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第二章 樹海の森編
第18話 修行の成果
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──俺は今、最初に雪と出会った森にいる。
俺はあれから、町で暫くのんびり過ごした後、この森に籠もっていた。この先、何をするにも、まずは自分の能力をしっかり確かめておきたかったからだ。おかげで、随分いろいろな事がわかった。
まず、俺の【加速空間】は自分で意識しないと発動しない。俺の意識外……つまり、不意討ちや寝込みなんかを襲われたらアウトと言う事だ。咄嗟に反応出来た時は何とかなりそうだが、気がついたら殺られてた、なんて事は十分ありえる。こんな世界だし、暗殺とかには気をつけた方が良いかも知れない。
それから、【過重力世界】なんだが……正直、こいつはとんでもない能力だった。汎用性があり過ぎるというか……とにかく、基本能力が軒並み桁違いになっている為、何をやっても普通じゃない能力になる。
身体能力が普通じゃないから、殴っただけでもとんでもない威力になるし、走ればめちゃくちゃ速い。おまけに頑丈だから、俺の体には、普通の攻撃では傷ひとつ付けられない。むしろ、この数日間は、いろいろ手加減等を覚えるのが大変だったくらいだ。
そんな感じで、森に来てから、魔物相手にいろいろと試してたんだが、ようやく最近になってコツをつかみ始めて来た。他にも何か、いろいろと出来そうな感じはするんだが……まあ、今のところはこんな物でいいだろう。
『──真人さん、奥から何か来ます。おそらく……ジャイアントベアーです』
雪が、ふと意識に語りかけてきた。
因みに、雪は俺と魂で繋がっている影響か、俺の感覚を通して辺りの気配を感じる事が出来る。俺には無かった能力だ。多分、俺の時より共有する感覚が多いせいだろう。以前よりも今の俺達は、より深いところで繋がっているらしい。
俺自身、身体能力の向上のおかげで感覚はかなり研ぎ澄まされているのだが、それでも、雪の方が俺の中にいるだけあって、感受性には優れているらしい。なので、こうしていつも、雪が警戒にあたってくれている事には俺も助かっている。
(了解。一匹か?)
『はい。周りには他に気配はありません』
(わかった)
俺は森の奥へと目線を向けて、ジャイアントベアーが出て来るのを待ち構えた。暫くすると、奴は何の警戒もせずに目の前に姿を現した。自分がやられるなんて微塵も思っていないらしい。
俺は腰の鞘から刀を抜くと、自然体のまま右手をだらりと下ろして構えた。刀は町にいる時に買った物だ。業物では無いが、殴るよりは手加減しやすいと思って購入しておいた。
〈グワオオオオオオオオオオッッッ!!〉
ジャイアントベアーが無警戒に爪で襲い掛かってきた。
「【死神の刃】!」
スパアアアアアアアアアアアアンッッ!!
まだ、少し離れた所にいたジャイアントベアーの体が、腰の辺りで後の木々ごと真っ二つになり、二つになって崩れ落ちた。
──【死神の刃】
俺が、この森で身につけた刀技の一つだ。身体能力に物を言わせて振るった刀から、鎌鼬の様な真空刃を飛ばして敵を斬りつける。切れ味は、加減しなければとんでもない事になるけど。
ネーミングが少々、中二っぽいが気にしない。俺は、この世界では自重しないって決めたんだ。
(だいぶ仕上がってきたな……そろそろ町に戻ろうか)
『そうですね』
こうして、俺達は久しぶりに町へ戻る事にした。
──────────
町に戻った俺達は、いつもの宿へ荷物を預けると、まずは腹ごしらえをする事にした。
『今は、お腹が空く事はありませんが、美味しい物が食べられるのは凄く嬉しいです』
(それは良かった。たいして美味い物を食ってる訳じゃないけどな)
『それでも、今迄に比べたらご馳走ばかりですよ』
雪は、食事の時は特に嬉しそうだった。どんな感じなのかは想像できないが、雪が言うには、自分で食べている様な感覚で伝わるらしい。味覚、共有しておいて本当に良かった……。
そんな事を考えていたら、前の方から偉そうな連中が道幅いっぱいに広がって歩いて来るのが見えた。見た感じ、侍っぽい格好をしている。
「おいおい、見てみろよ……あの異人。偉そうに、刀なんか差してやがるぜ?」
「異人の癖に生意気だな。それに何だ、あの目つきは」
「気に入らねえな。異人はもっと、町の隅っこをコソコソ歩くもんだ」
──やっぱり絡まれた。
ちなみに転生した俺の顔は、めちゃくちゃ凶悪な目つきをしていた。間違いなく、前世の俺の名残りだ。碧髪碧眼なんだから、顔の造りも雪をベースにしてくれたら良かったのに……絶対、美少年になったはずだ。
「そこの異人! 何見てんだっ!」
「はぁ……またか……」
俺は、思わず溜息がでた。いい加減、慣れてきたとは言え鬱陶しいものは鬱陶しい。
「貴様っ! 何だその態度は!」
「我らが鬼道館の剣客と知っての事か!」
「無礼者が! 斬り捨ててくれるわ!」
一人が、いきなり斬り掛かってきた。
この国はあれか?
