大嫌いな幼馴染みはどうやら私のことが好きらしい

Adria

文字の大きさ
26 / 35

愛している(隆文視点)

 ふと目を覚ますと、すべてが夢なんじゃないかと怖くなるときがある――

 隆文は夜中に不意に目が覚めて、そっと体を起こした。隣では侑奈が規則正しい寝息を立てて、よく眠っている。

 その隣を抜けだして侑奈が隆文のために作ってくれているフレーバーウォーターを飲みにキッチンへ向かった。そしてそれを飲んだあと、侑奈の体を拭くための濡れタオルを用意する。
 行為後、二人して眠ってしまったので、二人とも汗やら愛液やらでべとべとだ。

 隆文は物音を立てないように気をつけて寝室へ戻り、よく眠る侑奈の顔を覗き込んだ。
 珠の汗が浮かんだ肌はまるで輝いているように見えて、すごく美しい。その汗を濡れタオルでそっと拭った隆文は、自然と頬が緩んだ。

 今日は屋敷で祖母たちと散々隆文に女装をさせはしゃいだあとに、横浜のマンションまで来たので、疲れきっているようだ。そのせいか、隆文が侑奈の体を拭いても身動ぎひとつしない。起きているときなら恥ずかしがるだろう体勢でも気にせずに、すうすうと規則正しい寝息を立てて大人しく拭かせてくれている。


(嗚呼。侑奈の制服姿、めちゃくちゃ可愛かったな)

 隆文は侑奈の体を清めながら、女装した褒美にと――高校時代の制服を着てくれた侑奈を思い出して一気に口元が緩み締まりのない顔になった。

 もう脱がしてしまい床に散らばっている彼女の制服を拾い上げ感動を噛み締める。

 昔、遠目に見ていたときも思ったが、夏服を着た侑奈はめちゃくちゃ可愛い。丸襟ブラウスに紺色のジャンパースカート。胸元のさりげない校章。左側で片結びしてある共布のベルト。組み合わせが絶妙で、キュートアグレッションを呼び起こしてしまうくらい可愛さと優雅さが突出している。

 本当は当時面と向かって、何度も可愛いと伝えて褒め倒したかった。七、八年の時を経て叶うのは嬉しくはあるが、同時に複雑でもある。

(過去を取り戻せているようで嬉しいけど、やっぱり仲良く同じ時間を過ごしたかったよな……)

 悔やんでも悔やみきれない。
 自分さえ間違えなければ、ずっと側で侑奈の成長を見られたのにと、こういうときにどうしても後悔してしまう。


 隆文は侑奈の可愛い寝顔をスマートフォンのカメラでパシャリと撮影した。悠斗から侑奈に内緒で彼女の写真をよくもらっているが、やはり自分で撮れる感動には変えられない。

(はぁ、可愛い……)

 やっと面と向かって「その制服、よく似合っていてすごく可愛い」と伝えられ、高校の制服を着た侑奈を抱けたのだ。過去を後悔して感傷に浸るなど愚かなことだと、隆文は侑奈の制服を綺麗にたたんで棚の上に置いた。

(こんなにも甘美な褒美をもらえるなら、女装姿をさらして、侑奈に好き放題写真を撮られるくらい何でもないな)

 隆文は同じように床に散らばっている自身が着たセーラー服を見て苦笑した。祖母のせいでせっかくの長いスカートが短くなってしまったが、ミニスカートのおかげか着たままセックスしても邪魔にならなかったので、何が功を奏するか分からない。まあ侑奈には「笑っちゃって集中できないから脱いで!」と言われたが……


「侑奈、愛してる」

 眠っている愛しい人の手を握り、想いを告げる。それは懇願に近い。

 今さら嫌われていた昔になんて戻れない。侑奈を失うなんて耐えられない。

 一度でも懐に入れた者を無碍に扱えない優しく真面目な性格の侑奈が、ここまできて隆文を捨てるようなことはないと頭では分かっているが、たまにものすごく不安になる。

 どうしようもないくらい彼女にハマっているのだ。こんな自分の側にいてくれる侑奈を誰よりも誠実に愛し大切にするし、どんな我が儘だって叶えてやる。それが自分にはできると自負している。


「だからもっと俺のこと好きになってよ」

 寝返りを打ち隆文にすり寄ってきた侑奈をぎゅっと抱きしめる。

 隆文の反省と愛情、執着が伝わっているおかげか、正直なところ好かれているとは思う。恋人として特別扱いもしてくれているだろう。
 おそらく淡い恋心を持ってくれているみたいだが、まだ自覚はしていないように思う。

(恋愛というものがよく分からないと言っていたし、俺への恋心を自覚させるにはまだまだ時間が必要だろうな)

 できれば気づいてほしいし、いずれは自分と同じ強さで愛してほしい。

 侑奈の髪を撫でて小さく息をつく。
 そうは言っても正式に婚約も交わしたし、三ヵ月後のパーティーがうまくいけば、完全に侑奈は俺のものだと世間に周知できる。そうなれば医療業界に流れている『花秋家のご令嬢と四條家の御曹司は不仲』なんて不名誉な噂も払拭できるはずだ。

