テイマー職のおっさんが目指す現代ライフ!

白眉

文字の大きさ
4 / 17

第4話 テイムできていますが…

しおりを挟む
「そうか…。みんな職を持って生きているんだ。
 だから、あのおっさん達のように笑顔になれるんだな…。」

ソメノさんがもう一度顔を曇らせる。

「耕さんやすえさん達は、昔は職を持っていたかもしれませんが、今は無職という事になります…。」
「ん?無職なのか?」
「はい…。それに、過去には戸籍があったと思いますが、今はその戸籍もあるのか無いのか分からないという事もあると思います。」
「それはどういう事なんです?」
「えぇと…、
イサークさんの世界でのスラムと一緒の扱いだと思われるのが一番手っ取り早いと思います…。」

 そういう事か…。
戸籍を持つとか、税金を納めていないヒトはヒトとみなされていない、という事か。
スラムに棲むヒトや孤児、税金を払えなくなったヒトと同じか…。

「すまない。こんな事を聞いてしまって…。」
「いいえ、この世界でも現実は良いものばかりではありません。」
「耕さんも、すえさんも大変なんだ…。」
「それは彼ら自身で決めることであり、私たちが決める事ではありませんよ。」
「ん?それはどういう事だ?」

「つまりだな…。」

耕さんが頭をポリポリと掻きながら、こちらに歩いてきた。

「俺たちは好き好んでこうしているって事だよ。
 国や行政といったものに極力頼りたくないんだ。
 勿論、ヒト様にも極力頼りたくは無いが、そうは言っても、腹が減る時は仕方がない。それに、こうやって、俺達に施しをしてもらえる場所があるって事はありがたい。それに、ここに来れば情報交換もできるしな。」
「イサークさん、耕さんたちはイサークさんと同じ冒険者なのかもしれませんね。」
「ほう!冒険者か。“敢えて危険を冒して進む者”か…。そりゃ、恰好良すぎる言葉だな。
 なぁ、いさくさん。俺たちはそんな恰好良いもんじゃなくて、落伍者とも言えるんだよ。」

 耕さんが笑うも、笑顔の中に寂しさが見え隠れしている。

「俺達は、この日本と言う世界についていけなくなったヒトだ。
 だから、みんなの力に頼り切って生きているという見方もできるんだ。
 まぁ、どっちに捉えたとしても、俺たちは俺たちだから変えようもできんが…。」

「耕さん、こんな事を聞いてしまってすまない。」
「良いって事よ。それに、こういった社会もあるってことを、むしろ目ん玉開いて、良く見てて欲しんだよ。外人さんから映った日本という社会を自分の国に帰ったら伝えて欲しいと思ってね。」

 スラム街には極力足を踏み入れなかった。
危険だという事もあったかもしれないが、それよりも彼らの存在を俺の視界の中に入れなようにしていただけかもしれない。

「耕さん…。」
「いさくさん、良いって良いって。
俺たちは自分の意志でこうなったんだ。
 後悔なんてしちゃいないよ。って言ったら恰好良くなるか…。まぁ、現実から逃げたのは事実だから、それはそれとして受け止めているから。
 で、いさくさん、この国では“働かざる者、食うべからず”という言葉があるが、あんた、どんな資格を持っているんだ?」

「しかく?しかくとは?」
「外人さんだったな…。えぇと、ライセンスだよ。職だよ、職。
例えば、ダンプの運ちゃんとか、ボイラー師とか…。」
「それだったら、テイマーだが。」
「テイマー?なんだそりゃ?ワンコの毛をカットすることか?」
「耕さん、それはトリマー。
テイマーってのは、動物を使役するヒトの事なんだよ。」
「調教師か?お手とかお座りとかさせるのか?」
「もう、違うよ。イサークさんはネズミと鳥を使役していたんだよ。」

ソメノさんが耕さん達に説明してくれる。
その間、俺は公園の周りに居る黒い鳥に目を移す。
黒くてピカピカしている綺麗な鳥だ。
この鳥の中にボスがいるはずなんだが…と、辺りを見渡すと、少し離れたところで、一羽だけ高い場所に停まっている鳥を見つけた。

「彼をテイムできれば、この群れを動かせるか…。」

 そう思いながら、その鳥の近くまで歩いていった。
その鳥は俺が近づいたことにも動じず、ジッと俺を値踏みしている。

「効けよ。テイム!」

 あれ?魔法紋が光らない…。
って事は、魔法は使えないって事か?

