地方公務員のおっさん、異世界へ出張する?

白眉

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第六章

6-3 内覧会

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 手紙を書き終えると、ナズナは服を着てそのままザックさんの街へと行った。
 俺は、ディートリヒを伯爵家にお使いに出し、夕食をどうかと提案する。ただし厨房がまだ無いので、食材を持ってお邪魔したいという事を伝えて欲しい旨言うと、ディートリヒも着替え始めたので、伯爵家での要件を終えたら、改築中の店で合流するようにした。

 ディートリヒも出発し、俺も琥珀亭を後にする。
行く場所は改築中の店だ。

 10分程度で店の前に着いた。
補強する鉄骨も既に入っているようだが、もう内装関係の最終調整まで行っている。さすがジョスさん、仕事が早い。

「ジョスさんいますか?」
「おう、お、あんちゃん、久しぶりだな。」
「留守中も、いろいろと仕上げてもらい申し訳ありません。」
「良いって事よ。それにもう少しで完成だからな。」
「あ、その件ですが、屋上のお風呂ですが、すごい魔道具を見つけたので、交換してもらいたいんですけど、大丈夫ですかね。」
「別に問題はないが、少し手間賃がかかるぜ。」
「大丈夫ですよ。それにこれもありますからね。」

 俺は、スピ〇タス以外に持っていたテ〇ーラを2本差し出す。

「さすが、ニノマエさんだ。分かってるね~。おいおめぇら、施主さんからの差し入れだ。
 心して飲めよ。」
「へい(((へい)))!」
 
 うわ、わらわらと人が降りてきたよ。足りるかな?
少し足りないかもしれないので、もう2本渡すとジョスさん1本を自分用にしたよ…。

「んじゃ、ニノマエさん、内見といこうか。って、この酒も美味ーな。
 おい、おめぇら、味わって飲めよ。こんな上等な酒、そんじょそこらで飲めねーからな。」

 俺たちは1階から見ていく。
店舗部分はオーダーどおり2部屋。3分の2と3分の1で区分けされている。
事務室もあり、トイレも。
階段が綺麗だ。

「階段が豪華ですね。」
「そりゃそうよ。俺っちが良い部材見つけてきたからな。」
「あと、ここが空調を扱う場所だ。」
「うわ、凄いな…。」

1階のボイラー室というか空調室には風と火と水の魔石が入っており、その魔石の力をボリュームコントローラーのような丸い部分で調整できるようだ。

「これが俺が作った送風魔道具だ。
こっちの火の魔石を強くすれば暖かい風が出る、火の魔石を最小限にし水の魔石を強くすれば冷たい風がでるって寸法だ。勿論、店以外のすべての部屋に送風口が付けてあるし、廊下にもトイレにもあるから、この家全体に行き渡るってことだ。」
「ジョスさん…、これ、すごいですよ。」
「ただな…、結構金がかかってしまったんだが…。」
「そう言えば、代金の事話していなかったですが、手持ちとか大丈夫だったんですか?」
「ん。あぁ、それはツケが効くから大丈夫だが、高くなっちまったからどうやって言い出そうかと思ってな…。」
「因みにいくらなんですか。」
「金貨40枚だ。」
「なんだ。問題ないですよ。」
「え?今なんて、ニノマエさん、金貨40枚だぜ。」
「はい。大丈夫です。それに追加の工事もありますので、その部分もお支払いします。」
「ありがてぇ。ほんとどうしようかと思ってたんだよ。作ったはいいが、金が払えなかったどうしようとか…。」
「金に糸目はつけませんよ。良い家であればなおさらです。」
「ありがとな。」
「それを言うのはこちらです。」

 お互い笑顔になる。

 ベイスメントに行き満足する。
2階、3階も問題ない。そして屋上。
既に配管も終わっている。

「交換してほしいのは浴槽なんです。」
「なんだ、浴槽か。なら2,3日で交換できるぞ。で、浴槽はあるのか?」
「はい。これです。」

 俺は浴槽をアイテムボックスから出した。

「この小さいほうを屋内に、大きい方を屋外に設置して欲しいんです。で、水ですが、この魔道具を使ってほしいんです。」
「あ、あんた…、これって…。ノーオの色街にある、あの魔道具か?」
「え、ジョスさん知ってるんですか?なんだ、スケベだなぁ~この、この。」

