桜ハウスへいらっしゃい！

第２章 こんなはずじゃなかったアパート探し

９

　　だけど油断は禁物だ。
　なにしろ、ヒョウ柄対向かうところ敵なしとうたわれた、強気な女…淑子が
相手だ…
（今日はヘトヘトに疲れそう…）
早くも、後悔を始める待子だ。
（こんなことなら…アパートが決まるまで、杏子に協力してもらえばよかった…）
そう思うのだが、実際問題として、そういうわけにもいかない…
（あぁ、何事もなく、スムーズに決まりますように）
鼻息荒い、母の横顔を見て、ただひたすら、今日１日をうまく乗り切ることのみを
願う待子だ…

　思ったよりも、渋滞に引っかからずに、スムーズで、車に乗って、ものの５分
もすると、
「さぁ、ついたわよ」
前を向いていた、ヒョウ柄の女は、車を止めて、にこやかに振り向いた。
そこには、待子の希望通り、駅のすぐ近くで、商店街にも、ほど近い場所だった。
自信満々に、ヒョウ柄の不動産さんが、車をとめると…
目の前には、見た目がスッキリとした、新築のアパートだった。
「まぁまぁ～ずいぶん、小ぎれいなトコね」
　待子に続いて出て来た母淑子は、驚いた顔で、見上げている。
「これじゃあ、家賃も高いんじゃないの？」
ひどく不安そうにすると…ヒョウ柄のフジヨシさんは、
「まぁ、そう言わずに、中を見て下さい」
そう言うと、２人に先導して玄関に近付いた。
　淑子は何か物言いたげな顔をするが、さすがに初対面の人なので、
遠慮している様子。
チラリ…と待子を見ると、それでもゆっくりとフジヨシさんの後を
着いて行く…

　アパートには、小さな空き地があるにはあるが、どうやら
駐車スペースがなさそうだ。
するとその視線に気付いたのか
「ここは、駐車場付きではないの。
　車を置く場合は、近くの駐車場を借りていただくことになります」
やけに事務的な声が、響いて来た。