺している。余程、蛇が苦手なのだろう。今の攻撃を見ても、全く持って容赦無い。見るのも嫌、と言う感じだった。一刻も早く、目の前から消えろと言わんばかりに。

「大丈夫ですか?」

 間を見計らい、俺は彼女に声をかけた。ようやく俺達の存在に気が付いたのか、彼女はビクリと反応してこちらに振り向く。

「え、ええ……。問題ありませんわ。それより……」

 彼女は少し焦り気味で、言い辛そうに口を開いた。

「いつからそこに居ましたの? そ、その……見ました? 今の……」

炎の魔法ユニークスキルの事ですか?」

 隠さず、正直に答える。すると、彼女は諦めた様な表情かおで溜息をついた。

「ハァ……。見られた物は仕方ありませんね。仰る通り、今のは固有能力ユニークスキルですわ。私は、王家に名を連ねる者ですので」

 やはりか。

 まあ、混血者にしては身なりもいいし、それ以外で固有ユニーク持ちは考えられない。本人も、その辺りは十分理解している様だ。

「私は、オルキア王国の第三王女、ヴィヴィアン。でも、今はその身分を隠していますの。貴方達、今見た事は忘れて貰えるかしら?」

 そう、少し上から目線で話す彼女、ヴィヴィアン。

「で、そのお姫様が、何で護衛も付けずにこんな所へ? しかも、身分を隠してまで…」

 素朴な疑問。幾ら俺がこの世界の常識に疎いとは言え、普通に考えれば有り得ない状況だ。

「何の刺激も無いお城うちに居たら、退屈で気が滅入ってしまうもの。それに……」

 おいおい。

 どうやら、このお姫様はとんでも無いお転婆らしい。見た目は清楚系その物なのに……。そんな彼女は、更に続けた。

「お城では、私が固有ユニーク持ちだと言う事は隠していますの。もしバレたら、一族の固有ユニーク持ちと結婚させられてしまいますので。好きでも無い男と一緒になるなんて、真平御免ですわ」

 そう言いながら、ヴィヴィアンは仕立ての良いワンピースから肩口を覗かせた。そして、星形の痣をシールの様に剥がして見せる。

「……偽物?」

 脇にいたアスカが、そう呟いた。その言葉に、ヴィヴィアンが答える。

「そう。星型の痣これは、偽装ですわ。混血者の血が薄い私達王家の人間は、15歳になるまで純血ノーマル混血交じりユニーク持ちかわかりませんの。それまで、どちらも発現しませんからね。そして、15歳の誕生日に、突然それは現れますの。体のどこかにね」

 そう言って、今度はスカートを捲り上げるヴィヴィアン。ドキリとして少し動揺する俺を他所に、ヴィヴィアンは太股を曝け出した。チラリと目を向けた視線の先に、俺やアスカとは違う意匠デザインの紋様が視界に入る。俺達がそれを見た事を確認すると、ヴィヴィアンは悪戯っぽく笑って告げた。


「──だから、私は固有能力ユニークスキルが発現した事を隠しましたの。王家うちを飛び出して冒険者になる為にね」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜

具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、 前世の記憶を取り戻す。 前世は日本の女子学生。 家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、 息苦しい毎日を過ごしていた。 ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。 転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。 女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。 だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、 横暴さを誇るのが「普通」だった。 けれどベアトリーチェは違う。 前世で身につけた「空気を読む力」と、 本を愛する静かな心を持っていた。 そんな彼女には二人の婚約者がいる。 ――父違いの、血を分けた兄たち。 彼らは溺愛どころではなく、 「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。 ベアトリーチェは戸惑いながらも、 この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。 ※表紙はAI画像です

処理中です...