君の瞳に囚われて

ビスケット

文字の大きさ
35 / 51

洗礼

しおりを挟む
ヘルメスとの挨拶を皮切りに、他の子供たちとの自己紹介が始まった。
その結果、レオとアレクのほかに判明した子供たちは3人。

ロンド公爵家嫡男ヘルメスは、レオポルドとアレクシスのいとこだった。
ロンド公爵の奥方とヘレネ母上は実の姉妹だという。
レオポルドよりも年が一つ上で、同じ質感の金髪碧眼で、確かに同じ血が流れていることを感じさせた。
レオとアレクと違って、どこかえらそうな雰囲気があった。いや身分は上だから偉いんだが。
まあ、そんな感じだ。

トレイル侯爵家嫡男ジェラルドは、領地が隣り合っている縁で赤子のころからの付き合いらしい。
ちなみにレオポルドと同い年だ。
赤みがかった金髪で、瞳はやはり王家の血筋を感じさせる美しい蒼だった。
幼いながらも体格が良くたくましい感じだった。

ケリガン伯爵家嫡男リカルドは、父親であるケリガン伯爵とグラン侯爵が学生時代からの友人であった縁で、今に至るらしい。レオポルドよりも一つ下で、淡い白金のような金髪に淡い緑色の目で、全体的に優し気な雰囲気が漂っていた。

そう、子供たちの中でアレクも俺もいちばんのみそっかすだった。

先ほどの挨拶では大人顔負けの様式に則った振る舞いをしていたが、
着席して茶会がはじまると、とたんに気を置けない仲間に切り替わって、俺はこの世界のお子様たちに少し安心したのだった。
その後は、俺はひたすら気配を消して、練習を再開するまでの辛抱だと、静かにしておくことにした。

そんなとき、ヘルメスが俺に聞いてきた。
「カインはなぜこの魔力操作の訓練に出てこないんだ?
次回は我が家で訓練をするのでこのメンバーだけでなくたくさんの子弟が集まるんだ。
その時はカインも来るといい。」
養子の俺を気遣っての、こころにくい気づかいだ。さすがは公爵家嫡子。

レオポルドとアレクシスが動揺したように口を開こうとしたが、俺はそれよりも先に答えてしまった。
「ああ、わたしは魔力を一切持っていないので、来てもやることがないからだと言われています。」

途端に皆の視線が変質したことを感じた。
「・・・魔力なし?」
誰ともなくつぶやかれた言葉が、静寂の中に響いた。

そうして、ヘルメスが口火を切った。
「ああ、なるほど、それで田舎の別邸に厄介払いされていたというわけか。」

「レオとアレクがしきりにお前のことを話すから、どんな奴かと会うのを楽しみにしていたが、魔力無しとはな。」
ジェラルドがあきれたように言った。

「じゃあ、これからあまり関わることもなさそうだ。残念だけどね。」
少しも残念そうではないリカルドが軽い調子で言った。

あとは、俺のことはまるでそこにいないかのように茶会は進んだ。
子供達の中にも、ごく自然に魔力至上主義があるのを見て、思った以上に魔力無しとはこの世界においてハンデが重いと肌で感じた。
あと、俺の中のカインの感情が響いてきて、ツキンと胸が痛んだ。

レオポルドとアレクシスは、俺のことを心配するようにちらちらと視線を向けてきたので、気を使わせてすまんな兄弟たちよ、とねぎらいの気持ちを込めて笑っておいた。
そうして、コーリンのまずい紅茶を懐かしく思いながら 最高レベルの紅茶をおとなしくすすっていたらようやくお開きの時間となった。
それぞれが席を立ったその時、それはおこった。

「本当に魔力がないか、試してみたい。」
そう言って、瞬時にヘルメスの手に魔素の粒子が集まってくるのが見えた。
パチンコ玉くらいの炎の玉が、おれの顔に目掛けて飛んできた。

魔素に気づいていた俺は当然ずっとそれを横目で追っていた。
そして当たる直前にわずかに首を傾け避けたのだった。
俺の髪をわずかに凪ぎながら、耳のすぐ横を灼熱が駆け抜けていった。

「・・・最低だな。背中を向けた相手にも同じことをするのか?」
そう言っておれは踵を返してその場を後にした。

ああいっておけば、やくざと同じでメンツを何よりも後生大事にしている高位貴族だ。
後ろからやられることはないだろうと思ったが、やはり俺の背中に魔法は襲ってこなかった。

かましてやった手前、後ろを気にしながら去っていくのはちょっと情けない。
保険をかけて言っておいてよかった。
この世界は全員が何かしらの火器を携帯してるようなものだからなあ。
お子様には魔力操作よりも心得の方を重点的に教えた方が良いんじゃないだろうか。

ところで、このチョーカーは、ちゃんと仕事をしてくれるんだろうか。
さっきの火の玉は結果的には俺には当たらなかったが、うんともすんとも言わなかったぞ。
もしかして、おとなしくチョーカーを付けさせて、GPSを俺に埋め込むための方便だったんだろうか。
かえすがえすも侯爵の野郎め。。。。

こうして攻撃を回避できたのはデモンのおかげかもしれない。
デモンとの鬼ごっこを通じて、剣道で培った動体視力と反射神経だけはすぐにカンを取り戻した。
子供のせいかむしろさらに研ぎ澄まされた気がする。
嫌だけどあいつに感謝しておこう。

そんなことを考えながら、帰りの道を行ったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

龍の寵愛を受けし者達

樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、 父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、 ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。 それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。 それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。 王家はある者に裏切りにより、 無惨にもその策に敗れてしまう。 剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、 責めて騎士だけは助けようと、 刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる 時戻しの術をかけるが…

うちの家族が過保護すぎるので不良になろうと思います。

春雨
BL
前世を思い出した俺。 外の世界を知りたい俺は過保護な親兄弟から自由を求めるために逃げまくるけど失敗しまくる話。 愛が重すぎて俺どうすればいい?? もう不良になっちゃおうか! 少しおばかな主人公とそれを溺愛する家族にお付き合い頂けたらと思います。 初投稿ですので矛盾や誤字脱字見逃している所があると思いますが暖かい目で見守って頂けたら幸いです。 ※(ある日)が付いている話はサイドストーリーのようなもので作者がただ書いてみたかった話を書いていますので飛ばして頂いても大丈夫です。 ※度々言い回しや誤字の修正などが入りますが内容に影響はないです。 もし内容に影響を及ぼす場合はその都度報告致します。 なるべく全ての感想に返信させていただいてます。 感想とてもとても嬉しいです、いつもありがとうございます!

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

公爵家の次男は北の辺境に帰りたい

あおい林檎
BL
北の辺境騎士団で田舎暮らしをしていた公爵家次男のジェイデン・ロンデナートは15歳になったある日、王都にいる父親から帰還命令を受ける。 8歳で王都から追い出された薄幸の美少年が、ハイスペイケメンになって出戻って来る話です。 序盤はBL要素薄め。

その捕虜は牢屋から離れたくない

さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。 というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

処理中です...