 そんな事を考えながらいると、さっきのトリが高いところから俺の眼の前に下りてくる。

「珍しい技を使うようだが、この辺りの人間じゃないな。」
「え、あんた…。しゃべれるのか?」
「というより、お前がそうしたんじゃないのか?」

 思考回路が追い付かない。
確か、テイムする際は光の紋様が出て、双方合意の上で主従関係を結ぶというものがテイムであったと教えられたが…。
 だが、このいつの間にかテイムが出来、それも意思疎通ができるようになっているとは…。

「で、あんた、俺達をどうするんだ?」
「あ…。すまない。
 できれば、俺と一緒に仕事をしてほしいんだが。」
「あのな…。俺たちはあいつらから見れば害にしかならない鳥だぞ。
 それを飼いならして、何をするつもりだ。」
「まだ、何も考えていないが、皆が生活できるくらいにしていければ良いと思う。」
「別に俺たちは困っちゃいないが、なんか面白そうだな。
これだけの群れを養うには…。そうだな…。食い物を毎日5kg。これが最低ラインだな。」

5kgが多いかどうか分からないが、一応テイムしておいた方が良いだろう。

「あぁ。できるかどうか分からないが、やってみよう。
 もし、ダメだった時は、その時は契約を解除してもらっても構わないから。」
「よし分かった。まぁ、今日は食事をとったから、明日から始めよう。
 俺はお前の傍に居るが、仲間は分散させるが良いか?」
「構わない。それで頼む。」

 何故かテイムできてしまった…。
どう使おうか迷うがしてしまったものは仕方がない。
俺の肩に一羽の黒い鳥が止まることとなった。

「あの…、イサークさん…。」
「ん?あ、ソメノさん…。」
「皆さん、びっくりしているんですが…。
 さっきから、いきなりカーカーと言い始めたら、いつの間にかイサークさんの肩にカラスが一羽止まっているという状況について教えてもらえないでしょうか。」

***

「凄いですよ!それがテイムというんですね。」

これまでのいきさつと、この黒い鳥、カラスというようだが、テイムした時の話をした。
ソメノさんは、目をキラキラ輝かせている。
耕さんは、面白いものを見るように終始ニヤニヤとしている。

「で、一日5kgの食べ物ですか…。そんなに稼ぐことってできますかね。」

ソメノさんが首をかしげる。

「あ、そんなの簡単だぞ。」

耕さんがニヤニヤしながら話し出した。

「コンビニで廃棄する弁当を社会貢献という名目で寄付してもらうんだよ。
 まぁ、俺達を助けると言った手前で集めるんだが、それも内緒でやらないといかんぞ。」
「耕さん、内緒というのは?」
「万が一、廃棄食品食って、腹でも壊したら大問題になるだろ。 
 今回は、カラスの食事だから問題はないとは思うが…。
何せ、野生の動物に餌付けしているってバレただけでも大問題になる世の中だぞ。
企業側のCSとか、信頼問題ってのがある。
まぁ、仲の良いコンビニの店長を何人か知ってるから、そいつらに内緒で頼むとするが、カラス達にもひと肌脱いでもらう必要があるな…。」
「カラスにですか?」

 耕さんとソメノさんが一生懸命話している姿を横目に、一人置いてきぼりを食らった俺は、カラスと戯れている。

「いさくさん、例えばだが、そのコンビニの周辺、半径100mのゴミ集積場にはカラスが侵入しないようにすることは可能かい?」
「へ?は?何て?」
「だから、コンビニの周辺100mのゴミを集める場所にカラスを来させないようにすることはできるかって事だが?」
「ちょと待って。コンビニって何?」
「いさくさんは知らなくても、カラス達は知ってるから、そのまま伝えてもらえれば分かるぞ。」
「そ、そうか…。それじゃ確認してみる。」

 肩に乗っているカラスに説明する。

「縄張り次第だな。
 俺の縄張りにあるコンビニだったら、それは可能だ。」
「縄張り次第という事だが…。」
「縄張りってどこからどこまでか、確認してほしいんだが。」

「この区全体が俺の縄張りだ。」
「って、あんた、耕さんの言葉が理解できるのか?」
「当たり前だ。俺達は言語理解くらい持ってる。
 だが、俺たちはお前たちと声帯の構造が違うから意思疎通できないだけだ。だから、こうしてお前に通訳をお願いしているんだが。」

 言われたとおり、耕さんとカラスとの会話の橋渡しをしていると、ソメノさんからは、
「なんかテイマーさんって、通訳士さんみたいですね。」と言われた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は今日から、俺の主(マスター)だ」――魔力を持たない“無能”と蔑まれる落ちこぼれ貴族、ユキナリ。彼が手にした一冊の古びた魔導書。そこに宿っていたのは、異世界日本の知識を持つ生意気な魂、カイだった! 「俺の知識とお前の魔力があれば、最強だって夢じゃない」 主従契約から始まる、二人の秘密の特訓。科学的知識で魔法の常識を覆し、落ちこぼれが天才たちに成り上がる! 無自覚に甘い主従関係と、胸がすくような下剋上劇が今、幕を開ける!

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。 大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。 そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。 しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。 戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。 「面白いじゃん?」 アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。

処理中です...