39 / 44
第二章 人間の国
第39話 スミス
しおりを挟む
「──で、今迄に無い新しい魔法剣ってのは?」
スミスの工房の一室。山賊の様な大男、スミスが身を乗り出して聞いて来る。どうやら、俺の言葉に興味がある様だ。
「俺の聞いた話では、今ある魔法剣と言うのは属性が一つ。それも、製造する時に付与した初級魔法がベースだと聞いています」
炎の初級魔法なら、炎属性の剣。氷の初級魔法なら、氷属性の剣、と言う具合だ。魔法剣に付与されているのはその初級魔法と属性だけで、使う者の魔力に比例して、各属性の効果は変わるらしい。
「その通りだ。幾ら使う者の魔力が強くても、所詮は初級魔法。中級以上の魔法を込めた魔法剣には及ばない。勿論、中級以上の魔法も付与出来るが、そもそも、使いこなせる様な人間なんていねえからな」
「魔力が足りない……って事ですか?」
「それもある。人間は、亜人や魔族に比べて魔力が低いからな。人間でそいつを使いこなせる様な魔力を持つ者がいるとしたら、それこそ混血者くらいのもんだろうよ」
そう言って、スミスは葉巻に火を点けた。大きな口から豪快に煙を吐き出し、ドカッと背もたれに体を預ける。俺は、その様子を眺めながら別の事を考えていた。
(混血者は魔力が高いのか……?)
そんな俺の考えを見越した様に、ビビが耳打ちして来る。
「混血者は固有能力を使いこなせる様に、普通よりも強い魔力を持って生まれて来るのですわ」
なるほど。と言う事は、俺やアスカ……それに、ビビも問題は無さそうだ。そんな事を考えていると、スミスが痺れを切らした様に問いかけて来た。
「それで、それがお前の言う『新しい魔法剣』と、どういう関係があるんだ?」
スミスが厳しい目を向けて来る。俺は、自分の考えを纏めて記した、羊皮紙を懐から取り出した。そして、それをスミスに手渡しながら尋ねる。
「スミスさん。ひとつ教えて欲しいんですが……それ、造る事は可能ですか?」
俺の希望のみを羅列した、漫画絵の様なラフ案。しかし、口で説明するよりは伝わり易い筈だ。そう思い、密かに作成していたのだが……。
受け取った羊皮紙を食い入る様に見つめる、スミス。大きな目が一層大きく見開き、額には若干、汗が見える。どうやら、俺の言いたい事は伝わっている様だが……。すると、スミスはボソリと呟いた。
「こ、こいつは……」
明らかに驚きの表情を浮かべる、スミス。
「造れますか?」
もう一度、尋ねる。すると、スミスは真剣な顔で答えた。
「出来るか出来ねえかで言えば……技術的には、可能だ。だが、それには特殊な材料がいる。それに、そもそも、こんな物を造っても使いこなせる訳が……」
そうスミスが言おうとした矢先、勢い良く入口のドアが開かれた。まるで、ドアを蹴破る様にして工房に乗り込んで来たのは、さっき逃げて行った騎士風の男達。そして、その一番後ろに先程は見かけなかった、一人だけ立派な鎧を着た男がいた。恐らく、こいつがリーダーなのだろう。
そう思って見つめていると、その男は突然、怒鳴り始めた。
「貴様! 王国騎士団からの依頼を断ったそうだな! 一体、どう言うつもりだ!」
──偉そうに吠えるこの男、どうやら王国の騎士団らしい。ちょうどいい。スミスに俺の実力を見せつけるにはいい機会だ……。
スミスの工房の一室。山賊の様な大男、スミスが身を乗り出して聞いて来る。どうやら、俺の言葉に興味がある様だ。
「俺の聞いた話では、今ある魔法剣と言うのは属性が一つ。それも、製造する時に付与した初級魔法がベースだと聞いています」
炎の初級魔法なら、炎属性の剣。氷の初級魔法なら、氷属性の剣、と言う具合だ。魔法剣に付与されているのはその初級魔法と属性だけで、使う者の魔力に比例して、各属性の効果は変わるらしい。
「その通りだ。幾ら使う者の魔力が強くても、所詮は初級魔法。中級以上の魔法を込めた魔法剣には及ばない。勿論、中級以上の魔法も付与出来るが、そもそも、使いこなせる様な人間なんていねえからな」
「魔力が足りない……って事ですか?」
「それもある。人間は、亜人や魔族に比べて魔力が低いからな。人間でそいつを使いこなせる様な魔力を持つ者がいるとしたら、それこそ混血者くらいのもんだろうよ」
そう言って、スミスは葉巻に火を点けた。大きな口から豪快に煙を吐き出し、ドカッと背もたれに体を預ける。俺は、その様子を眺めながら別の事を考えていた。
(混血者は魔力が高いのか……?)
そんな俺の考えを見越した様に、ビビが耳打ちして来る。
「混血者は固有能力を使いこなせる様に、普通よりも強い魔力を持って生まれて来るのですわ」
なるほど。と言う事は、俺やアスカ……それに、ビビも問題は無さそうだ。そんな事を考えていると、スミスが痺れを切らした様に問いかけて来た。
「それで、それがお前の言う『新しい魔法剣』と、どういう関係があるんだ?」
スミスが厳しい目を向けて来る。俺は、自分の考えを纏めて記した、羊皮紙を懐から取り出した。そして、それをスミスに手渡しながら尋ねる。
「スミスさん。ひとつ教えて欲しいんですが……それ、造る事は可能ですか?」
俺の希望のみを羅列した、漫画絵の様なラフ案。しかし、口で説明するよりは伝わり易い筈だ。そう思い、密かに作成していたのだが……。
受け取った羊皮紙を食い入る様に見つめる、スミス。大きな目が一層大きく見開き、額には若干、汗が見える。どうやら、俺の言いたい事は伝わっている様だが……。すると、スミスはボソリと呟いた。
「こ、こいつは……」
明らかに驚きの表情を浮かべる、スミス。
「造れますか?」
もう一度、尋ねる。すると、スミスは真剣な顔で答えた。
「出来るか出来ねえかで言えば……技術的には、可能だ。だが、それには特殊な材料がいる。それに、そもそも、こんな物を造っても使いこなせる訳が……」
そうスミスが言おうとした矢先、勢い良く入口のドアが開かれた。まるで、ドアを蹴破る様にして工房に乗り込んで来たのは、さっき逃げて行った騎士風の男達。そして、その一番後ろに先程は見かけなかった、一人だけ立派な鎧を着た男がいた。恐らく、こいつがリーダーなのだろう。
そう思って見つめていると、その男は突然、怒鳴り始めた。
「貴様! 王国騎士団からの依頼を断ったそうだな! 一体、どう言うつもりだ!」
──偉そうに吠えるこの男、どうやら王国の騎士団らしい。ちょうどいい。スミスに俺の実力を見せつけるにはいい機会だ……。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜
具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、
前世の記憶を取り戻す。
前世は日本の女子学生。
家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、
息苦しい毎日を過ごしていた。
ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。
転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。
女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。
だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、
横暴さを誇るのが「普通」だった。
けれどベアトリーチェは違う。
前世で身につけた「空気を読む力」と、
本を愛する静かな心を持っていた。
そんな彼女には二人の婚約者がいる。
――父違いの、血を分けた兄たち。
彼らは溺愛どころではなく、
「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。
ベアトリーチェは戸惑いながらも、
この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。
※表紙はAI画像です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる