22 / 22
二幕 第五章
幼稚園
しおりを挟む
春人と心乃が生まれてから三年の月日が流れた。
裕美と寿也、歩乃華と志乃たちは、幼い春人と心乃に振り回されながらも、さらに上の兄や姉も育ててきていた。
幼い子どもは、大人が発するシグナルの受信感度が一番敏感だと言うが、それは本当なのかも知れない。
春人たちは両親のシグナルをキャッチしたのか、次第に二人で遊ぶ時間が増えていった。それも幼稚園に入ってから、一緒にいる時間が極端に多くなった。
保育園に通っていた頃は、二人で、というよりかは、みんなで、という方が多かった。先生からもお子さんはたくさんの子たちと仲良くしてますよ、と言われ続けてきた。
メンバーが誰一人として変わることなく通い始めた幼稚園で、春人たちはみんなと一緒にいる楽しさより二人でいる楽しさに気づいていった。
お互いの両親はその事に気づきながらも、従兄妹だから大丈夫だと勝手に思い込み、あまり深く考えてはいなかった。
子どもは純粋で思ったことは言ってしまう、それに以外にもその時の言葉は覚えているもので、それは固く結ばれた約束となって頭のなかに残る。
幼稚園に入ってから二人でいることが当たり前になっていた僕たちは、今日も二人で花を摘んでいた。この場所はフェンスによって校門以外からは外へ出られなくなっている。そのフェンスに沿うように端から端まで花壇に花が植えられている。
いつもは花壇の花を眺めて二人で話をして、花壇の周りに伸びている雑草の花を摘んでいた。
ただ、春人たちはその日はいつもの場所から遠く離れた校門の近くにいた。
小さく綺麗な白い花が太陽の光を反射してキラキラと輝いていた。
「うわあ。綺麗だね、心乃ちゃん」
僕は摘んだ花を上手に結い合わせ心乃の首にかけた。心乃はそれを優しく撫でてほんの少しの間目をつぶった。
僕は心乃を見つめて家族にも見せたこともないほどの笑顔を向けた。心乃もそれに共鳴するように同じように自然に笑顔になっていた。
「春人くん、ありがとう。絶対大切にするね! だからね……」
僕は一瞬何が起こったか理解出来なかった。心乃とは従兄妹で幼い頃から、いや父親と母親から生を貰ったときから一緒に成長してきた。だから、幼いながらも友達以上の関係になることはないと思っていた。それに例えそんな口約束をしてもいつしか忘れていくんだと僕は思っていた。
だからこそ、僕の頬に心乃の唇が触れた時には一瞬何も考えられなくなってしまった。
「春人くん……。私は春人くんのこと好きだよ。今もこれからもずっと……だからね、春人くん。春人くんも私のこと好きでいてくれたら嬉しいな……」
心乃は頬を真っ赤に染めて教室へと戻っていった。
僕はしばらくそこから動けなかった……
そして幼稚園を卒園してすぐに僕は心乃と違う学校に通うため少し離れた場所へと引っ越した。
引っ越したといっても元の家から凄く離れているわけでもなく、心乃とはいつでも会えるものだと僕は深く考えずに思っていた……
裕美と寿也、歩乃華と志乃たちは、幼い春人と心乃に振り回されながらも、さらに上の兄や姉も育ててきていた。
幼い子どもは、大人が発するシグナルの受信感度が一番敏感だと言うが、それは本当なのかも知れない。
春人たちは両親のシグナルをキャッチしたのか、次第に二人で遊ぶ時間が増えていった。それも幼稚園に入ってから、一緒にいる時間が極端に多くなった。
保育園に通っていた頃は、二人で、というよりかは、みんなで、という方が多かった。先生からもお子さんはたくさんの子たちと仲良くしてますよ、と言われ続けてきた。
メンバーが誰一人として変わることなく通い始めた幼稚園で、春人たちはみんなと一緒にいる楽しさより二人でいる楽しさに気づいていった。
お互いの両親はその事に気づきながらも、従兄妹だから大丈夫だと勝手に思い込み、あまり深く考えてはいなかった。
子どもは純粋で思ったことは言ってしまう、それに以外にもその時の言葉は覚えているもので、それは固く結ばれた約束となって頭のなかに残る。
幼稚園に入ってから二人でいることが当たり前になっていた僕たちは、今日も二人で花を摘んでいた。この場所はフェンスによって校門以外からは外へ出られなくなっている。そのフェンスに沿うように端から端まで花壇に花が植えられている。
いつもは花壇の花を眺めて二人で話をして、花壇の周りに伸びている雑草の花を摘んでいた。
ただ、春人たちはその日はいつもの場所から遠く離れた校門の近くにいた。
小さく綺麗な白い花が太陽の光を反射してキラキラと輝いていた。
「うわあ。綺麗だね、心乃ちゃん」
僕は摘んだ花を上手に結い合わせ心乃の首にかけた。心乃はそれを優しく撫でてほんの少しの間目をつぶった。
僕は心乃を見つめて家族にも見せたこともないほどの笑顔を向けた。心乃もそれに共鳴するように同じように自然に笑顔になっていた。
「春人くん、ありがとう。絶対大切にするね! だからね……」
僕は一瞬何が起こったか理解出来なかった。心乃とは従兄妹で幼い頃から、いや父親と母親から生を貰ったときから一緒に成長してきた。だから、幼いながらも友達以上の関係になることはないと思っていた。それに例えそんな口約束をしてもいつしか忘れていくんだと僕は思っていた。
だからこそ、僕の頬に心乃の唇が触れた時には一瞬何も考えられなくなってしまった。
「春人くん……。私は春人くんのこと好きだよ。今もこれからもずっと……だからね、春人くん。春人くんも私のこと好きでいてくれたら嬉しいな……」
心乃は頬を真っ赤に染めて教室へと戻っていった。
僕はしばらくそこから動けなかった……
そして幼稚園を卒園してすぐに僕は心乃と違う学校に通うため少し離れた場所へと引っ越した。
引っ越したといっても元の家から凄く離れているわけでもなく、心乃とはいつでも会えるものだと僕は深く考えずに思っていた……
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さくら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました
cheeery
恋愛
名家・御堂家の次女・澪は、一卵性双生の双子の姉・零と常に比較され、冷遇されて育った。社交界で華やかに振る舞う姉とは対照的に、澪は人前に出されることもなく、ひっそりと生きてきた。
そんなある日、姉の零のもとに日本有数の財閥・凰条一真との縁談が舞い込む。しかし凰条一真の悪いウワサを聞きつけた零は、「ブサイクとの結婚なんて嫌」と当日に逃亡。
双子の妹、澪に縁談を押し付ける。
両親はこんな機会を逃すわけにはいかないと、顔が同じ澪に姉の代わりになるよう言って送り出す。
「はじめまして」
そうして出会った凰条一真は、冷徹で金に汚いという噂とは異なり、端正な顔立ちで品位のある落ち着いた物腰の男性だった。
なんてカッコイイ人なの……。
戸惑いながらも、澪は姉の零として振る舞うが……澪は一真を好きになってしまって──。
「澪、キミを探していたんだ」
「キミ以外はいらない」
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる