地方公務員のおっさん、異世界へ出張する?

白眉

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第四章

4-15 オークション開催

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伯爵をボッチにしてしまったが、有意義な時間を過ごしたと思う。
奥方ズは、今晩からの事をきゃいのきゃいのと話している。
メリアドール様に至っては、俺を何か違う生き物のように冷たい目で見ている…。

 俺とディートリヒは伯爵邸を後にし、広場へと向かう。
そこで“お好み焼き”を食すつもりだ。
ディートリヒに至っては、昨晩しこたま食べたにも関わらず、眼をギラギラさせている。
ディーさん、どんだけ肉食だよ。
それに奥方ズと何を話したんだ?
気になって寝られないじゃないか。

 伯爵家の下に広場があるのですぐ着いた。
入場料を払ってどの店が良いか品定めしようとしている時、一人の女の子がやって来た。

「おじさんたち、ここは初めてなの?」
「あぁ、そうだよ。“お好み焼き”っておいしい食べ物があるって聞いたんだけど、どの店が美味しいか分からないんだ。」
「何だ、そんな事だったらこっちに来て。」

 少女に連れられて、本部近くのテントに行く。
テントには見知った教会のスタッフが居て、俺を見て声をかけようとするが、人差し指を口に当て黙ってもらうようにする。
すると、少女は二枚の皿を持ってきた。

「あのね、ここにはお店がいっぱいあるから、どれが美味しいか一つずつ回るとお腹がいっぱいになっちゃうんだよ。だからここでは一口ずつお店の味を味わえるようにしてあるんだ。」

 確かにお皿には合計16個のお好み焼きが一口大に切ってある。俗に言うアソートだ。

「お、これならお店に回らなくても、どれが美味しいか比べることができるね。」
「そうでしょ。これってみんなで考えたんだよ。」

 えへへ、と笑っている。
こうやって、運営ってのは試行錯誤しながら改善されていくんだ。
なんか感無量だ。

「うーんとね、おじさんからも一つ提案していいかな?」
「提案って何?」
「こうした方がもっとおいしくなるんじゃないって事だよ。」
「うん。分かった。」
「あのね。このお皿だけど、平たいでしょ。こうするといろんなお店のソースが混じっちゃうんだ。
ソースが混ざらないようにお皿に壁を作って、そこに入れると味が混ざらなくて良いと思うんだ。」
「あ、そうだね。おじさん頭いいね。今後シスターに話してみるね。」
「ははは、是非お願いするね。あ、そうだ。今日はおじさんたちに親切にしてくれたお礼をあげなくちゃね。はい。今日はありがとね。」

 俺はそう言って、少女に銀貨1枚を渡した。

「わーい、おじさん太っ腹~、ありがと~。」

 なんかとても気分が良くなったよ。
少女が笑顔で仕事をしている。その姿を見て皆が踏ん張る。
良い歯車が回っていると感じた。

 食事をとり、午後から開催されるオークション会場へと移動する。
会場は広場の反対側だ。流石伯爵というかユーリ様。お客が余分なお金を落とすように策を講じている。

 俺たちはオークション会場の関係者入り口に行き、トーレスさんの名前を出す。
スタッフに控室まで案内してもらい、トーレスさんにオーク3つ、キング1つのキャンタマを渡す。

「今日のオークションですが、過去最高の人出となっております。」
「盛況でよかったですね。ところでオークションは他に何が出展されているのですか?」
「そうですね。目立ったものとしては、ダンジョンでのドロップ品です。
 ゴブリン・キングの王冠やロードの盾、オークロードの剣なども出ますね。」

 ん?何か知ったような名前ばかりだ。それにダンジョン産って言ったよな。
まぁ、ギルドか伯爵からの提供だろう。しかしこういった射幸心を煽って高く売るって方法は、さすが伯爵もといユーリ様だな…、と感心する。
買うモノもあまりないので、どのタイミングでここに来れば良いかと聞くと、2時間後が俺の出展したモノだから、それまでにここに来てほしいと依頼される。

 時間を持て余した俺たちは少し散歩をする。
まだ、街の中を隈なく歩いていないので、この機会だからといろいろと歩いてみた。

実際、自分の脚や車で移動し土地勘を得ることは、これまでの世界でもやっていたことだ。
これをしないと時間管理ができないんだ。

 大通り、小径を歩く。
新しい発見もあった。
この街には闘技場という場所があり、そこで定期的に剣闘士が戦っているとの事。
勿論、本当の殺し合いではなく刃が潰れたもので戦い、戦闘意欲を無くした者が負けというシステムで、勿論賭け事となっているようだ。
ボクシングやプロレスのようなものだと思い、今度観戦しに行こうかなんて考える。

