君の瞳に囚われて

ビスケット

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遠慮じゃないのに

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完璧にかましてやったと思って お辞儀した姿勢のままいたら、うんともすんとも言わないので、ちらりと目を上げた。そしたら、同い年くらいの、多分 侯爵家の下のちびっ子坊主と目が合った。

春の海のような、どこか暖かみのある蒼い瞳がぼんやりとこちらを見ていて、綺麗すぎてもはや義眼みたいだなと つい見つめてしまったら、プイッと顔をそらされた。
おいおい、仮にも高位貴族家こういきぞくけの子息が、客に向かってその態度はいただけないぞ。
侯爵家の教育も大したことないなと内心思ったのだった。

「久しぶりだな、カイン。3歳の時以来だが大きくなった。メアリーは息災か?」
おもむろに、とんでもない美声がひびいた。
今俺がここにいる原因を作った、諸悪の根源のグラン侯爵その人の声だった。
美丈夫とはこいつの為にあった言葉だったのか。
きんというよりは、黄金おうごんと形容したほうがしっくりするような豪奢な金髪に、瞳はひたすら深い青で、鍛え上げられた肉体が、優美な貴族服の上からでも分かる。そして高位貴族ときた。

ぺっぺっ、さぞモテモテ街道を爆走してきた人生だったんだろうさ、と俺は女っ気のなかった味気ないに人生を思い返し内心毒づいたのであった。

「おかげさまで元気に過ごしております。
やしない子にすぎないわたくしにまで ご配慮いただき、侯爵家の皆様へ感謝申し上げておりました。」

なんて如才なく答えた俺。真っ赤な嘘であるが、これも処世術である。
てかこんな6歳気持ち悪くないか?と内心思ったが、見たところ侯爵も侯爵夫人も大いに満足げだったので、まあこの調子でやっていこうと思ったのだった。

「ほんとうに愛らしいこと。それに受け答えがしっかりしていて。とても賢いのね。可愛いカインを別邸からこちらに呼びよせてしまって、メアリー様には逆に申し訳ないことをしたかしら・・・。」
優美な口調で、侯爵夫人が少女のように小首をかしげて、微笑んで俺に言った。
ええ、本当に大迷惑でした。とは言うわけにはいかなかったので、ヘラリと笑っておいた。

「私は嫡男のレオポルドだ。カインと会うのを楽しみにしていた。これから仲良くしてくれ。」
おお、さすがは長男って雰囲気だな。
ちびっ子に比べて二つ年上とのことだが、鷹揚おうように俺に話しかけてきた感じ、すでに出来上がってる感が半端ない。
侯爵家の教育はやはりさすがなのかもしれない。

「レオポルド様、アレクシス様 こちらこそよろしくお願いいたします。」
線引きはきっちりと忘れない俺。なのにこいつはその線をゲシゲシと踏み荒らしてくれた。

「私たちは兄弟じゃないか、レオとアレクと呼ぶといい。お父様も、お母様も私たちのことをそう呼ぶんだ。」
間髪入れずに「いえ、わたくしは…」
と言いかけたら、
「レオポルドの言うとおりだ。お前も私の息子だ。私とヘレネのことは父と母と呼ぶといい。」

さすがは諸悪の根源である。こちらの努力を台無しにしてくれた。
「アレクシスだ。私の弟になるんだな。兄と思って頼ってくれて構わない。」
・・・お兄さんぶりたい ちびっこには 生暖かく笑っておいた。そうして、

「・・・ありがとうございます。」
やりきれない思いをかかえながら、そう絞り出した俺。
こんな感じで顔合わせを無事に乗り越えたのだった。


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