これも一応転生のうち(仮)

kuro-yo

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一蓮托生

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 私がどうやって宿主に取り込まれる事になったのかは分からない。ただ、私には前世の魂が宿っていて、微生物が持ち得ない思考力や察知能力を持ち合わせている事は理解できた。

 私は誕生の直後から耐えがたい空腹を感じた。幸いにも私の周囲には、私の栄養となる物質に溢れているので、それを手当たり次第に体内に取り込んだ。ある程度取り込むと、忽ち細胞分裂して私は成長した。成長するとますます腹が減り、餌を取り込む、それを私は飽きるまで繰り返した。

 そのうち、私に何かが体当たりしてくるようになった。どうやらそれは宿主の免疫のようだ。様々な大きさ、多用な種類のそれらは、色々な方法で私を宿主から排除しようとする。だが、私の体は思いの外頑丈らしく、煩わしさは感じるが脅威にはならなかった。好奇心から、そのうちのいくつかを食ってみたりした。

 しばらくすると、免疫達の勢いも衰え、やる気のない運動会のように私の回りをゆらゆらと漂うだけになった。

 初めから思っていたのだが、この宿主の免疫系はもとより非常に弱々しい。いわゆる虚弱体質とかいうのだろうか。

 案の定、今まで出会った事のない外来の微生物が、私のテリトリーまでやってきた。直感で、それが宿主に感染した病原体らしいと分かった。幸い、それは宿主の生命を脅かすほどのものではなさそうだった。

 しかし、私の回りを漂うやる気のない免疫達はそんな雑魚みたいな病原体にすら見向きもしない。

 おいおい、早くあいつらを始末しないと、宿主が病気になっちまうだろ。

 見る間に病原体は増殖をし始める。

 まずいな。寄生生物わたしは宿主と一蓮托生。このままでは私にも危害が及ぶかもしれない。免疫達があてにならないのであれば、私が自分で敵を排除しなければ。

 私は渾身の力で病原体を攻撃した。病原体は思いの外脆く、簡単に破裂して散った。自分の秘められた力を知った瞬間だった。

 しかし、このままでは駄目だ。私だけの力でこれから先も宿主を守りきれるとは思えない。やはり宿主には元気でいてもらわないと。

 そのために私は、免疫達を鍛える事にした。

 本来免疫に攻撃されるべき私が免疫を鍛えるとか、自分でも何を言っているのかわからないが。

 あれからどの位の時間が過ぎただろうか。

 あの後も様々な病原体と何度となく遭遇したが、私と、私に尻を叩かれた免疫達によって、なんとか撃退してきた。私に稽古をつけられ、経験も積み重ねた免疫達はどんどん力をつけた。いまや、たいていの病原体は彼らだけで撃退できるようになっていた。

 並行して、私は研究も欠かさなかった。病原体の欠片を体内に取り込んで分析し、時には栄養にして、病原体を弱らせる物質を代謝する方法を模索したりした。もちろん、代謝物が宿主にとって毒にならないよう配慮する事も忘れない。

 私のテリトリーも増えた。最初、私は自分を回虫のようなものだと思っていたが、宿主の体内を移動できたのはほんの初めうちだけで、その後は宿主の細胞と細胞の隙間に入り込み、癌細胞のように宿主の体に同化して成長しているように思われた。

 私の成長が宿主の生命を脅かさない事を祈るばかりだ。もし、宿主が私の排除を決めたなら、その時は潔く、私はそれを受け入れなければならないだろう。

 だが、そんな事よりもっと恐ろしい問題が起きてしまった。

 最初、それは私を排除させるための薬のようにも思われた。非常に強い毒性を持った物質が、宿主の体内に入ってきたからだ。

 だがその毒は、私にではなく、宿主に対してこそ有害であった。

 …誰かが宿主を毒殺しようとしている。

 私はすぐさま、解毒物質の合成を開始した。私の配下の免疫系にも頑張ってもらった。肝臓の助けも借り、毒を完全に中和するまでにはかなりの時間を要した。一時は宿主が危篤に陥る事もあったが、なんとか峠を越える事ができた。私の体も少し縮んだようだ。

 今回の毒で、内蔵もかなり衰弱したが、私はそれらの機能回復の手助けをする物質を代謝したり、時には機能の一部を私が肩代わりしたりもした。その甲斐あって宿主の健康状態は向上した。免疫達もがんばった。

 私はこれを教訓に、毒の研究も始める事にした。

 その後もしばらく、宿主に毒が盛られる事はたびたびあったが、最初の時ほどの脅威はなくなり、ついには毒はほとんど効かなくなり、毒を盛られる事自体がなくなった。ざまあみろだ。

 だがそう思うのもつかの間。

 毒がだめなら物理。誰でも思い付く。

 急に、宿主が怪我を負う事が多くなった。怪我といっても、擦り傷やかるい打撲だ。しかし、常に不安が付きまとう事がストレスになっているようで、体内のホルモンバランスが崩れ、自立神経系の働きも悪くなり、不眠症のような症状も出ているようだった。

 これは良くない。なんとかして、宿主を守る事はできないのだろうか。

 そんな事を私が考えている時、偶然私は発見してしまったのだった。

 この世界には魔法があったのだ。

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