闘技場の近くを出ると、カルムさんの店がある通りだった。
なんとなく点と点がくっついた感じで達成感がある。
点と点がくっつき線となる。線と線が重なり合って面となる…。
面となればいろいろな方向で動ける。

 そんな事を思いながら、今日もボディガードさんが居るカルムさんの店を通り過ぎようとしたが、店から出てきたカルムさんに引き留められ立ち話をした。
 カルムさんの店も大変なようで、今回のスタンピードで財産を無くした方が奴隷となった話や、隣の国から引取り手の無い奴隷を無理やり買わされた話などをしてくれた。

「ニノマエ様、是非明日にでも当店に来ていただきたいのですが…。」

うん。また困りごとだな。おそらく生命の危険もあるのだろう。
明日の早い時間に来る事を約束し、オークション会場に戻った。

 控室に入り、スタッフがあくせく動いている中、俺たちだけが悠長にしていることに気が引けたので、一般の入り口付近に行き、人生劇場を観ることとした。

 既にオークションも佳境に入り、残すところあと数点だそうだ。
中には満面の笑みを浮かべているヒトも居る。他方でがっくりと肩を落としているヒトも居る。
ヒトの感情は豊かだ。そんなことを考えているとトーレスさんに控室に来るように言われた。

 控室に戻った俺たちは階段で二階に上がり、特別席のようなバルコニー席に案内された。
すでにオークションは再開されており、残すところあと3点だそうだ。

「金貨30枚、それ以上の方はいらっしゃいませんか?
 はい5番さん金貨33枚、
 12番の方35枚、金貨35枚、他にいらっしゃいませんか?
 では、ゴブリン・キングの王冠、12番の方が35枚で落札です。」

「さて、次なる品目は、今回のスタンピードによって討伐された正真正銘のオークの睾丸、それもほっかほかの3つをセットにして競売いたします。聞けば、この睾丸を討伐された冒険者は単身オークの中に突っ込み、剣舞・乱舞を繰り返し、ようやく仕留めたモノ。これがあれば武勇だけでなく、夜の方も完璧、お子様が居ないご家庭も安心という代物です。
 では、3つセット金貨10枚からお願いします。」

 ほっかほかって…。それは流石に嫌だろうと思うが、皆の目つきが違う。
次々と値が上がっていく…。俺は呆気にとられてしまった。

「ほかにないですか。では34番の方オークの睾丸3つセット、金貨75枚で落札です。」

 34番の人、皆に手を振っているよ…。そんなに嬉しいものかね…。

「さて、本日の大トリとなります商品は、これも今回のスタンピードで討伐されたばかりのオーク・キングの睾丸です。何度も言います、オーク・キングの睾丸です。
 取引情報ではここ6年取引された実績がない“希少”の中の希少なモノです。
 これ以上“オーク”なだけに“多く”は語りません。」

 あ、司会者スベった。って、誰も聞いていないからか…。

「では、金貨50枚からスタートです。」

 次々と値が上がっていく。
70、90、100、120枚…、値が止まり始めたのが160枚くらいだったか、それでも少額ずつ上がっていく。
キャンタマ食って、子どもができても…、と思うが、それは俺の考えだけで、子どもが欲しいヒトには垂涎のモノなのだろう。

「もうありませんか? では64番の方、オーク・キングの睾丸を金貨180枚で落札!
これにて今回のオークションを終了いたします。次回開催の際にも是非ご参加いただきますようお願いいたします。皆さまありがとうございました。」

 客が三々五々帰宅する中、俺はまだ席に座っており開いた口が塞がらなかった…。
金貨180枚!?、1億8千万!? この世界のヒトは何考えてるんだ?

 トーレスさん、半ば放心状態の俺を控室に拉致し、今回の落札価格を報告してくれる。
キャンタマ4つで2億5千5百万!?
うち手数料が10%で2千5百5十万!?
天文学的な金額を言われ、放心状態となった俺にディートリヒはふんすか言いながら、てきぱきと処理をしていた…。

 俺が正気に取り戻すのはまだまだ先だった。
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