地方公務員のおっさん、異世界へ出張する?

白眉

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第五章

5-22 念話と実践

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 おそらくディートリヒが椅子から落ちた音だろう…。

『ディートリヒすまないが、俺の傍に来てくれ。』

「ひゃい!」

『あ、声に出さなくていいからね。俺が寝ている横に座って手を握ってくれ。』

 近くにディートリヒが近づいて来る感覚がある。そして温かい手に包まれた。

『これで、少しは安心できるかい?』
『えぇ、カズ様の声が聞こえます。』
『俺もディートリヒの声が聞こえるよ。
今、君の頭の中と会話しているんだ。』
『え、あ、その…。カズ様は大丈夫なのですか。』
『回復にはもう少しかかるけど大丈夫だ。ありがとう。』
『良かったです…。このままカズ様が目を覚まさないのではないかと思うと、あんな事やこんな事もしておけばよかったと思い…。』
『これこれ、病人にそんな話しちゃ、また愛したくなっちゃうでしょ。』
『うふふ。そうですね。激しいのも好きですよ。』
『ん?激しいのって?』
『うふふ、内緒です。』

 無意識とは言え、そんな激しいこともできたのかい?
あ、だから体力が戻らないのか…。
すみません。反省します。

『ナズナには、俺の考えを伝えたから説明しているところか。』
『はい。そうです。』
『では、ナズナが話し終えたら、俺の手を握ってほしいと伝えてくれ。
 多分、そうすれば3人で念話することができると思う。』
『念話…ですか?』
『このように、頭の中で念じて話すことね。相手を感じると話せるようになるって事かな。』
『また凄い魔法を創造されたのですか?』
『いや、これは魔法じゃないんだ。お互いの心が繋がっていれば会話ができるって事かな。』
『心が繋がるですか…。そんな凄い事できるのですね。あ、そろそろナズナが終わりそうなので、呼んできます。』

 しばらくして、ナズナがもう片方の手を握ってくれた。

『ナズナ、これで3人で話ができそうか?』
『え、は、はい。私は大丈夫です。私の声は聞こえているんでしょうか。』
『カズ様、私もナズナの声も聞こえますよ。』
『今、レルネ様はどんな状況だ?』
『はい。私の質問に答えを出そうと考えておられると思います。』
『そうだろうね…。でも結論は出ないと思う。』
『え(え)、それは何故ですか。』
『今回の石化はコカトリスが来たからだろ。多分、郷の者はコカトリスが憎いから討伐を望むし、俺たちに討伐を依頼するだろうね。でも、コカトリスを討伐しても、次に来るのがそれよりも強い魔獣、うーん、例えばドラゴンだったらどうする?』
『どうしようもできません。郷を放棄するしかないですね。』
『そうなんだよ。今は互角か俺という強者がいることで上位に立ててはいるが、弱者になった時のことを考えていないんだ。』
『カズ様、ではどうすれば良いのでしょうか。』
『選択肢は2つかな。
一つ目は、お互いのテリトリーを侵さないようにすること。境界線を張っておくのも手だね。
もう一つは共存していくこと。これはお互いがメリットがあるようにするって事だ。』
『お館様、具体的にはどうすればよいのでしょうか。』
『これは賭けかもしれないが、この世界に家畜とかはいるよね?』
『おります。』
『そうだよね。じゃ、肉や卵はどうやって採取するの?』
『それは家畜から…、あ、家畜も魔獣ですね。そういう意味でしょうか。』
『はい。ナズナさん正解です。ディートリヒは分かったかな?』
『いえ、今一つストンと落ちません。』
『では、考え方を逆方向から進めよう。コカトリスは自分の領域を侵す者に攻撃するよね。
 じゃぁ、共存できると認めた種族であればどうかな?』
『攻撃はしないと思います。』
『攻撃しないのは何故か?それは相手を認めているっていう意味だよ。
それって王国とかに居るって聞いた竜騎兵と同じじゃない?まぁ竜は家畜じゃないけど。』
『あ、そういう事ですか。
はい。ストンと落ちました。
エルフとコカトリスを“共存”…でしたか、一緒に暮らせばいいんですね。』
『はい。正解です。
 でも、すぐにはできないから、先ず何をすれば良いのか分かる?』
『餌をあげる事でしょうか。』
『ま、それもあるけど、先ずはこちらに敵意が無いことを示さないといけない。
 とは言っても、エルフの中ではそんなの無理。じゃぁどうする?』
『うーん(・・・)。』
『だね。そこで俺の魔法の出番だ。コカトリスの親を手なずける魔法をかける。』
『そんな魔法あるんですか?』
『この世界には魔獣を操る集団って居ない?』
『カズ様、獣技団の事ですか?』
『獣技団って言うんだ。一回見てみたいね。
そのヒト達が魔獣を手なずける方法として魔法を使っていると思うよ。それが奴隷と契約するような魔法なのかは分からないけど、ヒトには契約魔法が効いて、魔獣に契約魔法が通じないって事はないと思う。だから魔法を使うんだ。』
『お館様はその魔法を使えるのですか?』
『はっきり言えば使えません。
でもね、俺が出来なくてもこの中で出来る可能性があるヒトがいるんだよ。
ナズナ、君なんだ。』
『え、わ、私ですか?』
『そうだよ。ナズナ、気を悪くしたらごめんな。
俺やディートリヒとナズナは違う。生きる年月もそうだけど。妖狐族って言ってたよね。
そう、俺たちよりも魔獣に近い種族と思ってほしい。
 それは、俺にとっては凄く羨ましいことなんだ。
 魔獣と意思疎通ができる事って素晴らしいとは思わないか。』
『お館様、私たちは獣人とも呼ばれていますが、亜人とも呼ばれています。』
『うん。でもヒトはヒトだよね。
獣人も亜人もヒトが付けた言葉であり、俺はその言い方は何かヒトが上位に立ってナズナ達を見下しているような気がして使うことも嫌いだ。だから俺はずっとヒトと呼んでいる。』
『お館様、そこまで私たちの事を考えていらっしゃったのですか…。』
『感動は、これから伝えることができた後に3人でしよう。』
『はい(はい)。』