 俺は冗談交じりに肘で小突くが、肝心なジョスさん、口をあんぐり開けて言葉が出ない。

「どうかしたんですか?」
「いや、あそこにある魔道具はな、門外不出だという事で、誰の手にも渡っていないんだよ。
確かザックとかいう奴の店しかない代物でな。例え王様であろうと渡さないっていうくらい頑固な奴だぞ。」
「あ、ザックさんですね。来月にこの風呂に入りに来ますよ。」
「は?!なんだって。あんた、あのザックと知り合いか?」
「はい。この魔道具が欲しいって言ったら、分けてくれましたが…。」
「そうか…、ニノマエさん…、俺はあんたがとんでもないヒトだと薄々感じてはいたが…、そうか。
 あのザックを手玉に取ったのか…。」
「いえ、手玉に取ったのではなく、兄弟の盃を交わしました…。」
「は?!あんた、何言ってんだ。あいつは泣く子も黙る無頼漢のザックだぞ。」
「はい。でもすごく良いヒトでしたよ。」

 そこにディートリヒが現れ、本日の夕刻に伯爵邸でのアポが取れたことを報告してくれた。

「ディートリヒ、ありがとう。
今ザックさんの話をしていたんだが、凄く良いヒトだったよな。」
「はい、カズ様。あの方は『風呂好きに悪い奴は居ない』と仰ってましたね。」
「そうなんだよな。風呂は正義だからね。」
「はぁ、あんた達は、よほど凄いヒトなんだな…。
俺たちもそんな凄いヒトの家を作ることができて誇りに思うぜ。
 よっしゃ、じゃぁ、その魔道具に交換するぜ。どうせ2階の台所も交換するんだろ。
 なら、2日で終わらせて見せる。待っときな。」
「ジョスさん、ありがとうございます。それとトイレにもお願いしますね。
 あ、忘れないうちに代金を支払っておきましょうか。
 金貨40枚と、追加の工賃分合わせて50枚でどうですか?」
 
 ジョスさん、また口をあんぐりしてる。

「に、ニノマエさん…、あんた金銭感覚はあるのかい?」
「一応、人並みには。」
「追加工事したとしても精々金貨1、2枚だぞ。
 それを10枚って、おかしいだろ。」
「いえ、おかしくはないですよ。
 だって、外壁と鉄骨、内壁の間に管を通してくれましたし、その隙間も既に対応されていますよね。」
「あぁ、あそこに隙間があると、暖かい風も冷たい風も逃げちまうからな。
だからダンジョン産の綿毛や魔獣の毛を裁断して柔らかく加工したモノを入れてあるぞ。」
「でしょ。それも結構手間暇がかかると思うんですよね。
 それに天井部分には衝撃干渉と防音も入っていますし、結構お金かかってるんですよね。
 だから、相応しい対価を払いたいんです。」

 ジョスさん涙ぐんでるよ…。

「ニノマエさん、あんたほど建築が何たるのかを分かってくれる人はいない!
 俺たちは縁の下の力持ちだ。そんな奴らが対価をもらうなんておこがましいと思ってた。
満足されてナンボの世界だ。だけど満足されなかったらと思うとな…。結局金でケリを付けてしまうんだ。」
「えぇ。そうだと思います。
 払う方は、安ければ満足しますからね。
 でも、胸張って『俺たちが建てた家だ、文句あるか!』って言ってみるのもいいかもしれませんね。」
「そうだな。これからそうするよ。」
「ですね。では、金貨50枚お渡ししますね。
 あ、それとこれは奥様に。」

 俺は、マルゴーさんの奥さんであるマーハさんに渡したのと同じお酒を渡した。

「絶対奥様に渡してくださいね。そうしないと、マルゴーさんみたいになりますからね。」
「あ、あぁ…。あの話は聞いてるよ。
 酒飲んじまって半殺しにされたって話だろ。安心しろ、俺はそんな事しねえよ。」

 俺とディートリヒは内見を終え、2日後ナズナが帰って来たタイミングで新居に移ることとを告げた。
琥珀亭で寝泊まりするのもあと2日か…、なんか寂しくなるな…。
少しおセンチになってしまった。
 
伯爵邸に行くには少し早かったので、家具屋に明日に荷物を運んでもらうよう手配し、マルゴーさんの店に寄る。
サーペントとエンペラー・サーペントの皮と鱗を使ってディートリヒのアーマードレスの新調とナズナの斥候用の防具をお願いする。

「ニノマエさんよ…、来るたびにどえらい素材を持ってくるんだが…、あんた一体何者なんだ?
ただ、このエンペラー・サーペントは鑑定されると問題になるから、隠蔽が必要だな…。」

 そんな事を言われるが、俺は俺だ。
 あ、俺もブーツが欲しいことは伝えた。そしたら、そんなもん2時間でできるとか言ってたよ。
野郎用と女性用は作る時間も違うってことか…。

そういう性格…、好きだな。
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