(まあ焦る必要はないよな。侑奈はもう俺のものだし)

 隆文は侑奈の想いが追いつくよりも早く、彼女を囲っていっている自分や祖母に苦笑して、侑奈を抱き枕に眠りについた。
感想 1

あなたにおすすめの小説

一途な皇帝は心を閉ざした令嬢を望む

浅海 景
恋愛
幼い頃からの婚約者であった王太子より婚約解消を告げられたシャーロット。傷心の最中に心無い言葉を聞き、信じていたものが全て偽りだったと思い込み、絶望のあまり心を閉ざしてしまう。そんな中、帝国から皇帝との縁談がもたらされ、侯爵令嬢としての責任を果たすべく承諾する。 「もう誰も信じない。私はただ責務を果たすだけ」 一方、皇帝はシャーロットを愛していると告げると、言葉通りに溺愛してきてシャーロットの心を揺らす。 傷つくことに怯えて心を閉ざす令嬢と一途に想い続ける青年皇帝の物語

辺境伯へ嫁ぎます。

アズやっこ
恋愛
私の父、国王陛下から、辺境伯へ嫁げと言われました。 隣国の王子の次は辺境伯ですか… 分かりました。 私は第二王女。所詮国の為の駒でしかないのです。 例え父であっても国王陛下には逆らえません。 辺境伯様… 若くして家督を継がれ、辺境の地を護っています。 本来ならば第一王女のお姉様が嫁ぐはずでした。 辺境伯様も10歳も年下の私を妻として娶らなければいけないなんて可哀想です。 辺境伯様、大丈夫です。私はご迷惑はおかけしません。 それでも、もし、私でも良いのなら…こんな小娘でも良いのなら…貴方を愛しても良いですか?貴方も私を愛してくれますか? そんな望みを抱いてしまいます。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 設定はゆるいです。  (言葉使いなど、優しい目で読んで頂けると幸いです)  ❈ 誤字脱字等教えて頂けると幸いです。  (出来れば望ましいと思う字、文章を教えて頂けると嬉しいです)

【完結】曖昧な距離で愛している

山田森湖
恋愛
結婚4年目のアラサー夫婦、拓海と美咲。仲は悪くないが、ときめきは薄れ、日常は「作業」になっていた。夫には可愛い後輩が現れ、妻は昔の恋人と再会する。揺れる心、すれ違う想い。「恋人に戻りたい」――そう願った二人が辿り着いた答えは、意外なものだった。曖昧で、程よい距離。それが、私たちの愛の形。

今さらやり直しは出来ません

mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。 落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。 そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……

さよなら、私の初恋の人

キムラましゅろう
恋愛
さよなら私のかわいい王子さま。 破天荒で常識外れで魔術バカの、私の優しくて愛しい王子さま。 出会いは10歳。 世話係に任命されたのも10歳。 それから5年間、リリシャは問題行動の多い末っ子王子ハロルドの世話を焼き続けてきた。 そんなリリシャにハロルドも信頼を寄せていて。 だけどいつまでも子供のままではいられない。 ハロルドの婚約者選定の話が上がり出し、リリシャは引き際を悟る。 いつもながらの完全ご都合主義。 作中「GGL」というBL要素のある本に触れる箇所があります。 直接的な描写はありませんが、地雷の方はご自衛をお願いいたします。 ※関連作品『懐妊したポンコツ妻は夫から自立したい』 誤字脱字の宝庫です。温かい目でお読み頂けますと幸いです。 小説家になろうさんでも時差投稿します。

【完結】何もできない妻が愛する隻眼騎士のためにできること

大森 樹
恋愛
辺境伯の娘であるナディアは、幼い頃ドラゴンに襲われているところを騎士エドムンドに助けられた。 それから十年が経過し、成長したナディアは国王陛下からあるお願いをされる。その願いとは『エドムンドとの結婚』だった。 幼い頃から憧れていたエドムンドとの結婚は、ナディアにとって願ってもいないことだったが、その結婚は妻というよりは『世話係』のようなものだった。 誰よりも強い騎士団長だったエドムンドは、ある事件で左目を失ってから騎士をやめ、酒を浴びるほど飲み、自堕落な生活を送っているため今はもう英雄とは思えない姿になっていた。 貴族令嬢らしいことは何もできない仮の妻が、愛する隻眼騎士のためにできることはあるのか? 前向き一途な辺境伯令嬢×俺様で不器用な最強騎士の物語です。 ※いつもお読みいただきありがとうございます。中途半端なところで長期間投稿止まってしまい申し訳ありません。2025年10月6日〜投稿再開しております。

仕事で疲れて会えないと、恋人に距離を置かれましたが、彼の上司に溺愛されているので幸せです!

ぽんちゃん
恋愛
 ――仕事で疲れて会えない。  十年付き合ってきた恋人を支えてきたけど、いつも後回しにされる日々。  記念日すら仕事を優先する彼に、十分だけでいいから会いたいとお願いすると、『距離を置こう』と言われてしまう。  そして、思い出の高級レストランで、予約した席に座る恋人が、他の女性と食事をしているところを目撃してしまい――!?

あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜

瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。 まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。 息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。 あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。 夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで…… 夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。