 俺はレルネさんと長に外に出てもらうことにした。
 レルネさんは不思議に思うも、ディートリヒが俺の中毒症状がまた出てきたので、見せられる状況ではないと伝えたら、そそくさと出ていったよ。
 なぁ、ディーさん、そんなに凄かったの?

 3人になった。ようやく声が出せる。
まだふらふらするがディートリヒに支えてもらう。

「こうやってディートリヒに支えてもらうのは、スタンピード以来かな。」
「そうですね、カズ様。私は毎日でもよろしいのですが。」
「ごめん。今日は無理そうだ…。」
「でも、下は元気ですわ。」
「ははは。なんか完全にお任せ状態になっちゃうけど。」
「いえ。それでも私どもは幸せなんですよ。」
「はい。お館様、とても甘美な世界に行けます。」

「それじゃぁ、実演も踏まえながら、ディートリヒとナズナに“テイム”を教えるね。」

 それから数刻、3人で愛し合う。
その愛の中にテイムがあることを教える。
相手を服従させたり、従えるのではなく、お互いの気持ちを尊重し合い、一つになる事。
お互いが生きていくうえでwin winの関係で居られることを実感してもらう。
それが理解できれば、相手のしたい事、考えている事も分かるんじゃないか?

「お館様、これがテイムというものでしょうか。」
「いや、違うよ。テイムと言ってしまえば、俺がナズナやディートリヒをテイムしているって事になってしまうよね。」
「私はテイムされていても問題はありませんが…。」
「そうか…。ではなくてね。お互いが生きていくうえで必要だと認め合うことが大切なんだよ。
 それがテイムに繋がるんじゃないかって思う。」
「従属させるのではなく、お互いの気持ちを確認し合いながら共存していくって事ですね。」
「そう。今のナズナなら出来そう?」
「はい。」

 笑顔だ。自分はできると信じている。
俺の創造魔法は、それが大切なんだ。

「ナズナはできるとして、ディートリヒも多分できると思うよ。」
「カズ様、それは何故でしょうか。」
「ディートリヒは、俺が思っていることを先にしてくれる。
 それは忖度というものではなく、真にしたいことが何かを分かっているからできる事だよ。
 できる事をするだけでも大変なのに、相手の気持ちを考えながら動くことができるからね。」
「カズ様、そう言われますとできるような気がしますね。」
「そうだよ。ディートリヒもナズナもできる子だ。俺の愛しいヒトたちだよ。」
「こうしていただけると、私たちは本当に幸せなんですね。」

 俺たちは、定位置に収まり、3人で肌を合わせる。

「あ、そう言えば、さっき神様と会って来たよ。」
「え、神様ですか?」
「うん。ディートリヒもナズナも良いヒトになったね、って褒めてた。」
「そんな(え)…」

 ありゃ、変な事言ったか?2人がクネクネしてる。

「それと、街に戻ったら数人の女性が俺の前に現れるから、しっかりそのヒトを見て欲しい。」
「シーラさん以外にも現れるという事ですね。
 分かりました(分かりました)。」

 二人はガバッと起き、武装を始めた。
いや、帰ってからだからね…。
今から殺気出すとテイムできなくなっちゃうよ…。
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