ダンジョンで温泉宿とモフモフライフをはじめましょう!〜置き去りにされて8年後、復讐心で観光地計画が止まらない〜

猪鹿蝶

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第二章 開業準備をする俺

40、秘密(セシノ視点)

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「いいか、セシノ。マスターにはお面男の話はバラしてはいかんのじゃ」

 マリーさんにそう言われて私は混乱した。
 そして気がついたら、私はマリーさんとお昼ご飯の準備をしていた。
 バンさんは一人でギルド職員さんと話しているみたいだし、大丈夫か心配だ。
 バンさん、突然捕まったりしないよね……?

「心配そうじゃな、セシノ」
「い、いえ……バンさんならきっと何でも一人でできますよね」
「そんな事はないのじゃ。あやつは人と関わらないようにする為、一人で出来るように装っているだけの弱虫じゃからな……」

 弱虫なバンさんを想像したけど、全く想像がつかなくてクスリと笑ってしまう。
 それと同時に、何故マリーさんは私にバンさんの話をしてくれるのか気になってしまう。

「どうしてマリーさんは、バンさんの話をこんなにも私にしてくれるのですか?」
「ああそれは、セシノがマスターの事を好いているからじゃ」
「す、好いて!? い、いや確かにバンさんは好きですけど、それは別に愛とか恋とかそう言うのではなくて……」

 私は何故か動揺してしまって、手で頬を包み込む。顔が赤くなっているせいなのか、少し熱い気がした。

「まあ、それはどちらでもよいのじゃ。ワシにとってマスターを幸せに出来る人である事が大事なのじゃ」
「幸せに出来る人……? それはマリーさんたちじゃダメなんですか?」
「モンスターのワシらでは人の感情は全く理解できんのじゃ、だからこそセシノのようにマスターに寄り添うことの出来る人物は貴重なのじゃよ」

 いつもバンさんに厳しい事ばかり言うのに、二人で話すときはいつもバンさんの事を心配しているマリーさんには、人に近い心があるように思えるのに……。

「だからこそ、ワシはセシノに期待しておるのじゃ!」
「もしかしてバンさんにお面男の正体を教えないのも……」
「マスターがお面男だと知れ渡れば、無駄な諍いが起こるかもしれぬ。本人が知らなければバレる事も無いじゃろうし、そのための工作はしたからのぅ……これで、もうマスターをお面男と思う奴はおらぬじゃろう」

 でもこのままいけば、お面男を神聖視する人が出てくるような気もするけど……。
 大事にならないよう、祈るしかないよね。

「それでセシノよ、どれだけジャガイモを丸め続けるつもりじゃ? 少し作り過ぎてはないかのぅ……」
「あっ! 考え事してたらつい……」

 どうしよう、こんなに沢山作っても二人しかいないんだから食べきれないじゃない。

「ではここら辺で区切るのがいいじゃろう、それにしてもこの厨房は天井が高すぎるのじゃ……」
「確かに、一部の調味料が届かないですね。どうしましょう?」
「そうじゃ、ワシが肩車をしてやるのじゃ!!」
「え?」

 そしてマリーさんに肩車をしてもらった瞬間だった、扉がバタンと開いたのは……。
 そこにはバンさんが不思議そうな顔でこちらを見つめていた。

「二人とも悪いが俺はギルドに行く事になったから……って、二人で何やってんだ?」
「あ、いえ……少し上にある調味料がとれなくてですね」
「ああ、ここには脚立がなかったな。それは悪かった、今度お前らの身長に合わせて改めてキッチンも改造しような」
「あ、はい。ありがとうございます」

 慌てて調味料を取った私は、すぐにマリーさんに下ろしてもらう。
 だってこのまま近づかれたら、角度的に下着が見えちゃいそうだったんだもの。
 少し捲れたスカートを直していると、マリーさんがバンさんに話しかけていた。

「して、マスターよ。ギルドに行くと言うのはどう言う事じゃ?」
「どうやら、ここで宿屋をやっても良いらしくてな。その申請に言ってくる」

 その事に驚いた私は、何故かバンさんを一人でギルドに行かせたくなくて、つい手を挙げていた。

「あ、あのそれなら私も着いていっても良いですか?」
「え、料理はどうするんだ?」

 そう言われても、これはバンさんのための料理だからと夕飯にまわす事にして、とりあえず私とマリーさんはバンさんについて行くことにしたのだった。
 そんな私たちを呆れたように見ながら、バンさんは快く許してくれた。

「よし、わかった。三人でギルドに行こう」

 そして私たちはギルド職員さんが待っている場所へと向かった。
 そこには大きくて厳ついギルド職員さんがいて、私は少しびっくりしてしまう。

「おいおい、ギルドに行くのに子供連れか? まさかお前の子供……!!?」
「そんな訳ないだろうが!!」

 気軽にやりとりをしている二人を見て、もしかして知り合いだったのだろうかと首を傾げる。

「コイツらは俺の保護者一名と、俺が保護者をしている子一名だ」
「一体何言ってんだお前は……?」

 多分マリーさんがバンさんの保護者で、バンさんは私の保護者だから間違ってないのだけど、凄くわかりづらい。
 ギルド職員さんはバンさんを可哀想な目で見ると、改めてこちらを見た。

「俺はサバン、ダンジョン調査班の班長をしている。それからこっちが……」
「僕はクラウです」
「ワタクシはマヨ・サジョウですわ。事情はよくわかりませんでしたが、班長がいいと仰るのでしたらワタクシたちはついて行くだけですわよ」
「と、言うわけだからよろしく頼むな嬢ちゃんたち」

 そう言って三人は私たちに頭を下げる。
 私も慌てて頭を下げると、バンさんが自己紹介をしてくれた。

「こっちがセシノ、この子はあのズーロウの被害者なんだ。だから余り詮索はしないでくれ」
「なんだと、あの男の……わかった。お前たちも余計な事は聞くんじゃ無いぞ、とくにクラウ」
「はいはい、わかってますよ。大丈夫ですって近づかないように離れておきますから」

 何だろう、クラウさんに少し見つめられただけなのに凄く嫌な感じがした。でももうニッコリ笑う姿からは全く何も感じなくて、ホッとしてしまう。

「それから、こっちはマリー。こいつは見張り役みたいなもんだから気にしないでくれ」
「いやいや、幼女に見守られてるお前がよくわからん! それにいつのまにお前はロリコンになったんだ!?」
「ロリコンじゃねぇ!!!?」
「幼女に見守られるのが性癖なんじゃないのか……?」
「違うわ!! 俺は年上が好きだから断固としてありえない!」

 その一言に、少しショックを受けている私がいた。
 別にバンさんが好きなわけじゃないのに、何で落ち込んでるのよ私は……。

「そんな事より、ギルドに向かうんだろ? 早くしないと日が暮れるぞ」
「そうだな。ここに来るまで3時間かかったからな……」
「まあ、俺がいれば1時間もかからないと思うから安心しろ」
「「ええ!?」」

 そう言って驚くクラウさんとマヨさんを置いて、私たちはすぐに歩き始めた。後ろでは二人が「待ってください!!」と、叫んでいるのが聞こえる。
 しかし私はそんなことよりも横にいるバンさんを見て、先程マリーさんと話した事を思い出していた。
 バンさんを幸せにするために、私もできる事を頑張りたい。そのために今日はギルドまでついて行くと決めたのだから。
 そう思い、気合を入れて私は改めてバンさんの横に並んだのだった。
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