異人には何してもいいのか?
それとも、こいつらが剣客だからだろうか。まあ、俺も何人かぶっ殺しているし、この世界はその辺りが曖昧だ。気にしても仕方ない。俺は余裕でその刀を躱すと、足を掛けてその剣客を足下に転ばせた。
「はぁ……別にお前らなんか殺してもいいんだけど、キリがないんだよな。いちいち相手にしていると」
俺は、そう言って真ん中にいたリーダーらしき男を軽く睨みつけた。
知ってるよ?
悪魔みたいな目つきなんだろ?
前世でも皆、震え上がって近寄って来なかったからな。普通に笑いかけただけなのに。
「なっ! き、貴様……」
男は、明らかに動揺している。もうひと押しで終わりそうだ。
「面倒臭いけど、これ以上ガタガタ抜かすなら殺すぞ?」
俺はそう言って、さらに目を細めた。男は既に戦意を無くしたらしい。ここから一刻も早く立ち去りたそうに、逃げる理由を探している。
「くっ! 貴様の様な異人に我らの剣は勿体ないわっ! いくぞ、お前ら!」
吐き捨てる様に言うと、男は倒れていた仲間が起き上がるのを待ち、逃げる様にその場から去って行った。
(相変わらず、胸糞悪い連中が多いな……この町は)
『けど、今回は殺しませんでしたね』
(強くなり過ぎて、相手にするのが馬鹿馬鹿しくなっただけだ)
『ふふ……そうですね』
雪は、そう言って笑った。出会った頃よりは、俺が人を殺す事に対し抵抗が無くなってきた様みたいだが、それでも、無闇に殺すよりはいいらしい。
(それより腹減ったな。何か食おう)
『はい!』
少しトラブルもあったが、こうして俺達は当初の予定通り、とりあえず飯にする事にした。
そして、暫くして俺達が飯を食っていると──
「いましたっ! あいつです!」
さっきの剣客だった。今度は仲間を連れて来たみたいだ。全く、しつこい奴らだ……
「おい! そこの異人!」
「は?」
「貴様、異人の分際で我が門下の者を愚弄したそうだな!」
さっきの奴の上役らしき男が怒鳴りつけて来る。
「……そう言う事になってんの?」
俺は、絡まれて……転ばせて……睨んだだけだ。
「いくら末端の門下生とは言え、貴様の様な異人に舐められたとあっては我が流派の沽券に関わる! 顔を貸してもらおう。付いて参れ!」
「なんで?」
「我等が館主殿が、直々に相手して使わそうと言うのだ。光栄に思え!」
ああ……なるほど。自分達じゃ敵わないと思ったから、上に泣きついたのか。
「やだよ、面倒臭い。用があるならお前等が来い」
「なっ、何をっ! 貴様っ……!」
「その館主とやらに伝えろ。偉そうに人を呼びつけるなって。相手して欲しいなら自分が来い」
何でお願いする立場の癖に呼びつけるんだ。俺は行かなくても別に困らない。
「ぶっ、無礼者がっ!」
「ちょっ、ちょっと! お客さん! こんなところで暴れねえで下さい!」
その高弟らしき男が刀を抜こうとした矢先、飯屋の店主が慌てて止めに入って来た。俺の姿を見ても、普通にサービスを提供してくれる店は少い。この店は、そんな店のひとつだ。迷惑をかけるのは偲びない。
「ちっ! 仕方無い。面倒臭いけど、行ってやるよ。店に迷惑をかけるな」
俺はとりあえず、これ以上ここにいるのは不味いと思い、こいつ等に付いて行く事にした。全く……ここで飯を食えなくなったらどうしてくれるんだ。俺は、いい加減、くだらない理由で絡んでくる人間にうんざりしていた。
──仕様がない。こいつ等には、見せしめの為に死んでもらうか……。それも、出来るだけ派手にな。
俺はあれから、町で暫くのんびり過ごした後、この森に籠もっていた。この先、何をするにも、まずは自分の能力をしっかり確かめておきたかったからだ。おかげで、随分いろいろな事がわかった。
まず、俺の【加速空間】は自分で意識しないと発動しない。俺の意識外……つまり、不意討ちや寝込みなんかを襲われたらアウトと言う事だ。咄嗟に反応出来た時は何とかなりそうだが、気がついたら殺られてた、なんて事は十分ありえる。こんな世界だし、暗殺とかには気をつけた方が良いかも知れない。
