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一幕 第一章
集中治療室前
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私は集中治療室へと息を切らしながら走っていた。集中治療室の前で家族が私を待っていた。
「はぁ、はぁ……。お姉ちゃん、春人くん……春人くんは大丈夫なの?」
「電話が繋がって良かった。うん、軽傷ですんだんだけどね。でもね、心乃……」
救急車に乗っていたのは私の姉だった。
私に良く似た姉は、双子だと間違えられるほど容姿が似ていた。ただ、私とは違って表情が面に表れる。それは、春人も同じだった。
「良かった。でも、でもねってなに?」
「……心乃には辛いことだよ。それでも知りたい?」
姉である花咲夢乃の表情から、私が知りたいことはただ事ではないと悟った。その知りたいことを、春人の容態を知っても私は動揺することなくこの場に居ることが出来るのだろうか、そう考えた。ただ私は思った。
(私は春人くんの彼女なんだ。それにこんなことになったのも私のせいだ。春人くんに別れを告げなかったら、春人くんは……ううん、春人くんはきっと私のことをずっと好きでいてくれる。だから私は春人くんのことが今でも好きなんだ)
私の頰に一筋の雫が伝った。
「うん、教えてお姉ちゃん。……全部私が悪いんだ。私が春人くんに本当のことを言わないで、あんな風に別れを告げたから……」
頰を伝う雫は床に小さな水たまりを作り、私の顔を映していた。夢乃は私の肩に手を乗せて、近くにあった椅子に腰を掛けるよう促した。私はその椅子に腰を下ろした。
「あのね、春人くんは一時的な記憶喪失なの。一時的って言っても、いつ記憶が戻るかは分からない。今日かも知れないし、明日かも知れない、もしかしたら一生戻らないかも知れない。それに記憶がもし戻ったとしても、事故以降の記憶は残らないかも知れない。だから、心乃が春人くんと築き上げるこれからの日々の記憶は覚えて無いかも知れないの」
「そんな……。ごめんね、春人くん……」
私は泣きじゃくっていた。小さかった水たまりは、私が涙を流す度大きくなり、悲しみと申し訳なさを表していた。
「心乃……」
夢乃は私の頭を撫でてそう言った。
そして、夢乃は私の瞳の奥を見て言った。
「心乃が落ち込んでいたら、春人くんはどうなるの。春人くんに心から申し訳ないと心乃が思うんなら、春人くんの記憶は心乃が取り戻さないといけないんじゃないの。そうでしょ、心乃」
私は小さく頷いた。
そして、私も姉の瞳の奥を見て告げた。
「ありがとう、お姉ちゃん。そうだよね、落ち込むのは私じゃない。春人くんの記憶は私が取り戻さないといけないんだ」
「その意気だよ、心乃。頑張れ、お姉ちゃんはいつも心乃のことを応援してるからね」
私は春人が自分にしてくれたように、毎日学校の帰り道として病院へ足を運ばせた。そして、お見舞で春人の顔を見ることが私の日課となった。
「はぁ、はぁ……。お姉ちゃん、春人くん……春人くんは大丈夫なの?」
「電話が繋がって良かった。うん、軽傷ですんだんだけどね。でもね、心乃……」
救急車に乗っていたのは私の姉だった。
私に良く似た姉は、双子だと間違えられるほど容姿が似ていた。ただ、私とは違って表情が面に表れる。それは、春人も同じだった。
「良かった。でも、でもねってなに?」
「……心乃には辛いことだよ。それでも知りたい?」
姉である花咲夢乃の表情から、私が知りたいことはただ事ではないと悟った。その知りたいことを、春人の容態を知っても私は動揺することなくこの場に居ることが出来るのだろうか、そう考えた。ただ私は思った。
(私は春人くんの彼女なんだ。それにこんなことになったのも私のせいだ。春人くんに別れを告げなかったら、春人くんは……ううん、春人くんはきっと私のことをずっと好きでいてくれる。だから私は春人くんのことが今でも好きなんだ)
私の頰に一筋の雫が伝った。
「うん、教えてお姉ちゃん。……全部私が悪いんだ。私が春人くんに本当のことを言わないで、あんな風に別れを告げたから……」
頰を伝う雫は床に小さな水たまりを作り、私の顔を映していた。夢乃は私の肩に手を乗せて、近くにあった椅子に腰を掛けるよう促した。私はその椅子に腰を下ろした。
「あのね、春人くんは一時的な記憶喪失なの。一時的って言っても、いつ記憶が戻るかは分からない。今日かも知れないし、明日かも知れない、もしかしたら一生戻らないかも知れない。それに記憶がもし戻ったとしても、事故以降の記憶は残らないかも知れない。だから、心乃が春人くんと築き上げるこれからの日々の記憶は覚えて無いかも知れないの」
「そんな……。ごめんね、春人くん……」
私は泣きじゃくっていた。小さかった水たまりは、私が涙を流す度大きくなり、悲しみと申し訳なさを表していた。
「心乃……」
夢乃は私の頭を撫でてそう言った。
そして、夢乃は私の瞳の奥を見て言った。
「心乃が落ち込んでいたら、春人くんはどうなるの。春人くんに心から申し訳ないと心乃が思うんなら、春人くんの記憶は心乃が取り戻さないといけないんじゃないの。そうでしょ、心乃」
私は小さく頷いた。
そして、私も姉の瞳の奥を見て告げた。
「ありがとう、お姉ちゃん。そうだよね、落ち込むのは私じゃない。春人くんの記憶は私が取り戻さないといけないんだ」
「その意気だよ、心乃。頑張れ、お姉ちゃんはいつも心乃のことを応援してるからね」
私は春人が自分にしてくれたように、毎日学校の帰り道として病院へ足を運ばせた。そして、お見舞で春人の顔を見ることが私の日課となった。
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