ラストダンスはあなたと…

daisysacky

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第 16章  最初で最後の思い出を…

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  忙しく立ち働く彼女を、追いかけまわすように、後ろをついて回ると
山内さんは、くるりと珠紀に視線を合わせて、
「お嬢さん、あなた…もう、おかえりなさい」
時計を確かめるように、そう言うと、珠紀の後ろに立つ
玲と秀人の2人に目を留めた。

「よかったですね!
 お迎えが、来てくれたじゃないですか」
フワッと微笑む。
「あなたは…ここにいるべき人では、ないんです。
 ここのことは忘れて、元の暮らしに戻るんです」
山内さんは諭すように、珠紀に向かって言う。
それから再び、片づけを再開し、出て行こうとするので
「待って!」
思わずこれまでは恥じらって、大きいな声など、出せなかった珠紀。
だけど今回は、そんなことなど気にしている余裕もない。

「あの人は、今…どこにいるの?」
すかさず声をかけると、
山内さんは、クルリと振り返り、彼女をじぃっと見つめる。
その顔は、少し怖い色を含んでいた。
「それを知って…どうするつもりですか?」
それは…珠紀をとがめるような声色だった。
だが、それ以上は、語ることはなく、
それ以上話すことはない、とばかりに、背中を向ける。
珠紀はついに、居場所を失い、1人取り残された。








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