それから、【過重力世界】なんだが……正直、こいつはとんでもない能力だった。汎用性があり過ぎるというか……とにかく、基本能力が軒並み桁違いになっている為、何をやっても普通じゃない能力になる。
身体能力が普通じゃないから、殴っただけでもとんでもない威力になるし、走ればめちゃくちゃ速い。おまけに頑丈だから、俺の体には、普通の攻撃では傷ひとつ付けられない。むしろ、この数日間は、いろいろ手加減等を覚えるのが大変だったくらいだ。
そんな感じで、森に来てから、魔物相手にいろいろと試してたんだが、ようやく最近になってコツをつかみ始めて来た。他にも何か、いろいろと出来そうな感じはするんだが……まあ、今のところはこんな物でいいだろう。
『──真人さん、奥から何か来ます。おそらく……ジャイアントベアーです』
雪が、ふと意識に語りかけてきた。
因みに、雪は俺と魂で繋がっている影響か、俺の感覚を通して辺りの気配を感じる事が出来る。俺には無かった能力だ。多分、俺の時より共有する感覚が多いせいだろう。以前よりも今の俺達は、より深いところで繋がっているらしい。
俺自身、身体能力の向上のおかげで感覚はかなり研ぎ澄まされているのだが、それでも、雪の方が俺の中にいるだけあって、感受性には優れているらしい。なので、こうしていつも、雪が警戒にあたってくれている事には俺も助かっている。
(了解。一匹か?)
『はい。周りには他に気配はありません』
(わかった)
俺は森の奥へと目線を向けて、ジャイアントベアーが出て来るのを待ち構えた。暫くすると、奴は何の警戒もせずに目の前に姿を現した。自分がやられるなんて微塵も思っていないらしい。
俺は腰の鞘から刀を抜くと、自然体のまま右手をだらりと下ろして構えた。刀は町にいる時に買った物だ。業物では無いが、殴るよりは手加減しやすいと思って購入しておいた。
〈グワオオオオオオオオオオッッッ!!〉
ジャイアントベアーが無警戒に爪で襲い掛かってきた。
「【死神の刃】!」
スパアアアアアアアアアアアアンッッ!!
まだ、少し離れた所にいたジャイアントベアーの体が、腰の辺りで後の木々ごと真っ二つになり、二つになって崩れ落ちた。
──【死神の刃】
俺が、この森で身につけた刀技の一つだ。身体能力に物を言わせて振るった刀から、鎌鼬の様な真空刃を飛ばして敵を斬りつける。切れ味は、加減しなければとんでもない事になるけど。
ネーミングが少々、中二っぽいが気にしない。俺は、この世界では自重しないって決めたんだ。
(だいぶ仕上がってきたな……そろそろ町に戻ろうか)
『そうですね』
こうして、俺達は久しぶりに町へ戻る事にした。
──────────
町に戻った俺達は、いつもの宿へ荷物を預けると、まずは腹ごしらえをする事にした。
『今は、お腹が空く事はありませんが、美味しい物が食べられるのは凄く嬉しいです』
(それは良かった。たいして美味い物を食ってる訳じゃないけどな)
『それでも、今迄に比べたらご馳走ばかりですよ』
雪は、食事の時は特に嬉しそうだった。どんな感じなのかは想像できないが、雪が言うには、自分で食べている様な感覚で伝わるらしい。味覚、共有しておいて本当に良かった……。
そんな事を考えていたら、前の方から偉そうな連中が道幅いっぱいに広がって歩いて来るのが見えた。見た感じ、侍っぽい格好をしている。
「おいおい、見てみろよ……あの異人。偉そうに、刀なんか差してやがるぜ?」
「異人の癖に生意気だな。それに何だ、あの目つきは」
「気に入らねえな。異人はもっと、町の隅っこをコソコソ歩くもんだ」
──やっぱり絡まれた。
ちなみに転生した俺の顔は、めちゃくちゃ凶悪な目つきをしていた。間違いなく、前世の俺の名残りだ。碧髪碧眼なんだから、顔の造りも雪をベースにしてくれたら良かったのに……絶対、美少年になったはずだ。
「そこの異人! 何見てんだっ!」
「はぁ……またか……」
俺は、思わず溜息がでた。いい加減、慣れてきたとは言え鬱陶しいものは鬱陶しい。
「貴様っ! 何だその態度は!」
「我らが鬼道館の剣客と知っての事か!」
「無礼者が! 斬り捨ててくれるわ!」
一人が、いきなり斬り掛かってきた。
この国はあれか?
