君の瞳に囚われて

ビスケット

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子供の遊戯

侯爵邸に来てからおとなしくしていたつもりが、例の不敬事件のやらかしのせいで、すっかり侯爵家の最問題児認定されてしまった俺である。

あれから、レオポルドとアレクシスと四六時中一緒に過ごしている。
レオとアレクによると、俺は貴族としていろいろ足りていないらしい。
日常生活の様々なことから、他の貴族との付き合い方まで、これから一緒に過ごす中でしっかり教えていくと二人に言われた。
そう言われたとき、俺はすでにこの二人に精神年齢で負けている気がしたのだった。



そして俺は、今まさに非常に困惑している。
まさか、一緒に過ごす中で、という言葉の意味するところが、おはようからお休みまでだったとは。

レオポルドも、アレクシスも、俺も、それぞれ専用の部屋を持っている。
夜も更けた自分の部屋で、俺がさあ寝るかとベッドに入ったとき、ノックの音が聞こえた。
扉を開けると、無表情なメイドがランプをもって立っていて、
「夜分に失礼いたします。カイン様を坊ちゃまがたがお呼びです。」
と言ってきた。

こんな時間に俺に用とはいったい何だろうと思ってついていくと、そこは客間の一室だった。
客室用のどでかいキングベッドがあって、そこにレオポルドとアレクシスが夜着姿で座って俺を待っていた。

「これから、カインは毎日僕たちと一緒にこの部屋で寝るんだ。お父様とお母様には許可をとってある。カインもこっちにおいで。」
うーん、何というか、兄味あにみがすごいと思った。包容力というか、有無を言わせず従わせる感じが。
俺もかつては兄だったわけだが、妹には完全に舐められていた。

そんなことを想っていると、アレクシスが
「カインはまだここに来たばっかりで、この屋敷で知ってる人が一人もいないから夜寂しいんじゃないかって兄上と相談したんだ。カイン、僕たちといればきっと寂しくないよ。」

優しいいい子たちだなあ・・・俺は素直にそう思った。
そして、もう一人のカインの感情が伝わってきた。
優しくしてもらった嬉しさと、寂しさが埋まっていく感覚に、おれはちょっと切なくなって涙が滲んでしまった。

おれは本邸で過ごしたこの1か月、確かに孤独を感じていた。
恐らくカインの感情だ。
午後は自分の部屋で過ごすことになっているが、さすがに幼い子供をたった一人にすることはない。
話しかけるとほんのり笑うだけの見守りメイドはいてくれる。
そのメイドが、さすがは侯爵家だと思える美味しい茶菓子を持ってきてくれて、最高の入れ方をした薫り高い紅茶を淹れてくれる。
だが、それをたった一人で味わう時に思い出すのは、お母様と一緒に飲んだコーリンのまずい紅茶の事や、やさしく笑いかけてくれるメイの事だった。
あと、認めたくないけどデモンあいつの作った茶菓子の方が美味うまいと思った。

そんな暇を持て余す午後、たまに忙しい間を縫ってヘレネ母上がお茶の時間に付き合ってくださるが、途中でメイドに呼ばれて申し訳なさそうな顔をして、「ごめんなさいね。またいっしょにお茶をしましょうね」と言って出て行ってしまう。
そんな時は、カインの抑えつけられたような気持ちが俺の内側で響いてくるのだ。
<またって、今度はいつ一緒にいてくれるの・・・?>そんな気持ちが。
そうすると、別邸のお母様のことを思い出して、もっと寂しさが募るようだった。
そんな内なるカインに、俺は何もしてやれることはなかった。

そんなぽっかり空いたようなカインの気持ちを埋めるように、レオとアレクは寄り添おうとしてくれていた。
俺は素直にベッドに入り、両隣に感じる人肌の暖かさに安心して、ぐっすり眠ることができたのあった。


カインが寝入ってすぐ、レオポルドとアレクシスはほぼ同時に起き出すと、枕元の薄暗いランプの光に浮かび上がるカインの寝顔を両側から見つめた。
どちらからともなくつぶやきが漏れた。
「・・・かわいいな。」
「・・・かわいいね。」

真っ白い頬にまつ毛の影が濃く落ちて、さっき涙ぐんでいた名残がしっとりと光っていた。
泣かないで、僕たちの可愛いカイン。
レオポルドはカインの目じりに、アレクシスはカインの頬に優しく口づけると、ランプの明かりを消したのだった。

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