異人には何してもいいのか?
それとも、こいつらが剣客だからだろうか。まあ、俺も何人かぶっ殺しているし、この世界はその辺りが曖昧だ。気にしても仕方ない。俺は余裕でその刀を躱すと、足を掛けてその剣客を足下に転ばせた。
「はぁ……別にお前らなんか殺してもいいんだけど、キリがないんだよな。いちいち相手にしていると」
俺は、そう言って真ん中にいたリーダーらしき男を軽く睨みつけた。
知ってるよ?
悪魔みたいな目つきなんだろ?
前世でも皆、震え上がって近寄って来なかったからな。普通に笑いかけただけなのに。
「なっ! き、貴様……」
男は、明らかに動揺している。もうひと押しで終わりそうだ。
「面倒臭いけど、これ以上ガタガタ抜かすなら殺すぞ?」
俺はそう言って、さらに目を細めた。男は既に戦意を無くしたらしい。ここから一刻も早く立ち去りたそうに、逃げる理由を探している。
「くっ! 貴様の様な異人に我らの剣は勿体ないわっ! いくぞ、お前ら!」
吐き捨てる様に言うと、男は倒れていた仲間が起き上がるのを待ち、逃げる様にその場から去って行った。
(相変わらず、胸糞悪い連中が多いな……この町は)
『けど、今回は殺しませんでしたね』
(強くなり過ぎて、相手にするのが馬鹿馬鹿しくなっただけだ)
『ふふ……そうですね』
雪は、そう言って笑った。出会った頃よりは、俺が人を殺す事に対し抵抗が無くなってきた様みたいだが、それでも、無闇に殺すよりはいいらしい。
(それより腹減ったな。何か食おう)
『はい!』
少しトラブルもあったが、こうして俺達は当初の予定通り、とりあえず飯にする事にした。
そして、暫くして俺達が飯を食っていると──
「いましたっ! あいつです!」
さっきの剣客だった。今度は仲間を連れて来たみたいだ。全く、しつこい奴らだ……
「おい! そこの異人!」
「は?」
「貴様、異人の分際で我が門下の者を愚弄したそうだな!」
さっきの奴の上役らしき男が怒鳴りつけて来る。
「……そう言う事になってんの?」
俺は、絡まれて……転ばせて……睨んだだけだ。
「いくら末端の門下生とは言え、貴様の様な異人に舐められたとあっては我が流派の沽券に関わる! 顔を貸してもらおう。付いて参れ!」
「なんで?」
「我等が館主殿が、直々に相手して使わそうと言うのだ。光栄に思え!」
ああ……なるほど。自分達じゃ敵わないと思ったから、上に泣きついたのか。
「やだよ、面倒臭い。用があるならお前等が来い」
「なっ、何をっ! 貴様っ……!」
「その館主とやらに伝えろ。偉そうに人を呼びつけるなって。相手して欲しいなら自分が来い」
何でお願いする立場の癖に呼びつけるんだ。俺は行かなくても別に困らない。
「ぶっ、無礼者がっ!」
「ちょっ、ちょっと! お客さん! こんなところで暴れねえで下さい!」
その高弟らしき男が刀を抜こうとした矢先、飯屋の店主が慌てて止めに入って来た。俺の姿を見ても、普通にサービスを提供してくれる店は少い。この店は、そんな店のひとつだ。迷惑をかけるのは偲びない。
「ちっ! 仕方無い。面倒臭いけど、行ってやるよ。店に迷惑をかけるな」
俺はとりあえず、これ以上ここにいるのは不味いと思い、こいつ等に付いて行く事にした。全く……ここで飯を食えなくなったらどうしてくれるんだ。俺は、いい加減、くだらない理由で絡んでくる人間にうんざりしていた。
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